XaiJu
kktohoku
kktohoku

fanbox


特注ファールカップ 後編 ①

前書き いつもより長いので 後編は二分割で投稿します。 ーーーーーーーーーーーーー  あれから一週間後。  特注ファールカップが早くも完成したとの報を受けたトウマは、  再びナツカワの勤めるスポーツメーカー本社へと足を運んだ。 「これが…!」  例の計測室で見せられたのは超密着型ファールカップ。  トウマが着用してきたどの製品より薄くて軽く、  触り心地も段違いに良かった。 「薄すぎて不安、と最初は感じるかもしれませんが、  以前ご説明したように非常に優秀な素材を使用しておりますので、  睾丸への衝撃はかなり緩和と思います」  断言せずに〝思います〟と濁して言うしかなかったのは、  睾丸の無いナツカワでは〝実際の効果〟を試すことが出来ないから。  もちろん男性スタッフが代わりに試しているが、  それはあくまで〝人の意見〟だと冷静に区別していた。 「では、さっそく装着をお願いします」 「!」  このファールカップを付けるという事は男性器を出して  直接貼り付けるという事、なので普通なら戸惑うものだが  トウマは既に射精すら見られている身。  もっと言えばナツカワとは口淫すらした仲なのだ。 「はい」  恥ずかしさはあってもすんなりと服を脱いで、  どうどうと〝男の防具〟を装着していく。 「――――おぉ!」  つい声が出てしまうほど装着感が無かった。 「これは… スゴイですね」  着ける場所が場所なので、普通はどんなファールカップでも  動き難さが発生してしまう。  それでも大事な睾丸のためならと我慢するのが男性格闘家なのだが、  この超密着ファールカップにはそのような動き難さが  まったくと言ってよいほど無いのだ。    むしろ股間にブラブラしていたモノがキュッと包まれたおかげで  いつもより動きやすくすら感じる。  トウマは着心地を試すように軽くステップを踏みながら  突きや蹴りを放った。 ほとんど全裸で。 (これは…… 購入して大正解だったからもな。  チンポと玉が下半身と一体化したおかげで心なしか腰が回しやすい)  腰だけでなく垂れていた玉袋が持ち上がったので  ほんの僅かだが足も動かしやすく感じる――――  足の間にモノがあるのが日常である男としては新鮮な感じだが、  女性の下半身はいつも〝こんな感じ〟なのだろうか――――  などとトウマが考えていると控えていた助手から声が掛かった。 「あのぅ、ちなみにカップの中はどんな感じですか?」 「ん? 中って…?」    聞き返すと、何やら言いづらそうに目を逸(そ)らす。 「いえ、その中って… 出来るだけ不快感を感じない素材で  作られているので… 逆効果というか…   気持ち良くなって… 勃起しちゃう人もいるんですよ」 「え」 「あ、いると言ってもかなりの少数ですし、その人たちも  慣れていない最初の内だけなので特に支障はないのですが、  製品の改良のためにも全員に聞いているんですよ」 「そ、そうですか」  トウマが目を降ろした先、ファールカップの中では  僅かではあるがペニスが充血していた。  着け心地の良さもあるが、最高のファールカップに出会えたという高揚、  そしてベストコンディションで世界大会へ挑めることに血が滾り、  盛んな血気が海綿体にまで巡ってしまったのだ。 「……た、確かに、ちょっと勃ってしまいました」  正直に恥部を告白したのは、もしかしたら  またヌイてくれるのかという下心によるもの。 「あら♡」  〝やや勃ち〟を聞いた助手も嬉しそうに声を出す。  彼女もナツカワと同じくトウマを男性として気に入っており、  また何かと理由を付けてヌイてあげたいな♡と思っていた。  ただしプロとしての気遣いも忘れていない。 「……ちなみに、世界選手権が迫ってますけど  〝禁欲期間〟にはまだ入ってないんですか?」  精力不足はスタミナ不足に直結するため、  試合前のオナ禁は男性格闘家のみならず男性アスリート  にとっても、もはや常識。  助手は男のみが抱える〝その辺の準備〟を心配したが。 「ま、まだです」  トウマは〝まだオナニーしている〟と同じ意味の言葉を返す。  男性の肉体はヌキ過ぎても、溜め過ぎても害になってしまうもの。  特に若い男ならばオナ禁は5日くらいで十分なのだ。 「そうですか♪ そ、それではどれくらい  〝反応〟したのか見ても… いいっスか?」  助手の口調が砕けると同時に〝なんかいい感じ〟が漂い出すが、  すっかり会話から弾かれたナツカワはちょっと不満げな顔をしていた。 「わぉ♡」   ペリっとカップを外すと、膨らみ気味のペニスは既に  水平ラインまで頭を上げている。  期待通りの展開で調子に乗ってしまったのだろう。 「ではでは…♪」  特注ファールカップを受け取りに来たトウマへの豪華すぎる購入特典。  ナツカワに続き、助手からもおクチでの〝激励〟を受けたトウマは  大量の白濁液で意気込みを示した。  必ず優勝します。と。  ~空手世界選手権まで10日~    某先進国、高級ホテルの一室。 「すげぇ。俺の部屋の倍はあるな」  現地入りしたトウマが、広いベットに荷物を置いてから   テーブルに置かれていた一枚の紙を手に取った。  書かれているのは選手たちへのこんなメッセージ。 【現在、このホテルは選手お呼び関係者の貸し切りとなっております。  我々は大会終了まで全選手に対し、あらゆるおもてなしを  させて頂きますのでどうがお寛ぎ下さい】 「へ~ こりゃ今晩の飯が楽しみだ」  試合直前とはいえまだ10日もあるため、  今日は併設されたジムで軽く汗を流す程度の調整を行う事にした。 「――――ふぅ、美味かったが…量も凄かったな…」  夕食を済ませたトウマが自室に戻ると、ちょっとした変化が目に付いた。 「ん!」  綺麗にメイキングされたベットの上にパンフレットが置かれていたのだ。 「スタッフの人が置いてったのか」  ピンク色の表紙には何も書かれておらず、  訝しむトウマがソレを開くと、そこには… 【時には〝溜まったストレス〟を抜く事も必要でしょう。  当ホテルは最高のマッサージ師たちを揃えておりますので  〝御用の殿方〟は備え付け電話機の③番を十秒ほど押してください。  すぐに派遣したします】  と、意味深というより、もはや直球に近いメッセージと共に  五十名におよぶ美女たちの写真が載っていた。 「なっ!? なな…!」  どう見てもこれば〝夜のサービス〟  好きな美女を指名して過剰に溜まった精力を  抜いて貰うという性風俗的なサービスに違いない。  食欲の満たされたトウマの脳内が性欲で染まっていく。 (こ、こんなサービスもあるのか…!?   い、いや… オリン〇ックでも選手たちの性欲発散のために  とんでもない量のコンドームが選手村へ配布されるのは有名な話だし、  オリン〇ック委員会も選手も〝それ〟に関しては認めている…  つまりこのパンフレットだって別におかしくは……ないはずだ」  ガッツリ食べた肉が早くも栄養に代わり、  潤沢な栄養が睾丸機能を促進させる。 「………」  気が付けば〝どの娘にしよーかなー〟とパンフレットを  ペラペラめくっていた。   ただ、大会までの日数を考えればここらで性欲処理をするのは  悪い事でもなく、ホテル側も〝ありとあらゆるおもてなし〟と  掲げていたので頼めばヤラせてくれる可能性も高かった。 「――――…」  パンフレットに走らせる目が血走っていく。  トウマは童貞。  つまり、その気になればこの美女たちで〝卒業〟出来る立場にある。   「はぁ… はぁ…」  トウマの足が電話機へと進み、指が③番へと伸びていく。 「………ハッ!?」  だが、寸前で止まった。  わずかに残っていた理性で〝呼んだ後〟を想像したからだ。 (これがどっかの国が仕掛けた罠とは思えないし、  このボタンを押すだけで最高の夜を味わうことが出来る。  けど、〝その後〟はどうだ… 俺は……  ナツカワさんと助手さんにフェラチオされた後しばらくは  毎日何回もヌイてしまったじゃないか)  そう、童貞であるがゆえに〝女〟を味わってしまうと  数日間はオナニーを我慢できないのがトウマなのだ。  これでもしセッ〇スまでしてしまったら…  大会開始まで毎日何回もオナニーしてしまうかもしれない。 「……ッッ」  ぐっと堪えたトウマは伸ばした手を股間へと持っていく。 「……はぁ…はぁ… ナ、ナツカワさん… 助手さん…」     しこ…   しこ…        しこ…    しこ…  〝ナツカワと助手のダブルフェラ〟という妄想をオカズに  滾った性欲をドピュドピュっと吐き出し、どうにか冷静を取り戻した。 「う……… ふぅ…」 (か、かなりもったいないがやっと掴んだチャンスなんだ。  ここで自滅するような馬鹿な真似だけはしてたまるか!)  大量に出た白濁汁をティッシュで包み、ゴミ箱へと投げる。  その後はオナ二―後の睡魔を利用して眠りに落ちた。       ――――ところが。  ピンポーン♪  眠ってから約三時間後にベルが鳴ったのだ。 「………ん、んん」  時間帯は深夜  トウマは寝ぼけ眼(まなこ)のまま特に警戒するでもなく扉を開けた  「はぁー…い」  すると、目の覚めるほどの美女が立っており、  上目遣いでこう言ってきた。 「こ、こんな夜遅くにすいません。  わ、私は〝こんな格好〟をしておりますが怪しい者ではなくて…」  美女は首にスカーフを巻き、ミニのスリットスカートを履いた  いかにも整体師といった恰好をしている。  怪しいと言われれば、高級ホテルでは目立つ格好だが、  トウマは即座に理解した。 「ホテルの、マッサージをする人ですよね。  ……あのパンフレットの」 「そ、そうです。ソレです!」  器量とスタイルの良さ、色っぽい桃色を基調とした衣装、  情欲を促進させる甘い香りと〝男〟を悦ばせる要素が詰まっている  この女性の〝役割り〟はパンフレットを見ていなくとも感じただろう。 「しかし俺は頼んでいないですよ」  聞くと、美女は細い首を傾げた。 「あ、やはりそうでしたか… いえ、本当にすいません」  謝ってから指を右に向ける。 「実は、隣の部屋に呼ばれてきたのですが  いくらベルを鳴らしても反応が無いんですよ。  それで… もしかしたら部屋をひとつ間違えたかなって  思ったんでこちらへ来てみたんです」 「は、はぁ」  寝起きで少し鈍っている頭で曖昧に返事すると、  美女は「うーん、どうしよ~」と可愛らしく悩んでから  ぽんっと手を叩いた。 「そうだ! お兄さん、代わりに利用してみませんか?」 「はい?」 「だってお隣さんいくら待っても出てきませんし、  私もお仕事せずに帰りたくないですし、  〝あのパンフレット〟って言うくらいだから見てくれたんですよね?  〝どういうマッサージ〟か、ちゃんと分かってますよね?  お兄さんも男性なら…… 興味ありますよね?」  ひと言ごとにグイグイと詰め寄り、逆にトウマは後退していく。 「あ、あの…」 「どうですか? 私♡」    むにん♡  豊満な女性の胸が、鍛え抜かれた男性の熱い胸板に当たった。    「ッ!!」 「それとも… チェンジですかぁ?」  大胆に押し付けてきてからの寂しげな声。  しかも、すでに二人は部屋の中まで入っている。  横にはバスルームがあり、後ろにはベットルール。  そして正面にはとびっきりの巨乳美女。 「わ…… わかった、それじゃせっかくだし…お願いしようかな」  トウマは少し震える声で欲望に従った。  三時間前に自慰行為をしたばかりだというのに、  若いペニスはもう快楽を欲してしたのだ。 「はぁい♡ ありがとうございます、トウマさん」  その時。 「―――ん! 何でおれの名前を」 「あ! ……い、いえ、現在このホテルには選手しかいませんし、  選手の顔と名前は記憶してますもの」 「あぁ、うん」  違和感のあるひと言をきっかけに、今までの会話に  含まれていた小さな引っかかりまで気になりだす。  最高のサービスを提供するはずのホテル側の人間が、  こんな深夜に訪ねてくること自体がおかしくないか―――  それに選手同士のトラブルを避けるため、  確か両隣の部屋は空室だったはず―――  だいたいベルを押しても反応が無かったからといって、  その客を放っておいて他の男を相手にするなど、  ホテルの信頼がガタ落ちする大問題ではないのか――  やはり、何かが怪しい――― 「……ところで貴女の名前は?」 「あ、申し遅れました。 マロンといいます♪」  お辞儀と共に美しい栗色の長髪をなびかせる。  それでもトウマに灯っていた欲情の炎は鎮まりつつあった。  代わりに警戒心が膨らみ、こんな言葉を投げかける。 「あの、一応このホテルに連絡を取ってみていいですか?  マロンさんが本当にここのマッサージ師なのか」 「え!?」 「失礼なのは承知ですが、念には念を入れておきたいんです。  こっちも日本を代表して来ているので」  疑ったのはマロン個人の行動がホテルの掲げる〝おもてなし〟から  逸脱していたからで、もしホテルもグルの場合は意味ない確認だが、  トウマはなんとなく〝そっちの可能性〟は低いとも考えていた。 「………」  返答に詰まっているマロン。  それは〝確認されたら困る〟と言っているのと変わらない。 (やはりこの女… 嘘をついていたのか。  だが何のために… 俺を闇討ちして棄権させるため…?)  トウマの警戒心はさらに膨れ上がり、ソレを感じたのか  マロンの顔からも色っぽい笑みが剥がれ落ちる。  男に媚びた雰囲気は消え去り、代わりに出てきたのは  トウマもよく知っている格闘家特有の気配。 「ッ!」  蹴りが飛んできた。 「ぬッ!!」    最短距離を走る鋭い前蹴り。  狙いは金的。  だが、辛うじて防御が間に合った。 「ッ… お、お前」  防いだ手に伝わる衝撃は女の領域を超えていた。  蹴りの速さもキレも、これまで闘ってきた男性格闘家を  含めても上位に入る実力者である。 「へぇ、流石ですね」  数歩下がったマロンが後ろ手で扉をガチャリと施錠し、  今度は丁寧に靴を脱いでから上がってくる。 「油断させて〝潰せれば〟簡単でしたが、  まぁ、私も空手家の端くれ、こうしてトウマさんほどの男性と  拳を交えるのも嫌いではありませんわ♪」  首に巻いていたスカーフをほどき、ゆったりと構える。  〝端くれ〟などと言いつつ、隙の無い練り上げられた構えであった。 「どこの国の者だかしらんが…  自分が何をしているのか分かっているのか?   この部屋の中ならともかく、お前が通ってきた廊下には  監視カメラがあるだろうし、仮に俺を倒せたとしても  すぐに身元がバレて不利になるのはそっちだぞ」  言っていやると、マロンはさらりと返す。 「不利になんてなりませんよ。  簡単に身元がバレるような生き方などしてませんし、  貴方を倒すつもりで来たのではありません。  ほんの少し〝試合に影響が出るようなダメージ〟を与えるのが  今回の依頼なので」 「……お前、何者だ?」  答える訳が無いと思っての質問だったが、マロンは答えた。 「〝便利屋さん〟です♪  ご存じかもしれませんが〝国家ぐるみでの不正〟なんて  これまでもあったでしょう? 私はそんな幼稚な国の依頼を請け負う  〝便利ながんばり屋さん〟ってところです♪  ―――あ、ちなみにこのホテルとグルではありませんよ。  あのパンフレットは本物ですので、私が返った後で利用するのも  いいかもしれませんね♡ 利用できればの話ですが…♪」  よく口を回しながらも隙は見せない。  トウマの間合いを正確に読み取っている。  それでもトウマは日本代表になるほどの空手家。  加えて男女の体格差も大きく、この狭い空間では素早く動き回る事は出来ない。  その気になれば力づくで組み伏せることは出来る。  だからこそトウマは警戒していた。 (〝試合に影響が出るようなダメージ〟だと…!  まだ10日もあるんだぞ、多少の打撲じゃ効果が薄いし…  逆に骨折までいけば棄権するしかない…  骨にひびを入れるくらいが妥当か… それとも)  倒すのではなく〝試合に影響が出る程度の負傷〟という  妙な条件がトウマを惑わせていた。 「――――ナイフでも隠し持っているのか?」  トウマが探りを入れると、マロンはくすりと笑う。 「まさか。 言ったはずですよ、これでも空手家だと。  手に何も持たず、空(から)のままヤラせて頂きますよ」 「なめるなよ」 「なめる? ……ふふ、アハハ♪」  マロンは何故か構えを解いてまで笑い出した。 「何がおかしい!」 「アハハハ… すいません、つい…  フフ… 私、最初は〝舐める〟つもりでこの部屋に来たもので」 「な… 何を言ってんだ?」 「貴方の… タマタマですよ♡」  トウマの両眉が持ち上がる。  最近ファールカップを新調したこともあって、  〝タマタマ〟が何のことかすぐに分かったのだ。 「もしあのまま… バレずに〝エッチなマッサージ〟に移っていたら…  トウマさんの色々なトコロをすりすりモミモミして…♡  ボッキンキンになったおチンポをシコシコ舐め舐めして…♡  そのまま流れるように玉袋もハムハムコロコロして…♡  完全に男を油断させた後で…… 容赦なく〝噛み砕く〟!  ……つもりだったんです♪」  ガッと白い歯を噛み合わせると、  トウマの玉袋が反射的に縮こまってしまう。 「ッッッ!」  その反応を見逃さず、マロンが嗤った。  「ふふふ…♪ ほとんどの男性はそれでイケたのに……♡  いやぁ流石はトウマさん。  手や足で潰すなんて久しぶりですよ。  でも正直不安でもあるんです… 依頼書には〝一個だけ〟と  書かれていたのに、加減を間違えて〝二個〟潰してしまうのではないかと」  トウマは初めて女に恐怖を覚えた。  〝試合に影響が出るようなダメージ〟がまさか〝睾丸潰し〟だったとは。    試合までは10日、確かに今夜中に手術できれば  ギリギリ復帰は可能かもしれないし、手足が無事ならば  この大舞台を逃す選手はいないだろう。  ただし。  気の遠くなるような反復鍛錬によって作り上げた肉体と   技術は精密機械にも似ており、睾丸という大き過ぎる部品を  ひとつでも欠いた状態で実力を出し切るのは至難の業だ。   (だ、だが睾丸を狙ってくると分かったのは大きい。  くると分かっていれば……)  左手を前に出し、引いた右手は股間付近へと浮かせる。  トウマは金的防御に特化した構えを取った。 「あら… わかりやすくビビってくれて… かわいい♡」  挑発と共にマロンが大きく踏み込む。 「!」(来た)  互いに射精範囲内だったが、トウマは防御を選択。  先ほどの鋭い蹴りが脳裏にこびりついており、  相打ちで〝潰される〟可能性もあると警戒したのだ。 (金的蹴りを受けてから体勢不十分な女へと一撃入れる。  悪いが腹を打たせて貰うぜ――――ん!)  ところが、飛んできたのは足ではなく手。  狙われたのは股間ではなく―――― 目だった。 「ぐぉ!?」  スナップを効かせた五本の指が右目周囲へとぶつかっていく。  目の中にこそ入らなかったが、これで数秒ほど右目は見えない。 「く……ぉ」  試合に慣れていたせいで目潰しへの警戒が薄まっていたトウマは  右目を押さえながら数歩後退した。 「ふふ…♪」  マロンの追撃。  片目が効かないからこそトウマは片手で股間を守っており、  この状態でも金的を入れるのは至難。  ならばとガラ空きの腹部へと正拳を放った。    ごずっ! 「ふごっっ!?」  めり込む拳に割れた腹筋の感触が伝わり、  マロンの加虐心はさらに昂ぶっていく。 「~♡」  反射的に両手で腹を押さえてしまうトウマを見て、  マロンは楽しそうに目を細めた。  今なら打てる―――  今なら当たる―――  今なら潰せる―――  でも、なるべく〝ひとつ〟は残すように―――  蹴り足の先、親指へと神経を注ぎ、  左に垂れる玉を意識して前蹴りを放った。が、 「!!」  トウマも出来る限りの抵抗を見せた。  両膝を合わせてから腰をやや落とし、太ももの筋肉を  隆起させることで下方向からの蹴りを防ぐという体勢だ。 「くっ――――」 (このままでは太ももの筋肉が邪魔で金的に入らない)  マロンもぎりぎりで軌道修正を試みるのだが。  ――――ズンッ!  間に合わず、蹴りは玉袋ではなく竿の部分へと当たった。 「はうぅッ!!」  もちろん竿も男にとって弱い場所だが、睾丸を打たれた時の  長く苦しい鈍痛に比べれば瞬間的な激痛であり、  トウマもそれを分かっているから後ろへと転がったのだ。 「う… うぁぁ……」  ゴロゴロと周りながらベットルームまで後退していく。 「―――ちっ」  対してマロンは追撃しようとしなかった。  今、慌てて攻めれば返り討ちにされると感じたからだ。  現にベットルームで起き上がるトウマの右目は開いており、  腹とペニスの痛みも治まりつつある。 「……私も未熟ですね」  これで金的に加えて目潰しも警戒された――――  ダメージは無くとも不利なのはこちら――――  後ろの扉からの逃走は簡単だが、  その道は〝依頼失敗〟に繋がっている―――― 「こっちの台詞だ… 目潰しへの警戒を怠っていた」  股間をさすりながら起き上がったトウマは構えを取る。  廊下であれば狭い分マロンを追い詰めやすいが、  男の大きな体格では使える技も限られてしまう。  だから思いっきり手や足の振れるベットルームで  迎え撃つことにしたのだ。 「なるほど…」  トウマの意図を読み取り、このままでは負けると感じたマロンは… 「―――トウマさん、ファールカップはお持ちですか?」  〝口撃〟から入る事にした。


More Creators