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あいつとシェアハウス 短編73

■ある日の二人 ~善人と大智~


 朝七時。ゴミ捨てのために一度起きる。いつも日付が変わった辺りで「寝ないとなー」とか思ってるのに、なんで毎回午前三時とかになってしまうのか。マジで明石善人七不思議のひとつだと思う。


 扉の開閉は、気持ち静かに。まぁ、ドタバタしたところであの寝坊助が起きてくるわけもないが...

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【ご報告】新春けもケット11に参加しました。

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あいつとシェアハウス 短編67

■あいつと文化祭 × 一路青年の洗心


 喧騒が遠い。それは遥か遠い雷鳴のような、ともすれば忘れてしまう耳鳴りのような。文化祭というのは本当に騒々しい。昔から騒がしいのは苦手だった。そういった現を抜かすものに陥ることを俺は、必要以上に忌避し、何より懸念していた。


「…………」


 だがそれが今は...

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あいつとシェアハウス 短編65

■祭りの前


「……田折」


 バイト終わり。従業員室で帰り支度をしていると、突然先輩が話しかけてくる。今日の先輩はどこか不調なのか、それとも機嫌でも悪いのか、何となく近寄りがたいオーラを放っていたから、急に声を掛けられたことに俺は驚いた。


「なんすか、せんぱ……」


 振り返って見た顔...

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あいつとシェアハウス 短編62

■一路青年の葛藤


「それで、どうするつもりなんだ」


 夏季休暇が明けて早々、部活の顧問に呼ばれた俺は、そう言われ答えに窮した。剣道場の手前にある、古いソファの並んだ小規模のスペース。自動販売機の明かりが薄らと足元にちらついており、余計に俺は嘴を閉ざしてしまう。


「羽柴、お前も卒業が近いだろ。...

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あいつとシェアハウス 短編59

■あいつとグランピング 終演


「へえ、ちゃんと楽しんできたワケね、梓馬くん抜きで」


 電話越しに聞く声は、数日程度しか空いていないっていうのに、随分久しぶりな響きで鼓膜を揺らしていた。変わらない軽口に、俺は呆れ笑いで返す。


「ああ、ちゃんと楽しかったわ、お前抜きでも」


「あ、ひっで...

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あいつとシェアハウス 短編58

■あいつとグランピング 帰路


「あーあ、マジであっという間だったな」


 後部座席で大智がデカい声で言う。今朝方グランピング会場を後にした俺たちは、睦樹の運転する車の中であれやこれやと取り留めのない会話に勤しんでいた。


「だよなー。色々あったはずなのに、ガチ一瞬だった」


「濃厚も濃厚...

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あいつとシェアハウス 短編57

■あいつとグランピング 暗晦


 数時間前の熱気が嘘のように、草原には静けさが漂っていた。どこかぼうっとした空気が辺りを支配する中、俺は約束通りテントを出る。すぐ外で待っていたらしき豹は、俺が出てきたのを見るなり満足そうに笑んだ。


「寝てるよな、皆」


「ああ、こっちは二人ともよく寝てる。そっち...

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あいつとシェアハウス 短編56

■あいつとグランピング 火炎


 ずっと思案していた。幸せとは何かと。


 ずっと思考していた。己とは何かと。


 眼前の火炎は、龍のごとき煙を立ち昇らせ、煌々と燃え上がっている。キャンプファイヤーと言うらしい。酔狂の文化に疎い上に横文字は苦手だったが、田折が眼を輝かせながら語っていたのを何度も聞...

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あいつとシェアハウス 短編55

■あいつとグランピング 恒星


 将来。ベッドに寝そべりながら、ふと口にしてみる。その言葉は、静けさに包まれたテント内にふっと浮かんで、どこか朧気なまま少し冷えた空気の中に霧散していった。それを何回も反芻する……けど、何度繰り返しても曖昧さは拭えなかった。


 睦樹も悟も別のテントに行ってしまったため、夕...

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あいつとシェアハウス 短編54

■あいつとグランピング 遠景


「やー、疲れたね」


 持参のタオルで汗を拭いながら、舌を出してベンチに凭れる猿に話しかける。第三チェックポイントは、山の中腹辺りにある小休止スペースのような場所だった。土産屋や食堂なんかもあって、ここまでの道すがらより遥かに雑踏が多かった。


「なんじゃ、こら、こ...

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あいつとシェアハウス 短編53

■あいつとグランピング 道中


「ふぅ……」


 木陰のベンチに腰掛けながら、俺は静かに息をついた。太陽が高く昇るに連れ、激しさを増していく日差し。顔を伝う汗をシャツで拭うも、そのシャツが既に汗だくでむしろ顔が湿ってしまうぐらいだった。


 疲労の溜まった足を伸ばしがてらストレッチに勤しめば、近場...

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あいつとシェアハウス 短編52

■あいつとグランピング 群青


 新緑。木漏れ日。川のせせらぎ。まあまあな静寂に、まあまあな喧噪。普段は引き籠もり決め込んどるが、たまにこう自然に抛り出されれば、一面緑まみれなんも悪くないと思える。空気もまあウマい。色々とインスピレーションも湧きそうな、思索にええ光景や。


「次のチェックポイントどこだっ...

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あいつとシェアハウス 短編51

■あいつとグランピング 日向


「今日の午前中はなんとなんと、トレジャーハントォー」


「なんとも何も、行きの車で自分言うたやろが……」


 朝食後のテント前、朝からハイテンションに説明書を掲げよう泰利と、逆に低血圧じゃろかローテンションの水地。他の奴らも見るに、よう寝れた奴と寝とらん奴とではっき...

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あいつとシェアハウス 短編50

■あいつとグランピング 黎明


 朝が来る。夜明けが山の向こうから、じわじわとにじり寄ってくる。俺は軽く欠伸をしながら、用意しておいたインスタントコーヒーにお湯を注いだ。電気ポットまでついてるとは、グランピングにしてよかったとしみじみ思う。


 芳醇な香りが、草原の風に運ばれて散っていく。少し早く起き過ぎ...

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あいつとシェアハウス 短編49

■あいつとグランピング 短夜


 言っちまったなー……なんて。満点の星空を眺めながら一人、思う。


 いや、いずれはと言うか、いつかは言おうと思ってはいたんだけど。あんなすんなり言葉が出てきたことが我ながらビックリと言うか、なんと言うか。胸のつかえが消えたのを感じているのと同時に、軽率な自分の行動を少し悔...

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あいつとシェアハウス 短編48

■あいつとグランピング 夏影


 夜の露天は相応の静けさが支配していた。吹き降りる風、山の草木の香、雲間に覗く二日月。立ち昇る湯気に紛れ、俺は露天の端に坐して目を瞑る。他者の気配は然程感じられない。日頃の瞑想をするには、悪くない状況ではあった。


 この旅行に来てから、雑念が激しかった。楽しくないわけでは...

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あいつとシェアハウス 短編47

■あいつとグランピング 汗雫



「おい、ちょ、待って待って待って」


 反対側の足場で、泰利が騒ぎおる。そん隣のほうじゃ、待機しおるスタッフが苦笑いでその様子を見とった。縄っこを渡り伝うアスレチック。落下防止のハーネスもつけちょるし、大した高さでも距離でもあるまいに、泰利がごっつ嫌がるんは予想外じ...

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あいつとシェアハウス 短編46

■あいつとグランピング 山風


 幼い俺がいる。背丈的には多分、小学校低学年ぐらいの頃。俺は走っていた。背の高い草が膝を切るのも厭わず。石ころの多い道を履き潰したスニーカーで。それを俯瞰するように、背後からぼうっと今の俺が見ている。


 山道を駆ける。風を切って走る。新緑の中をただ征くのが心地よくて、夢中...

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あいつとシェアハウス 短編45

■あいつとグランピング 湖畔


「はー、食った食った」


 遊星は少し膨らんだ腹を擦り、既にシーツの撚れたベッドにどさりと腰を下ろす。その奥では、玲太――電撃参戦した狼の後輩――が食後のストレッチをしていた。ベッドの上で柔軟体操をするその姿は、ぶっちゃけ軟体動物めいていて見ていて面白い。


「なん...

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【けもケット13】新作短編試し読み2



 明くる日、大学へ向かった友太を待っていたのは、助教授からの叱責であった。なぜ大事な講義を欠席しているのか。他の者の気概まで削がれるではないか。不真面目な態度で臨まれては困る。その他あれやこれやと訳も分からないままに小言を投げつけられ、友太は謝罪も口にできず顔を蒼くして立ち尽くした。

 老獪の説教から解放...

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【けもケット13】新作短編試し読み


 生の残照




 電車には酒臭さが充満していた。飲み会帰りのサラリーマンの集団が、あちこちで上機嫌に仲間内に口上を垂れている。隅の座席では、酩酊した獣人が壁にもたれいびきをかいていた。別の車両は大学生の集団が織り成す中身のない会話で、俄かに騒々しくなっていく。

 この環境に、瀬上友太...

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あいつとシェアハウス 短編44

■あいつとグランピング 開幕


 なんでや、ほんま。なんでこないなことになった。いやまぁ、大体わいのせいではあるんやが。それにしたって、神様も人が悪うないか。悪戯好きにも限度っちゅうもんがあるわ。


「…………」


「…………」


「…………」


 風に穏やかに弛む豪勢なテントん中...

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あいつとシェアハウス 短編43

■あいつとグランピング 到着


 数時間に及ぶ長旅の疲労もそこそこに、俺たちは目的の地へと辿り着いた。キャンプ地を示す大きな看板。その脇の、小奇麗な木製のゲートを車のまま抜ければ、広々とした高原に出迎えられ俺たちは揃って感嘆の声を上げる。


 管理棟は場内手前にあり、受付などはそこで済ませるようだった。泰...

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あいつとシェアハウス 短編42


■あいつとグランピング 出立


「やっほー、見えるかな」


「えー、すごいすごい。ここが道の駅なんだ」


「そうだよー。僕も寄ったのは初めてなんだけどね」


 そう言って画面の向こうに手を振れば、向こうからも黄色い返事が返ってくる。海外から繋いでくれてる葵ちゃんと、別画面で機嫌良さ...

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あいつとシェアハウス 短編39


■一路青年の朱夏



 先輩もどうすか、と声を掛けられたのは、数日前のバイトの後だった。どうやら以前旅館に行ったときの面子で、今度はグランピングとやらに行く計画を立てている最中らしい。


 誰もいない大学の剣道場の中心で、俺は一人坐して息を吸う。開け放たれた窓から、眩い朝焼けの光が、歪に傷のつ...

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あいつとシェアハウス 短編31

■一路青年の当惑


 青嗣玲太という狼は、名前の涼やかさとは裏腹に、真夏に我が物顔で咲き誇る満面の太陽のような奴だった。部活動終了後の部室の中、青嗣を中心に盛り上がる部員らの輪を横目に、自分のロッカーを開けながら溜め息をつく。


 唐突に入部を希望したあの日から一ヶ月で、我が部の雰囲気はまさしく一変した。...

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あいつとシェアハウス 短編30


■夏の狼


 常夏のオーシャンビューは、雑誌なんかで見るよりよっぽど眩かった。サングラス片手に浜辺へ佇めばそれだけで格好がつくほどに、足元ではブルーが澄み渡っている。喧噪はなく、ただ潮騒に身を委ねれば、軽々しい心ごと沖まで運ばれていきそうな錯覚に陥ってしまう。


「アズマ」


 ふと俺を呼...

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さよならブルースター #2【日永のブログ】

 ハローCQ、こちら日永。原稿船修羅場号、絶賛燃料切れ中。

 ブログをご覧の皆さんお久しぶりの更新です。まさか前回から4ヶ月も間が空くとは誰が想像したでしょうか。別に忙しかったわけではないので、単なる怠惰の賜物なのですが。すみません、代わりにシェアハウスファンには楽しいテーマを持ってきたので許してください。え、シェアハウスファンじ...

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あいつとシェアハウス 短編29

■変わりゆくもの


「ホント、かーわいーい」


 ベビー布団の中、ふわふわとしたタオルに包まれお姫様のように眠る赤ん坊を見て、思わず溜め息を漏らした。横で洗濯物を畳んでいた垂れ耳の彼女が、「しー」と指を立てて言うので、少し微笑みながらベッドから顔を離す。


「あはは、すっかりお母さんだね」


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