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小説 厳重拘束管理刑の戦乙女 後編

「性感管理は、尿道および肛門の排泄管理器具と組み合わせ、のちに装着される拘束衣の股間パーツにもなる、この器具で行なわれます」  言いながらゴム手袋を交換し、ガリーナ軍医が見せたのは、真横から見るとC形にカーブを描く金属板の中央部内側に、黒いゴム製の棒が設えられたものだった。  その棒のすぐ上には、小指が通るほどの小さな穴。下のほうには、手首より少し大きいくらいの穴。  位置からして、ふたつの穴は大小の排泄管理器具のノズルと蓋を嵌め込むためのものだろう。  すなわち、その中間にあるゴム棒が入り込む場所は――。 「膣に挿入し、管理者の判断により適宜、あるいはあらかじめ設定したタイミングで起動させ、被装着者の性感を管理するのです」  ガリーナ軍医はこともなげに告げたが、エリカにとっては一大事である。  戦乙女と呼ばれる彼女は、いまだほんとうに処女《おとめ》なのだから。  とはいえそれは、ガリーナ軍医には関係ないこと。医師である前に軍人である彼女は、軍規に反しないかぎり、上官の命令には絶対服従だ。  麻酔剤と潤滑剤を兼ねたジェルが、黒いゴム棒に塗り込められる。  ぬらぬらと黒光りし始めたそれが、何者の侵入も許したことのない場所にあてがわれる。  しかし、すぐに挿入されることはなかった。  サイズを教え込むように、ゴム棒の丸い先端がエリカの入り口を擦る。  ゴム棒を黒光りさせていたジェルが、そこの粘膜にも塗り込められる。  そうして、ジェルに含まれる麻酔剤が粘膜から吸収され、硬かったエリカの入り口がいくぶんほぐれたところで、ガリーナ軍医が土台の金属板ごとゴム棒を押し込んだ。 「シュー(ひい)ッ!?」  呼気の通過音で静かに悲鳴をあげても、ガリーナ軍医の手は止まらない。  メリメリメリ……。  そんな音が聞こえてきそうなほどきつい肉をかき分け、ゴム棒が侵入してくる。 「麻酔剤が効いているとは思いますが……力を抜いたほうがいいですよ」  言われても、はいそうですかとできるものではない。  麻酔剤で痛くはないが、狭いそこに初めて異物を挿入される圧迫感は相当なもの。 「シュ(ひ)、シュ(あ)、シュ(あ)……」  目を剥いて苦悶していると、ユリエがガリーナ軍医の手元を覗き込んだ。 「あら、出血がないわね。初心《うぶ》そうな顔をして、処女ではなかったのかしら?」 「中佐どの、出血の有無は、必ずしも処女か否かの指標にはなりません。手応えからは挿入経験は少ないかと思われますが、処女非処女は判断しかねます」 「そう。じゃあ、処女ではなかったということにしておきましょう」  ユリエとガリーナ軍医が言い合ったところで、カチリと金属が噛み合う音。  尿道と肛門に挿入固定されたふたつの排泄管理器具が金属板の穴に嵌り込み、ゴム棒の挿入が止まった。 「これにて、厳重拘束管理刑の準備処置は終了しました。ですが……」  異物による強制処女喪失のショックを受ける暇《いとま》すら与えられず、ガリーナ軍医が言いながら椅子から立ち上がった。 「ユリエ・ゾラ中佐どのの要請により、もうひとつ装具を取りつけます」  そして、再び医療用ゴム手袋を交換する。  そのあいだに、看護師役の兵士が内診台を操作。脚を閉じさせながら背もたれを起こし、椅子状態に戻す。  それから、ゴム手袋の交換を終えたガリーナ軍医が、あらためて告げた。 「乳首へのピアス取りつけの施術を行ないます」 「シュ(えっ)……」  今、乳首へピアスと言ったのか。  ピアスといえば耳たぶに着けるものしか知らないエリカには、乳首とピアスというふたつのワードが、頭の中ですぐにはつながらない。 「もしかして、乳首にピアスを着ける意味、わからない?」  そこで、ユリエが薄く嗤って口を開いた。 「乳首にピアスを着けているのは、悪い男に捕まって支配されているだらしない女か、自ら望んで着けた、まともな性生活を捨てた変態女……」  そうとは限らない。実際は、自らの美意識から着けている女性もいる。  だが、そのことをエリカは知らない。  そもそも、乳首がピアスを着ける場所だと、今の今まで考えたことがなかった。  そのせいで、性的な経験がなく知識も乏しい戦乙女は、ユリエの言葉を信じさせられてしまう。 「ねえ、エリカ。崇《あが》めていた戦乙女が処女でなかったうえに、乳首にピアスを着けているような変態女だったと知ったら、抵抗勢力の連中はどう思うかしらね?」  そうなると、一部は幻滅するだろう。そのせいで、抵抗運動から離れる者がいるかもしれない。 「そのうえ、呼吸を制御され、摂食や排泄を管理され、性感管理で肉体を昂ぶらされながら、厳重拘束管理刑に処される憐れでみじめな姿を共和国全土に晒せば……」  ユリエと帝国の思惑どおり、抵抗運動の弱体化は避けられない。  そうと思い知らされても、最悪の事態を避ける術《すべ》は、エリカにはない。  ユリエの指示のもと行なわれる、残酷な処置を甘んじて受けるしかない。  まず、乳首を消毒された。 「シュ(ひっ)……」  冷たさに呼気の通過音でうめくと、続いて麻酔剤入りのジェルを両の乳首と乳輪に塗り込められた。  麻酔成分が吸収されるのを待って、看護師役の兵士が、ピアス装着の道具を用意した。  鋭いニードルと、四角いゴム。さらに、バーベル形のピアスがふたつずつ。  それらを見てエリカが息を呑むと、ガリーナ軍医が右の乳首の片側に、四角いゴムを押し当てた。  そして、件のジェルに浸したニードルを、ゴムと反対側に近づける。  身構えるエリカとは裏腹、ガリーナ軍医には緊張もためらいもなかった。  プツリ。  乳首の皮膚に、ニードルの先端が食い入る。  ジェルに含まれる麻酔剤のおかげで強い痛みはないが、乳首にニードルが刺さっていく光景は衝撃的なものだった。  乳首の肉の中をニードルが進んでいく感触は、例えようもないほど、おぞましいものだった。 「シュー(ひいッ)!?」  それで、悲鳴じみた呼気を漏らした直後、ニードルが乳首を貫通した。  そこでガリーナ軍医が、ニードルのお尻部分に、両端の球をひとつ外したピアスを押し当てた。  貫通するニードルとともに、ピアスも押し込まれる。  やがてニードルが反対側に抜け、ピアスが顔を出した。  そこで外されていた片方の球を手早く装着されると、エリカの右乳首には、鈍い光沢を放つ黒い金属のバーベル形ピアスが取りつけられていた。 「シュー(ああ)……」  その残酷な光景にエリカが力なく呼気を漏らすと、ガリーナ軍医が左の乳首にも四角いゴムを押し当て、ニードルを構えた。  プツリ。  乳首に、ニードルが刺さる。  おぞましい感触とともに、ニードルが乳首を貫通。一連の流れで、バーベル形ピアスが取りつけられた。  ガリーナ軍医の手技が卓越していたからか、ほとんど出血はない。  麻酔剤が効いていて痛みがないことも相まって、自分はもともと乳首を着けていたのではないかと思えてしまう。  そこで、道具の片づけに取りかかったガリーナ軍医と入れ替わり、ユリエがエリカの前に立ち、瞳を妖しく輝かせて告げた。 「これで、準備処置はすべて終わったわ。いよいよ、ルホミラの戦乙女が、死刑より残酷な厳重拘束管理刑に処されるのよ」 『性感管理は、尿道および肛門の排泄管理器具と組み合わせ、のちに着付ける拘束衣の股間パーツにもなる、この器具で行なわれます』  内側にゴム棒が取りつけられる前に告げられた、ガリーナ軍医の言葉。  その言葉のとおりに、内診台から解放されるとすぐ、股間ベルトを金属板に接続されて、乳首ピアスつきの胸を露出する、ぶ厚い革製の拘束衣を着せられた。  そして、このたびは足枷と首輪は嵌められず、再び廊下を連行される。  とはいえ、バレエヒールのブーツは履かされたまま。  そのうえ今は、厳重拘束管理刑の準備処置として、呼吸を制御され、摂食と排泄、性感を管理する器具を取りつけられている。  それらの処置が、鎖つきの足枷以上に、エリカの歩行を困難にしていた。 「シュ、シュ、シュ……」  鼻孔から気道に達する呼吸用チューブとマスクのノズルの内径は、エリカの鼻腔より細く、取り込める空気は少ない。  それは、じっとしていてギリギリの量で、歩かされるだけで息苦しさを覚えてしまう 「シュ、シュ、シュ……」  加えて、口中に押し込められた突起とマスクを貫通する口の摂食用チューブは、食道に挿入されていて、口呼吸はできない。  さらに、エリカの処女を奪い、今も膣内に挿入固定されている、黒いゴムの棒だ。  麻酔剤と潤滑剤を兼ねたジェルのおかげで破瓜の痛みはなかったが、その効果は永遠ではない。ここにきて麻酔の効果が切れ始め、エリカはそこに鈍い疼痛を覚えていた。  そして、麻酔の効果が切れようとしているのは、ピアスを嵌められた乳首も同じ。ガリーナ軍医の卓越した手技のおかげで出血は最小限で済んだが、やはり緩い痛みはある。  そのうえ麻酔剤のみならず、肛門用排泄管理器具装着に際して使用された弛緩剤も、効果切れの時間を迎えていた。  エリカ本人の意思にかかわらず、お尻に挿入固定された凶悪な器具を、本来の力を取り戻した括約筋が食い締める。  膣や乳首と違い、どこか傷ついているわけではないので痛くはないが、その圧迫感は強烈だ。  肛門ほどではないが、尿道用の排泄管理器具の違和感も、ずっと存在している。  それらの苦痛すべてが、いっそう呼吸を苦しくさせる。 「シュ、シュ、シュ……」  痛い、つらい、きつい。 「シュ、シュ、シュ……」  苦しい、苦しい、苦しい。  それでも、廊下を連行される。  言葉はもちろん声すら出せず、苦痛を訴えることはできない。  身体に力を込めると、もっと苦しくなるとわかっているから、抗おうとも思えない。 「シュ、シュ、シュ……」  苦しい、苦しい、苦しすぎる。 「シュ、シュ、シュ……」  呼吸の苦しさがもたらす根源的な恐怖が、戦乙女の高潔な精神を折ろうとする。 「シュ、シュ、シュ……」  もうダメだ。限界だ。  エリカが肉体的にも精神的にも追い詰められようとしたとき、ついに厳重拘束管理刑の刑場にたどり着いた。  長い長い廊下の突き当たりにあったそこは、死刑より残酷とされる刑罰が執行される場所としては、あまりにも小規模だった。  コンクリート製の壁のほぼ中央に、鋼鉄の枠で囲まれた、人ひとりがギリギリ入れる程度の窪み。  その前に、頭の高さ程度の位置に丸い棒が取りつけられた柱のある、金属製の台。  拘束衣に囚われた腕を警護の兵士に取られ、その台の柱の前にある大小の穴に、バレエヒールのつま先と踵を収めるように立たされる。  まず右足。続いて左足。  それで足を固定されてから、拘束衣の肩ベルトを柱に取りつけられた横棒に、短いベルトで接続された。  それだけで台の上から降りられなくされて、無数のベルトで柱に身体を縛りつけられる。  上半身は額、首、お腹。下半身は太ももで2箇所、すねでも2箇所、さらに足首。  息苦しさで抵抗を試みることすらできず、身体を厳重に拘束されたところで、ユリエがエリカの前に立った。 「うふふ……いよいよ、厳重拘束管理刑の執行よ」  憎き裏切り者が薄く嗤って告げたところで、柱から伸びていたチューブとホースを、女性兵士が各種器具に接続していく。  カチリ、カチリ。  赤くて細い2本のチューブが、マスクの呼吸用ノズルに接続された。  カチリ。  2倍ほどの太さの青いチューブが、摂食用のノズルにつながれた。  それから、下半身の器具。  カチリ。  膝のあたりから引き出された青いチューブが、尿道用排泄管理器具のノズルに接続される。  カチリ。  お尻の下に手を差し込まれ、肛門用排泄管理器具にチューブ――目で見ることはできないが、用途からしてホースと呼ぶべき太さなのかもしれない――が、つながれる。 「すべての制御と管理の装置を、アクティブに設定しなさい」  チューブとホースの接続を、どこか高揚したようすで見ていたユリエが命じると、女性兵士が柱の裏に設えられていたスイッチを押した。 「それでは、厳重拘束管理刑を執行します」  ユリエがあらたまって宣告した直後、警護の女性兵士の手で、柱つきの台ごと壁の窪みの中に押し込まれた。  それから、引き戸式の鉄格子が締められる。  ガチャン。  金具が噛み合い、狭い窪みの中に閉じ込められたエリカに、ユリエがいじわるく言葉をかけた。 「憐れでみじめね、エリカ・ロダ」  今の姿を揶揄されてユリエを睨みつけるが、憎き裏切り者の女はまったく動じず、言葉を続けた。 「その強がり、いつまで保つかしら? 1日、3日、それとも10日……いずれにせよ、憐れでみじめなおまえが、もっとぶざまな状態になった頃、その姿を撮影して旧共和国領全土に中継してあげるから、楽しみにしていてね」  その直後、鉄格子の前に金属製の扉を閉められて、エリカは暗闇の中に放置された。 「シュ、シュ、シュ……」  鉄格子と金属製の扉を閉められ、身動きできない状態で暗闇に閉じ込められて、チューブとノズルごしの呼吸を繰り返す。 「シュ、シュ、シュ……」  おそらく数時間が経過し、次第に破瓜と乳首ピアス装着の痛みが和らいできた頃、ほぼ空っぽだった胃が、少しずつ満たされていく感覚を覚えた。 (これは……)  摂食管理のチューブから、胃に直接なにかが流し込まれているのだ。  とはいえ、舌は口中に押し込まれたゴム塊にしか触れておらず、味はまったく感じない。口や食道を、食べ物飲み物が通過している実感もない。流し込まれているのが、水分補給用の液体なのか、栄養補給のための流動食なのかもわからない。  そんな満足感のない食事、いや食餌が終わると、続いて7割がた溜まっていた膀胱が軽くなっていく感覚。 (たぶん……)  尿道用の排泄管理器具を介して、小水の排泄が行なわれている。  摂食管理のときの食道と同じく、尿道を液体が通過している実感はない。おしっこ排泄時の、ある種の爽快感はまったく覚えない。  それからは、また暗闇のなかで、動けない身体を放置された。  摂食管理のあと、破瓜のピアスの痛みはほぼ消え、肛門と尿道の排泄管理器具がもたらす圧迫感と違和感も、気にならないほどになった。 (たぶん……)  胃に流し込まれた水分か流動食に、痛み止めの薬が混ぜられていたのだろう。  実ところ、混入されていたのは痛み止めだけではないのだが、そのことにエリカは気づけない。  ともあれ、苦痛が消えていくとともに、ゴム棒を挿入固定された膣に、妖しい感覚が生まれ始めた。 (こ、この感覚は……)  性の快感なのだろう。  ゴム棒を挿入固定されるまで性体験がなく、また知識にも乏しいエリカだが、そこが女の快楽の源泉であることくらいは知っている。  ゴム棒が動かないため一定以上は大きくならないが、そこに生まれる不快ではない妖しい感覚は、きっと快感なのだろうとは推察できる。 (でも、どうして……)  こんな悲惨な状況で、性の快感を得てしまうのか。  痛み止めのほかに混入されていたのが、遅効性で緩やかに効くタイプの媚薬だったという事実を知らないエリカは理解できない。  そして囚われの戦乙女の些細な疑問を覆い隠すように、知らず知らずのうちに媚薬に冒された肉体は、少しずつ快楽に昂ぶらされていく。  喘ぎ声や甘い吐息を漏らしてしまうほどではないにせよ、確実に性的に高められてしまう。  性体験がないため、快楽への耐性がなかったエリカは、緩やかに染み入るような快感に蕩けさせられる。  そんな状態がしばし続いた頃、ついに肛門の排泄管理が起動した。  まず感じたのは、挿入固定された巨大な器具のかすかな振動。  直後、お尻の中に、人肌程度に温められた液体が流れ込んできた。 「ッ……!?」  驚き、何時間かぶりにあげた声は、呼吸がチューブを通過する音にもならなかった。  それは呼吸を制御する装置にマスクのノズルを接続されたからだと気づくあいだも、液体の注入は続いた。  ここにきて、エリカはようやく気づく。 (こ、これは……)  浣腸だ。  大きいほうの排泄を促す薬液が、お尻からお腹に注入されているのだ。  そうと気づいたところで、エリカ自身にはどうすることもできない。  ただ甘んじて、注入される薬液をお腹の中に受け入れるしかない。  次第に、お腹が苦しくなってきた。  しかし、薬液の注入は止まらない。  まだ浣腸液が流し込まれている途中から、薬剤が効能を発揮して、腸のぜん動が始まった。  それがさらなる苦痛をもたらすが、それでも注入は終わらない。  苦しい、苦しい。 「……ッ、……ッ」  いっさいの光がない真の暗闇のなかで、エリカの苦悶は音にすらならない。  そして、ようやく注入が終わっても、排泄は許されなかった。 「……ッ、……ッ、……ッ」  苦しすぎる。きつすぎる。つらすぎる。  これ以上はもう、耐えられそうにない。  そう思えるほどの苦痛が、しばし続いたときである。  不意に、お腹の苦痛が和らぎ始めた。  ついに出すことが許されたのだと気づき、安堵すると同時に、大きいほうの排泄にも実感がないことに愕然とする。  そして、お腹の苦痛が完全に去ったとき、新たな事態がエリカを襲った。  はじめ、つらい浣腸と続く強制排泄で冷めてしまった性感が、苦痛が去ったことで再び高まりだしたのだと思った。  だがすぐに、膣内に挿入固定されたゴム棒が緩く振動していることに気づき、ゾッとした。  性感管理。  呼吸制御、摂食管理、小水の排泄管理、大きいほうの排泄管理に続いて、最後の管理が始まったのだ。  まるで、つらく苦しい大の排泄管理に耐えたご褒美であるかのように。  そう、快楽の味を覚えてしまったエリカは、与えられる快感を本能的に『ご褒美』と捉えてしまう状態に陥っていた。 「……ッ、……ッ」  音にすらならない吐息を漏らし、急速に昂ぶらされる。 「……ッ、……ッ」  経験がなかったゆえ快楽耐性のない肉体を、一気に高められる。 「……ッ、……ッ、……ッ」  もしエリカが声を出せていたら、自分が艶めく声をあげていると気づけただろう。 「……ッ、……ッ、……ッ」  もし耐性のない身を快感に酔わされ蕩けさせられていなければ、昂ぶらされ高められるせいで、呼吸制御のチューブから取り込める空気が足りていないとわかっただろう。  しかし、そうではなかった。  自分が嬌声をあげていることに気づけず、酸素不足に陥りつつあることもわからず、エリカは押し上げられる。 「……ッ、……ッ、……ッ」  ますます酔わされる。  どんどん蕩けさせられる。  押し寄せる快感の奔流に飲み込まれ、翻弄される。  そこで、なにかが来た。  いや、エリカがたどり着いたと言うべきか。  絶頂。俗にイクと呼ばれる状態。 「……ッ、……ッ、……ッッッ!?」  音にならない嬌声をあげ、きつく厳しく拘束された身を震わせて、悦びの境地に到達した直後――。  エリカの中で震えていたゴム棒が、その動きを止めた。  厳重拘束管理刑に処されて、もう何日経ったのだろう。  はじめ、大きいほうの排泄管理の回数で日にちを数えていたが、そもそもエリカが受けた判決は無期限の厳重拘束管理刑。日にちを数えるのは意味がない。  さらに、大の排泄管理が1日1回とはかぎらないと気づいてから、数えるのをやめた。  いや正確には、数えることができなくなったと言うべきだろう。  苦しい浣腸と強制排泄のあと、ご褒美として与えられる性感管理で到達する絶頂の悦びは、回数を増すごとに大きくなった。  それとともに、エリカは圧倒的な快楽と深い恍惚の虜になっていった。  加えて、振動が止まってからも、ゴム棒が膣内にあり続けていることである。  それは絶えず、緩い快感をもたらす。  もたらして、エリカから思考能力を奪う。  とはいえ、大いなる悦びを知ってしまったエリカの肉体は、動かないゴム棒の緩い快感では、とうてい満足しない。  そのため、衰えた思考能力で考えられるのは、次の性感管理のことだけになってしまう。  かつて戦乙女だった娘は、四六時中快楽のことが頭から離れない、淫らな変態女になり果てた。 『憐れでみじめなおまえが、もっとぶざまな状態になった頃、その姿を撮影して旧共和国領全土に中継してあげるから、楽しみにしていてね』  厳重拘束管理刑に処される際のユリエの言葉が、現実になるときが近づいた。  だがもはや、エリカは快楽の虜だ。  憐れでみじめでぶざまな淫乱変態女に変えられることが、どんな結果をもたらすのか。  そのことに思いを馳せることすらできず、エリカは次の性感管理を、ひいては大の排泄管理を、ただただ待ち侘びるのだった。 (了)

小説 厳重拘束管理刑の戦乙女 後編

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