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生きる事に疲れてしまった美人◯優

季節は8月、蒸し暑いお盆の時期。 〇〇県の都市部から離れた場所にある霊園に 一人の女性が友人のお墓参りに訪れた。 友人、と言っても知り合ったのは数年前で どちらかというと同業者という感じだったが、 共演した仕事が切っ掛けで意気投合し、 すっかり気の置けない間柄になっていた。 だが去年の冬に突然、その友人は亡くなった。 享年26歳、死因は自宅のリビングにある ドアノブで首を吊った事による窒息死だった。 その日の朝、彼女は何時まで経っても現場に現れず 連絡も取れなかったので、自宅のマンションに向かい 管理人に訳を話して中に入れてもらうと……。 ……………………彼女は既に死んでいた。 今でもあの悲惨な光景が忘れられない。 生気が消え失せ、冷たい色味を帯びた肌。 股間から漏れ出た凄まじい悪臭を放つ糞尿。 そして苦悶に満ちたあの死に顔…………。 それからは警察に色々と根掘り葉掘り事情聴取を 受けたりと大変だった記憶がある。 結局、遺書が残されていなかった事以外に 現場となった自宅に不審な点は一切無く、 彼女は自殺したと結論づけられたのだった………。 「ここが………ご両親が言ってた通りね」 「仕事忙しくて中々来れなかったけど………。 ようやく来れたよ、ごめんね………佳織里」 数多く並ぶ墓石の中、一つだけ不自然なくらいに 真新しいお墓の前に花と線香をお供えした後に 無言で黙って手を合わせる女性。 やがて嗚咽しながら涙を流し、震える声で墓の下に 眠っている『佳織里』に話しかけた。 「なんで……こんな事したのよ佳織里ぃ……。 なんで首を吊ったりなんかしたのよぉ!!」 「ぐすっ……………ひっく…………かおりぃ!!」 「なんでよ………なんでなのぉ……………。 ううっ………………うゔぁぁあーーーっ!!」 鳥が囀る霊園に、泣き叫ぶ声が木霊する。 彼女と同じく墓参りにやってきた人達が、 何事かと一斉に振り向くくらいの大声。 何故、『佳織里』は自らの命を絶ったのか。 それは彼女の命日、12月某日の深夜まで遡る………。 ─────────────────────── ピーンポーン♪ 「はーい、今行きまーす!」 自宅のインターホンが鳴ったと同時に、 玄関に急ぎ足で向かった佳織里。 「どうも、○ーバー○ーツです。 ご注文の品をお届けに上がりました」 「はーい、有難うございます!」 使い捨て容器に包まれた大量の料理とデザート。 商品を全て受け取り、代金を支払って配達員が 立ち去った後で佳織里はリビングに料理を運んでいく。 デザートは後で食べる為、冷蔵庫に一旦保管した。 しばらくして、ディナーの準備が整ったテーブルの上には 使い捨て容器からお皿に移された料理、そして前日に 購入した高価なワインが並べられていた。 「いただきまーす!」 「んーっ、美味しっ♡」 次から次へと皿に盛られた料理やワインが、 交互に佳織里の口の中へと運ばれていく。 普段は大食いという訳では無かったが、佳織里に とって今日のディナーは人生最期の食事だった。 ─────────────────────── 死のうとした切っ掛け、それは単純だった。 高校を卒業して間もなく、将来の夢だった声優を 目指して入った養成所で厳しいトレーニングの傍ら、 生活費やその他の費用を稼ぐ為に、 オフの日にアルバイトを挟む毎日を過ごしてきた。 馬鹿にならない養成所の学費も、両親から援助はあったが 半分以上は自分自身で稼いだバイトの給料で支払った。 こうして血の滲むような下積み時代を過ごし、 同じ仕事仲間、先輩、大御所と呼ばれる人達とも それなりに良好な関係を築き上げた事でようやく、 世間や業界では名の知れた声優として人気を馳せる 存在となった佳織里だったが………。 『(これが………本当に私のやりたかった事なの? 駆け出しの頃に比べたら経済的な余裕もあるし、 気が付けば私にも後輩と呼べる子たちもいて、 毎日の仕事が楽しい筈なのに………)』 『(もうすぐ30歳手前になった途端に……。 …………………………どうしてなんだろう。 何か……………色々と疲れちゃった…………。 このままこの仕事を続けても…………)』 『………おーい? どったの佳織里? 深刻そうな顔して考えちゃってさ?』 『あっゴメンゴメン!! 何でもないよ………ちょっと頭痛がして……』 『本当に大丈夫かー? 今日の収録は終わったし、無理しないで 真っ直ぐ家に帰って寝た方がいいよ?』 『うん………………そうする』 これだけは同期の友人や先輩にも相談できなかった。 寧ろ話した所で自分よりも売れっ子な癖に 贅沢な悩み方しやがって、この仕事舐めてるのか、 などと貶されるような気がして佳織里は結局、 人生で一度もこの悩みを打ち明ける事は無かった。 ─────────────────────── そして佳織里が選んだ選択は、自宅のドアノブで 首を吊って自らの命を絶つ事だった。 首を吊って死んだ人間は括約筋が緩くなって 糞尿を垂れ流した凄惨な死体に変貌する事。 どのような方法で首を吊って自殺すれば、 苦しまずにすぐに死ねるか等………。 その下調べも、数日前に予め済ませておいた。 最期の晩餐、そしてデザートも食べ終えた 佳織里は食器を洗って片付けると、 料理に入っていた香辛料やソースの匂いが 漂うリビングにアロマキャンドルの火を灯し、 トイレに向かうと排尿と排便を済ませた。 心地よいアロマの香りが部屋中に充満する間に、 佳織里は浴室でシャワーを浴びて禊を終えると お気に入りの白地にチェリー柄のパジャマに着替え、 白いルームソックスを履いてリビングに向かった。 ふんわりと安らぐ匂いが漂うリビングに入ると 揺らめくアロマキャンドルの火を消し、 トイレや浴室に繋がる扉を閉め、ドアノブに ナイロン製の細長い紐を括り付けた。 「………………………………」 真後ろの扉に背を向けて座った佳織里は 無言で長い黒髪をかき上げ、紐に首を通す。 そしてゆっくりと体重を掛け………首を吊った。 「はーっ……はーっ………………くっ!!」 「っえ゛っ!!」 「ゔぅ………かは……っ……………ぅえっ!!」 固く目を瞑ったまま、必死に耐え続ける。 息苦しくて辛いのは今、ほんの一瞬だけ。 もうすぐ何も感じなくなって 煩わしいこの世界から解放される、筈だった。 だが佳織里はまだ死ねなかった。 調べた情報が正しければたちまち意識を失って そのまま死亡する、とあった。 しかし現実は違った。 首を吊ってから数分経過したが 佳織里の意識は途切れるどころか、 想像を絶する窒息の苦しみが更に増していく。 「あ…………あ゛ぇっ………ぐげぇ!!」 「(苦しい!! 何で何時まで経っても終わらないの!? ヤバい紐外さなきゃ!!)」 さっきまであれほど死を望んでいたというのに 慌ててナイロン紐を首から外そうとする佳織里。 何とか両足の膝を曲げて三角座りのような 姿勢をとり、ナイロン紐から首に掛かった体重を 分散させようと試みる。 だが履いたルームソックスのせいで足が滑って 上手く安定させる事が出来ない。 「とっ…………ふへぇ………ゃ………い゛っ!!」 「やらっ、ひぃひゃ………なっ…………ぐあ゛っ!!」 「ぁア゛ぅぅゔぅーっ!! うゔゥヴッ!!」 顔面が鬱血し、色白の綺麗な素肌が パンパンに醜く浮腫んで青紫色になっていく。 パニック状態に陥った佳織里はバタバタと激しく 両足をフローリングの床に打ちつけ、 爪を立ててガリガリと首筋を掻きむしる。 「(ヤダヤダヤダ死にたくない!! ごめんなさいごめんなさい嫌っ、嫌ぁぁあっ!!)」 後悔しても既に遅かった。 両足のバタつきは時間が経つに連れて、 更に激しさを増していく。 見開いた両目の瞳孔が中央に寄り目になり、 まるで塩をかけられてのたうつ蛞蝓のような動きで、 口周りに紫色の舌を這わせる。 「カハッ…………ングッ…………くぉぺっ!!」 奇怪な表情、呻き声と同時に口から吐き出す 粘着質な泡と鼻水、両目から溢れ落ちる涙。 「カッ………ぐォぇ…………ひゅ……ぅーーっ………」 「(くる………し…………の………い……や…………)」 「(いき……できな…………させて………………)」 「(だれ……か……たすけ……………………て………)」 「(い………や…………しに………たく………な………)」 「カハッ…………ヴぅゔっ!!」 「………くぉえぇぇぇーーーっ……………………」 「(…………………………………………………………………………)」 意識が途切れた佳織里の両目がクルリと裏返り、 白目を剥いた直後だった。 「こひゅっ………こひゅぅーーーっ………………」 「ゔぅ゛っ………ぅ゛っ………ぅ゛ゥゥゥーーっ………」 真っ直ぐ伸ばした両足の爪先をソックス越しに ギューッと折り曲げて硬直させた佳織里は 突然、奇怪な呻き声を上げてガクンガクンと 全身を激しく震わせながら痙攣を引き起こす。 首筋から胸元まで垂れ下がった両手首も 同時に折り曲げ、小刻みにカクカクと揺れ動く。 除皮質硬直──重度の酸欠状態が続いた佳織里は 既に取り返しがつかない状態に陥っていた。 行き場を失った下半身の血液が佳織里の クリトリスを充血、勃起させて潮を吹く。 下着からパジャマの股間越しに、 じっとりとした愛液の染みが浮かび上がる。 「ぁ……ぅ………ぅっ………ひゅ……………」 「ひゃゔ……っ…………」 「……………………………………………………………………………」 か細い断末魔の後、佳織里の呼吸と痙攣が止まった。 しばらくの間、時折ピクッ、ピクッと全身を 微かに痙攣させていたが、やがて両腕から力が抜けて ダランと垂れ下がり、完全に動かなくなった。                


佳織里が首を吊って息絶えてから約1時間後。



ジョロロロロ………………………。


ピチャッ………ピチャッ………………ピチャッ……。


プゥゥゥゥーーッ…………プビュッ!!


ブビビュブブリブゥゥゥーーーッ!!



恥じらいもなく糞尿を垂れ流す佳織里。

汚物塗れで死にたくないと、生前に予め放り出したのは

午前中に飲み食いした物であり、死ぬ前に散々食べた

ディナーについてはまだ消化しきれておらず

未消化の食べ物を含んだ柔らかい軟便となって、

小便と一緒に死体から漏れ出てきたのだった。




それからさらに6時間後。

朝日はとっくに昇って正午を過ぎた頃、

連絡が取れずに心配して自宅まで訪れた友人、

そして彼女に頼まれ合鍵で玄関の施錠を外した

マンションの管理人によって、佳織里は

変わり果てた姿となって発見されるのだった………。

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