【先行公開】実質異世界転生 ~二千年寝てたら世界が変わってました~ 10-9
「こんなに簡単で良いのか?」
「何か仰いましたか? 聖徒様」
非常に飾り気のない僧衣姿がすっかり見慣れてしまったヴァージニアに問われ、私はいや……と首を振った。
さて、兵站というと輸送の話であると思われがちだが、要は戦争に必要な物資を製造・備蓄・計画・運搬・使用・修繕――尚、これには兵士も含まれる―...
2025-06-13 11:31:10 +0000 UTC View Post
「こんなに簡単で良いのか?」
「何か仰いましたか? 聖徒様」
非常に飾り気のない僧衣姿がすっかり見慣れてしまったヴァージニアに問われ、私はいや……と首を振った。
さて、兵站というと輸送の話であると思われがちだが、要は戦争に必要な物資を製造・備蓄・計画・運搬・使用・修繕――尚、これには兵士も含まれる―...
2025-06-13 11:31:10 +0000 UTC View Post当初は聖都を騒がせたヒュペリオン2の威容が街に溶け込む頃、定位置に近い足下に奇妙な建造物群が建てられた。
船外用の簡易立体整形機にて突如として建てられたそれらは――作業は夜間に行われたため、正しく街の人々にとっては突然現れたようなものだった――本来、船内に収容しきれない人員や、緊急の補給デポを構築するために備わった機...
2025-06-12 12:13:57 +0000 UTC View Post「同調開始……補機正常、主機出力臨界……いけます」
「ええと、じゃあヒュペリオン2試験航行を開始します。フェイズ1、周辺安全確認」
宗教的なイコンなどでゴテゴテと飾り付けられ、艦長席とオペレーター席が豪奢な宗教家仕様にガッツリ造り替えられ軍艦の一室とは思えなくなった第一CICにて、厳かにヒュペリオン2の稼働実験...
2025-05-03 10:31:23 +0000 UTC View Post軍人と騎士、その最大の違いは何か。
両者共に専業軍人であり、戦争への備えを存在意義としているが、大きく異なる点が幾つかある。
一つは軍人というのは文民に統制されるものであって、騎士とは君主の命に服する者である点。
要は指揮系統の最高位が異なっている。
高次連は議会民主制を敷いてい...
2025-04-22 09:31:19 +0000 UTC View Post人出が足りないならどうすればいいか。
死蔵されていた人材を掘り返せば良いのだ。
「聖徒様の慈悲に深く深く感謝いたします。我等の身命を賭して御奉公することを機械神の御名において制約いたします」
「大義である。励めよ」
本音で言えば、そこまでしなくていいよと言いたい私の前に数人の男達...
2025-04-20 09:42:45 +0000 UTC View Post腑に落ちない気持ちを抱えながら天蓋聖都の目抜き通り、機動兵器でも十分余裕がある街路を行進する。機動兵器乗りたちは基本的に戦闘訓練ばかりさせていたこともあって、歩調がチグハグなのが残念であったが、そこは巨体の持つ勇壮さで誤魔化して民達が萎びるようなことはなかった。
隊列が天蓋の下に向かうにつれて観衆は高貴な人間となり...
2025-04-17 11:16:37 +0000 UTC View Postトップスピードにさえ乗ってしまえば存外快速な〝ヒュペリオン2〟は、古代の帆船と違って自動化が進んでいるため目的地さえ設定すれば自動で進軍する。そのため天蓋聖都まで数日の旅程は何事もなく進んだ。
ただ、順調なのは、あくまでこの巨艦が進行するだけであって、それ以外の雑事に我々は勝利の余韻を味わうことなく忙殺されることとな...
2025-03-25 10:48:45 +0000 UTC View Post「ドーモ、シラヌイ=サン、マゾクスレイヤーです」
「ドーモ、シラヌイ=サン、ユキカゼです」
三人のニンジャはVIPルームの廊下で邂逅した。
護衛対象を拉致され、探しようもないと離脱しようとした不知火の判断は些か遅すぎたのだ。
「……久し振りね、二人とも」
ブンシン越しでは...
2025-01-20 08:46:00 +0000 UTC View Post泰然と、そして悠然と刃を構える敵手に葉月は重い重い唾を呑んだ。
今まで数多の敵手と斬り結んできたが、これは規格外だ。
師と同等、あるいはそれを上回るかも知れない力量の敵を前に本能が叫んでいる。
逃げろ、無理だ、戦うなと。
黙れ!
自らの怯懦な保身的本能に罵声を叩き付け、...
2025-01-18 05:03:41 +0000 UTC View Postデン・ジツ。それはかつて神の権能であった稲妻を人が操るジツであり、こと殺傷能力において生中な火や風とは比べものにならない火力を誇る。
100ボルト50アンペア。戸建ての一般的な電流と電圧でさえ、不用意に触れれば人は容易く死ぬ。それが正しく天より降り注ぐ雷と同じ威力であれば、億が一にも生存することは不可能だ。
「...
2025-01-13 08:53:45 +0000 UTC View Post航行能力に支障がなかったおかげか、何とか〝ヒュペリオン2〟は戦域を離脱することができた。
私の予想通り、竜達は狩りの時以外、自分達の領域に踏み込んだ者を攻撃する本能しかないようで、30kmばかし離れると追ってこなくなったおかげでなんとかなって良かったよ。
そして、船内の平定も済んだ。
ヴァージルが捕...
2024-12-27 10:07:19 +0000 UTC View Post〝ヒュペリオン2〟の制圧には、それから更に三十分ほどかかった。
諦め悪く抵抗する者、このまま戻っては死罪が確定している者、勇ましく戦死したがった連中が暴れたせいで制圧戦が必要になったのだ。
まぁ、船のコントロールを得てドローンを動かせるようになったので、無情だとは思うけど、それらに淡々と始末させたんだけど...
2024-12-10 09:14:27 +0000 UTC View Post犬という生物は序列を何より重んじる。
その群れの中で誰から飯にありつくかという原始のルールに従って、人狗族も変わらず順位を重んじる習性を持っていた。
「センセイ、何この人」
「ハァー……話してあっただろう。オヌシの妹弟子だ。ヨミハラに来てから弟子に取った」
「なので教わった期間は...
2024-12-09 08:31:15 +0000 UTC View Postクウトン・ジツの初歩、視界を遠方に飛ばすセンリガン・ジツは基本的に無法も良いところなのだが、この凜子の場合、射程はなんと半径1kmもある。
特化した人間ならば地球の裏側でも見ることができると言えば、ジッサイ奥ゆかしい射程距離ともいえるが、四方5kmしか広さのないヨミハラにおいては十分に過ぎる。
「……玄関が改装...
2024-12-06 11:22:23 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
ニュービーに観光案内は不可欠であるが、地上から地下へのルートは安定していても、旧外殻放水路からヨミハラへの道は非常に不安定かつ流動的であるため、半ばカンで覚えるしかないのが辛いところであった。
「うあー……ヌトヌトする……」
「よもや、あんなモンゴリアンデスワームめいた代物が...
2024-12-03 06:05:29 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
善は急げというが、何事も巧遅より拙速が尊ばれる。
こと荒事となれば尚更だ。
「ビフォアフライトチェックリスト、コンプリート」
「え、えーと……」
「レディ?」
問われて、座席に詰め込まれたゆきかぜは、英語あんまり分かんないと手元の資料を見て目...
2024-12-02 09:16:54 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
「ナンデ無駄な抵抗するんです? ナンデ?」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
地面をオークが一人這っていた。いや、そのブザマさからするに、もう一匹と読んだ方がいいだろう。
逃げようとしていたオーク。眼帯が特徴の奴隷商、ゾクトの目の前にカタナが突き立った。ウスガミ一枚、持ち手の加減が...
2024-11-29 13:59:38 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
「お母さん!!」
結局、何処かで不意に漏れた情報から独断専行に走られても困るし、何よりもゆきかぜまで未帰還に終わった場合、名門水城の血が途絶えるとしてアサギはMIAだった不知火の発見を報せることにしたようだ。
彼女は話を聞かされた時は本当かどうか分からないとショックを受けていたようだ...
2024-11-28 03:24:42 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
ジツが使えないことは対魔忍として最下層に位置することであった。
だが、今は違う!
「イヤーッ!!」
「イヤーッ!!」
これは絹を裂く女性の悲鳴であろうか? 否、ニンジャ聴力をお持ちの読者諸君であるなら分かるだろう。
カラテ・シャウトだ!...
2024-11-25 23:50:59 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
その日、静かに沸騰していたヨミハラは再び恐怖に震えることとなる。
幾つかある大通りに〝大量の首〟が唐突に並べられたのだ。
首は全て、新興ギャングやマフィアの幹部格以上のものであり、情報通ならば一夜にして幾つかの組織が壊滅したことを悟っただろう。
彼等...
2024-11-24 03:04:03 +0000 UTC View Post珍しくアサギが会談に指定した場所は、いつものリョウテイではなく、都内某所にあるホテルであった。
ホテルといえば暗黒退廃前後施設というイメージが四年間のヨミハラ隠遁生活でこびり付いてしまった藤木戸であるが、ここはそんないかがわしい場所ではなく、普通の高級ホテルだ。
五車資本で運営されており、対魔忍関係者が...
2024-11-21 22:43:01 +0000 UTC View Post遂に行き着く所まで来たか……カポーンとフウリュウな音を立てるシシオドシの音を聞きながら、藤木戸は遠い目で嫌味なほどに青い空を見た。
雲一つない良い天気だ。こんな天気の時にカラテをしたら、さぞや気持ちいいことだろう。
「では、あとはお若いお二人で」
そう言ってナコウド役の長老がそそくさと部屋を...
2024-11-20 22:16:19 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
五車名門水城家ともなると、一般対魔忍家系とは随分と待遇が違うのだなと、藤木戸はしみじみ思った。
「センセイ! センセイ! 見て見て!!」
「ああ、いい武器を作って貰って良かったな」
きゃっきゃとはしゃぎ回る藤木戸の一番弟子、ゆきかぜの手には一対の拳銃めいた、しかし実銃と...
2024-11-19 23:20:01 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
五車学園のカラテ・メンターをやりながら、藤木戸は頑張ってヨミハラに一旦戻る算段を付けようとしていたのだが、それはどうにも上手く行かなかった。
お見合いが方々から飛んで来たり、授業日程が詰まっていたりして、戻るに戻れないのだ。
故に彼はツバキと葉月に詫びの電話を入れ、留守が想定...
2024-11-18 22:35:49 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
「ドーモ、五車学園の皆さん。臨時カラテ・メンターの藤木戸・健二です」
愛用のジューウェアを纏い、黒帯をキッチリ締めた藤木戸はメンポだけは身に付けたままの珍妙な出で立ちで、数十名の五車学園高等部一年生達にアイサツをした。
帰って来るのは、よろしくお願いしますという普通のそれであ...
2024-11-17 22:09:01 +0000 UTC View Post風呂上がりにカラテをすると風呂に入った意味がなくなるかと考え、午後が全く暇になった藤木戸が、さてどうしたものかと冬眠し損ねた熊の如く庭を彷徨いているとインターホンが鳴った。
日に二度も連絡なしの来客とは珍しいものだ。
あまり良い予感がしていなかったものの、居留守を使うのも悪いかと思って扉を開ければ、そこ...
2024-11-16 21:08:04 +0000 UTC View Post五車の里への復帰は簡単なことではなかったが、各地へのセイシンセイイを込めて行ったドゲザ行脚及びアダウチ自由の約束によって、藤木戸の対魔忍としての籍は公的に復活した。
アサギはかなり渋ったが、未だエド・イラめいた空気が立ちこめる五車の里において、アダウチは非情に重要な権利でもあるため、藤木戸が「何時でも掛かって来い」...
2024-11-15 03:25:53 +0000 UTC View Post麦には何故か、井河本邸の広い客間のタタミが白い玉砂利に見えた。
いわゆるオシラスというヤツだろう。
パァンと淑女らしからぬ音を立てて、午前中で何とか精神を立て直したらしいアサギがやって来た。居住まいは完璧に正されており、シャワーも浴びてきたのか見た目だけはきちんと整っているが、その目はツキジに並べられる...
2024-11-14 01:10:05 +0000 UTC View Postウホ・ジツとは古い中国の技法を源流に持ち、二八の星に準えたステップによって対応したジツを発生させる星舟のユニーク・ジツである。
応用はあれどジツは基本的に一人に一つの原則を大きく破る物であり、それは戦闘から支援、自衛にまで多種多様に役立つ。
そして、彼女は日に三度、〝軫宿星〟の歩みを刻むことを〝あの日〟...
2024-11-12 10:11:35 +0000 UTC View Post◆◆◆◆◆◆◆◆
「ぬ……ぐ……?」
その老人はあまりの寝苦しさに目を覚ました。
当たり前だ。いつの間にやら逆さ吊りにされているのだから。
「なっ、なんだコレは!?」
しかも、見渡せば同志や顔つなぎ役が、地下室と思しき場所で一列に並べて吊されているではないか。しかも、パンツ...
2024-11-12 03:33:43 +0000 UTC View Post