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小説 厳重拘束管理刑の戦乙女 前編

 床も壁も天井もコンクリート打ちっ放しの長い廊下を、粗末な囚衣姿の娘が拘束されて引かれていく。  その名は、エリカ・ロダ。  大陸に覇権を確立せんとするアンゲリア帝国に占領されたルホミラ共和国の抵抗勢力《レジスタンス》の象徴的存在で、戦乙女と称された娘である。  彼女を周りを固めるは、完全武装の一個小隊。  腕は革手錠で後手に拘束され、接続された鎖の端を女性兵士のひとりに握られて、抵抗することはできない。  足にはつま先立ちを強制するバレエヒールのブーツを履かされたうえに、短い鎖でつながれた足枷を嵌められ、ヨチヨチ歩きをするのが精いっぱい。  口には、自決防止を兼ねた棒状の轡を噛まされ、意味のある言葉を発することはできない。  そのうえで家畜用の首輪嵌められ、リード代わりの鎖を引かれて、エリカは連行されていく。  悔しい。口惜しい。  発達した科学技術を背景に、高度に機械化されたアンゲリア帝国軍の侵攻を受け、母国ルホミラ共和国はあっけなく降伏。  当時から共和国軍上層部に内通する者がいたという噂はあったが、流言飛語の類《たぐい》にすぎないと思っていた。  それが、ほんとうだったなんて。  しかも、エリカが抵抗勢力の戦乙女として象徴的存在になった頃、共闘を申し入れてきた若き元女性士官が、その裏切り者だったなんて。  ユリエ・ゾラ。  共和国軍が健在だった頃の階級は少佐。在外武官として在アンゲリア大使館に赴任中、接近してきた帝国軍諜報部に取り込まれた。  その裏切り者が今、嵌められた首輪の鎖を引いている。  あろうことか、中佐の階級章つきの帝国軍士官服を着て。 「愚図な女ね、とっとと歩きなさい」  冷酷な笑みを浮かべて、憎き敵の女が無慈悲な言葉を投げつける。 「う(く)ッ……」  悔しくて噛まされた轡を噛み締めるが、バレエヒールのブーツと足枷どうしをつなぐ短い鎖に足の動きを制限され、エリカはこれ以上早く歩くことができない。  にもかかわらず、ユリエは首輪の鎖を無慈悲にぐいぐい引く。 「はっ、はっ、はっ……」  そのせいで、エリカは肩で息をしながら、全身から汗を噴き出している。 「はっ、はっ……ぁうッ」  口呼吸を強いられて、噛まされた轡の端から、涎をこぼしてしまう。  後手に拘束されていては拭うことすらできず、口からあふれた涎は、顎を伝って胸へと垂れ落ちる。  そのことに羞恥と屈辱を覚えていたのは、連行され始めてすぐの頃。  責め苦のような強制連行が続くうち、気に留めていられなくなった。 「おまえのような愚図女が戦乙女だなんて、笑止千万ね」  首輪の鎖を引いてユリエはそう言うが、バレエヒールを初めて履かされた女は、たいてい立つことすらできない。  エリカがヨチヨチとでも歩けるのは、彼女が高い身体能力を有しているからである。  けっして愚図でなく、指揮が適切だったからこそ、エリカは戦乙女たりえたのである。  そもそも、エリカ率いる抵抗勢力が強敵だったからこそ、帝国軍はユリエを接近させ、捕縛後はその功績で中佐に昇進させたのだ。 「はっ、はっ、はっ……」  苦しい呼吸を繰り返しながら、廊下の角を曲がる。 「はっ、はっ……ぅあッ」  轡の端から涎をこぼし、垂れ落ちる液体で囚衣の胸に染みを作る。 「はっ、はっ、はっ……」  苦しい、苦しい。  いったいいつまで、苦しい連行が続くのか。  ユリエがわざわざ遠回りをして、エリカを延々と引き回しているのは、今から向かう先が帝国軍の臨時法廷だからである。  帝国軍の侵攻に対し早々に白旗を掲げた元ルホミラ支配層も傍聴するその場で、抵抗勢力の象徴たる戦乙女に、凛としていられては困るからだ。  そして、バレエヒールを履かされての引き回しで、息も絶え絶えの状態になってたどり着いた臨時法廷。弁護人や本人による供述はおろか、検事による尋問もないままエリカに言い渡されたのは――。 「被告人エリカ・ロダを、無期限の厳重拘束管理刑に処す」  ルホミラの戦乙女にとって、初めて聞く名の刑罰だった。 「厳重拘束管理刑は、身じろぎすらできないほどきつく厳しく拘束したうえで、生きるための身体機能すべてを管理されて閉じ込められる拘禁系。帝国では死刑よりも残酷な、究極の刑罰とされているのよ」  形ばかりの裁判のあと、再び廊下を歩かされるエリカを振り返り、首輪の鎖を引くユリエが告げた。 「実は、おまえを厳重拘束管理刑に処すよう、上層部に進言したのは私なの。死刑にしてしまっては、抵抗勢力のなかでおまえが神格化される。でも、厳重拘束管理刑に処されるさまを旧共和国領全土に中継、憐れでみじめな姿を晒せば、逆におまえに失望して組織全体が弱体化する」  そこまでするほど、ユリエは共和国が憎いのか。それとも彼女が憎んでいるのは、エリカ個人なのか。  裏切り者の女が同性に対する強い嗜虐性を持ち、その性向が自分に向けられていることに、囚われの戦乙女は気づいていない。  ともあれ、再びの引き回しにより消耗させられたところで、首輪の鎖を引くユリエが、ひとつの扉の前で足を止めた。  医療処置室と書かれたプレートが掲げられた部屋の、重い鉄製の扉が開かれる。  首輪の鎖を引かれて連れ込まれたあと、警護の兵士が扉に内側から鍵をかける。  すると、中にいた女性士官が、敬礼したあと口を開いた。 「軍医のガリーナ・イエチャ中尉です。厳重拘束管理刑の準備処置を担当します」  口調と態度からして、その言葉はエリカではなくユリエに向けられたものだ。  つまり、担当する医官が誰かにかかわらず、その内容にエリカが納得できるか否かには関係なく、上官たるユリエが中止を命じないかぎり、問答無用で処置は施される。  エリカがそうと思い知らされたところで、ガリーナ軍医が無慈悲な言葉を口にした。 「それでは、囚人の服を脱がせてください」  実のところ、他人の前で裸になるのは初めてではない。  帝国に対する抵抗運動のなかでは、プラバシーを確保できない局面は多々あった。囚われてからも、身体検査のため服を脱がされた。  だが、今は状況が違う。ここで服を脱がされるのは、死刑よりも残酷とされる、厳重拘束管理刑の準備処置のためなのだ。  服を脱がされることで、残酷な刑罰に1歩近づく。  とはいえ、抗うことはできなかった。  拘束の身を、ふたりの警護兵に後ろから押さえつけられる。  それで抵抗を封じられて、軍用ナイフを手にしたユリエが正面に立った。 「うふふ……」  瞳に妖しい光を灯して嗤い、ユリエが粗末な囚衣を切り裂き始める。 「う(く)ッ……」  しかし、革手錠で後手に拘束され、バレエヒールの足に鎖つき足枷を嵌められた状態では、ふたりの屈強な女兵士の力には抗えない。 「あぇお(やめろ)……」  言葉にならない囚人の声に、裏切り者の女が耳を傾けるわけがない。 「ぅうぅ……」  羞恥と屈辱にうめくエリカの身体を覆っていた囚衣が、ただの布きれに変えられる。  日焼け跡の残る瑞々しい肌が、明るい照明の下に曝される。  エリカが全裸に剥かれたところで、ガリーナ軍医があらためて口を開いた。 「それでは、囚人をこちらに」  そして、ガリーナ軍医が指差すほうを見ると、そこには人体を縛りつけるためのベルトが取りつけられた、奇妙な形の椅子が設置されていた。 (いえ、これは……)  椅子などではない。今は椅子に近い形をしているが、目の前にあるのは、婦人科の内診台だ。  エリカ自身に内診を受けた経験はないが、そういうものが存在することを、エリカは知識として知っていた。  ただ、共和国で普及していた武骨なものと違い、帝国の最新式内診台はデザインが洗練されていたから、すぐに椅子の正体に気づけなかっただけだ。  ともあれ、そうと察したところで、バレエヒールと足枷はそのままに、首輪と革手錠を外された。  腕だけは自由を取り戻したが、それだけでは抵抗や逃走を試みることは不可能。  拘束を解かれた腕を女性兵士につかまれ、いまだ椅子状態の内診台の座面に座らされる。  それから肘かけに前腕部を載せられ、手首と肘に近い位置をベルトで縛られた。胸の膨らみの上下とお腹が、背もたれにベルトで固縛された。  さらに足枷を外されて、脚も内診台に縛りつけられる。  座面の途中から二分割になった、太ももを載せる部分。さらに、膝の裏が当たる部位。それぞれに脚を固定された。  そこで、女性兵士の手で、棒状の轡を留めていたベルトが外された。  噛まされていた轡が、何時間かぶりに口から抜き取られる。  だが、轡が口から離れた刹那、ガリーナ軍医が金属製の器具を口に押し込んだ。 「あッ……!?」  長く轡を嵌められていたせいで口をうまく動かせないあいだに、金属製の器具、開口器の側面に設えられたネジが巻かれる。  ガリーナ軍医の手がネジを巻くほどに、開口器の歯を捕らえる部分が開いていく。 「あ……あッ」  顎が外れるかと思うほど大きく口を開かされ、エリカが苦悶したところで、ガリーナ軍医がようやく手を止めた。 「これより、呼吸制御および摂食管理の準備処置を行ないます」  呼吸と摂食の管理とは、具体的になんなのか。  その説明もないまま、控えていた看護師役の女性兵士が、2種類のゴムチューブを用意した。  赤くて細いものが2本。太さが倍以上あり、色が青いものが1本。合計3本のゴムチューブにジェル状の液体が塗り込められる。 「これは、潤滑剤を兼ねた麻酔剤です」  そして、看護師からジェルまみれのチューブを受け取った直後、ガリーナ軍医がエリカの鼻孔にチューブを押し込んだ。 「あ……ッ!?」  驚きから思わず悲鳴じみた声をあげてしまったが、潤滑剤と麻酔剤を兼ねたジェルのおかげか、痛いわけではなかった。  長いチューブが、ヌルヌルと鼻孔に押し込まれる。  まずは右。続いて左。 「左右の鼻用チューブ先端が、喉に到達」  そう言うと、開口を強制された口に、ガリーナ軍医が医療用の鉗子《かんし》を差し込んだ。 「チューブ先端を、気道に挿入」  そして2本のチューブの先端を鉗子で挟み、気道への導き、その奥深くへと押し込む。 「挿入部の長さからして、チューブ先端が声帯を超えたと判断します」  それで鼻の赤いチューブの挿入は終わり、ガリーナ軍医が青く太いチューブを手に取った。  青いチューブが、口から食道へとあっけなく挿入される。  それからガリーナ医師に、粘土に似た軟かそうな物体が手渡された。 「生体用パテです。これで、気道および食道とチューブとの隙間を塞ぎ、密閉します」  ガリーナ軍医にとっては、手慣れた作業なのか。それとも、医師の資格を持つ者にとっては、造作もないことなのか。  2本の鉗子を駆使して、ガリーナ軍医が生体用パテで隙間を塞ぐ。  ときおりパテと鉗子が喉奥に触れるが、チューブのまぶされたジェルが付着していたおかげで、えずいて苦しいことはなかった。  そして――。 「なにか喋ってみてください」  開口器を外され、代わりに歯にマウスピースを被されて、ガリーナ軍医に言われた。 「シュー(なにかって)、シュー(なにを)……ッ!?」  喋ればいいのかと訊き返そうとして、言葉は声にならなかった。 「シュ(えっ)、シュー(どうして)……?」  声どころか、細いチューブを呼気が通過する音しか聞こえなかった。  そこで、先ほどのガリーナ軍医の言葉を思い出した。 『チューブ先端が声帯を超えたと判断します』  そして。 『生体用パテです。これで、気道および食道とチューブとの隙間を塞ぎ、密閉します』  つまり、先端が声帯を超えるまでチューブを深く挿入されたうえで、生体パテで密閉されてしまったため、声帯を震わせて喋ることができないのだ。  そうと悟り、衝撃を受けるなか、ガリーナ軍医が濃い青灰色のマスクを手に取った。  マスクの内側に設えられたゴム製の突起に、口の青いチューブが接続される。鼻に近い位置のノズルに、2本の赤く細いチューブが接続される。  そしてそのまま、ゴム製の突起が口中に押し込まれた。 「シュー(ああぅ)……」  呼気の通過音でうめいた直後、マスクの縁が頬に密着した。  そのまま頭の後ろで、2本のベルトが締め込まれる。 「呼吸制御および摂食管理の準備処置が完了しました。続いて大小の排泄および、性感管理の準備処置に移行します」  それから不穏な言葉を口にして、ガリーナ軍医が内診台を操作した。  共和国ではほとんど普及していない、電動式の内診台がゆっくりと持ち上げられる。  持ち上げられながら、後ろに倒れつつ、脚が開かされる。  卓越した身体能力を持つエリカといえど機械の力には逆らえず、意思に反して大開脚を強いられる。 「シュー(やめなさい)ッ!」  思わずあげた声は、やはり呼気がチューブを通過する音にしかならず、エリカは女として絶対に隠しておきたい股間を晒すことを強いられた。  M字に開かされたエリカの脚のあいだに、ガリーナ軍医が椅子を置いて座る。  すると、看護師役の女性兵士が、ガリーナ軍医に呼吸と摂食の管理用チューブの中間くらいの太さの、青いゴムチューブを手渡した。  ただし、2本のチューブに比べると、ずいぶん短い。加えて先端と後端、両方に金属製のノズルが取りつけられている。 「尿道用の排泄管理器具です」 「シュ(えっ)、シュー(これを)……」  尿道に挿入しようというのか。  だが、言われて愕然とするエリカの想像を超えて、器具は残酷なものだった。 「チューブの部分はゴム製に見えますが、本体の金属製フレキシブルチューブを、ゴムで覆っている構造です。先端のノズルが膀胱に達するまで器具を挿入。膀胱内でバルーンを膨らませて抜けなくしたうえで、チューブのゴムも膨張させて尿道内に密着させ、いっさい漏れなくします」  あまりのことに言葉を失うエリカに見せつけるように、潤滑剤と麻酔剤を兼ねたジェルが、器具に塗り込められる。  ヌルヌルになった器具が、尿道口にあてがわれる。 「シュー(やめて)ッ!」  声をあげたときには、器具の先端が小さい穴に侵入していた。 「シュ(あ)シュ(あ)シュ(あ)……」  本来は液体が一方通行するだけの管に、異物が逆進してくる強烈な違和感。  とはいえ、女性の尿道はそれほど長くない。  先端が膀胱内に達して挿入が止まると、器具にハンドポンプが接続され、膀胱内のパルーンが膨らまされる。  それが終わると、本体の金属製フレキシブルチューブとそれを覆うゴムのあいだにも、空気が注入されて膨張させられる。 「シュ(あ)シュ(あ)シュ(あ)……」  猛烈な違和感と圧迫感に、呼気の通過音でうめく。  ただ密着させられているだけではなく、尿道全体を拡張されているようだ。  まるで、そこを異物で凌辱されているかのように。  やがて膨張が止まり、ハンドポンプの接続が解除される。 「シュ(はっ)、シュ(くっ)……」  それでも消えない違和感と圧迫感に苦悶していると、ガリーナ軍医が次なる残酷な器具を手にした。 「肛門用排泄管理器具です」  言われて見せられたそれは、とうてい人の肛門に挿入固定できるとは思えないほど、巨大かつ凶悪な代物だった。  長さは、ガリーナ軍医の手のひらの幅の倍くらいか。太さは、彼女の手首より太い。  本体はひとことで言うと、蓋つきの金属製の筒。それに、3分割のゴムが巻きつけられている。 「このゴムパーツは、尿道用器具のゴム部分と同じ構造。挿入後、前後のゴムバルーンに空気を送り込んで膨らませ、括約筋を挟み込んで固定します。それから中央部のバルーンを膨張させて隙間をなくし、肛門を完全密封します」  つまり装着後は、今よりずっと太くなるということだ。 「シュシュー(こんなの)……」  絶対に入らない。もし無理やり挿入固定されたら、肛門は壊れてしまう。  エリカはそう直感したが、ガリーナ軍医の考えは違っていた。 「人の肛門が通常、小さな窄まりになっているのは、括約筋が締まっているからです。この筋肉を一時的に弛緩させれば、握り拳を楽に挿入できるほど、肛門は拡張するのです」  ほんとうに、そうなのだろうか。  医学の専門家ではないエリカにはわからない。  それ以前に、巨大かつ凶悪な異物を挿入されること自体、許していいことではない。  とはいえ、内診台に身体を縫いつけられ、抵抗は不可能。  拒絶しようにも、声は呼気がチューブを通過する音にしかならない。  いや、仮にきっぱりと拒否したところで、ガリーナ軍医を施術をやめないだろう。  そう考え、無力感と絶望感に苛まれるエリカの肛門に、潤滑剤と麻酔剤を兼ねたジェルが塗り込められる。  窄まりの襞に直交し、中心部の周りに円を描くように。  はじめ、気持ち悪いだけだった。  やがて、排泄器官の出口に触れられる嫌悪感の中に、少しずつむず痒いような感触が生まれ始めた。  それは、ごく初期のお尻の悦びだった。これが強く大きくなると肛門性感になる、はじめの一歩のような感覚だった。  それは、エリカが格別淫らだったり、変態性欲を持っているからではない。  人体の仕組みとして肛門には少なからず性感帯が存在する。それが刺激されて、エリカは初期的なお尻の悦びを覚えているのだ。  とはいえ、エリカはそのことを知らない。  知っていても教えないガリーナ軍医の目的は、囚われの戦乙女を肛門で昂ぶらせることではない。  ジェルに含まれる麻酔剤が肛門周りに吸収された頃を見はからい、ガリーナ軍医の指が肛門から離れた。  嵌めていた医療用の薄いゴム手袋を交換し、看護師役の兵士が用意していた注射器を手に取る。 「弛緩剤です。これを肛門周辺に注射します」  そうだ。思い出した。  ガリーナ軍医の言葉によると、括約筋を弛緩させれば、人の肛門は握り拳を楽に挿入できるほど拡張できる。 「シュー(いや)ッ!」  声、いや呼気の通過音をあげた刹那、肛門周りにプツリと注射針が刺さった。  麻酔剤が効いて痛くはない。だがそのぶん、薬液で括約筋を弛緩させられる恐怖が募る。  それから、巨大で凶悪な器具に、件のジェルが塗り込められる。  作業にゆっくりと時間をかけるのは、エリカに見せつけると同時に、弛緩剤が効いてくるのを待っているのだ。  そして、その時間は、けっして長いものではなかった。  肛門用排泄管理器具が、お尻にあてがわれる。 「シュ(あッ)!?」  思わず声をあげたときには、巨大で凶悪な器具が肛門をこじ開けていた。 「シュー(そんな)……」  あまりにあっけない挿入に愕然とさせられながら、器具が押し込まれる。  ハンドポンプが接続され、空気が送り込まれる。  尿道用のときよりポンプが握り込まれる回数が多いのは、器具が巨大だからか。それとも、ゴム製のバルーンがより大きく膨らまされているからか。  おそらくその両方で、大量の空気が一番奥のバルーンに注入され、器具を抜けなくされた。  続いて手前のバルーンを膨張させられて、巨大な器具が固定された。  そして、最後に中央部。  ガリーナ軍医の手がポンプを握るたび、バルーンに空気が送り込まれる。  送り込まれるほどにバルーンが膨らみ、肛門が拡張されていく。  拡張されながら、お尻の穴が密封されていく。 「シュー……」  弛緩剤のせいで、痛くはない。 「シュー……」  しかし、圧迫感はものすごい。 「シュー、シュー……」  それでも膨張し続ける器具は、どんどん太くなる。 「シュ、シュ、シュ……」  ますます強くなる圧迫感に、次第に呼吸が速くなる。  鼻腔に挿入されたチューブの内径の範囲内でしか、空気を取り込めないからだ。  あるいはもしかしたら、チューブが接続されるマスクのノズルは、もっと細いのかもしれない。  呼吸制御。  鼻にチューブを挿入される際、ガリーナ軍医はそう口にした。  まさにそのとおりだ。エリカの呼吸は今、処置により制御されている。  そして、呼吸制御以外の処置も、言葉どおりの実態をともなっているのだろう。  口の摂食管理も、尿道の排泄管理も、今まさに行われている肛門用排泄管理器具の取りつけも。  エリカがそうと思い知らされたところで、ポンプを押し込むガリーナ軍医の手が止まった。  だが、これで終わりではない。股間への処置が始まる前、ガリーナ軍医は言った。 『続いて大小の排泄および、性感管理の準備処置に移行します』  排泄管理の器具は取りつけられたが、性感管理の処置はまだ受けていないと思い出し、嫌な予感に囚われたエリカの前に、そのための器具が用意された。

小説 厳重拘束管理刑の戦乙女 前編

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