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タン師範と御神木・前編


タン師範のお話です。 前後編予定なので絵多めでお送りいたします(毎度の事ながらラクガキですが)。



天狗山。

星見町に隣接する水源の豊富な山で、名所と呼ばれるものも含め大小様々な滝が存在する。 中には誰にも知られていない秘境的な滝もあり、師範はその一つ『名も無き滝』を毎月修行に訪れているのだが……


(駄目だ……全然集中出来ん……)



いつものように道場を出ると、後ろから声を掛けられた。 振り向くと、何と店長さんである。

お祭以降急接近を期待していたものの、別段今までと変らぬご近所付き合いに落胆していた矢先の事態! 聞けば折角の休日、森林公園に行こうかどうしようか迷っているとの事。 自分は修行に滝へ行く事を告げると「……泳げますか?」という質問が帰ってきた。 


「まぁ、泳げると思いますが」


ちゃんとその後の事態を考えて発言するべきであった。 何故ならば……


駄目……超カワイイ……!!


犬掻きでジャブジャブ泳ぐその姿もさる事ながら、やはり『水着姿』であろう……!

お祭の時の浴衣姿でさえ興奮して、部屋のぬいぐるみが5つ増えたというのに! あの様な姿を見てしまったら、私は一体どうなってしまうのだ……!? 既に脳内にぬいぐるみデザインが6パターンあるのですが何か!?


いや、イカンイカン……何の為に私はここを訪れているのだ!? 精神修行の為ではないか! 普段より動揺してどうする!? 冷静に……冷静に…………


冷静になって考えてみたのだが、ひょっとして私は……


店長さんの生着替えを見られるのではないか……?


ズゴゴゴゴ


その時、滝の上から何やら不審な音が…

店長がそれに気付き、目線を上げると……師範の頭上に流れてきた大木が!!

声を上げようとしたが間に合わない……! タンさん……!!


(な、生着替え……)


堪りませんなぁ……!!!!!


ズパァアアアアアン!!!!!


一撃の下に木ぃ真っ二つ!!

そのまま川にザパァアアン!と着水し、店長の両サイドを流れていった……。


師範、そこでハッと気付く。 今の私、格好良いのでは……!?

一呼吸置き、静かに(格好良く)目を開ける。 そしてそのまま店長さんの方を向くと……


店長ドン引き中


漫画なんかではありそうな光景も、現実にやれてしまう者が居るなど想像もしていなかった……。 呆然とした店長は、そのままギギギと首の向きを変え、チャポンと川に潜ってしまった……。

や……やりすぎたぁあああ!


ガクッと膝から落ち、うなだれる師範。 馬鹿だ……私は……!

再び姿勢を正し、滝に打たれて心を静める


冷静に、今度こそ冷静に考えてみろ……店長さんにとって私はご近所さんの武道家さんなのだ。 綱引きで当てにされるくらいの身体能力で丁度良いのだ。 木とか滝とか岩とか平気で割れたら逆に怖がられてしまうのだ……! 


暫くすると、気まずいと思ったのか、自分が引いてしまったのを申し訳ないと思ったのか、店長が再び水からチャポンと顔を出した。 くるっと師範の方を向く。 申し訳無さそうな、心配そうな顔をしている。


その頃師範は


……アザラシみたい、超カワイイ……!!!


全然冷静になれていなかった


瞬間! ふたたび頭上に不審な音が! 再度店長が目をやると、今度は大きめの丸太が師範の頭上に……! 大丈夫と思ってもやはり心配だ……! 声を上げようとしたがやはり間に合わない!


だが、実は師範気付いてた! ちゃんと冷静になれてた!! そして! 冷静に!!



何もしなかった!


師範の頭を軸にゴゴゴと丸太が傾き、そのままバシャァアアン!と着水、川下へと流れていった。


店長が完全に呆気に取られ、師範の方を向くと


「いやぁ、先程のは本当に偶然なのですよ。 私、大木を割ったりとか本当に出来ませんから。 もう、本当、体が丈夫なのがせいぜい取り得の、不器用……な……漢……ですか……ら…………」


凄いいっぱい「本当」を連呼しつつ言い訳をしていた師範は、そのままバシャァアアン!と着水、川下へと流れていった……。



続く……



やばいね! 師範、本当に駄目人間だ。

あと、店長のバンダナはビニール製です(笑)


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