あぁ、またこの夢だ
高校の教室、俺はいつものように仲間達と他愛も無い話をしている。
遠く離れた窓側の席で、一人ポツンと机で寝ている大河原を横目に見ながら……。
話しかけたい。 話をして、自分の非を謝りたい。 そして……
そして……友達になりたい
だが結局自分は彼に話しかけることができず、悔しさと情けなさの中で目を覚ます。
今日も同じだ。
やっぱり俺は
「……んごう……!」
今日もお前に声を……
「……しんごう……!!」
ん……? 何で大河原の方から俺に声を……?
「新郷!!!」
うわっ!!!!!
意識を急に戻されて、僅かにパニックになる
「だ、大丈夫か、新郷……?」
気が付くと、心配そうな表情で覗き込む大河原が目に入った。
一緒に凄いものも視界に入ってしまったが……
そうか、俺……師範の殺気に当てられて……気を失ったのか……
しかし、良くわからない。
俺は、いつ師範の地雷を踏んだのだ……?
「……何か親近感沸いちゃうなぁ」
少し頬を染めながら、大河原が言う
「? 何がだ??」
「だって新郷、幸志朗さんの格好を見て気絶しちゃったんでしょ? アレ、リアルすぎるよね~」
大河原は笑っていた。 ちょっと待て……『幸志朗さん』?
「俺も最初あの格好を見たとき、失禁しそうになったもん。 でも幸志朗さんって、見た目は怖いけど凄い優しい、面白い方なんだよー? ねぇ?」
「アレ、でもさっき二人は知り合いみたいな話してなかったっけ??」
……間違いない……!
合点がいった。 そう──
師範が言ってた『大切な友人』とは大河原だ!!! (そういえば看板、虎だった)
そして美咲の発言から、師範にとって今の俺は……
大切な友人に手を出そうとしているホモ野郎!
という事になっているのだ!! 間違いねぇ、地雷コレだよ!!!!!
「あ……」
「おぉーい、キバトラー!!」
「そろそろ仕舞いにしようぜ~、俺腹へっちまったよ」
「私もそろそろ神社の方へスピーチに行きませんと」
「シッポ痛いっす……」
いきなり出鼻くじかれたよ!!!!!
まだ一文字しか発してないのに!!!
「! すいません、もうそんな時間でしたか!?」
驚いた大河原が三人に駆け寄っていく。
「ナギさん! もう~、怖すぎですよー!」
「源司さん、今日はどうもありがとうございましたー!」
「愁哉君、シッポ大丈夫?」
「……あり、波威流と弩来波は? あ、片付け?」
三人に楽しそうに話しかけていく。
新郷は起き上がると、その光景を見てほんの少し、肩の力が抜けた。
口元に、僅かに笑みがこぼれる。
そっか……大河原、
今は友達、いるんだな
気が付くと、横に師範が立っていた。
「君は、その……す、好きなのかね? 店長さんの事が……」
店長さん……? そういえばこのお化け屋敷、『トラトラ店長の』って……
なるほど、ようやくパズルのピースが揃ったようだ
「ご安心下さい、師範。 妹の先程の発言は単なる思い違いです」
師範と話をしながら、その目は皆と笑っている大河原を見ている
「大河原とは、その……友人になりたいだけです。 手を出すなどといった不埒なものではありませんゆえ……」
「本当だろうね」
「……は、はい…………」
フム、そう小さく言うと、師範の殺気もかなり薄らいだ……ように思えた
「ん? 何だそいつ、オッサンの知り合いだったのか?」
ナギが師範と話をしている新郷の存在にようやく気が付き、問いかける。
それに答えたのは、師範ではなく店長だった。
「彼は自分の高校時代のクラスメイトで……えと、その……」
「と、友達の新郷って言います!!」
そう言えた事、そう言ってくれた事がお互いに嬉しかった
「へぇー……あぁ! じゃあさっきのツレは彼女じゃなくて妹か」
ナギがふと、そんな言葉を口にした。(役を演じながらも、ちゃんと色々見ているらしい)
と、そこでこの場にいる数人に「?」マークが浮かんだ。
それが真っ先に「!」に変わったのは店長だ!
待て……待て待て…………よぉく思い出せ~
「それから今『鬼河原』って言ったヤツ、前に出て来い。 ぶっ殺してやる」
「ちなみに私の耳は誰が『鬼河原』と言ったか聞き分けている」
「あぁ、それと『鬼河原』って言った貴様、来月の妹の誕生日、楽しみだな?」
ギギギギャァアアアアアアアアス!!!!!
ナ、ナギさんだけ新郷を見分けてる!!!
「ちょっ!!!!!」
「うわっ!!! な、何だよ!!?」
いきなりの店長のゼロ距離攻撃に驚くナギ!!
「だ、駄目ですよ!! ナギさん達は実際には新郷の事知らないはずなんですから!!!」
「は……はぁ??」
「だから!! あの修学旅行の経験は、あくまで自分の記憶の中だけで起こった出来事で……」
「なぁ大河原……」
突然の新郷の問いかけにビクッとする店長!
「な! なに……新郷?」
「そちらの御友人、『ナギ』さんって言うのか?」
「? ……う、うん……そうだけど……?」
「じゃあやっぱり、あの時の彼なのか?」
「? あの時って……?」
「ホラ、高校の修学旅行の前日に、お前の知り合い三人転校してきただろ? 馬獣人の名前は良く覚えてないし獅子獣人は名乗ってさえくれなかったが、確か狼獣人は偽名だが『ナギ』とか何とか……」
「はーい、源司さん。 向こうでお話しましょうねー」
何も、悲鳴すら上げることも出来ず、神様が引き摺られていった。
そして、数分後──
何があった神様!!?
何をした大河原!!!!!?
全く現状が把握できない新郷だが、一つだけ判った事があった。
大河原は、今も昔もマジパネェ
源司さんへの(永遠に謎の)お仕置きタイムの所為で、スピーチの時間に少し遅れてしまった。 全員駆け足で神社へ向かう!
道中店長はしきりに源司さんに謝ったが、源司さんは頬を赤く染めながら「お気になさらずに」と笑っていた。
が、神社に到着すると、その表情から笑みが消えた。
怒った訳ではない、きょとんとしたのだ。
てっきり皆イライラしながら待っているのかと思ったのだが、境内は閑散とし、スピーチ台が既に片付けられ始めていた。
片付けの指揮をしていた町内会長が、こちらに気付いて駆け寄ってきた。
「あぁ、どうもお疲れ様でした!」
「……いや、まぁお化け屋敷のことはとりあえず置いておいてですな……私のスピーチは?」
「いやぁ! ご立派でしたよ!! ここ数年では一番、こう……威厳と風格に満ち溢れたスピーチでしたなぁ!! ワタクシ、感激いたしました!!!」
……?
「いや、私はまだ何も……」
「おや? そういえば先程のお化けメイクはもうお取りになられたのですか? しかし凄いものですなぁ! 一体どうやっておったのですか? 額には十字の傷か深々と入ってましたし、ツノは片方折れているようにしか見えませんでしたし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全く話がつかめない一同。
「源司さん、これは一体……??」
「フム、どうやら本当に起こってしまったようですな」
「心霊現象が」
店長の意識は、完全にブラックアウトした
目を覚ますと、見慣れた天井が視界に入った。
ここは、師範の道場の『大部屋』だ。 いつも宴会をさせてもらっている部屋だ。
頭のバンダナが外され、額には濡らしたタオルが乗せてあった。
自分が気絶してしまった事を思い出す。 皆でここまで運んでくれたのだろうか?
どうやら皆にもハゲが治った事を知られてしまったようだ。
まぁ言う機会が無かったのと、どう言えば良いかわからなかっただけだから別に良いが……。
起き上がって廊下に出ると、普段は行かない練習場の方に人の気配がした。
こういう時、『獣寄り』は便利だと思う。
そちらに歩いて行くと、練習場の手前の部屋から声が聞こえた。
「……美咲か?」
新郷……?
気を失った大河原を、全員で何とか師範の道場まで運んだ(重い重い……)。
竜神様がいるのだからもっと簡単に移動出来ると思ったのだが、何故か神様の力を一切使おうとしない為、結局全員で手足や胴体を持って運ぶこととなった。
大河原が起きるまで帰るつもりは無かったので、待つ間だけ師範に手合わせを願ったのだが……畳に死ぬほど叩きつけられてしまった。
やはり、まだまだあの方には遠く及ばないのだな……。
「湯を浴びてくる」と師範が出て行ってしまったので自分も着替えようとロッカー部屋に行くと、丁度浴衣に入れていた携帯が鳴っていた。
「もしもし……美咲か?」
妹の美咲は、あまりにも兄の帰りが遅いので少し心配していたようだ。 大河原氏が実は凄いマニアックな男で、兄がここでは書けない様な目に遭っているのではないかと……
「お前なぁ……そもそも一体どこからそういう発想が出てきたんだ?」
「何が?」
「ホラ、俺が大河原に惚れてるってヤツだよ。 兄ちゃんそれでエライ目に……」
「あれ? 違うの??」
「違うよ」
「だってお兄ちゃん、お風呂とかでもよく大河原さんの名前を口にしてたじゃない?」
……俺、声に出しちゃってたのか……
「高校のアルバムを見て溜息つく事もあったし、よっぽど大河原さんの事気にしてるんだなーって。 で、今日やっとその理由がわかったと思ってスッキリしたんだけど?」
「何がだよ?」
「だってお兄ちゃん、昔っから石蔵鉄志さんの大大大ファンじゃない」
「……なんでそこで石蔵鉄志が出てくるんだ?」
「え、だって……大河原さんって石蔵さんの息子さんじゃない」
妹・美咲、本日2発目の爆弾投下!!!
「ハハ……何言ってるんだよ美咲。 いくら同じ虎獣人だからって……」
「あれ……お兄ちゃん、知らなかっ…………あ!!」
ここでようやく美咲ちゃん、店長のボディラングエッジの意味に気付いた!!!
「あ、うん、ウソウソ。 うん、全然違った。 お父さんとか全然知らないし」
ウソが大の苦手の美咲ちゃん、そのウソが真実を語るよりも雄弁に先程の発言が真実である事を語っていることなど夢にも思っていませんでした★
「……新郷?」
ビクゥウウウウッ!!!!!
慌てて電話を切り、ロッカーに入れてバンッと閉めて振り返ると、大河原がキョトンとした顔で立っていた。
「……ど、どうしたの? 新郷……」
うっわぁあああああああ!!!!!
駄目だ! ど、どう見ても……
石蔵鉄志にしか見えん!!!!!
に、似てる!!? 似てるとかそんなレベル!!!? 目とか同じだよ!!!!!
高校時代はそんな風に見たこと無かったし、というか夢にも思わないし!!!
汗が出る! 顔が真っ赤になっていく!!
「新郷……大丈夫?」
うわーーー!! 近い近い近い近い!!!!!
駄目だ!! 何も言葉が出てこない!!!
「新郷……」
「な! なん……」
「……汗臭い……」
!!!
この道場では、門下生はほとんどが自警団員で仕事の合間や休日にここに来る為、忙しさや面倒くささから胴着はロッカーに入れっぱなしになっている事が多い。
ある程度は洗うものの、皆この臭いには無頓着になってしまっているのが良くなかった。
『獣寄り』の店長からすれば、それはかなりの臭気を放っているのだ!
流石の店長もつい感想を口にしてしまうほどに!!
そう、無頓着になっていること……それが新郷中佐の敗因であった。
「あ! あぁ……すまない!!! す、すぐ着替えるからっ!!!」
急にどもって焦りだした新郷に、店長も自分が言った言葉の失礼さに気が付く。
「あ、ごめん新郷! いいよ、そんな気にしなくても……」
手を挙げて静止しようとするも、新郷は顔を真っ赤にしながら汗をかきかき着替え始めた。 悪いことを言ってしまったと深く反省する暇も無く、かつての級友の肌がどんどん露わになる。
シュッと帯を外し上着が肌蹴ると、この道場と自警団とで鍛えられた筋肉がその姿を見せる。
そして次の瞬間、紐を外された胴着の下がストンッと足元に落ちた。
新郷は──
なにもはいていなかった
この道場では練習場に立つ際、胴着の下には何も穿かないのが慣わしだ。
最初は抵抗があったものの、今ではすっかり慣れて着替えの時にも全裸になることに無頓着になってしまっていた。
大河原の動きが完全に停止してしまった理由が、新郷にはわからなかったのだ。
そして、彼にとって最も運が無かったのは……
店長が前のめりに倒れてしまった事だ。
「お、大河原!! だ……大丈夫か!!?」
自分の腰の位置で抑えてしまったのも良くなかった
そう、その姿はどう見ても……
「フェ……フェラ……」
「な!!? 何言って師範んんんんん!!!!?」
だけじゃない!!!!!
「キッ……キバトラァアアアアアアア!!!!!」
「いいっすよ……やってやりますよ!!! 俺がやってやりますよぉおおお!!!!!」
「滅せよ……!!!!!」
「そうかそうか……一度は引いておいて、こちらが油断した所で一気に攻め入るとは……武道というものを良く理解しているじゃあないか……
えぇ!!? 新郷!!!!!」
ぼろ雑巾の様になって帰って来た兄に悲鳴を上げた妹だが、師範に組み手をしてもらったと話すと、そっかと安心して寝た……。
大河原が気が付いて弁明してくれるのがもう少し遅かったら、兄ちゃんこんなもんじゃ済まなかったんだぜ?
その夜、いつもの夢を見た
高校の教室、俺はいつものように仲間達と他愛も無い話をしている。
遠く離れた窓側の席で、一人ポツンと机で寝ている大河原を横目に見ながら……。
昼休みには、いつも一人屋上で飯を食ってるらしい大河原が、何故すぐには教室を出ずにこうして寝ていたのか、今なら……わかる気がした
皆の話……聞いてたんだな
少しでも仲良くなろうと 皆の事を知ろうと
俺の、妹の話も……
「さっさと屋上行けばいいのに」
バン!!!
その音は、教室中に響き渡った
全員が驚いた。
一番驚いたのは、突っ伏していた大河原だろう。 上半身を起こして、机を叩いた俺を見ている。
広げていた弁当を仕舞い直すと、それを持って大河原の席に歩み寄る。
「なぁ……大河原、一緒にメシ……食おうぜ」
ずっと思い悩んでいたその一言は、思っていたよりもあっさりと、自分の口から出てきた。
「…………は……?」
「駄目か?」
「……べ、別に駄目じゃ……ねぇけど…………」
「……なんだよ大河原……」
「泣く事ねぇだろ…」
その言葉にハッとし、顔を真っ赤にすると彼は目をごしごしと擦った。
「あ、欠伸だよ!! 今まで俺、寝てたから……!!」
ウンウン頷くと、大河原の前の席の椅子をクルリと回し、彼の机を挟んで向かい合って座った。
自分の頬が赤くなるのを感じながら、そのまま弁当を広げる。
大河原は、顔を真っ赤にしながらカバンからごそごそとパンを取り出してかぶり付いた。
弁当のから揚げを一つ差し出すと、恥ずかしがりながらもバクッと食べてくれた。
そしてそのまま、自分が食べていた焼きそばパンをこちらに差し出してくれた。
俺がそのまま大河原がかじった所をバクッと食うと、さらに顔を真っ赤にした。
「ぎゃ、逆側を適当に千切れよ!」
「いいじゃんか。 ウン、美味い美味い」
「……ったくよ……」
この日以来、俺はこの夢を見なくなった。
きっと見る必要がなくなったからなのだろう。
この夢の続きは──
現実で見ていけばいいのだから
おしまい
さ~て! 次回ののんけもは~!!?
「新郷です。 大河原との仲も良くなり、まずは一安心といったところです。 でもまだまだ課題は山積みなので、焦らずじっくり一つ一つクリアしていきたいと思ってます。 まずは師範との仲の回復を……
さて次回は、今回のお話の疑問にお答えする特別編!
何故大河原はお化け屋敷をすることになったのか、何が怖くて大河原は泣いてしまったのか、そして大河原は一体竜神様に何をしたのか?
数多の疑問を解決する次回・『新郷中佐と戦慄夏祭り・Q(question)』
さ~てこの次も、サービスサービスゥ★」
「グッドだよ新郷!! グッド!!!」
「なぁ大河原……この予告、何か混ざってないか??」
「あ! ちなみに自分、新郷のオチンチンに触ってるわけじゃないですからね!!?」
「(聞いちゃいねぇ……)」
という訳で、とんでもない長さの『破』でした。
何が『破』だったのかは、ご想像にお任せします(笑)
2025-10-30 07:00:00 +0000 UTC
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見上げれば満天の星空。
周りには笛の音や太鼓の音、町の人たちの楽しそうな話し声。
土地の神様をお祀りする為の『神社祭』のはずなのに、星見町のお祭は何だかとっても温かい。
「お兄ちゃん、ありがとうね。 お祭に誘ってくれて」
「兄貴と一緒でつまらなくないか……?」
「そんなこと無いよ。 こういうの久しぶりだから、何だか嬉しい」
私の言葉に、お兄ちゃんはほんのり頬を赤くしながら少しだけ視線をそらす。
お兄ちゃんのそういう仕草が、私は大好きだ。
私達兄妹には、両親がいない。
私が小学1年生の時に、お父さんとお母さんは亡くなってしまった。
当時住んでいた街で起こった『通り魔事件』に巻き込まれて、死んでしまったのだ。
お父さんもお母さんも犯人を取り押さえようとして、殺されてしまったそうだ。
勇敢な一般市民として称えられたりもしたそうだが、一部の報道では『命を粗末にする蛮行である』、『かえって犯人を刺激する結果となった』などの心無い言葉もあったらしい。
私は当時の事をあまり良く覚えてないけど、お兄ちゃんの言葉は良く覚えてる。
「父さんと母さんの事、何も知りもしないクセに……」
言葉が印象的だったんじゃない。 その言葉を口にした瞬間の、お兄ちゃんの心底驚いたような……そして凄く哀しそうな、その表情が強く印象に残ったのだ。
当時大学2年生だったお兄ちゃんは、大学を辞め、自警団に就職した。
きっとお兄ちゃんは、私の為に沢山のものを犠牲にした。
仕事で危ない目にだって沢山あったし、一生消えない程の傷を頬に受けもした。
私は……お兄ちゃんに何をしてあげられるだろう
せめて……お兄ちゃんの願いは叶えさせてあげたい
大河原さんに 会わせてあげたいな
頭上には満天の星空、笛の音に太鼓の音。
自分達の住む桜見町(さくらみちょう)と大きな森を挟んで反対側にある町、星見町の神社祭は何とも穏やかな雰囲気だった。
土地神様を祀る『神社祭』、他の地域の祭りに参加する事など滅多に無いのが慣わしだが、今回は事情が違った。
先日、いつものように稽古を終えた後、師範が皆を集めてこう仰ったのだ。
「あー、ん……知人の……いや、友人の……違うな、大切な友人の手伝いで夏祭りの見世物小屋に出ることとなった。 故に、明日以降の稽古は祭りの終了まで休みとする。 全員に通達しておくように」
これには心底驚いた。
師範がそのようなことをするとは、夢にも思っていなかったのだ。
そして、あの師範に『大切な』とまで言わしめた友人とは一体どのような人物なのか……?
全てを見極めるため、この夏祭りに参加する事とした。
実を言うともう一つ、内緒の目的もあった。
妹に、一度師範を引き会わせたかったのだ。
大切な妹だ。
自分が14歳の時に生まれた妹だ、可愛くない訳が無い。
両親が死んでから、俺が守っていかねばと今日までやってきたが、いつまでもという訳にもいかない。 だが、半端な相手に妹を預けたくは無い。 少なくとも自分より強い男であってほしい。
心当たりはある。 そう、師範である。
あの方が義理の弟になるのはかなりアレだが、あの方になら安心して妹を預けられる。
そのために妹を、この夏祭りに連れてきたのだ。
──兄の思いやりとは、得てして『ありがた迷惑』なものなのである(笑)
さて。 師範の言う『見世物小屋』とはどれだろう……?
これかな……
これじゃないよな……
「ねぇお兄ちゃん!! 見てアレ!!『おっばけやーしきー』だって!!!」
妹は腹を抱えて笑っている。 どうやら興味をそそられたらしい……。
出店はいっぱいあるものの、『見世物小屋』に該当しそうなものはこれくらいしか見当たらない。
「……入ってみるか……?」
「え!! いいの!? やった!! 嬉しい……!!!」
21歳にもなって、はしゃぐ妹。
……まぁ、アリかな
再び頬を少し赤くして、新郷真樹(しんごう まさき)は妹・美咲(みさき)とそのお化け屋敷へと足を踏み入れた。
一瞬真っ暗で視界を失うが、目が慣れてくるとその内装に驚く。
小屋の中に森がある……
真ん中に一本道が通っており、その左右に茂みと森が広がっているのだ。
そして何故か、一本道の先が見えない……。
随分と奥行き方向に長い小屋のつくりなのだろうか……? 良く作ったな、こんな代物。
ウム、流石は師範に『大切な友人』とまで言わしめた御仁といった所か。
と!
「きゃっ!」
隣にいる妹が、小さく悲鳴を上げた!!!
「どうした!!?」
「な、何かが顔にかかった……」
何かが顔にかかっただと!!?
何だ!!? 俺の可愛い妹の顔に、一体何をかけやがった!!? え、え……
液体だったらブッコロス!!!!!
妹が少し上を指差している。 視線をやると──
上から何かが垂れ下がっていた。 なるほど、これが顔にかかったのか?
さらに視線を上げると
「……………………」
「イタイイタイイタイっスーーー!!!!!」
「お兄ちゃん!!! やめてあげてぇええええ!!!!!」
──後ろでしくしく泣いている馬獣人を置いて先へ進む。
と!!!
「食ぁべちゃぁうぞぉおおおおお!!!!!」
「……竜神様だったね」
「(汗)……あ、あぁ、そうだな」
「何か……可愛いかったね」
「(え、マジで…!?)」
何だろう……少しずつ腹が立ってきた。
ここのやつら、お化け屋敷の怖さというものを少しわかってないんじゃないか……!?
いや、あるよ!? 上からコンニャクぶら下げたりとかお墓の下からお化けとか!
でも何て言うか……少しずれてるんだよ!!
などと考えていると、前方左側の森の近くになにやら人影が見えた。
だから! そういう怖さじゃねぇんだよ!!!!
いや怖いよ!!? 妹も口をパクパクさせてるけど、お化け屋敷の怖さじゃねぇだろ!!? 普通に殺人事件だろそれ!!!
心の中で嵐の如く突っ込みまくっていた、正にその時!!
犯人(?)の男の後ろに何か……
「ギャァアアアアアアアア!!!!!」
わかってた!!! ここのやつら、ちゃんとお化け屋敷の怖さわかってた!!!!!
ていうか、前の2件はブラフか……!!
駄目駄目な雰囲気で油断させておいて、一気に突き落としやがった!!! 俺までもが、完全に不意を突かれてビビってしまった!!!
誰だよ!! こんな極悪トラップ考えたやつは……!!!?
※こいつらです
妹を抱えてバンバン走る!! だが、いまだ出口に到達せず!!!
どうなってるんだよ、この建物は!!!?
と、そこで小さな泣き声が聞こえてきた。
足を止め、聞き耳を立てる。
泣き声は定番といえば定番だが、普通は子供や女性の泣き声を使わないだろうか?
普通に大人の、しかも結構太い声に聞こえるが……
「店長さん、大丈夫ですからもう泣かんで下さい……わ、私が一緒にいますから」
!! 今のは師範……?
声のする方にそっと近付いてみると
茂みの向こう、えらい事になってた!!!!!
「し……師範…………?」
こちらの声にに気付いた師範が、視線を自分に向けた。
「あ、あー……と、つ……つー」
「新郷です。 新郷 真樹」
相変わらず名前を覚えてもらえていないことにションボリする(『つ』って誰ですか……)。
師範は基本、門下生の名前を覚えない。 関心が無いのだろう。
稽古の時は立ち位置により番号で呼ばれるため、一向に改善されずにいる。
「あ、あぁ……そうだ。 新郷君だったな」
そう言うと、特に表情も変えずにこちらを見る。
これでも以前に比べると随分と変わったのだ。 以前なら決して名前でなど呼んでくれなかったし、ましてや『君』付けなどありえなかった。
一体、いつ頃から変わられたんだろう……?
「……しんごう?」
中佐の思考は、その言葉で中断された。
先程まで泣いていた男性が、ふっと顔を上げたのだ。
その顔に、その、見覚えのある鬼牙に……中佐は言葉を失った。
「……しんごうって…………新郷 真樹……?」
「…………お……大河原……?」
パッと表情を明るくして、彼が立ち上がった。
だが、次の瞬間には表情を少し悲しげにして、小さく「久しぶり」とだけ言った。
当たり前だ。 俺は当時……大河原の事を心底嫌っていた。
高校以来とは言え、懐かしさに喜べる相手じゃない……。
「……ぉ…………」
情けない……全く声が出せない。
ずっと、謝りたかった。 高校時代の自分の愚行を……。
当時の俺は、とにかく大河原が嫌いだった。
それは、あまりにも稚拙な『正義感』によるものだった。
『相手を入院させた』、『毎日喧嘩ばかりしている』、全てが自分にとっての『正義』『道徳』に反する行動だった。
だからこそ嫌い、そう……嫌悪していた。
真相を知った同窓会、そして同じ年に起こった両親の事件。
死んだ両親に心無い言葉を浴びせた報道。
「父さんと母さんの事、何も知りもしないクセに……」
そう言った時、一人の男の顔が突然思い浮かび、その自分の言葉にショックを覚えた。
自分たちも一緒だったのだ。
「(大河原の事、、何も知りもしないクセに……)」
自分が、その報道と同じ事をしていたことにはっきりと気が付き、泣きたくなるほど悔しかった。
かつての自分の愚かさが。 浅はかさが……。
妹を育てるため、必死に生きてきた。
だが、彼に対する懺悔の気持ちはずっと心の奥底に佇(たたず)んでいた。
その機会が、彼に謝罪できる機会が今、ようやく訪れたのだ。
謝らなければ……謝らなければ……そう思えば思うほど言葉が出ない。
「お兄ちゃん……?」
道の方で待っていた妹が、不思議に思い近付いてきた。
「『お兄ちゃん』……って、あ! そちらが新郷が可愛がってた妹さん?」
大河原の言葉に中佐が驚く。
「大河原……覚えてたのか……? 俺の妹の話……」
「だって、楽しそうに話してたか……」
そこで店長、ようやくはっきりと妹さんの顔を見た。 そして、その見覚えのある顔に……!!
「(ギャァアアアアアアアアス!!!!!)」
「あ、どうもこんばんは」
妹さんが優しく微笑みかける! 店長顔真っ赤!!!
「アレ……? お前、大河原と知り合いなのか?」
「え……? じゃぁこの方が大河原さん……?」
少し考える妹さん。 マズイ!! と店長、しきりにボディラングエッジ!!!
「うん、お父様と仲良くされてるところにお会いした事があるの」
「そ、そうなのか……?」
何とかギリギリ通じたようだ! ありがとう、空気を読める妹さん!!!
「あの、大河原さん?」
「は! はい!! な……何でしょうか……?」
店長が顔を赤くし、汗をかきかき訊くと
「お兄ちゃん、ずっと大河原さんのことが『好きだった』みたいなんです。 だから、その……」
ナヌ……? ナ、何を言い出したのだ……我が妹よ?
「お兄ちゃんのこと、宜しくお願いします!!!」
妹・美咲、原子爆弾を投下して出口に向かって駆けていった!!!
実は空気が全然読めていなかった妹・美咲の気遣いは、兄のそれに輪をかけて『ありがた迷惑』な代物だったのだ!!!
「ぉ……コラ!! おま……な、なにを…………」
妹の勘違いに顔を真っ赤にする新郷兄に
「新郷が……お、俺の事を……?」
同じく顔を真っ赤にする店長こと大河原君!!
「いや! と……ちが…………じゃなくて……」
未だに声がまともに出せない! 恥ずかしくて死にそうだ!!
「フムフム、なるほど……。 妹さんを使って店長さんの心を惑わし、最終的に自分に関心を持ってこさせるとは。 やり手だな」
ブチッ
「そんなんじゃないって言ってんで
師範んんんんん!!!!?」
数々のささやかなすれ違いから、この日、二人の男の熾烈な(且つ一方的な)戦いが始まった。
そしてこの日、新郷中佐は『お化け屋敷で失神した』という不名誉な称号を手にしたのであった。
つづく
どうも、お久しぶりです!!
ようやく出来上がりました、新郷中佐編~!! しかも続き物!
次回が恒例の『イベント回』です(笑)
2025-10-23 07:00:00 +0000 UTC
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「お誕生日おめでとうございまーす!!!」
「……朝っぱらからテンション高ぇよ」
店長は嬉しくって嬉しくって仕方がありません。
こうして友人の誕生日をお祝い出来るほどの仲になったことがなかったからです。
短編 ビバ! ナギさん35歳
「いやぁ、ナギさんって意外とつかまりにくいから、ここにいなかったらどうしようかと!」
話しながら、席の向かいに座らせてもらった。
実を言うと、ナギがここに着いたのはつい先程なのだ。
今日は店長の休日、その図体に似合わず結構アグレッシブに休日を過ごす店長が心配で、朝からストーキング……もとい遠くから見守っていたナギは店長の行き先が気になった。
ズンズンズンズン自分がよく行く裏通りのオープンカフェに向かって行くのだ。
「(!! もしや……イカン!!!)」
こういう勘は異常に良いナギ! 必死こいて先回りし、席に着くとコーヒーを大急ぎで注文し、息を整え待っていたのだ。
「ご注文は?」
席に着いた店長に、この店のマスターが声を掛ける。
飲食店の店主とは思えない無愛想っぷり。 ごつい土佐犬型の犬獣人で、右目に眼帯をしていた。
「あ、えと……じゃあホットドッグとバナナジュースを……って! あ! ち、違いますよ!? ホットドッグとかって別に犬さんを馬鹿にしてるとかそういう意味じゃなくってですね!? し、しかもホットドッグにバナナジュースって!!? そ、そういうエッチな発想で注文してたりしませんから!!!」
一人で何やらいっぱいいっぱいになっている店長。
だがマスターは完全ノーリアクションで店に入っていく。 そして手早くメニューを用意するとスッと店長の前に置き、そのまま店内に戻っていった。
この他人に干渉しない徹底ぶりが、ナギがここを利用する最大の理由なのだ。
「あの、ここって眼帯限定とかじゃないですよね……?」
「な訳ねぇだろ」
クイッと顎で店主を指す。
「マスターはファッションだ。 俺と違ってちゃんと目がある」
見てみると、眼帯を上げて新聞を読んでいる。 なるほど……。
ナギさんの左目については以前から疑問を持っているも、今は話題に挙げるのはやめよう! 何だかしんみりしそうだ!! そもそもそういう質問は失礼にあたるだろうし、今日の目的はそこじゃないしね!
「あの、ナギさん!!」
「ん?」
「これ、お誕生日プレゼントです!! どぞ!!!」
そう言うと、隠し持っていた小さな箱をナギさんにバッと差し出した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
完全に意表を突かれた。
ここに向かった理由が自分に誕生祝いを言うだけじゃなく、まさかプレゼントまで用意していたとは……。
「な、何だよ……いい年こいて誕生日プレゼントってお前……」
言葉とは裏腹に、顔を真っ赤にし、尻尾をぶんぶん振っているナギさん。
「あ、開けてもいいか?」
返事の代わりにニッコリ笑う店長。
包装紙を破かないように外し、箱を開けると中身をそっと取り出した。
それは、コーヒーカップだった。
しかし、そのコーヒーカップを見た途端、ナギが言葉を詰まらせた。
そのカップには
自分の似顔絵が描いてあったのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、あり……? 駄目でしたか?」
ちょっとオロオロする店長。
「コレ……お前が描いたのか?」
親指の腹でカップの似顔絵の部分を撫でながらナギが訊くと、顔を赤くしながら頭を掻いて店長が頷いた。
「一応、カップも手造りなんですよ。 波威流と弩来波が焼き物得意なんで、教えてもらったんです」
えへへと笑う店長。
ナギは少し俯きながら「俺、お前に何もやってねぇ……」と小さくつぶやいた。
「いや、いいですよ! お祝いしてもらいましたし、プレゼントなら父さんにももらってますし! ま、まぁ日本刀とか……マジビックリなもの送ってきましたが……」
父に贈られたのは、映画で使う精巧な模造品ではあったが、息子を心底引かせた!(ドンマイパパ)
「他にもにろさんには食事を……」
そう続けようとすると、ナギがいきなりズボンのポケットをモゾモゾしだした。
そしてそこから何かを取り出すと、ゴトッと店長の前に置いた。
「それ、やるよ……」
それは
銀色に輝く、懐中時計であった。
「え!? い、いいですよ!! こんな高そうなもの……」
「いいから! 俺、それ大して使ってねぇし……」
いまだ俯いたままのナギさんを不思議に思いながらも
「じゃ、じゃぁ……その、ありがとうございます……」
自分のカップに対して、あまりに高そうなものをもらってしまって気が引けるも、その時計の綺麗さに思わず喜んでしまう店長。
「……でもナギさんって、いっつも懐中時計なんて持ってましたっけ?」
ギクゥウウウウッ!!!
「いや! 持ってたよ!! 俺、マジで普段使わねぇからさ……」
ナギが何故焦りだしたのかサッパリわからぬまま、時計をパカッと開くと
「……あの、ナギさん?」
「あ? な、何だよ……?」
「蓋の裏に『K.O.』って彫ってあるんですけど……これは……?」
ギクギクゥウウウウウウウウッ!!!!!
「バッ!! ふ、ふざけんなよ!!? 何か! それがお前のイニシャルで、俺が彫っておいたとでも言うつもりか!!? お、思い上がるな!!! えと……そ、そうだよ!! 『ノックアウト』だよ『ノックアウト』!!! 俺が一番好きな言葉を彫っておいたに過ぎねぇんだからな!!!」
「……そ、そうですか。 でもちょうど自分のイニシャルと同じで、何か儲けた感じです」
そう言うと、店長は満面の笑みで笑った。
ナギは、顔を真っ赤にして再び俯いた。
視線の先には、似顔絵入りのコーヒーカップ。
ナギは、その『心』に動揺していた。
そのカップを見ているだけで自分の中に、信じられない速度で溢れていく、暖かな何かに。
生まれて始めて貰った、誕生日プレゼント。
自分の事を少なからず想ってくれていると感じさせてくれる、似顔絵入りのコーヒーカップ。
お前は、一生気付かないんだろうな
俺が、今 泣きそうなことを
泣きそうなくらい 嬉しいことを
お前は、どうしてこうも簡単に、俺をこんなにも喜ばせてくれるんだろうな
店長の誕生日以来、買ったはいいもののずっと渡せずにいたプレゼントを、やっと今渡せたことも、
その気持ちと一緒に、ナギは秘密にしたのでした。
ちょっとずつでもいいから 返していきてぇな
そしてこのコーヒーカップは、殺風景だったナギさんの部屋に そっと置かれています。
大切な大切な 宝物のように
おしまい
──急作りなんでいろいろと突っ込み所満載でしょうけど、大目に見てやってください(笑)
新郷中佐……本当に待たせすぎですよね……何となくビジュアルは固まってきましたよ!(連載当時、そんな話をしていたのでしょう。 キャラクターデザインを起こしたの、中佐は結構あとだったんですよね)
あと、オープンカフェのマスターも描こうかと思いましたが……力尽きました……。
しかし自分の文章、『ナギ』だったり『ナギさん』だったり……読み辛いっすよね~
2025-10-16 07:00:00 +0000 UTC
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裏サイトに載せていた『のんびり獣道』のアダルトイラストおまとめコーナー、その2です!
この辺りは一気にアダルトイラストが増えて、と言うか本編が全年齢向けブログのくせに結構ギリギリを攻めていたんですよね。 それらの挿絵の黒塗りや全体モザイクの撤去バージョンが多めです。
挿絵は解像度の低いものしか残っておらず、いつもお付けしているオマケでも微妙にわかりにくい感じになってしまっております。 ゴメンナサイネ!!
前回も書きましたが、全体公開ではありますがタイトルそのままアダルト編なので未成年の方々はノータッチですよ!!
2025-10-09 07:00:00 +0000 UTC
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若干過ぎてしまって申し訳ありません!
一応、更新『5月7日』のつもりで読んで頂けると助かります~!(連載当時のお話です)
では、どぞ!!
「……昨日が誕生日……!!?」
「えぇ、まぁ……」
がっくりとうなだれる師範。
「何故……昨日お会いした時に言って下さらんのです……」
「だって恥ずかしいじゃないですか……何か催促するみたいで」
「俺、ケーキ買って来るっす!! 足には自信ありますから!!!」
「え、ちょ、いいよ! 愁哉君!!」
「うむ、そのとおり! その必要は無いぞ、茶道寺君!」
源司さんが待ったをかける!
「今、私が……」
「買って来ましたから!!!」
「どういうプロセスで!!? っていうか
何故脱ぐ……!!!?」
『短編 今日は何の日』
「昨日という事は、虎鉄さんのお誕生日は5月6日なのですな」
モフモフとケーキを頬張りながら源司さんが訊く
「? えぇ、そうですけど……」
「なるほど、ゴムの日ですな」
「ご……」
※妄想の中でゴムを装着してます
「なるほど、店長さんは避妊に余念が無いということですな……?」
「何でそんな事言うんですかぁあああ!!!
幸志朗さんの意地悪~!!!」
「ハハハ、スイマセンスイマセン!」
(良かった! こんな事もあろうかと、休憩中の門下生の会話に聞き耳を立てて本当に良かった……!!)
「俺、ちょっとトイレっす」
「いってらっしゃーい!」
「あれ、どうしたんですか……ナギさん?」
「……俺……お前より年下だった…………」
「あ、そうなんですか、誕生日? じゃ、自分がお兄ちゃんですね!」
「ハ……ハハ……そう……な…………」
ナギの中で、何かが音を立てて崩れだした……
「で、ナギさんの誕生日っていつなんですか?」
「……6月9日……」
「6月9日……!!?」
※35歳になった虎鉄さんは過激です
「……シックスナインって何だよ?」
ナギさんがいぶかしげに訊いてくる! しまった、声に出してしまった!!!
「ナギさん、えと、知らないんですか? シックスナイン」
「知らねぇも何も、英語で言っただけだろ? 6と9」
「……本当に知らないんですね。 シックスナインって言うのはですね、こう……二人が上下逆に向かい合って、お互いのおちんちんを口に含んじゃったり……」
「何だそれ? 互いのチンポを……って、男同士限定の行為か……?」
ギャァアアアアアアアアス!!!!!
「あ! えと、ち、違いますよ!! そう言った方がわかりやすいかな~って! 普通に男女でやる行為ですよ!?」
「ふーん……」
キバトラが顔を真っ赤にしてる……なんだろ?
ひょっとしてキバトラって……
そっち方面で苦労してるのか? ←惜しい!
シックスナインとやらも、実はした事ねぇとか……。 言ってくれりゃ、俺でよかったらしてやるのに。 とは言え、ここじゃ流石に訊けねぇか……。
その時、ナギは 急に理解した
そっか……俺のなりたいお兄ちゃんって……
俺、こいつの支えになってやりたかったんだ……。 コイツにいつも笑っていて欲しかったんだ。
思わずプッと吹き出してしまう。
何やってたんだろうな、俺。 こんな大事な事、忘れちまってたなんてよ
「なぁ、キバトラ……」
「はい?」
「今度、うちに来るか?」
「え! いいんですか!?」
「あぁ、何か美味いモンでも食わせてやるよ。 俺でよけりゃ、何でも相談しろ、な?」
「うわぁ~! 嬉しいなぁ! ありがとうございます、ナギさん!!」
ナギは、
ようやく一歩前に踏み出せたような気がした
「ところで、幸志朗さんのお誕生日はいつですか?」
「私ですか? 9月8日ですが」
「く、9月8日…!?」
※一般の日記では、もうお見せ出来ません
股間への急速な血流を確認!! 即座に師範の背中から飛びのく!!!
「クパァ……とは何ですか?(流石に聞いた事無いな)」
!!! また声に出した、自分!!?
「ク、クパァとはですね……おちんちんを求めてお尻が開く擬音と言いましょうか……『口ではイヤだと言っても体は開いてるぜ?』みたいな……」
「お尻……ですか? ではそれも男性同士の特別な言葉なのですかな……?」
ギギギギャアアアアアアアアアス!!!!!
「いえ!! ち、違いますよ!!! 普通に男女でも、えっと……女性のゴニョゴニョが開く時に使われる擬音なんですが、何と言いますか……」
? 店長さん、何を照れてらっしゃるんだろう……?
お尻に興味があったりとか……店長さんが『実は同性愛者』だとか
ハハ、流石にそんな都合が良い事ある訳が無いな……。 純粋に言い間違って照れてらっしゃるのだろう。
私の尻の穴なら、いつでも店長さんに開いているのだが……流石に言えぬしな……。
しかし、本当に私は
この人の事が……好きなのだな
自嘲気味に微笑みながら、店長への想いを新たにする師範であった。
「あの、げ、源司さんのお誕生日はいつなんですか?」
深く突っ込まれまいと、源司さんに話題をふる店長!
「私には誕生日というものがありませんので」
「……え!? そうなんですか!!?」
「はい。 神は出生方法が違いますので、誕生日というものが無いのですな」
「……そ、そうなんですか……。 すいません……」
!!!
しゅんとしてしまった店長に、源司さんがあたふたする!
「い、いえ! 誕生日はありませんが製造年月日ならありますぞ! それで良ければその日を誕生日に致しましょう!」
「(……製造年月日?) で、何日ですか?」
「1月9日ですな」
「!!! 1月9日!!?」
※青少年が見ていることを店長は知りません
(私がいってしまう……? ひょっとして虎鉄さん……
私が以前、神の力を失う覚悟をしていたことに気付かれていたのでは……?)
大丈夫ですよ、虎鉄さん。 私はどこへも行きません。 ずっと君と一緒です
ずっと寄り添って 生きていきます
そう決意する源司さんであった。
にしても……
「(すごい……! 誕生日すごい……!!!)」
「ただいまっす~」
「愁哉君!! 誕生日いつ!!?」
「!! 虎鉄さん、どうしたんすか! 鼻血!!」
「いいから!!! 誕生日いつ!!!?」
「し、4月19日っすけど……」
「し……!!!!!」
※ブラック店長 降臨!!!
「茶道寺いくつになったんだ?」
「今年で28っすね」
「に……!!!!!」
※阻止限界点を突破しました
「だ、大丈夫だよ……愁哉君!!!」
ガバッ!
「例え俺達が付き合う事になっても、俺絶対そんな事させないから……!」
カァアアアッと真っ赤になる茶道寺。
「な、つ……付き合うって!!? どうしたんすか、虎鉄さん!」
店長はしがみついたまま頬をモフモフとこすり付けて泣いている。
サッパリ状況がわからないが……
俺と……虎鉄さんが 付き合う……?
想像しただけで、胸が、そしてイチモツが熱くなる。
やはり自分は、この人が『そういう意味で』好きなのだろうか。 だとしたら……
その『心』が嬉しい
「俺……俺、虎鉄さんとなら……」
そう言いかけた時
猛獣の檻に迷い込んだ草食動物
自分のポジションを改めて思い知った茶道寺であった
がんば!
おしまい
※ブログ連載当時は全年齢向けで掲載していましたが、いろいろと厳しくなった昨今でこれは難しかろうと『R-18指定』に変更しました。 ゴメンナサイネ……!
2025-10-09 07:00:00 +0000 UTC
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夕明かりに照らし出される褐色の巨躯が、自分に気付くやズンズンと近付いてくる。
遠近感が狂う巨体、間近にその体が迫った時……そのボリュームに息を呑む。
だが、完全に昔に戻った店長は、首筋にちりちりと焼けるような緊張感を感じながらも、その筋肉の塊を冷静に見上げていた。
確かに一撃はでかそうだが……今日は丸腰か なら
回転数で圧倒してやる
その時ふと、『その矛盾』に気が付いた
彼と会ったのは、茶道寺との修学旅行の時である。
店長にしてみればついこの間の出来事だが、あれ……実際には17年も前の出来事じゃないのか?
いや、そもそも……
あれって、自分の記憶の中の出来事じゃなかったか……!?
そう……確か実際には……あの場所に角材を持った大男なんていなかったはずじゃ……
…………………………
やべっ!!! 初対面!!!!?
弾かれるように臨戦態勢が解け、顔を真っ赤にしてあたふたする店長に、その大男は声を掛けてきた。
間近で見るとガンを飛ばしているように見えた顔も、明らかに『困り顔』だった。
当然だ。 ガンを飛ばしてたのはこっちなのだから……
「あ、あの……」
「はじめまして、大河原 虎鉄さん……ですよね。 息子の蔵王 大輔です」
その一風変った自己紹介も、苗字を聞いてピンと来た。
蔵王(ざおう) それはかつて自分が拒絶した苗字
それは
再婚した母の『新しい苗字』だった
「つまり大ちゃんは、あのひ……母さんの再婚相手の息子さんで、父さんとは初対面なんです。 知らなくて当然ですから……」
「もう泣かないで下さい……」
「すいませーん、お冷もう一杯くださーい」
『空のいろ 家族のいろ 後編』
「だって私は……虎鉄のお父さんなのに……母さんが再婚した事も……新しくお兄さんが出来てた事も……全然知らなくて……お父さんなのに……」
鼻をすすりながら泣く父の涙(と鼻水)をハンカチで拭いてあげるも、なかなか浮上しない父・鉄志。
と──
「はい、こてパパさん。 お品書き」
ニッコリ笑った大輔が、そう言ってメニューを鉄志に渡した。
鉄志は頬を少し赤くして「ありがとう……」と小さく言うと、メニューを受け取った。
どうやら『こてパパ』という呼称が気に入ったらしい
ちょっと口元をほころばせながら、お品書きを見始めた。
大輔が店長に向かって軽くウィンクする。
店長も笑顔を返した。
優しく、嬉しそうに紅潮した大輔の頬は、まるであの日の夕焼けのようだ
そのいろが、店長は、虎鉄は大好きだった
──居間のソファーに体を小さくして座る大輔に何か飲み物をと思ったのだが、冷やしてあるのは水と牛乳のみである。
牛獣人さんに牛乳を出すのってどうなの……?
結局冷えた飲み物は諦め、紅茶を出すと
「い、いいのに……気を遣わなくて」
と、大輔は少し俯きながら言った。
やはり、何かを言いにくそうにしている
その苗字を聞いたときから、ある程度の察しはついていた。
苗字が『蔵王』という事は、大輔さんは『お父さんに引き取られた』という事だ。 つまり再婚後は……
あの人と……自分の母と同居する事になったはずなのだ……
バツが悪そうに紅茶をちょっとだけ口に含む大輔に、虎鉄はバッと頭を下げた。
「!!!? えっ、ちょ! どうしたの!!?」
目を丸くして驚く大輔に、虎鉄は頭を下げたまま話し出した。
「ごめんなさい、大輔さん。 自分の母に……毎日酷い事とか言われてるんでしょ……? 自分に出来る事なんてこれぐらいしかないし……」
「ちょっと待って!! な、ちょ……いいから頭上げてよ! ていうか謝るのって俺の方だし!」
「……え?」
その言葉の意味がわからず視線を上げると、今度は大輔が深々と頭を下げていた。
「!!! だ、大輔さん……!!? え? あ、あの……」
「俺のオヤジ……最低だっただろ? あいつと話した事、二十歳の時からほとんど無かったから……こんなに挨拶が遅れちゃって……。 相手に息子さんが居る事、つい最近まで知らなくって……。 何にも出来ないけど、俺でよかったら思う存分殴って……」
……あれ…………?
互いに視線を合わせる。
会話がかみ合ってない。 お互いに同じような事言ってる……?
「再婚したの、俺が二十歳の時だから虎鉄君は19の時だよね……? 最低だったでしょ……?」
「……あれ、再婚って自分が二十歳の時ですよ? 19の時にはもう家出てましたし、また苗字変わるのイヤだったので二十歳まで待たせて、そのまま絶縁しました」
「……ひょっとして、親父に会った事無い?」
「えぇ……無いですけど……もしかして大輔さんも……?」
「俺も……二十歳ですぐ絶縁したから……あれから一度もまともに親父に会ってない。 虎鉄君のお母さんにも……」
そこまで話して、ようやく二人とも安堵で力が抜けた。
良かったぁ~……という言葉と共に、ソファに同時に腰を下ろした。
「自分……てっきり大輔さん、その事で自分に文句を言いに来たのかと……」
「まさか……! 俺、マジでボコボコに殴られる覚悟で来たんだよ~?」
そして目を合わせ、二人とも同時に吹き出して笑った。
「虎鉄君、お母さん嫌いなんだ」
ハハハと笑いながら曖昧な態度を取る虎鉄に、大輔は優しく話しかける
「でも、俺のオヤジの最低っぷりには敵わないと思うけどな~」
「……そうなんですか?」
家族の話をするのは、初めてだった。
そう、お互いに。
だから互いにわかっていた。 常に自分達は二つの思いを抱えている。
『誰にも知られたくない』
『誰かに知って欲しい』
その均衡を、先に破ったのは大輔だった
大輔の父の話は、本当に聞いていて胸が痛んだ。
大輔が小学生の時に、上司の叱責が気に入らずあっさり退職。 以降職に就かず、旅館経営をしている母のヒモ状態。 離婚を一切受け付けなかった父が提示した「息子を引き取らせろ」という意外な条件、その理由が『毎月の養育費目当て』……
「……よくお母さん、同意しましたね」
「いやぁ、あの人気ぃ強いからさぁ、切れた切れた! 俺が説得したんだよ。 もう、母さんとアイツが夫婦でいるのイヤだったから」
笑って話す大輔。
「凄いなぁ、大輔さん……。 自分からそんな事……」
「ははは、凄くない凄くない! だって俺、すぐ後悔したもん。 飯抜きばっかだったし、オヤジに手ぇ出せば母さん悲しむだろうから、結局学校とか家以外で暴れてたし」
それがあの角材なのだろう。
耳をパタパタさせながら、大輔は照れ笑いをしている。
虎鉄は正直、死ぬほど驚いていた。 二人は、驚くほど境遇が似ていたのだ。
離婚も、以降の不遇も、暴れていた事も……。
大輔が茶道寺に襲いかかった事を忘れた訳ではない。 でも、怒りはもうどこにもなかった。
虎鉄の中で、初めて気持ちの均衡が崩れた。
知って欲しい……
「自分の……」
ポツリと話し始める。 大輔は黙って聞いていた。
「自分の母は……もとは父のファンだったんだそうです。 マネージャーさんに聞きました」
「ファン? マネージャー? お父さん、何かしてるの?」
「あ、そういうのは聞いてないんですね。 石蔵鉄志です。 俳優の」
ブゥウウウウウウッ!!!!!
初めて人に話したのだが、大輔のリアクションはある意味満点だった(笑)
バンダナを洗濯籠に入れると、少し肩の力が抜けたかもしれない。
「ファンで結婚なら勝ち組じゃないの? やっぱり一緒にいられる時間がどうとか?」
普段ならこういう質問自体精神的に受け付けられないのだが、大輔が言うとスンナリと受け入れられた。
「母は……あの人の中にあったのは『愛情』じゃなく、『独占欲』だったんです」
「俳優・石蔵鉄志を自分だけのものにしたかったんですね。 その為に、自分が生まれました」
大輔は、眉をしかめて悲しそうな表情をした。 多分さっき大輔の話を聞いているとき、自分もこういう表情をしていたのだろう。 虎鉄は少し笑って見せた。
「でも、思うようにはいかなかったみたいです。 父さんはどんどん評価されて、映画の仕事も忙しくなって、全く自分だけのものにならなくて……逆に、自分はどんどん家庭に疲れていって……」
「自分が高校時代に起こした暴力事件で『詰み』でした。 でも自分、離婚は大賛成だったんです。 父さんがあの女に怒鳴られたり罵られたりするの、もう見たくなかったから……」
「虎鉄君……お父さんの事、大好きだったんだ……」
「……はい…………。 でも、母は多分憎んでました、父さんの事。 だから、父さんが可愛がってくれてた俺を……裁判で無理矢理奪い取ったんです」
大輔は言葉が出なかった。 虎鉄の顔からは、既に笑みが消えてしまっていた。
「俺も……」
押し出すように、虎鉄が言った
「俺も……大輔さんみたいに……ちゃんと父さんと話せばよかった……。 そうしたら……父さんが自分を愛してくれているか……不安にならずに済んだのに……」
目頭が熱くなる。 全然大輔のように笑って話せない自分が情けなかった。
「俺……父さんに引き取ってもらいたかった……家に帰って来れなくてもいいから……ずっと父さんと『家族』でいたかった……」
「虎鉄君……」
「寂しい……」
小さく、だが生まれて初めて……虎鉄は本音を口にした
その途端、目の端に熱いものが溜まっていくのがわかった。
それを見られたくなくて俯いた虎鉄の頭に、大きな手が触れた。
視線を上げると、大輔が虎鉄の頭を優しく撫でてくれていた。
「だいすけさ……」
「ねぇ、虎鉄君、俺ら……兄弟になれないかな……?」
大輔のその言葉に、虎鉄はきょとんとしてしまった。
「俺ら、どっちも親と絶縁しちゃってるから違うんだけどさ、でも俺……こてっちゃんとは兄弟になりたい」
「大輔さん……」
「俺ら二人の間だけの『兄弟』……駄目かな」
大輔は、優しく笑っている。
それが『同情』や『哀れみ』でないことは、すぐにわかった。
だが……その申し出は多分受けられない。 受けられない理由があった。
「俺…………同性愛者なんです……」
やっとの思いで、その言葉を口にした。
生まれて初めてのカミングアウト。 今日は生まれて初めて尽くしだと、心の中で苦笑する。
「気持ち……悪いでしょ? そんなのと兄弟なんて……」
途端、大輔が表情を固くした。 真剣な顔でこちらを見ている。
そして、少し身を乗り出すと、そっと虎鉄に小声で耳打ちした。
「俺いま、パンツ穿いて無いんだ……」
「…………は?」
完全に虚を突かれた虎鉄君。 呆然としていると
「あ! 信じてないでしょー! ほら……」
そう言うや否や、大輔は自分のジーンズの前をおもむろに開けた。
そこには下着が確かに無く、いきなり野太いイチモツがその背を現した。
「いやぁ、俺さぁ~、なんか他人に見られるのってゾクゾクするって言うか……ノーパンばれたらどうしようとか考えるだけで興奮するって言うか……こういうの何て言うの?」
そう言いながら、シャツを胸元までめくり上げ、ジーンズも完全に脱いでしまった。
そしてそのまま……
虎鉄に見られている事で興奮し、ご立派様になってしまわれました!!!
「だ……!?」
「ねぇ、こてっちゃん、俺……気持ち悪い?」
大輔は、赤い顔を少し真剣にしながら訊いた
「気持ち悪い……?」
………………
虎鉄は、静かに微笑んだ。
「ううん、気持ち悪く……無いよ」
「じゃぁ俺だって一緒だよ。 こてっちゃんの事、気持ち悪いなんて思う訳ないじゃん! 可愛いよ、こてっちゃんの股間」
? ふと自分の股間に目をやると、ズボンの前部分が見事にテントを張っていた!
ギャアアアアアアアアアス!!!!!
それから、互いのおかしな姿に、二人一緒に大笑いした
「ねぇ、大輔さん」
「何?」
「だいちゃんって……呼んでいい……?」
返事をする代わりに大輔は
優しく微笑んでくれた
夕焼け空の茜色の中、それにも負けないくらいの赤に染まった頬。
その暖かいいろが、優しいいろが、虎鉄がずっと思い描いていた
『家族のいろ』だった
大輔は、自分を救ってくれた『もう一人』である。
家族がいなく、にろさんも入院し、寂しさに押し潰されそうになった自分を救ってくれた人。
その優しさがあったからこそ、いま自分はこうして家族で食事をすることが出来ているのだ。
正直、こんなに蕎麦を美味しいと思ったことは無かった。
父さんと、大ちゃんと、自分と。 3人で話しながら、笑いながら食べる食事のなんと美味しい事か。
エスカレーターを下り、9階で立ち止まる。
「今度来る時は、ちゃんと連絡してよ~? 大ちゃん」
「ビックリさせたかったんだけどね……うん、了解。 こてパパさんも、京都に来る時は連絡下さい。 母の旅館を案内しますから。 親子でも大歓迎ですよ!」
鉄志もすっかり大輔が好きになっていた。
「ありがとう……その時は是非大輔君も、ね」
喜ぶ大輔に、虎鉄はそっと耳打ちした。
「大ちゃん、ひょっとして今もノーパン?」
ハハハ、と照れながら笑う大輔に
「もう……しょうがないお兄ちゃんだなぁ」
と、虎鉄も笑った。
別れようとした時、大輔も虎鉄にそっと耳打ちする
「お父さん、良かったね」
その短い言葉が本当に嬉しくて、人目を忘れて大輔に抱きついた。
「大ちゃん、大好き!」
手を振ってエスカレーターを下りていく二人の親子を、大輔はずっと見送った。
大輔は、昔の事を良く憶えている。
友人の馬獣人を傷付けられ、真剣に怒った彼のことを。
自分が情けなかった。 ただ暴れているだけの自分が恥ずかしかった。
ダチの為に真剣に怒れる、彼のようになりたかった。
その彼と、大河原虎鉄と再会したあの日、大輔は心を痛めた。 彼をかつて、あれほど怒らせたことに。
だから、今度は彼を笑顔に出来る自分になりたいと思った。 なろうと決めた。
俺は……こてっちゃんが笑ってくれるなら、何だってするから
それが、俺の贖罪で──
恩返しだ
決意も新たに売り場に戻ろうとしたその時!
「調子に乗ってんじゃねぇぞぉ……このヤロウ…………!」
何やら負け犬の遠吠えのようなものが聞こえた気がしたのだが……
その日、大輔は最凶最悪のストーカーお兄ちゃん(自称)を敵に回したのだった。
後日……
「おぉーい! キバトラー!!」
突然ナギに呼ばれた店長が振り返って見ると
「どうだ、キバトラ!」
「お兄ちゃんっぽいだろ!」
「んーな事で俺が負ける訳ねえだろぉがバカヤロウ!! お兄ちゃんポジションは誰にも渡さねーっつーの!!!」
店長にとっての、虎鉄にとっての『自分を救ってくれたもう一人』、
にろさんの介護生活に擦り切れそうになっていた自分を強く抱きしめてくれた人、ナギさんは
この日、『恩人』から『やっぱりよくわかんない人』に見事クラスチェンジを遂げた。
「まぁ……あったかくなってきましたからね」
星見町(在住のナギさんの頭)に、(本格的に)春がやってきた
ナギ 34歳(笑)
おしまい
2025-10-02 08:05:07 +0000 UTC
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──10月。
一日の仕事を終え、マンションに帰宅する店長。
8階建ての7階、そこから見える景色が店長は大好きだった。
町を覆う緑は秋の様相を呈し、夕刻の色と相まって、世界は暖かな茜色に包まれていた。
にろさんにも見てもらいたいな
店長は、ふっと思ってしまう。
一緒にいてくれる友達がいる、仲間がいる。
だが、『家族』がいない。
父とは離婚以来(いや、その前からだが)疎遠なままだし、母の事は考えたくもない。 そして虎鉄は一人っ子で兄弟もいない。
やっと見つけた『職場』という『家』。 だがそこで一緒に過ごすはずだった人は、既に10年近くも眠ったままだ。
毎日が幸せで楽しいはずなのに、やはり自分は寂しいのだろうか……
と、そこでハッとし、パンッと両頬を叩いた。
「(駄目だ駄目だ! こんな顔、誰かに見られたら心配させちゃう!! いつでも明るく元気が自分のモットーなんだから!)」
背筋を伸ばし、ちょっと笑顔を作って廊下の角を曲がる。
自分の部屋に面した通路に出たとき、首から背中にかけて一気に焼けるような痺れが走った。
自分の部屋の前に立つ2メーター超えの大男に、はっきりと見覚えがあったのだ。
かつての、高校生の頃の自分が首をもたげる。
「……お礼参りか? 上等だ……」
臨戦態勢をとる店長。
そう、彼は
修学旅行先で茶道寺に角材で襲い掛かった、あの時の牛獣人であった。
「──折角だから、物産展を見に行きませんか?」
観覧車から降りて百貨店のエスカレーターを下りていると、息子が笑顔で提案してきた。
「物産展……って、玉子焼きのか?」
朝食で出された玉子焼きが、確か物産展で買ったものだと言っていたはずだ。
「はい、確か今日あたりで店の入れ替えがあるはずなんですよ。 一緒に見に行きませんか?」
「……それは構わないが……何故また敬語に戻ってしまっているのだ……?」
父の言葉に、息子がちょっと照れくさそうに頬を染める。
「だって父さんって、やっぱり格好良いし尊敬しているし、何かタメ口きくのって失礼な気がして」
「格好良いって……父親だぞ? ウーン、役柄がそう思わせるのか? 三枚目な役柄なら敬語ではなくなるのか……?」
その言葉に息子がプッ、と吹き出した。
「父さんが三枚目の役なんて想像つかないですよ」
「ムゥ……」
息子との楽しいひと時。
だが流石に物産展に到着すると、その顔から笑顔が消えた。
「こ、虎鉄……流石にこれは不味いのではないか……?」
デパートの9階催事場は、平日の午前中だというのに人、人、人でごった返していた。
しかも年齢層がヤバイ。 いわゆる中高年がほとんど、つまり『石蔵鉄志』のファン層ばかりなのだ。
気付かれたら只では済まんぞ……?
父の心配を察したのか、息子は笑顔で
「大丈夫ですよ。 みんな父さんより食べ物の方に夢中ですから」
と、軽く流した。
…………それはそれで悲しいな……
ひと通りまわって見ると、突然息子が歓声を上げた。
「見て下さい、父さん!! 『パリッとたいやき』が売ってますよ!!!」
パリッとたいやき、それは現在巷で流行っている『薄皮たいやき』の事である。
その名の通り、薄い皮でたっぷりのあんこを包んでいるたいやきで、老若男女に人気がある。
ふと、虎鉄がまだ小さかった頃、一度たいやきを買って帰ったことを思い出した。
息子はその形を大いに喜んで、楽しそうにたいやきを眺めていた。
「買ってやろうか?」
父のその提案に息子は声を上げて喜び、昔と変らぬ笑顔で父の手を取り、たいやき屋さんの列に並んだ。 思わずちょっとだけ涙が滲んでしまう自分が、鉄志は可笑しかった。
……しかし、流石に列に並んだのはやばかったらしい。 前後の客がヒソヒソと話を始めた。
──と、
「父さん、似てるとかまた調子に乗るのやめてくださいね」
虎鉄が突然、少し棘のある口調で言ってきた。
「ム! いいじゃねぇか、そっくりだろが」
「父さんにサインされた人の身になってください」
「……わぁかった、わかったよ。 手厳しい息子だこって」
前後の客は小さく鼻を鳴らすと、自分の連れとそれぞれ違う話題で盛り上がり始めた。
二人は視線を合わせ、くすっと笑った。 咄嗟だが、こんな楽しい演技をしたのは初めてだ。
息子はたいやきの実演販売に目をやり、その焼きあがる様をみて楽しそうにしている。
何と幸せな時間か
思わず満面の笑みになってしまう鉄志。
そこにメガトン級のトラップが待ち構えていることなど、知る由も無かった。
たいやきを見ていたはずの息子の視線が、僅かに上に行っている。 しかも、その顔からは笑顔が消え、心底驚いている。
そして、僅かに頬を染めている……
不審に思った鉄志が、息子の視線を追う。
たいやきから、焼いている職人の手、そして、その職人自身に……
鉄志は、その職人の姿に驚いた
焼いているたいやきとは全く合わない、巨大な体。
2メートル以上あるのではなかろうかその体は、みっしりと筋肉に覆われていた。
鉄志から見てもコワモテに見える容姿、逞しい体……その牛獣人に、はっきりと息子は視線を奪われていた。
ま、まさか……
こういう男が好みなのか!!!?
そう考えた瞬間
「大ちゃん……!」
……え
その声に職人の耳がピクッと動き、驚いた表情で視線を上げた。
「こてっちゃん……?」
えぇえええええええ!!!?
「来た来た! 大ちゃーん!! こっちこっち~!!!」
10階のレストラン街。
蕎麦屋の前で待っていると、エスカレーターを例の大男が上がってきた。
「はぁ、はぁ……ゴ、ゴメンこてっちゃん……待った?」
「それより大ちゃん、店抜けちゃって大丈夫?」
「ウン、ちょうど昼休憩だったし、店長も行っておいでって」
二人は楽しそうに話している……しかもタメ語で……
アレか……? ひょっとして二人は付き合ってしまってしまったりしておられたりしてしまうのか……?
にろさんからの情報の一切無い人物の登場にいささか取り乱し気味のパパ。
(しかし……何というか)
服のサイズおかしいだろうが!!!
何だ!? 自慢か!!? その筋肉が自慢なのか!!!? 見せびらかしたいのか!!? それがアレか、みんな喜ぶちからこぶとかいうヤツだとでも言うのか!!!!?
ああそうさ! どうせ父さんにはそんな筋肉無いさ!! 薄い体で悪ぅございましたなぁ!!!
だが、まぁいいだろう……! 百歩譲ってその上半身は許してやっても良い!
が!! しかし!!!
それだけは許さん!!!!!
何だ!? そこには一体何が入っているんだ!!?
夢や希望が詰まっているのか!!? だからそんなに大きく膨らんでいるとでも言うつもりか!!? それで上手い事言った気でいるなよ小僧!!!
ははぁ、成る程! そこにはアレか、ビーフ100%のソーセージが詰まっているという訳か!! それを虎鉄に……お……
美味しく頂かせようという訳か!!!!!
何たる外道!! 何たる恥知らず!!!
いや! ……ま、まさか……
「大ちゃんの牛乳、濃くて美味しい……」
とか言わせるつもりか!!!!!?
何たる破廉恥!!! 何たる悪鬼羅刹よ!!!!!
今、私の腰に愛刀『天橋立(あまのはしだて)』があったのなら、貴様などおちんちんごと一刀両断にしてくれるものを!!!!!
──落ち着けパパ、息子が幸せなら相手は誰でも良いはどこ行った?(笑)
「うん、あちらが俺の父さんね」
話がどうやら自分に振られたようだ。 って、良く見たら何かペアルックではないか……!? 恐ろしい……!!
「で、父さん。 紹介させて下さいね」
脳内劇場も遂に終幕……とうとう桜吹雪を見せられるときが来たか……
「こちらが蔵王 大輔(ざおう だいすけ)さん」
「俺のにいさんです」
「…………………………」
「…………は?」
続く
わかってます。 絵が荒れているのはわかってます。
全然清書もして無いです、スイマセン。 意外と時間無かったです……。
という訳で、大ちゃん登場の巻でした。
前半部分は源司さんのお話の少し後、後半は前回のパパ編の直後になります。
ちなみに、今までのお話を読まれていらっしゃる方なら前半部分の矛盾に気付かれたと思いますが、放置の方向でお願いします(笑)
あと『天橋立』はパパの役柄の人物の愛刀です。 パパが所持してるものではありませんので(笑)
次回の更新はまた少し先になりますので、少々お待ちくださいね。
2025-09-25 07:00:00 +0000 UTC
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母さんの事は嫌いだった
でも……
「父さん……?」
虎鉄の心配そうな問いかけに、だが鉄志は俯いたまま顔を上げる事が出来ずにいた。
何しろ皿洗いを手伝おうとして食器を台所に運ぶ途中の虎鉄に見事激突し、皿と言う皿全てを割ってしまったのだ。 へこまない父親は、そうはいまい。
今さら父親らしい事を急にしようとしても、上手くいく訳が無いのだ。 それを文字通り痛いほど痛感していた。
そうだ……今さら虎鉄だって父親の事など……
「父さん、今日お休みなんですよね?」
「……あ、あぁ」
下を向いたまま、何とか返事のみはした。
「じゃあ、これからちょっと出かけませんか? 自分、父さんと行きたい所があるんです」
「……父さんと……行きたい……?」
鉄志の顔に笑顔が戻り、パッと息子の顔を見上げると何やら不敵な笑みをこぼしていた。
「?」
「さて、出かけるならちょっと体をいじりますよ~!?」
バッと虎鉄が襲い掛かる!!
「ちょっ! な、何だ……虎鉄!!? そ、そんな所を何故縛るのだ!!? 毛、
毛が絡まって痛いではないか……!!!」
「どうです、父さん? 全然ばれないでしょう?」
「か、顔モロ出しではないか……サングラスとかしなくて良いのか?」
隣町の駅に降りて数分、無理矢理縛られた後ろ髪を気にしながら鉄志が疑問を投げかけると
「そういう小細工がかえってばれるんですよ。 そもそも他の人から見て虎獣人の違いなんて大して見分けが付かないんですし、それに……」
「……?」
「自分と父さん、そっくりだそうですからね。 二人で歩いていれば『石蔵鉄志にそっくりな二人が歩いている、やっぱり虎獣人は見分けが付かない』ってなるんですよ」
「そ、そんなものかな……」
軽い返事をしたが、鉄志はその些細な一言がとても嬉しかった
父さんと自分がそっくり
……手を 繋ぎたいな……
一緒に歩きながら、息子の手を見る。
親子で手を繋いで歩きたかった。 父親の手の暖かさを息子に伝えたかった。
息子に、ただ好きになってもらいたかった。
だが、息子の手を握ろうと伸ばした手は、決して息子の手に届く事は無かった。
そんな事をされても、嫌がられるだけだ。
虎鉄はもう34歳だ。 立派過ぎる程の大人だ。 息子が貸してくれた服の大きさが、鉄志に否応無くその事を感じさせる。
喜ばれる筈が無い……
「父さん?」
! いかん! 折角息子と一緒にいるのに、ろくな会話もせずに落ち込んでいてどうする!!? トークだ!! 小粋なトークで虎鉄を楽しませてやらねば!!!
ここは、必殺のジョークを!!!!!
「着きましたよ?」
あぁ、もう!!!!!
自分の間の悪さに絶望しつつ、鉄志は息子の指差す先を見る。
百貨店らしき大きな建物、その屋上に何やらとんでもないものが乗っかっていた。
「……観覧車?」
「いやぁ、これが出来た時にはもう驚きでしたよ! どれだけ遠くを眺めることが出来るのか、一度乗ってみたかったんですけど、ホラ、年が年でしょう? お友達を誘おうにも皆さん恥ずかしいでしょうし」
やはり何もわかっていない虎鉄くん。 君が誘えば皆喜んで乗ったろうに(笑)
「それに、やっぱり父さんと乗ってみたかったんですよね。 そんな機会絶対来ないと思っていたのに」
屋上に向かう間、変なテンションになった虎鉄はずっと楽しそうに話している。
「……うれしいなぁ」
鉄志は、少し唖然としていた。
息子が……本気で喜んでくれてる
屋上に着くと、流石に平日の午前中だからか、人っ子一人いなかった。
だが観覧車の入口に立っている係員の女性は、暇そうなそぶりを見せることなく、二人に気が付くと優しそうな笑顔を見せて迎えてくれた。
「見てください、父さん!! 『親子チケット』なんてありますよ! すみません! これ、自分と父さんでも使えますか!!?」
すっかりはしゃいだ虎鉄の問いかけに少し驚いた顔を見せたが、女性は嬉しそうに微笑むと大丈夫ですよ、と答えてくれた。
優しそうなお嬢さんだな……。
鉄志はついつい女性をじっと見てしまう。
可愛いと綺麗の中間かな……虎鉄のお嫁さんはこういう女性だったら良いのだがなぁ
ゴンドラに乗り込んでからも、暫くそのお嬢さんに手を振っている虎鉄。 「可愛いですねぇ」と小さくつぶやくのを聞いて、鉄志はつい嬉しくなってしまった。
「ああいう子が好みなのか? なんなら私が女性とのお付き合いの手ほどきを……」
「あ、いや、可愛いとは思うんですけど……自分、女性に性的興奮をおぼえないので」
「!!!!! ……そ、そうか……」
鉄志パパ、実はにろさんから事前にとんでもない情報を与えられていた。
虎鉄の周りの男達は、虎鉄に惚れているという事実、そして
虎鉄は同性愛者かもしれないと……
それを聞いた時、相当なショックを受けたが、隼人君は静かに
「義兄さんは、孫が欲しいんですか?」
そう、訊いてきた。
「俺は、虎鉄が好きです。 心から愛しています。 だから、虎鉄さえ幸せになってくれるのなら相手が男性だろうと構いません。 義兄さんは、どうですか?」
「わ、私は……」
「すいません、父さん。 ショックでしたか……?」
「……いや、私も……お前が幸せなら、相手が男性でも構わないよ」
若干会話がかみ合っていないものの、虎鉄は顔を赤くして、にっこりと微笑んだ。
「……父さんに話して良かった」
そう小さくつぶやくと、窓の外の景色に気付き、歓声を上げた。
「見てください父さん!! ホラ! 星見町が見渡せますよ!!!」
息子のつぶやきに顔を真っ赤にして喜んでいた父も、一緒に外に視線を向け、
その景色に心を奪われた
遠くに見える星見町は、濃淡の緑に包まれた美しい町であった。
温かい日差しと空を泳ぐ雲の影、そのコントラストが緑の上を流れていく様が、何とも長閑(のどか)に見えた。
「自分は」
静かに外を眺めながら、息子が話し始めた。
「自分は、あの町が大好きです。 静かで、温かくて、優しくて、何だかのんびりしてて」
父も静かに聞いている。
「自分は、ずっとあそこに住んでいるつもりです。 仕事で転勤も無いですしね。 だから」
……?
「だから父さんも、お休みが取れたり、仕事に少し疲れちゃったときは、いつでもあそこに、うちに来てくださいね。 自分、いつだって歓迎しますから! ね、父さん」
鉄志は、息子の顔が見られなくなった。
そのまま俯き、席に座ってしまう
「父さん……?」
「私は……そんな事をお前に言ってもらえる様な資格は無い……」
声が震えている。 見ると瞳から涙を流していた
「私は……家庭を壊してしまった……お前から……全てを奪ってしまった」
「とうさ……」
「何を今さら……笑ってしまうな。 本当に、ずっと何もしてこなかった分際で……何を……今さら……」
体が震えている。 足元の床には、パタパタと透明な水滴が零れ落ちている
「ごめんな……虎鉄……私は……」
「父さん、自分は……」
そう言いかけて、虎鉄は少し微笑むと首を横に振った。
「俺は……父さんの事、ずっと好きだったよ」
…………ぇ……?
父が涙を流したまま顔を上げると、息子は優しく微笑んでいた
「俺、子供の頃から、それに今も、父さんの事……大好きだよ」
「……わ、私は……ずっと家に帰らず……お前達に寂しい思いを……」
「俺さ、あの人……母さんに内緒で、子供の頃からずっと父さんの出ている映画のビデオ、買ってたんだ」
……?
「家には居なくても、俺は寂しくなんて無かったよ。 だって父さんは、いつだってテレビの中にいて、強くて、格好良くて、俺の……憧れだった」
「こて……」
「俺が生まれる前の映画も見た。 演技が……違ってた。 父さん、俺らの為に、凄い頑張ってくれてたろ……?」
父の顔は、涙でびしょ濡れになっていた
「母さんには通じなかったかもだけどさ、俺はわかってたよ。 父さんが、俺達を愛してくれてたって」
そう言うと、虎鉄は父の頭と自分の頭の両方のバンダナを静かに外した。
そして、自分の額の縞々を、父の額の縞々に強く擦りつけた。
「! ……虎鉄……」
それは、虎獣人の、特に『獣寄り』の虎獣人が行う『愛情表現』であった。
『愛してる』なんて言葉では到底表現できない、心からの『愛』の証。
何度も何度も、息子は父の額に自分の額を擦りつけた。
父は、ますます涙を流しながら、それでも笑って自分からも額を擦りつけ始めた。
そして少し顔を離すと、頬の縞も息子の頬の縞に擦りつけた。
父親が息子にする特別な『愛情表現』。 そして、息子の口と鼻をぺロッと舐めた。
深い 深い 『愛してる』
虎鉄は少し驚いたが、嬉しくなって
同じように、父の口元を舐めた
二人は夢中で愛し合った
今まで肌を重ねる事の出来なかった数十年分、何度も何度も口を舐めあった。
そして、ふと視線に気付いて横を向くと
顔を真っ赤にした係員の彼女が、ゴンドラの中を見ていた
そのまま横へと消えていく彼女……
どうやら一周してしまい、降りねばならないはずだったが、彼女は声を掛けられなかったらしい
当たり前である(笑)
「あの子から見て、自分達ってどう映ったでしょうね……?」
考えるまでも無い。 親子で密室でイチャイチャチューチューしていた様にしか見えまい……
二人は視線を合わせ、そして同時に笑った。
そしてもう一周、どちらがどちらの匂いかわからなくなる程、肌を合わせ、愛し合った。
まぁ、ゴンドラを降りる時、3人とも顔を真っ赤にした事は言うまでも無いだろう。
鉄志は思う
あのお嬢さんの目に
私達親子は
どう映ったろう
後日談──
新郷家では、ちょっと不思議な出来事が起こっていた。
仕事から帰って来た新郷中佐が、そのままテレビドラマを見ていたのだ。 しかもリアルではなく、わざわざ録画予約していったらしい。
いつもなら居間に入ってきた風呂上がりの妹に気付き、テレビを見ていても耳だけはそちらを向くのだが、今は完全にテレビに夢中になっているようだ。 耳も前を向きっぱなしである。
「お帰り、お兄ちゃん」
小声で妹が声を掛けると、やっと気付いたらしく、兄・新郷 真樹(まさき)は一時停止ボタンをピッと押した。
「あ、あぁ……ただいま、美咲(みさき)」
「珍しいね、お兄ちゃんがテレビドラマなんて」
いつもは時代劇しか見ない兄が、ちょっと照れくさそうにしながらテレビ画面を見る。
「石蔵鉄志が出てる……」
「……うそ……! テレビドラマに? え、それってどうなの……面白い……?」
ちょっと微妙な気がする……。 時代劇映画でしか見かけない、大物俳優だ。
このドラマ、どうやら『探偵物』らしい。 ミスキャストにしか思えないのだが……
「正直……凄い面白い」
兄は真剣な顔をして、巻き戻しボタンを押して再生した。
「石蔵鉄志な、いつもどおぉりの演技なんだよ。 でもそれがボケになってる。 新人の助手に『時代劇ですか!?』とか突っ込まれまくってるし、いつもどおり抜いた日本刀も『銃刀法違反です!』って没収されてハリセンに持ち替えさせられた」
「……よく受けたね、石蔵さん……この仕事」
現在画面の中では、石蔵鉄志がハリセンで無駄に格好いい殺陣を演じていた。 思わず美咲も笑ってしまった。
「……? 何で『さん』付けなんだ? 知り合いでもあるまいし」
「え? うん、ちょっとね……」
そう誤魔化しながら、画面の中の彼を見る。
「怖かったろう、もう大丈夫だ」
そう言いながら、泣きじゃくる少年に優しく微笑む彼。
「笑うんだなぁ……石蔵鉄志って」
そう言う兄の横で、それがあの日観覧車で見せた『お父さんの笑顔』である事を一人知っている事に、思わず微笑んでしまう。
「お父さんか……」
「何?」
「ね、今度のお休み、お父さんとお母さんのお墓参り行こうか?」
「? 何だよ、急に。 何かあったのか?」
「ううん」
「何となく(笑)」
おしまい
2025-09-18 07:00:00 +0000 UTC
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短編です。 では、どぞ~。
──すぅっと、目が覚めた。
この様な静かな、心地の良い覚醒は久方ぶり……いや、もしかしたら生まれて初めてかもしれない。
鉄志は目を開き、静かに部屋の天井を見ていた。
極度の低血圧の彼は、朝がとにかく弱い。
仕事に一度も遅刻した事が無く、かつ早朝から凛とした表情で仕事に臨めるのは、ひとえに枕の周りに置かれた二桁に達する数の目覚まし時計と、彼のマネージャーによる熱烈なモーニングコールのおかげである。 彼が朝に弱い事は、仕事関係者ではマネージャーくらいしか知る者はいない。
たまの休日は泥の様に眠る。 目を覚ますと大抵が夕方か夜で、それでもうっすらとしか覚醒せず、ボーっとしたまま1日を過ごす。
だが、今のこの部屋の明るさといったらどうだろう。 カーテンの隙間から差し込み直線状に部屋を照らす暖かな光。
昼、いや、むしろ朝に近い時間帯では無いだろうか……?
信じられないほど、心地良い
布団に顔を埋め、目から上だけを出す。 この布団が、そしてその匂いが、何とも言えず落ち着く。
いや、布団だけではない。 枕も、敷布も、部屋全体がまるで自分の部屋のように優しい匂いに包まれていた。
そう、ここは自分の部屋ではない。 天井が違う。
頭の周りにも時計が無い。 心地良い匂いに包まれながら、静かに深呼吸する。
そこでようやく記憶が戻った。 多分、隼人君の部屋だ……。
昨日、節分豆撒き大会に参加したものの結局息子とは大して話す事ができず、隼人君に連れられて彼の部屋で酒を飲んだのだった。
……情けない姿を見せてしまったな。 随分と愚痴をこぼしたように思う、しかも途中から全く記憶が無い。
どうやらそのまま寝てしまったらしい。 彼のベッドを占拠して……。
……! という事は、私は隼人君の匂いでモフモフしてしまったのか……
死ぬほど恥ずかしくなり、布団を出た。
シャッ、とカーテンを開け、明るくなった部屋を見渡す。
白と黒にまとめられた、落ち着いた印象の調度品やカーテン。 しかし、そこかしこにロボットのおもちゃが飾られている。 これはかなり意外だ。
自分のブリーフ一丁の姿に気付くが、脱いだ服が見当たらない。
クローゼットにでも仕舞ってくれたのだろうか。 しかし流石に勝手に開けるのは失礼だ。
寝室を出て、とにかく謝ろうとドアノブに手を掛けた時、ようやく自分が心地良く目覚めた理由がわかった。
鼻をくすぐる、温かな食事の香り。 そして微かに耳に届く、一定のリズムを刻む包丁の音。
それは、胸が熱くなるほど鉄志が欲しかった──
家庭の朝、家族の朝そのものであった。
ドアを開け、匂いのする方へと向かう。
人影が視界に入り、鉄志はポリポリと恥ずかしそうに頬をかきながら声を掛けようとした。
「はや……」
「あ、おはよう。 父さん」
「……ぎ……」
「ギャァアアアアアアアアス!!!!!」
短編 お父さんといっしょ
バシャバシャと顔を洗い、虎鉄が用意してくれたタオルに埋めた視線を上げると、鏡の中には何とも情けない男の顔が映っていた。
困り果てた、どうすれば良いのかサッパリわからず途方に暮れた、俳優・石蔵鉄志の顔。
両手で顔をバシンと叩くと、キッと我が目を見据えた。
「(これは、隼人君がくれたチャンスではないか! 多少強引ではあるが、それでもこんな機会、滅多にあるものではない……! 朝食の席だ! そこで虎鉄の心をしっかりと掴み、親子の絆を取り戻すのだ……!)」
再びパンパンッと顔を叩いて気合を入れると、バスルームを出て朝食の席に着いた。
「いただきまーす」
虎鉄が手を合わせてそう言うと、鉄志は意を決した。
「いやぁ、昨日は驚きましたよ。 いきなりにろさんに担がれた父さんが──」
「虎鉄!!」
「……? な、何ですか……?」
・・・・・・・・・・・・
「ど、どうかしたんですか、父さん……?」
「何でもないです……」
消え入りそうな声で鉄志が言った。
馬鹿か!!? 馬鹿か!!!?
何をやっているんだ、私は!!!
朝食の席だぞ!!? 手品やってどうする!!! 手品をやってどうする!!!!!
食事だよ!!! 食事の事で会話を広げるべき所であろうが!!!!!(怒)
キッ、と鋭い目で汁物の入ったおわんを見据える!
「(……?)」
父の不可思議な行動に呆然とする息子を尻目に、父はその中身を静かに口に含む!
「うむ! お吸い物か!! 朝食の定番といえば味噌汁だが、そこへあえてお吸い物を持ってきた心意気や良し!!! 透明に澄んだ汁、しっかりとしたダシの味わい!」
「すいません……丁度お味噌切らしちゃってて……。 それ、お寿司に付いてた即席のヤツです……」
(あぁ……)
「だっ……こ、この厚焼き玉子はどうだ!? こんなに綺麗に作れるものなんだなぁ! すごいぞ、虎鉄! どれ……ウン! 美味い!!! ほのかな甘み、中心部の柔らかさ! 見事な──」
「……それ、隣町のデパートでやってた物産展で買ってきたヤツです……。 すいません、自分で作った方が良かったですか……?」
(あぁ…………!)
多分これ、結構な値段がするヤツだ……それをわざわざ父に出してくれたというのに……!
駄目だ! 全てが裏目に出る!! 他の品は……
焼き魚もサラダも、今ひとつ褒めどころがピンと来ない!
やはりここは、向き合って座る二人の中央に鎮座する、大きなグラタンに行くべきであろう!!!
手の込んだ料理のようだし、褒め所など星の数ほど散りばめられてあろう!!
鉄志が箸を入れようとすると
「あ、それ箸じゃ取りにくいですよ。 ちょっと待ってくださいね」
そう言うと、大きなスプーンで四角く切り、それを小さな皿にもって「はい」と手渡してくれた。
その細やかな心遣いに、胸が熱くなる。
だが、それとは逆に頭はかなり混乱していた。
どうやら『ラザニア』というものらしい。 断面が『層』になっている。
確かミートソースと薄いパスタを交互に重ね,最後にホワイトソースを乗せて焼く料理だ。 知っているぞそのくらい! おじさん甘く見ないでくれるかな!!?←誰に言ってるの?
しかし、これはどういうことか……?
明らかに『ごはんの層』が見える……。 あと『肉?の層』らしきものも……。
そして、微かに香る『焼肉のタレ』の香り……『焼肉の層』……?
えぇい! 迷っていた所で事態は好転なぞせぬわ!!!
バクッ!
やばい……どうしよう……
あまり美味しくない……
バカな! どうしてその様な事が言えよう!!!
息子が! 最愛の一人息子が!! 父の為に丹精込めて作ってくれた食事に!!!
言えるか!? 否!!!
断じて否!!!!
「ウン、なかなかいけるものだな……! 洋食はあまり得意ではないのだが、ウン!」
「本当ですか!? じゃあ自分も……」
パクッ
「……あまり美味しくないですね……」
「!!!!!」
「父さんどれくらい食べるかわからなかったので、有り合わせで一品作ってみたんですけど……。 何か、気を遣わせちゃって……スイマセン……」
(あぁああああああああ…………)
ちなみにこの後、一緒に皿を洗おうとして全てを床に落としてしまった事は言うまでも無かろう!!
常に裏目に出る男、鉄志の運命や如何に!
続く~
という訳で、ちょっとした時間を利用して短編を書いていきます。
まずはパパから。
今回は、今までのお話を読んで下さった方々に先がわかる作りにしました。
こてっちの登場の絵を見た時点で、そのトラップに気付かれた方が殆ほとんどでは?(笑)
2025-09-11 07:00:00 +0000 UTC
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最終話、お待たせしました~……ってもう3月だよ!!!(※連載当初のお話です)
「えぇ~……ゴホン、では、紹介します。 源司さんの双子の弟さんで
波威流と弩来波です」
(スゲェ……あの方、カミサマ殴ったよ……?)
最終話 最後の勝利者
「え、二人とも……豆撒き大会、参加したいの?」
ウンウンと頷く双子。 店長、ちょっと困ってにろさんに視線を向けると
「うん、まぁ良いんじゃないか? 二人とも『カミサマチーム』に分類されるし。 但し! 負けたら皆と同じように全裸盆踊りの刑だぞ?」
ニヤリと挑戦的に笑うにろさんに
「ほぉ、望むところだ。 負けた時にはいくらでも脱いでやんぜ?」
輪をかけて挑戦的な双子のどっちか!!! そして……!!!!
「ほれ、かかってこんかい オニロベエ!」
「(オニロベエ……!!?)」
あっさり地雷踏む!!!!
こんにゃろう……変なあだ名付けよってからに!!
いや、落ち着け落ち着け……。 他の者達と違って、この二人には前情報が無いんだ……。
にろさんは、事前に全員と少しずつ話をしている。
無論彼らの性格や傾向をサーチするためだ。
にろさんが取った手段は、自己紹介をさせるのではなく『他の者の紹介をしてもらう』というものだ。
これは自己紹介を単純にしてもらうより、遥かに多くの事がわかる。
例えば、ナギは師範の事を気にしているようで、実は茶道寺の事を一番気にしている。 話の中で何度も『弟、兄弟』という単語が出てくる。 その辺から『虎鉄にお兄ちゃんと呼ばれたがっている』事が推察される。
同様に、師範も実は茶道寺の事を一番気にしている。 苗字が無いカミサマ以外で、彼だけが虎鉄に名前で呼ばれていることが気に入らないらしい。 これも『名前』という単語が何度も出てきたことからわかった。 つまりは自分も名前で呼ばれたがっているのだ。
にろさんには情報収集のテクがある。 だが、流石に初対面ではどうにもならない。
とはいえ──
「(虎鉄の仲間達には共通点がある。 『虎鉄に惚れている』事だ。 この勝負を通してそれがはっきりとした。 誰一人として虎鉄を狙おうとしない。 オニオニチームの弱点であるにもかかわらず、だ。 しかもフェイントで虎鉄に向かって豆を投げようとさえしないのだから、これは本気の本物だ)」
「(先程のじゃれっぷりから見て、この二人も例に漏れぬだろう。 ならば、俺との直接勝負! こんな事もあろうかと……)」
虎パンツのケツの方に手を入れ、何かを取り出すにろさん!
「(俺にはリーサルウェポンがあるのだ!!!)」
バッ!!!
虎鉄の子供の頃の写真!!!!!
な、バ……バカな……!!?
何て可愛いんだ!!!!!
「(信じられん……! 何て可愛さだ!!! 数値にしたら何kk(虎鉄の可愛さの単位)あるんだ!!? 駄目だ……! 叔父の俺でさえこの有様! 普通に虎鉄に惚れてるヤツにこれを見せたら、一体! 一体どうなってしまうのだ!!? これはリーサルウェポンなんてレベルじゃない! 史上最悪の大量殺人兵器に違いあるまい!!!!!)」
にしても……
かぁわいい~★
オニオニチーム・敗退!!!
「まさか俺まで裸踊りする羽目になるとは……。 まったく、弟さん達には参りましたな(……ハァ)」
「いやぁ、お恥ずかしい……!」
「褒めてませんから」
「……あれ、そういや虎鉄さん居ないっすね」
確かに。 いつのまにやら店長の姿が消えている。
さては、逃げたな……!
そう思ったその矢先!!
「皆、待たせてすまぬ!」
※注:付け牙です
に、義兄(にい)さん……!!?
「それでは私が!」
「皆に見せて進ぜよう!!」
カッ!!
「真の『舞』というものを!!!」
かかか、かぁっこいい~!!!!!
「(あぁ……)」
こうして、内緒で呼んでおいたこてパパに虎鉄の交友関係の傾向をこっそり教えて、友人達と打ち解ける事で親子関係を修復しようというにろさんの心温まる計画は、当の本人の手によってあっさりと打ち砕かれたのであった。
何この状況、意味わかんない……。
さて、別の部屋で目を覚ました店長。
おろおろしているところにいきなり当て身を食らって意識を失い、何が何やら状態。
畳の上に例の鬼ツノが転がっている。 取れたかと頭に手をやるとバンダナが無い。 起き上がって自分の体を見ると、見知らぬブリーフ(生暖かい……)を穿いている。
訳が判らず廊下に出て、何やら音がする部屋に入ってみると──
とんでもない事になってた!!!
「お、虎鉄……?」
店長、大量失血!!!
「! 虎鉄……! こてつぅううううう!!!!!」
再び意識を失ってしまった店長は、
何故か満たされた表情をしておりましたとさ。
めでたしめでたし
2025-09-04 07:00:00 +0000 UTC
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続きです……。 もう2月中旬過ぎたよ……(※掲載当時のお話です)
連続で脱落してしまった駄目っ子コンビ!!
どうなる、カミサマチーム!!?
いや、まだだ!!!
まだうちのチームにはヤツが!!!
遊戯王がいる!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・
「虎鉄さんに裸踊りさせるくらいなら──」
「俺が踊りますよ」
茶道寺自決!!!
「しゅしゅしゅ、愁哉くぅうん!!!」
「このクソ弟キャラがぁああ!!!!!」
いや、まだだ!!! まだあの漢がいる!!
このチームの大黒柱、最後にして最強の壁!!
神様こと源司のオヤジが……!!!
「負けてしまいました」
ほらぁあ!! あんなにボリボリ食うからぁああああ!!!!!
ハイ、という訳で意外にあっさり勝負がつきました。
カミサマチーム、全裸盆踊り決定~!
「虎鉄さん! 虎鉄さん!! これからたっぷり私の裸踊りを披露いたしますぞ~!!」
「あまりの格好良さに惚れてしまうかもしれませんぞ?」
・・・・・・・・・・・・・・・
「源司さん、ひょっとしてわざと……?」
「な、何を言っておるのですか!? 私は常に全力投球ですぞ~!!?」
「……ありがとう、源司さん」
全て計算…!!!!?
今回も美味しいところを一人じめのカミサマ!
起死回生の一手は無いのか!? いつも同じオチじゃ飽きられちゃうぞ……!!!
と、その時……!!!!!
「こてっち~!!!」×2
この声は!!?
店長がパッと笑顔になり、玄関に向かう。
戸を開け、皆に紹介しようと呼んだ二人を出迎え──
「あっそびっに来ったよ~!!!!!」
「ギャァアアアアアアアアス!!!!!」
文字通り、店長の胸に飛び込む双子!!!
「こてっち裸だ~!! フカフカ~!!!」
「好き~!!!」
「わっ、ちょ、待っ……!! だ、駄目だったら! それはめくっちゃ……だっ、やっ、そっ……
そこの匂いは嗅いじゃ駄目ぇええ!!!」
どうなる節分!!? どうなる全裸盆踊り!!!?
次回、最終回!!! 続く~!!!!!
はぁ、もう本当にスイマセン……。 次載る頃には2月終わってるよ、多分……。
内容的には肩透かしだったかもですね。 すんごいバトルを期待されていた方々、申し訳ないです!
で、やっと顔見せイベントが出来た双子君。 さて、どうなりますやら……。
ちなみに次回は1枚カラーを入れる予定ですので、ちょっと更新かかるかもです。
(※全て掲載当時のお話なので、普通に来週更新されます)
2025-08-28 07:00:00 +0000 UTC
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続きで~す
「それではこれより『豆まき頂上決戦・鬼バーサス神様』──」
「『鬼がいつまでも外に追いやられてると思うなよ!!』
……の説明を始めます」
(怖ぇええええ……)
「チームは我々『オニオニチーム』と、源司さんを中心にした『カミサマチーム』に分かれます。 君達は我々に豆をぶつけて怯(ひる)ませ、その間に我々二人のどちらかの虎パンツを奪い取ります──」
「──見事、虎パンツを剥ぎ取る事が出来ればそちらの勝ち。 ぶつける豆が無くなった時点で虎パンツを取られてなければこちらの勝ちだ。 ちなみに豆をぶつけられたら5秒間、鬼は動きを止めなければならない事とする。 当然こちらは二人で連携を取って互いのパンツを守る。 ……とまぁ、こんな感じでどうですかな?」
「なる程、一方的に鬼種の方々に豆をぶつけるこの風習は正直好きではなかったのですが、勝敗を決すると言うのであれば面白そうですな!」
「食うなよ!!!」
「そうそう、敗者チームは勝者チームの前で『全裸盆踊りの刑』に処せられますので」
「ホウ……望むところですな!」
「嫌だァああああああああ!!!!!」
「まぁ落ち着け虎鉄、俺に必勝の秘策がある」
ごにょごにょと店長に何やら耳打ちするにろさん。
一方、カミサマチームこと『トラトラチーム・トラトラ抜き』。 実はこちらのチームには大問題があった。
互いにたいして仲が良くないことである。
この面子の共通点は『店長と知り合いである事』、つまりは店長を中心にした集まりなのである。 その中心がいなくなってしまっては、会話もままならなかったりする。
特にナギタンコンビなど、完全に犬猿の仲になってしまっている。
どうなる、頂上対決!? どちらのサービスショットが全開になるのか!!?
「では、スタート!!」
「うらぁあああああ!!!!!」
にろさんの号令と同時に飛び出すナギタンコンビ!! 完全に息が合っている!
どうなっているんだ!!? そんなに店長の全裸盆踊りが見たいのか!!?
貴様らの純愛は、所詮劣情まみれだったのか!!? 見損なったぞ!!!
<二人の頭の中を覗いてみよう★>
「これだぁあああああ!!!!!」
大丈夫だった! アホな子のままだった!!!
が!
ズガガガガガガガガ!!!
ニッ
本気モォオオオオオド!!!!!
スタッ、とにろさんの背後に着地する師範!
前方からはナギさんの豆攻撃! 当たれば5秒間の停止!!
「マズイ……ッ!!」
後方から一気に距離を詰める師範! にろさんには防ぎようが無い!!
ここは店長がサポートにまわらなければならないが、当の本人はチラリが恥ずかしくて座ったままだ!!!
師範の手が伸びる!!!
「叔父上殿、頂きましたぞ!!!」
と、
「こ……幸志朗(こうしろう)さん……」
「…………え……?」
「あの……こ、幸志朗さん……」
カァアアアアアアッ……!!!
師範脱落!!!
「こ、今夜は……ホームランです……ゼ…………(ガクッ)」
「タンさん……! タンさぁあああああん!!!」
「……良ければどうか、名前で……呼んでください……(ポッ)」
「(あのバカ中年(←3つ違い)、つまんねぇ手に引っかかりやがって……!!!)」
しゃあねえか……じゃ、俺も……たまには
本気モードでやってみるか……
「あの……お、お兄ちゃん……」
「………………ナヌ……?」
「むっ、無理しないで……ね、えと……お、お兄ちゃん……?」
ウォオオオオオオオン!!!!!
ナギさん脱落!!!
「あ、あの……すいません、何か……訳わかんないこと言っちゃって……」
「フ……フフ…………い、良いんだよキバトラ……でも、もう一回だけさっきの言ってくんない……?」
すっかりにろさんの手の上で踊らされる駄目っ子コンビでした。
続く
「まったく、駄目オオカミにも程があるわ……」
「貴様にだけは言われたくねぇよ……阿呆ライオン」
本当に駄目っ子だ。
という訳でまた続いちゃいました……漫画風にすると絵が多くなりすぎてイカンですなぁ。
次回は残り二人の対決と……お、終わるかなぁ? 既に節分遥か遠くなのに……
ちなみに、やっと出た師範のフルネーム。
タン 幸志朗
既に失われた『中華央国』の血筋(現存しているのはイギリス、ロシア、日本のみ)で、お母さんがこの名前をつけました。 父は『レイオウ』、祖父は『リュウケン』。 文字表記が出来ないのが嫌だったんでしょうね(笑)
2025-08-21 07:00:00 +0000 UTC
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「と、いう訳でー!」
店長、溜めに溜めて~……!
「鬼役の方に来て頂きましたーっ!!!」
うわぁああ……
『豆まき頂上決戦! それは、愛と絆の物語』
ちなみに全員、にろさんとは顔合わせ済み。
「という事で、にろさんに鬼役を頼みました! 皆で楽しく豆まきしましょう!」
「叔父上殿、何を持っておるのだ?」
「アポロチョコじゃねぇのか? キバトラが食ってるのを見たことあるゼ?」
「ではにろさん、準備を──」
ビシィイイイイイッ!!!!!
「な……?」
「虎鉄も鬼役に決まっているだろう?」
「な、何くっつけてるんですかぁああ!!!」
くっ付けられた角を取ろうとすると
「痛たたたたたたたたた!!!!!」
「安心しろ、源司さん特製のノリだ。 30分もすれば簡単に取れる」
「何作ってんすか……?」
「いや……まさかこんな事に使うとは……」
「だがそれまでは絶対に剥がれん強力なヤツだ」
「無理に剥がしたら、また禿げるぞ」
「ギャアアアアアアアアアス!!!!!」
そのまま店長、にろさんにズルズルと引っ張られて一つの部屋に連れ込まれる。
「ちょっ! やっ!! やめて下さい!!! あっ!? 何するんですかっ!!? やだ!!! えっち!!! 意味わかんない!!!! 駄目っ、ちょっ、やっ……」
「嫌だぁあああああああ!!!!!」
部屋の襖が開き、店長が出てきた。
「む、無理ですよこんなの!!!!!」
「何を言っているんだ、鬼牙に虎パンツの虎獣人なんて最高じゃないか!」
「う、ウルサイですよ! 何で布っきれ一枚なんですか!」
セクシー・ダイナマイツ!!!!!
続く★
※このお話は、節分の日にブログに掲載されました※
すいません、季節ネタなのに続いちゃいました。
今回は一風変えて漫画チックに。 説明文も出来るだけ少なめに。
リミッター解除で源司さんも駄目な子に! 馬鹿カルテットになってます(笑)
(番外編を読んでない方へ 双子の弟達の活躍により、源司さんは恋を出来る様になりました。 そこだけ押さえておけば番外編はOKです)
続きを載せる頃には、節分なんて遠い日の出来事になってるんだろうな……
ちなみに師範の鉢巻き。 流石に意味不明だと思います。
『そいじょい』→SOY JOYです。
食べ物の名前で、門下生が話しているのを耳にしたんですが、師範はコレを
豆まきを楽しむ事
だと思ってます。
そんなわけで、今回は呆気に取られてセリフの無かった皆さんも、次回は沢山喋るので少々お待ち下さい。
作業スピード遅くてスイマセン……
2025-08-14 07:00:00 +0000 UTC
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のんびり獣道のお話もひと区切りつきましたので、ブログ連再当時に並行して秘密のアダルト裏サイトに掲載していたエッチイラストをまとめてみました!
当時のアダルトサイトは修正基準がかなり緩かったのでほぼ無修正みたいな感じでしたが、流石にそこは現代基準で修正し直しております。
その代わりと言ってはなんですが、通常のファンボックスでやっておりますオマケを全てのイラストにつけておきました!
また、当時のサイトにイラストに合わせて書いておりました各テキストも、ホームページビルダーからサルベージしてテキストフォルダに一括して載せております!(超大変でホゲりましたよね)
完全新規の方々にはちょっとイメージが湧きづらいかもしれません、ゴメンナサイネ!! 当時をご存知の方々は、懐かしい目で見ていただければ幸いです!!
今後も区切りの良いところで、こんな感じでのんけもアダルトイラストを纏めていこうと思います!
もちろん成人指定なので、全体公開でも未成年は見てはいけません!!
2025-08-07 07:00:00 +0000 UTC
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このお話は、本編とはあまり関係ない『番外編』になります。
何というか、はっきり言って”自己満足”です。 設定ばかりでつまらん話が後半に待ってます。
という事で、最初の1シーンを読んでみて、よく分からない方はスルーの方向でお願いします。
待合室にポツネンと座る二つの人影。 ナギさんとにろさんである。
にろさんを車で送りたいからと、自宅にパジェロを取りに帰った店長待ち。
ナギは上着を脱いでランニング姿になっている。 丸めた上着を長椅子に置き、鼻をかんだティッシュをゴミ箱に捨てると、自販機でカップのコーヒーを2つ買って戻って来る。
ミルクと砂糖入りの方をにろさんに渡すと
「ありがとう」
にろさんが微笑んだ。
「あぁ」と小さくつぶやくと、再び隣に座る。
オジキは自分をどう思っているだろうか、ナギは心配になる。 眼帯に銃創、加えて十字傷、どう見てもまともな人生を歩んでいない。
可愛い甥っ子にはふさわしくないとか思われてるかも知れんな
そんな事を考えながら、酸味ばかりで美味くないコーヒーをすすると
「虎鉄とはもうセックスしたのかい?」
ブーッ!!!!! 思いっきり吹き出した!!!
「……な…………」
「何言ってんだよ!? んな訳ねぇだろ!! アホか!!! 俺ら男同士だぞ!!? セックスなんてする訳ねぇだろ!!!」
ゲホゲホ言いながら凄い形相で抗議するも、にろさんは至って普通だ。
「そうかな? 男同士でもするだろ、セックス。 というか君達は付き合っているんじゃないのか? 虎鉄が君には随分と気を許しているようだったから、てっきり」
その言葉に、ナギの顔が真っ赤になる。
「お、俺とアイツはそんなんじゃねぇよ……」
そう言いつつも、さっきの言葉が頭に響いた。
俺とアイツが……セックス……? お、男同士ってどうするんだ……?
例えば……
アイツのチンポを咥えてやる……
お、お兄ちゃん……気持ちいい……
うぉっ! な、何だこれ!? ムクムク……
け、ケツの穴を貸してやれば良いのか……?
お兄ちゃんの中……あったかい……
うぉおおっ!!? 何か……何だこれ!!? ムクムクムク……
ベッドで抱き合う二人……
お兄ちゃん……大好き 気持ちよかったか? 良かったな
ワォオオオオン!!!!!
やばい! コレやばい!!!
気が付くと、ナギの大きなイチモツは完全に勃起してしまい、ズボンの前をくっきりと持ち上げてしまっていた! 思わず焦って隠そうとすると
「こんにちは!」
うわぁあああああ!!!!!
いきなり後ろからポンと肩を叩かれ、驚き飛びのく! が、前の長椅子が背中に当たって思いっきりぶっ倒れてしまった。
声を掛けた人物も、その姿におろおろする。
「あの、す、すいません……そんなに驚かれるとは……」
ガッと睨もうとした瞬間、ナギの動きが止まった。 にろさんも少し驚いた表情で、その人物を見ている。
その青年は、見た目は『ヒト』であった。
だが、ナギと同じ狼の耳と尻尾を生やしている、何とも奇妙な容姿をしていた。
「その、風邪……お大事に……と、それだけ言いたかったんです」
頭を何度も下げながら、ソソクサと病院の奥の方へと行ってしまった。
「……今の人、虎鉄の知り合いかな?」
彼の後姿を見つめるにろさん。
「いや、見たこと無ぇな、あんなヤツ。 ……ん? どうかしたのか?」
何か考え込んでる様子に気付いてナギが訊くと
「彼の声を、聞いた気がする……」
寝ている間……多分、目を覚ます直前だと思う。
起きて……そう、言われた気がした
入れ替わりに店長が戻ってきた。 どうも遅くなりましたなどとニコニコしながら喋っていると、ナギの姿を見て唖然とした。
二つの長椅子の間に倒れているナギは、またもコーヒーをかぶっていたのだ
「あれ、ナギさんもう風邪治ったんですか?」
パジェロの後部座席で体を拭いていると、不意にキバトラが聞いてきた。 「は……?」と言おうとして、ナギは鼻水がすっかり止まっている事に気が付いた。
……いつの間に、風邪治ったんだ……?
世界は 残酷だ
でも……
青年が屋上に出ると、心地良い風が髪を撫でた。
温かい日差しの下、何枚もの真っ白いシーツが柔らかくその姿を揺らしている。
澄んだ空気を少し多めに吸い込むと、気持ちが安らぐ。
今、屋上には自分以外にもう一人、男性が立っている。
彼は青年に気が付くと、優しく微笑んだ。
青年と同じ不思議な容姿。
『ヒト』の姿をしながら、虎とも獅子ともつかぬ尻尾を生やしている。
日差しに輝く金色の髪、そして、遥か澄み渡る空を切り取ったかのような青い瞳。
「いきなり全快はやりすぎじゃないかな?」
笑って青年に言うと、青年もハハハと少し困った顔を見せて笑った。
世界は、残酷である。 青年はその事を良く知っていた。
世界はいつでも彼を裏切る。
『人間』だと思っていた自分
「きっと幸せな時間がずっと続く」と思っていた自分
彼は何度も、世界に裏切られ続けた。
だけど今回は、良い意味で裏切られたかな……
少し上手い事を言ったな、と青年が内心で笑った。
『絶対自閉のセカイ』にいた自分達に思考接触をしてきた(どうやって見つけたんだ?)双子の竜神。 その兄を想う心に負け、システム変更の為に『こちら側』に来て目にした、彼らの兄の姿。
そして、その兄の想い人になるかも知れない人物を調べる過程で行き着いたこの場所。 鬼種。
その容姿と、名前……
「名前が……似ててさ……その、彼と……」
笑って話そうとするが、上手く言葉が出ない。
肝心の『彼の名前』が口に出来ないからだ。 かつての、たった一人の『親友』の名前
遥か昔に先立ってしまった、彼の名前を……
その名前を口にしようとするだけで、涙がにじむ。
隠そうと少し俯くと、金髪の男性は何も言わず、彼を優しく包んだ。
「ごめん……ありがとう、クロム……」
青年はそう呟くと、彼の胸に顔を埋めた。
クロムと呼ばれたその男性も、そのまま優しく青年の髪を撫でる。
と、油断していたその矢先!
青年のすばやい手つきで、上着のボタンを全て外されてしまっていた!
焦ってあたふたと周りを見るクロム。 その姿が何とも可笑しい。
露わになったクロムの上半身に、そっと触れる。 クロムは汗をかきながら、顔を赤くしている。
厚い胸。 筋肉に覆われた腹。 白い肌に輝く、髪と同じ金色の体毛。 そして
心臓の辺りにある『Ⅱ』の文字と、そこから広がる波のような模様
それが刺青でない事を、青年は知っている。
自分にも同じものがあるからだ。
違う部分は一つ、彼の胸にある数字は『Ⅰ』である。
それは、かつて『ケモノ』に堕ちた証。
多くの、数え切れない程の命を奪い、互いに殺しあおうとした『咎人(とがびと)』の証。
無限とも言える時間を、二人で生きねばならない『罪人』の証……
青年が悪戯っぽく微笑むと、クロムの方から唇を重ねた。
未だに顔を赤くしたまま、それでも彼はキスをしてくれる。 その優しさが、青年には嬉しかった。
自分からもキスを返し、深く求め合う。
クロムのズボンの留め金を外し、その中に手を入れる。
鬱蒼とした毛の感触が伝わる。
唇を重ねたまま、恥ずかしさに小さな声を漏らすクロムに、青年は深い愛情を感じる。
そのまま陰毛の下にたたずむ、クロムの逞しいイチモツに触れようとした瞬間
「誰かに見られたらどうするつもりだ、このバカップルども!」
シーツの向こうからの突然の声に、二人はビクッとした!
現在屋上は、完全に二人の『支配下』にあった。 誰かが入れるはずが無い(まぁ、だからクロムもキョロキョロする必要なんて無かったのだが)。
二人が注目する中、その人物は何やらもぞもぞしてから、その姿を現した。
源司である。
二人は彼を見、何と言うか、本当に『純血』なのだな、と感心する。
その姿は、かつて彼らと共に戦った友人、対象の物体を寸分違わず複製する『完全模倣犯』の血を持つオッサン、『御堂 樹(みどう いつき)』そのものである。
て言うか、もう全く見分けがつかない……。
硬質化した顔面、ぶっといしっぽ。
かなりのお年だというのに、相変わらずの革ジャン・黒ジーンズ・赤シャツ姿
ん……?
折れた右角……リクェルトに付けられた、額のバッテン傷…………
んんんんんんんん……? ちょっ、
「ちょっと待てぇえええ!!!?」
青年が大声を上げた!
「い、い……樹さん!!!?」
「よ! 久しぶり……になるのか?」
源司の血族のオリジナル、御堂 樹は笑って挨拶した。
「な、何が、どうなって……!!? 樹さん、確かに死んで……」
そう、遥か遠い昔になるが、二人は樹が天命を全うするのを看取っている。
時間を超え、歴史を変えれるメチャクチャ神様ワールドでも、自力で生き返ることなんて……
「フフフ~、悩んでいるな! 悩んでいるな~!! ブフーッ!」
満面の笑みで、樹が満足の息を漏らす! そして、いきなり赤シャツをバッとめくって上半身を見せた。
そこには、二人と同じ波のような模様があった。 そして数字──
「0(ゼロ)……!!?」
そのリアクションに大満足の樹! 再びブフーッと息を漏らすと
「さぁ、どういう事だ!? どういう事だっ!!?」
嬉しそうに謎かけしてくる!
探偵事務所を営んでいた彼は、この手のお遊びが大好きなのだ!
しかし、サッパリわからない。 悔しいので、青年もよく考えてみる。
胸に模様があるのは、『クェルト心核(しんかく)』を持っている証だ。
それが大前提なのだが、そこからおかしい!
『クェルト心核』は、この世に二つしか存在しないのだ。
イギリスに出現した第1クェルト、その心核より創られた『人核融合成功体第1号』たるこの青年が持つ一つ
ロシアに出現した第2クェルトより回収され、『人核融合成功体第2号』如月(きさらぎ)が持ち、日本でクェルト化した後に3人のウィルス感染者に分け与えられた『分核(ぶんかく)』──
『神の見えざる手』 『壊れた古時計』 『完全模倣犯』
それらを再統合し、現在クロムの中にあるもう一つ
これで全てだ。
元になるクェルトが2体しかいない以上、増えようが無い。
『完全模倣犯』なら複製できるが、『対象物に直接触れる事』が絶対条件の能力だ。 しかも樹自身は既に日本での最終決戦時に、彼の制御核たる『分核』をクロムに託している。
結論、心核は増えない
だが、それでは現状が説明できない。
本物の樹がいる以上、超長距離の時間移動をしている。
『クェルト心核』の廉価複製である『神格(しんかく)』では、こんな移動はもって数秒だ。 時間制御能力として完全に覚醒した『壊れた古時計』以外、説明が出来ない。
さらには『空間転移』も行っている。 神々がこれを使うには『神の見えざる手』を基に作られた『鳥居』が必要だ。 だがそんなもの、ここには無い。
結論、樹は心核を持っている
……駄目だ、二つの命題が矛盾したまま一致しない……
「ブッブー! 時間切れ~!!」
腕で大きなバツの字を作って、樹が笑った
「正解は、『子孫が創って私にくれた』でした~!!!」
「……は? はぁあああああ!!?」
無理だ! アレをゼロから創る……!?
ゼロ……?
「そしてこれを創ってくれた者達を、お前達は知っているはずだぞ? なにせ──」
……?
「これを創ってくれたお礼に、お前らの居そうな場所を教えてやったんだから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あの双子に情報流したのはあんたか!!?」
ツッコんでみるも、よく考えればとんでもない事だ。
あの双子が『心核』を……?
「実はちょっとした種明かしがあってな。 私の『心核』研究は、かなりの所まで進んでいたんだよ。 だが私には、僅かな発想と、技術と、そして何より『時間』が足りなかった。 だから全ての情報をブラックボックスに詰めて『神格』の中に詰めた。 私の願いと、私の居る時間軸を示した座標と共にな」
それを基に……?
「彼らはな、兄の為に研究を始めたのだ。 兄を縛る法則の排除の為に、『神格』の解析から始めたのだな。 そして、到達したのだ。 常日頃より『神の力』に頼らず、己の力で物を生み出す事を続けた彼らは、私が到達できなかった所へ。 そしてほんの数秒だが過去の私と接触し、新たに創った『心核』を授けてくれた。 油性マジックで『兄ちゃんが家族以外を好きになれるよう取り計らえ!』と書かれた『心核』をな」
笑って樹は、胸の部分に親指を指した。
だが、青年は笑ってはいなかった。 事実が判明して、その事の重さに泣きそうになっていた。
「自分が何をしたか解ってるんですか……? これから、どれだけの時間を生きて……」
青年の声が、僅かに震えた
「どうしてそこまで……」
だが樹は、笑顔のままだ
「……一緒に生きようじゃないか、なぁ」
「私達は、仲間だろう?」
そう言って、優しく笑って見せた。
見ると、クロムも微笑んでいた。
「で、樹。 俺ぁいつまで隠れてなきゃならねぇんだ?」
自分も笑おうとした青年は、唖然とした。 シーツの奥から聞こえた、その声に。
本当に、本当に……あり得ない声
懐かしい……大好きだった『声』……
「グレイ君に『分核』を託す時、私が『完全模倣犯』で複製しないと思ったか?」
樹の体には、現在『心核』ともう一つ、『分核』が存在している。 そして、
『心核』に直接触れた時、それをもう一つ創ったのだ。
「めちゃくちゃだよ、こんなの……ルール違反だよ……」
立ち上がり、シーツに映ったその人影に、青年の目から涙が零れ落ちた
「『ルール』って言うんじゃねぇ」
懐かしい……その言葉……
「日本人なら」
「規則と言え」
「だろ……?」
「睦月(むつき)」
青年は、睦月は、シーツの向こうから現れた彼に、彼の胸に、飛び込んだ
「鷹人(たかと)君……!」
世界はいつも残酷で、いつでも自分を裏切り続けた
でも、病院で聞いた笑い声を思い出す
そして、不可能を可能にした、双子の竜神の『想い』を
これからは、また世界と向き合おうと思う
だって、世界は
こんなにも 『優しさ』に満ち溢れているのだから
「そうだ、じゃこれからは3Pという事で!」
「死んでもするか!!!」
「では、私も含めた3人でグレイ君を攻めるというのはどうかな? 睦月が口でしてもらい、私がお尻を、で鷹人がグレイ君のおちんちんや乳首や腋を舐めてあげて……」
「死んでもさせるか!!!!!」
おしまい
※余談※
このお話はホームページに掲載した読み切り漫画『ヒトミニミルモノ ソラノアオ』と、現在デジケット様にてデータ版として販売している『のんびり獣道 設定資料集』を読んで初めて分かるようなマニアックな内容になっています。 ご興味がありましたら、よしなに……
2025-07-31 07:00:00 +0000 UTC
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完結編です。 覚悟をお願いします。 記録更新の『最長』です……
店長は、自分の事をあまり語らない。 気を遣われたくないからである。
だから、その秘密の行動を知るものも居ない。
厳密に言えば、『知る者は居ない』と店長が思っているだけで、実はここに例外がいる。
常に陰ながら店長を見守っている人物、ナギである。
店長は、特別な用事がない限り、仕事帰りには必ずある場所へと向かう。
そこで1、2時間過ごした後、家路につく。 師範の道場で飲み会を行う場合も、大抵この用事を済ませた後である。
1月初め、天気が良い日はそうは感じないが、今日のような曇った日はまだまだ肌寒い。 熱い缶コーヒーをすすりながら、ナギは今日も遠くから店長を見守る。
店長はいつもと同じように行く途中でスーパーに寄り、温かい缶コーヒーを2本買う。 ナギが飲んでいるものとは違う、やけに甘いやつだ。
それをカバンに入れると、フンフン鼻歌を歌いながらいつもの場所へと向かう。
ナギには、その姿を見るのが辛かった
店長が大きな建物に入っていく。 ナギが見守れるのはここまでだ。
中にまで入っていく気がないからである。 いや、正確に言えば
その光景に耐えられる自信が無かったからである
店長が部屋の前に立つ。 壁には名札が付いている。
『二口 隼人(はやと)様』
ゆっくりとドアを開けると、部屋の中央、大きなベッドに寝ているにろさんが見えた。
「こんばんは、にろさん」
そう声を掛ける。 にろさんは眠っている。
カバンを置き、ベッドの横にある引き出し付きの台を見る。
台の上には冷めた缶コーヒーが1本置いてある。
それをカバンにしまうと、引き出しからビニールパックを取り出し、ベッドの横につけてある黄色い液体の溜まったパックと交換する。 熱いお湯を入れた洗面器を持ってきて、台の上に置くと、
「じゃ、ちょっと失礼しますよ~!」
と明るく声を掛けると、にろさんに掛けられた布団をめくり、ベッドの後ろについているハンドルをぐるぐると回す。 ベッドの前半分が起き上がり、にろさんの上半身が起き上がった。
にろさんは眠っている。
上着を脱がし、下着が汚れていないかを確認するとそれも静かに脱がす。 引き出しから今度は清潔なタオルを出すとお湯に浸け、にろさんの体を丁寧に拭く。 持って来た新しい下着に替えると、少し伸びたヒゲを剃ってあげた。 眉にかかる前髪をそっとかき上げると、
「髪、伸びてきましたね。 今度ハサミを持ってきますから、切りましょうか……?」
そう、優しく微笑んで話しかける。
にろさんは、眠っている。
虎鉄は、自分が介護をするという申し出を承諾してくれたこの病院に感謝していた。
他の誰かに、にろさんの体を見て欲しくなかったからだ。
看護士達がそんな目で患者を見ないことは承知していた。 それでももし、『鬼種』であるにろさんを興味の目で見て、体がどうの、性器がどうのと話していたら……その姿を想像するだけで吐き気がした。
そして何より、痩せ細った、昔の姿の見る影も無い今のにろさんを、誰にも見られたくなかった
途中で買った温かい缶コーヒーを、一本はまた台の上に置き、もう一本は自分で飲んだ。
「いやぁ、今日も仕事疲れましたよ~! やっぱりしめは、この一本ですよね~」
そう言いながらゆっくりと飲む。
虎鉄は、いろいろな話をする。 前回上手く話せなかったことや、新しく起きた出来事。 仲間達の話、楽しいイベント。
「で、最後に源司さんが折角ついたお餅を食べようとしちゃって! もう本当にあの人はっ!」
話しながら大笑いする。 ふっと、静かな表情になり、にろさんを見る。
にろさんは、眠っている
ずっと、眠っている
「にろさん、自分、毎日が本当に楽しいです。 皆さん、本当に優しくて、面白くて。 お酒飲んで、楽しいイベントして、神様専用の温泉なんかにも行って。 沢山のお友達が出来て、本当に、幸せです。 だから、心配とか……しないで大丈夫ですからね」
そう言うと、カバンから封筒を一枚取り出した。
「これ、今月の給料明細です。 本当に、副店長の仕事全然してくれないんだから! 退院したらこれまで貯まった分、めちゃめちゃ働いてもらいますからね!」
そう言って笑うと、引き出しの1段目を開けた。
底の深いその引き出しに、上下いっぱいいっぱいに詰まった封筒の束が入っている。 思いっきり押しつぶして、太い輪ゴムでがっちり縛っている。
束を取り出し輪ゴムを外すと、一気にボンッと膨れ上がる。 新しい一枚を足す。 枚数は数えなくても判っている。 これで、117枚目だ。
再び押しつぶして輪ゴムでとめる。 引き出しにしまうと、隣に入れてあるにろさんの私物に目が行く。
財布とカードケース、それと眼鏡ケースだ。
眼鏡ケースの中には、壊れたにろさんの眼鏡がそのまま入っている。
目を覚ましたら、新しいのを一緒に作りに行こうと取っておいてある。
財布は皮製だったから良かったが、カードケースは表が布地だったため、今でも黒いシミがついている。
『トラトラ屋』がオープンして3週間、それこそ目の回るような日々だった。
だが、事前ににろさんがいろいろと人脈を使ってシステム関連や売買契約といった事務関係を進めてくれていたおかげで、虎鉄は接客に専念できた。
『順風堂』の頃に来てくださっていたお客様が、変らず来店してくれた事が嬉しかった。
勿論、お得意さんだった源司さんもである。
笑顔で『店長さん』と呼んでくれた時は、本当に涙が出るほど嬉しかった。
ひと通りの事が軌道に乗り、給料日を控えたその前日の夜、懐が寒かろうと笑って、にろさんが食事を奢ってやろうと言ってくれた。
隣町の結構高い店を予約したそうだ。 もうすぐオープン1ヵ月の前祝だ、と笑って先を行く。
青信号
前を歩いていたにろさんが、突然のドンッという鈍い音と共に姿を消した。
目の前を、トラックが横切っていく。
虎鉄は、何が起こったのか理解できなかった。 歩行者信号を見る。 青信号が、点滅を始めていた。
トラックが走っていった方向を、ゆっくりと見る
道路に、壊れた眼鏡とその破片が散らばっている
そして、街灯の下、大きな人影が倒れているのが見える……
頭から、大量の黒い液体が流れ出していた
「…………にろさん……?」
気付くと、にろさんのカードケースに水滴が落ちていた。
「やばっ、汚しちゃう……」
引き出しからケースを取り出して拭こうとしたが、指先に力が入らなかった。
ケースを床に落としてしまう。 床に落ちたケースは、パタッと開いてしまった。
拾おうとした虎鉄は、その中身を初めて見た。
1枚の写真、そこには若いにろさんが写っていた。
優しい、楽しそうな笑顔で笑っている。 虎鉄に見せてくれていたのと同じ笑顔。
そして隣には、同じく優しそうに微笑む女性が写っていた。
虎鉄は、その女性に見覚えがあった。 いや、正確に言うと、良く知る人物に顔のつくりが似ていた。
虎鉄の母である。
いつも不機嫌な顔をして、父が帰ってくれば醜い顔で怒り、父を罵っていた母。
微笑んだら、こんなにも優しい顔になったのだろうか……
間違いない、それは母の妹さんであった。
妹さんは、事故で亡くなったと聞いていた。
「そんなだから奥さんに逃げられるんですよ!!?」
虎鉄は、拭こうとしていたそのケースにバタバタと水滴が落ちるのを止められなかった。
その写真には、もう一人写っていた
4,5歳くらいの……虎獣人の……鬼牙を生やした………子供が…………
自分と同じ牙を生やしたその子を、自分が愛した人と同じ牙を生やしたその子を、自分達の子供のように可愛がってくれたその人たちが大好きで、
その子供は、満面の笑みを浮かべて……楽しそうに……笑って…………
虎鉄は、ケースに覆い被さる様に四つん這いになって、声を殺して泣いた
「…………叔父さん……!」
窓を、雨が叩き始めていた
病院を出ると、外は大雨であった。
だが、店長にはありがたかった。 濡れてしまえば偶然誰かに出くわしても、泣いていた事を誤魔化せる。
カバンの中の折り畳み傘をささず、雨の中を歩き出す。
少し歩くと、雨の中に人影が見えた。 いつからそこにいるのだろう、自分よりもずぶ濡れである。
近付くにつれ、顔がハッキリしてくる。 ナギさんだ。
「どうしたんですか……!? そんなに濡れて……!」
近付いて、体を拭いてあげようと思うも、自分もずぶ濡れだ。 慌てる店長に
「もう、いいよ」
静かに、ナギが言った。
「でも、体を拭かないと、風邪でも引いたら……」
そう言いかけた店長を、ずぶ濡れのナギが抱きしめた。
「え、な、何ですか……!?」
顔を赤くする店長に、ナギが抱きしめる手に力を込めて、静かに言う
「もういい、我慢なんて、しなくていい……」
「……ナギ……さん……」
……駄目です……
「辛い時に……」
やめて下さい……
「悲しい時に……」
我慢を……やめたら……
誰かに……甘えてしまったら……自分は
「泣く事の……」
自分は……立って……いられなく…………
「泣く事の……何が悪い」
自分より背の低いナギさんが、自分の胸に顔を押し当てて、ぎゅっと力強く抱きしめる
ずぶ濡れで、冷え切っているはずのナギさんの体は、
それでも、温かくて……
それは、店長の、虎鉄の、張り詰めていた糸を容易く切ってしまうほど、
温かくて……
足の力が抜けて、ガクッと膝から落ちる虎鉄を、ナギは力強く受け止める。
虎鉄は、大声で泣いた
子供のように、息を詰まらせながら、何度も、何度も、泣いた
押し潰された給料明細の枚数分だけ、虎鉄は泣いた
降りしきる雨の中、その声は、二人にしか届かない
ずっと、二人は抱き合い、そして二人は
風邪を引いた
薬を貰うと、虎鉄はにろさんの寝ている部屋にナギを案内した。
自分の大切な人ですと言われ、ぶっちゃけわかっていたが凹んだ……
部屋の前に着くと、「ここがにろさん、えーと、叔父さんの部屋です」と言われた。
「おじ……? ってあの、親の兄弟の……?」
「えぇ、その叔父さんです」
そう言われてホッと胸を撫で下ろす。
アレ、何で俺、今ホッとしたんだ……?
ナギが考え込んでいると、虎鉄はそっと部屋を開けた。
風邪がうつらないように、遠くから覗くだけのつもりであった。
虎鉄の動きが止まった。 呆然とし、薬が床に落ちた。
不審に思ったナギが、虎鉄の肩越しに部屋を見ると……
部屋には何もなくなっていた
空のベッド
窓が開けられ、空気が入れ替えられていた
虎鉄が目をやる
台の上のコーヒーも、無くなっていた
この状況を理解出来ないほど、虎鉄は子供ではなかった
いきなり全快して、既に退院手続きを取っていると考えられるほど、虎鉄は夢想家ではなかった
立ち尽くす虎鉄に、ナギはどう声を掛ければよいか、見当もつかない。
だが、そこへ
「大河原さん!」
声がした。
顔を向けると、にろさんの担当医がこちらに向かって歩いてきていた。
目が合うと、申し訳無さそうな顔をする。
「すみません、連絡を取ろうとしたのですが、ご自宅にも職場にもいらっしゃらなかったようで」
こんな日に限って、虎鉄は携帯電話を会社に忘れてきてしまっていた。
「まったくもって、何と申し上げたらよいやら……」
虎鉄は、もうほとんど話を聞いていなかった。 だが
「鬼種というのは、本当に常識が通用しませんなぁ」
そう笑いながら言い、通路の反対側を振り返った。
つられて、虎鉄もそちらに目をやると、角を一つの大きな影が曲がってきた
にろ……さん……?
虎鉄は、何が何やら判らなくなった。 鼻の上、眉間の辺りがしきりに痛む
どうやら、いきなり全快して、既に退院手続きを取っていたようだ
「虎鉄……?」
眼鏡が無い所為か半疑問形だが、間違いない。 その、懐かしい声に
虎鉄の目に、涙が溢れ出した
「! 虎鉄……」
大事な甥っ子が泣き出したことに驚き、にろさんが駆け寄ろうとしたが、まだ頭に体が追いつかないようだ。 躓(つまづ)いて、転びそうになる!
虎鉄がそれに気付き、駆け寄って抱きかかえた。
その体の軽さに、どんどん涙が溜まっていく。
「虎鉄……」
「老けたな…」
「第一声が……それですか……?」
虎鉄が、笑った
昨日あれだけ泣いたのに、次から次へと涙が溢れ出す
それは、昨日とは違う 嬉し涙だからだろう
こうして感動の再会が果たされたわけだが、何やら場の空気がおかしい。
担当の先生が、汗をかきながらあるものを見ていた。 そしてそれは、再会を果たした二人ではない。
ゆっくり視線の方向に目をやると、とある人物の足元にコーヒーの缶が転がっていた。 空になった缶が……
まさか……
まぁさぁあかぁああああ……!!?
視線を上げると!
ナギさん・コーヒーまみれ!!!
ギャァアアアアアアアアス!!!!!
「すいませんでした」×2
感動の対面から一転、土下座の二人。
その息の合った動作に、ナギが思わず吹き出し、大笑いしてしまう。
虎鉄とにろさんは顔を見合わせ、そして二人も一緒になって大笑いした
外は、日差しが暖かく、心地よい風が吹き始めた
冬が終わり、
星見町に、春がやってきた
虎鉄 34歳
おしまい
2025-07-24 07:00:00 +0000 UTC
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続きです。 あぁ、もう本当に長いのの連続です。 ゴメンなさい
「にろさん……?」
虎鉄の告白に、にろさんは視線を落とした。
てっきり喜んでくれるものと思っていた虎鉄は、完全に意表を突かれた。
そして
「駄目だ、虎鉄……」
にろさんは、一言小さく、だがハッキリと言った。
虎鉄の顔から笑顔が消えた。
自分は、にろさんに好かれているとばかり思っていた……。 だから、就職の事を喜んで貰えると……。
でも違った……違ったんだ。 勝手な思い込みだったんだ……
自分はにろさんに、好かれてなんか……いなかったんだ
頭の中が真っ白になり、うつむき、目には僅かに涙が浮かぶ。
にろさんがハッとそれに気付き、慌てる。
「虎鉄、ゴメン……! 違う、そういう意味じゃないんだ……!」
大きな手で、虎鉄の目を優しく拭う
「ゴメン……。 そうだよな……ちゃんと説明すべきだよな。 虎鉄、うちの店な……多分倒産する」
「…………え……?」
「来年度の新卒採用は行うそうだが、俺の見積もりでは早くて再来年、それを乗りきっても次の決算は恐らく乗り切れない。 どんなに多く見積もっても、3年以上もたない」
順風堂が……倒産……?
「……な、何でですか!? うちの店、あんなに売れて……! にろさん、いっつも頑張って! お客さんだってあんなに沢山……」
「順風堂は各店の独立採算制じゃない……一店だけ売れていても、全国的に売上が落ち込んでいれば潰れてしまうんだよ」
理解が追いつかない。
自分が考えていたこれからの事が全て、一瞬で消え去ったその事が頭に入ってこないのだ。
呆然とする虎鉄を、にろさんが優しく抱きしめた
「ごめんな、虎鉄……。 でも、大事なお前を先の無い会社に入れさせる訳にはいかない……。 それでも、一緒に働きたいって言ってくれて……嬉しかったよ」
「ありがとうな、虎鉄」
にろさんの言葉も、温かい感触も、何か遠くの出来事のようだった。
虎鉄は、いきなり何もなくなってしまった……。
誰かに相談しようにも、そんな友人などいるわけも無い。
にろさんには相談できない、これ以上心配をかけたくない。
ルール違反はわかっていた。
それでももう、この人しか思い浮かばなかった。
「どうしたんですか、店員さん……?」
不安そうに見つめてくれる、お得意さんの源司さん。
お客様に相談するなんて、最低だな……自分は。
だが正直迷う。 何をどう相談すれば良いのか、そもそも自分は何に悩んでいるのか、そこからよく判っていない。
就職活動をまた1から考え直さなきゃならない……? どの本屋を受けるべきか……? にろさんの再就職先……?? 一緒に働けないか……???
頭を整理しつつ──
「源司さん、その、例えばですね……この店が無くなってしまうとして……」
「無くなってしまうのですか!?」
うわっ、やばい……! あの話、まだオフレコ……!!
「いや、例えば! ですよ!」
その言葉を聞いても、源司さんの表情は変らず驚いたままだ。 そして、突然しゅんとした。
「寂しいですね」
「……え……?」
「ここに、この店がなくなってしまうのは……寂しいです」
いきなり、回答を貰った
何に悩んでいた……? 自分の馬鹿さ加減に笑いがこみ上げる。
就職先? どうすれば一緒に??
違う! そうじゃない! そうじゃない!! ここに! この場所に!!
この店が無くなるのがイヤなんだ!
だって、当たり前じゃないか! ここは、自分にとって、初めての……
『家』なんだから……!
──4月
事務所には、にろさんと自分の二人きり。
にろさんに言って、時間を貰ったのだ。 相談があったからだ。
温かい缶コーヒーをにろさんが買ってきてくれていた。 コーヒー牛乳と変らない、甘ーいヤツだ。 にろさんも自分もこれが好きで、仕事帰りによく飲んだ。
だがにろさんは、それに口をつけようとしない。 自分の言葉を真剣な表情で待っている。
自分も 覚悟を決めた
一口だけコーヒーを飲むと
「今日は、店長に許可を貰おうと思いまして」
そう切り出した。
「許可?」
「はい、もう一つ、バイトを始めようと思うんです。 深夜から早朝にかけてなので、こちらの仕事にはご迷惑はおかけしません」
にろさんは、完全に意表を突かれたようだ。
驚き、そして再び真剣な表情になる。
「金が足りないのか? にしてもお前、就職活動はどうするんだ?」
「店を立ち上げようと思ってます」
ハッキリと言った。
にろさんは、無言のままである。
「ここの店舗と土地、両方を買い取ってここに新しい本屋さんを開きたいんです」
バン!!!
にろさんが机を叩いた! 凄い形相で怒っている!!
倒れてこぼれそうになったコーヒーを、虎鉄はすばやくキャッチした!
「ちょっ、にろさん……」
「ふざけるのもいい加減にしろ!! どれだけ金がかかるか解っているのか!!? バイト一つ増やしたぐらいで……!!!」
「わかっています。 ゼミを変更しましたから」
「!!! な……」
「憲法から、商法ゼミに移籍しました。 それから授業も企業法、商法、商取法、大学の授業なんて大して役に立たないものばかりと思ってたんですが、やりたい事が見つかると取りたい授業ばっかりで──」
笑って虎鉄が話すも、にろさんの形相はさらに激しさを増す!
「お前……何やってるんだよ!! 卒業の単位、もう全部取って……4年はゼミだけで良かったじゃないか……!! 授業受けて、バイト掛け持ちして……いつ寝るつもりだ!!!?」
「いや、2・3時間は寝れますよ……」
もはやにろさんの顔は怒りを通り越して泣きそうだ……。
「お前……何でそんな……それにしたって金はどうするんだよ……!?」
「当てがあります」
「だから! 金額が解ってないんだよ!! 店舗と土地だけじゃない!! 最初の商品の仕入額だって考え──」
「大丈夫です。 ある程度は教授に聞いてわかってます。 その、父に金を借りようかと……」
「オヤジさん……? 確か離婚の時に会うことを許されてなかったんじゃ……?」
アレ、自分にろさんにそこまで話したっけ?
「えぇ、でももう自分も20歳過ぎてますし、もう親権だの約束だの関係ないでしょ?」
「……そうか、虎鉄のオヤジさんか……盲点だったな。 あの人なら確かにそれだけの金持ってるな……」
「え、ちょっ、待ってください……? 何ですか、その『お前の父親知ってます』みたいな言い方は……!?」
「……知ってるも何も、石蔵 鉄志(いしくら てつし)だろ? 映画俳優の」
「世界で一番有名な虎獣人じゃないか」
ギャァアアアアアアアアス!!!!!
「な! な……!! 何で知ってるんですか!!! どこで調べたんですか!!!?」
「調べるも何も、そっくりじゃないか」
「他の獣人から見れば、虎獣人なんかどれも同じに見えるはずです!!」
「あぁ、そうか。 鬼種って個体の判別能力が高いんだってさ。 見分けるのなんて朝飯前」
「あぁ……な、内緒ですよ……! いいですか!? 絶対!! 誰にも……!!!」
必死に念を押す虎鉄に、にろさんがプッと吹き出す。
怒りがようやく収まったようで、虎鉄もホッとする。
「にろさんには一つお願いがあるんです。 土地と店舗の売却時期を教えて貰いたいんです。 決まったらすぐに──」
「いいが、一つ条件がある」
「?」
「バイトの掛け持ちはするな。 体を壊されてはたまらん」
「でも、少しずつでもお金貯めないと……」
「オヤジさんに借りる金額は、予定の半分でいい」
「……え?」
「……まったく! お前には恐れ入ったよ! まさか俺と同じ事考えていたとはな!」
にろさんが楽しそうに笑う。
……え、それって……え?
「俺も随分金を貯めていたんだがな、どう考えても全然足りない。 あと3年でどこまでいけるかと考えて、もう諦めかけていたんだがな」
そう笑って言うと、二つのコーヒーの缶をコンッと当てて音を鳴らした。
全ては、ここから始まった
<虎鉄 24歳>
閉店した店舗から、荷物がどんどん運び出される。
入口のガラスには、小さな手書きの紙が貼ってある。
新書店 近日OPEN!!
そしてその文字の下には、これまた手描きの似顔絵が。
「お前って図体に似合わずこういうの描くよな」
「失礼ですよ!!?」
虎鉄が言うと、二人同時に笑った。
これから、本当に大変な毎日が続くのだろう。 でもこの人と、にろさんと一緒なら、きっと……
「そういやバンダナ、気に入ったみたいだな」
「えぇ、まぁこういうのも悪くないかな、と」
「ハゲ隠しにはもってこいだろ?」
「!!! ……な、な、何言ってるんですか!? ハゲてないですよ!? 意味わかんない!」
「何言ってるんだよ、おでこの辺りが少し薄くなってるじゃないか。 気を遣ってこういうものをプレゼントしてくれる、ステキな上司に感謝したまえよ?」
「……普通の人じゃ絶対判らないレベルなのに! これだから鬼種ってイヤ!!!」
にろさんが大笑いすると
「そうだ虎鉄、お前にあだ名を寝ながら考えてやったぞ!」
そんなことを出し抜けに言い放つ。
「……寝ずに考えましょうよ。 いや、そもそもいらないですよ、虎鉄でいいじゃないですか」
「バカモン。 俺に『にろさん』ってあだ名があって、店長が何にも無しじゃ駄目だろ」
「……ちょっと待って下さい、今何か聞き捨てならないことをさらっと言われましたよ? は?」
「自分が店長……!?」
「当たり前だろ、言いだしっぺはお前なんだし」
「にろさんだって同じ事考えてたじゃないですか!」
「でも結局はお前だろ? ちなみに俺は副店長な! 良いぞ~、副店長!! 店長とほぼ同じ権限を持ち、何か問題が起こったら責任を取るのは全て店長!!!」
「き、汚ねぇ!!!」
「こいつはホレ、プレゼントだ。 こいつを机にちゃーんと置くんだぞ?」
信じられねぇ、何このセンス……
「副店長も置くんですよね……?」
「は? イヤだよ、そんなだっせぇもん」
「にろさん、あんた……最低だよ……!」
「そうそう、あだ名な! 名付けて『トラトラ』!!」
ガフォッ!!! ダセェ!!!!!
「ほら、大河原の『おおかわ』で『タイガ』って読めるだろ? それに虎鉄の『トラ』で『トラトラ』!」
上手いこと言った! みたいな誇らしげな顔が何ともむかつく!
「で、この店の名前も決めた」
「あ、それは自分も! 二人の名前から『ダイ──」
「トラトラ屋な!」
ギャアアアアアアアアアス!!!!!
駄目だ! この人、早く何とかしないと……!!!
「にろさん、流石にそこは店長の自分に決定権が……」
「俺、賭けに勝ったよな?」
「……………な、何の事ですか……?」
「今の反応でお前もちゃーんと覚えていたことが判ったな!」
うそぉ……今、ココで!!?
「なんでも一つ、言う事をきくんだよな!? ハイ、『トラトラ屋』に決定~!!!」
あぁあああああ!
「『トラトラ屋』なんだから店長は『トラトラ』だよな!? 俺はどう考えても『トラトラ』じゃねぇから虎鉄が『トラトラ』で、『トラトラ』なんだからお前が店長な!」
おかしい……一つしか言う事きかなくていいはずなのに、何か芋ヅル式に……!
もう、本当に……
「敵わないですね、にろさんには……」
そう言って虎鉄は笑った
なぁ、虎鉄
敵わないのは俺の方なんだよ
あの日、お前がまだ入ったばかりの頃、源司さんに本を薦めたよな?
俺には、多分あの人を笑顔にしてあげる事なんて出来なかった
他の皆と同じ、神様にとって当たり障りのない本を薦めただろう
でもお前は違った
お前は相手が誰でも変らず、普通に接することが出来る
一人の客として接して、推理小説なんてものを薦めてくれたお前がいたからこそ、源司さんはあんなにも嬉しそうにしていたんだろう
なぁ、虎鉄
きっとお前は、俺よりずっと素晴らしい『店長さん』になれるよ
俺は、確信している
そうだな、今度は何を賭けようか……?
続く
2025-07-17 07:00:00 +0000 UTC
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更新遅くて申し訳ないです! ようやくそれなりの形になりましたので、店長のお話をお送りいたします。 しかし、とんでもない長さに…! その上つまらないかもですが、宜しければお付き合い下さい。 では、どぞ~(※連載当時、更新にかなり時間がかかったのです)
店長は、自分の事をあまり語らない。 気を遣われたくないからである。
だから、その秘密の行動を知るものも居ない。
厳密に言えば、「知る者は居ない」と店長が思っているだけで、実はここに例外がいる。
常に陰ながら店長を見守っている人物、ナギさんである。
だがそんなナギさんも、店長の過去までは知らない。
そう、それは、誰にも語られる事の無い
店長のものがたり
<虎鉄 18歳>
標先(しべさき)商科大学、近郊ではレベルも就職率もトップのこの大学に合格しながらも、虎鉄は高校時代にも増してやさぐれていた。
仕事に追われ、一切家庭に関与出来ていなかった父から親権を無理矢理奪い取り、会う事をも一切禁じた母が、虎鉄の高校卒業とほぼ同時にあっさり再婚を決め、虎鉄を放逐したからである。
授業料はなんとかしてくれるらしいが、毎月の仕送りはほぼ期待できない。
かくして虎鉄は、通学の為引っ越してきたココ、星見町でバイトを始めたのだが……
「おぉーい、大河原君!」
「あ? 何すか……?」
上下関係、いや、そもそも仕事というものに決定的に向いていなかった。
ムスッとした顔のまま虎鉄が振り向くと、でかい顔が目の前にあった。
「何すかは敬語じゃない、正しくは『何ですか』だ!」
「ゼロ距離はやめてくれって言ってんでしょう!!」
「二口(ふたぐち)店長!!!」
185センチの身長を誇る虎鉄を悠々と見下ろすのは、2メートルオーバーの『鬼種(きしゅ)』、全国展開している書店『順風堂(じゅんぷうどう)』星見店店長、二口店長である。
虎鉄はこの店長が圧倒的に苦手であった。
本を読むのが好きな虎鉄は、書店ならそれなりに仕事が出来るだろうと思っていたのだが、入って1週間、言われる事といえば必ず『敬語』である。
「いい加減にしてくれよ……敬語なんざそれなりに出来りゃ問題ねぇだろ!? 接客で重要なのって笑顔とかじゃねぇのかよ!?」
「お前はそれも出来ていないがな」
グムッ
「だから……! それを練習とか指導とかしろって言ってんだよ!!」
はぁ、と店長は溜息をつくと、周りを見回す。
虎鉄は現在、事務所でのみ仕事をしている。 売り場に出せるような状態ではないからだ。
周りには誰も居ない。 先程まで仕事をしていた者達も不穏な空気を感じたのか、事務所を出て行ったようだ。
「なぁ、虎鉄……」
二人きりの時は、何故か名前で呼ばれた。 これも虎鉄は苦手であった。 親以外に名前で呼ばれたことなど無いため、どう反応して良いか判らないのだ。 少し頬を赤らめながら視線を逸らす。
「いいか、笑顔なんてものはな、お客様に心から感謝していれば自然と出てくるものなんだ。 販売店っていうものはな、お客様がそこでものを買ってくれなかったら潰れてしまうんだよ。 うちの店を選んで、そして本を買ってくれる、それはとてもありがたい事なんだ。 心から感謝せずにはいられんし、自然と笑みもでる。 『笑顔の練習』なんて言ってる奴らは、根本的にわかってないのだと俺は思っている。」
「だが敬語は違う。 これは自然と出るものじゃない。 練習をして、自然と出るようにしないと駄目なんだ。 わかるか?」
「……全然わかんねぇよ。 賭けても良いっすよ、自分は敬語を出来るようになっても絶対自然と笑顔を出せるようにはならねぇって」
確信があった。 虎鉄は自分が覚えている範囲で、笑った事が無かったのだ。
物心ついた頃から両親は仲が悪く、父は不在がち、帰ってくれば母が怒り、罵り……。
笑うってどういうものか、虎鉄には本当に判らなかったのだ。 だが
「フム、良いぞ。 じゃあ賭けようか。 俺はお前がちゃあんと笑顔で接客できる店員になれると確信しているからな。 それどころか、笑顔を武器に、いろんなヤツを幸せに出来る男になれると確信している。 そうだな、では賭けに負けたら何でも一つ、相手の言う事を聞くっていうのはどうだ?」
そんなことを、二口店長は平然と口にする。
「笑顔が武器の男って何だよ……? つか、自分が勝ったら何でも言う事聞いてくれんのかよ……?」
「おう、いいぞ?」
「素っ裸で店に立てっつったら立つのか?」
挑戦的に虎鉄が言うも
「いいぞ? お前が良いって言うまで立ってやる。 何なら違う意味で『たって』やってもいいぞ? そのかわり俺が自警団に捕まったら、お前がこの店を責任を持って見るんだぞ?」
笑いながら店長があっさり承諾する。 グッと虎鉄は困り
「ち、違う要求を考えとく……」
そうモソモソと言うのを、ニコニコしながら彼は見ていた。
そしてこの賭けは、数日後あっさり決着を見ることとなる。
<虎鉄21歳>
現在23時30分。
虎鉄は広々とした銭湯の湯船で、手足をゆったりと伸ばしてくつろいでいた。
虎鉄は銭湯や温泉が大好きである。 同性愛者だから、という訳ではなく、図体のでかい虎鉄にとっては、広い湯船が何より嬉しいからである。
だが、嫌いな部分もあった。
ジロジロ見られることである。
虎獣人は非常に珍しい。 こういう場所では必ずといって良いほど視線を浴びた。 シマシマってどこまでいってるの? キンタマもシマシマ? もしかしてチンポもシマシマ?
んな訳ねぇだろ!!!
そんな訳で、深夜まで営業しているこの銭湯は、すっかり虎鉄のお気に入りとなっていた。
男湯に居る客は二人だけ。 自分と、隣で流行(はやり)の歌をフンフン歌っている『にろさん』だ。
『にろさん』というのは、虎鉄が考えた二口店長のあだ名である。 地味にお互い気に入っていた。
にろさんも気持ち良さそうにしている。 自分より図体がでかいのだから尚更であろう。
実を言うとこの場所、教えてくれたのはにろさんだ。
二人は境遇がよく似ていた。 にろさんは虎獣人よりさらに数が少ない『鬼種』である。
同じようにジロジロ見られていやだったんだろうな……。
ちらりと横目でにろさんを見る。
スーツの上からではわかりにくい、にろさんの逞しい体。 赤褐色の肌の下はみっしりと筋肉に覆われている。 鍛えた事など無いらしいので、そういう『種』なのだろうか。
胸に生えた毛に思わず心臓が高鳴る、正直格好良かった。
そして湯船の中、鬱蒼とした陰毛の中、湯に揺れるにろさんのイチモツ。
その逞しい体に備わるモノは、意外にも小さかった。 いや、大きさ的には虎鉄と大して変らないのだが、体が大きい分、小さく見えた。
思わずジーっと見ていると、にろさんの視線に気付いてビクッとした。
「どうした、虎鉄?」
「い、いや、何でもないです! その、すいません……」
これでは自分達を興味本位でジロジロ見る他の奴らと一緒だ。 顔を真っ赤にしながら反省する虎鉄に、にろさんが笑う。
「それにしても虎鉄、敬語キレイになったなぁ」
「そりゃ、にろさんにさんざん叩き込まれましたから」
賭けをした数日後、少しだけ用事があって売り場に出た虎鉄は、とんでもないものに出くわした。
入口に立っている人物、信じられん……あれ、竜神じゃないのか……?
そのまま店に入ってきた竜神は、この店が初めてだったのか、しきりにキョロキョロしている。 そして虎鉄と目が合うと(ゲッ!)、テクテクとこちらに歩いてきた!
「すみませんが、店員さんのお勧めの本はありますか?」
いきなりの超A級難度の質問!!!
店員が、一番言われて困る質問を叩きつけられた!! 小パニックになる虎鉄! だが竜神は優しい口調で続けた。
「最近読書というものに興味を持ったのですが、どこから手をつければ良いのかサッパリ判らないのです。 何でも良いのです、店員さんが面白いと思った本をお教え願えませんか?」
ハッキリと敬語で負けている……。 ここは知識で勝負!
虎鉄はミステリー小説を薦めた。 新人で、最優秀賞に選ばれたものではなく、準賞だったものが虎鉄的には面白かった。 その旨伝えると、竜神はあっさりそれを買っていった。
軽く会釈をして出て行った竜神をボーっと見送る。
自分……本売っちまったぞ……?
事務所にダッシュで戻ると、驚いた店長に報告する! ぶっちゃけ嬉しい、褒められるんじゃね!?
そう思ったが、店長は冷や汗をかいていた。
「お前、源司さんに推理小説売ったのか……?」
「へぇ、神様、源司さんっていうんすか。 そっすよ?」
「虎鉄……わかってるのか? 推理小説って……」
「殺人事件だぞ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギャアアアアアアアアアス!!!!!
やっちまった、神様に、人殺しの本売っちまった……。 ガクッとうなだれる虎鉄。
それから数日、さっぱり仕事に手がつかなかった虎鉄に、審判の時がやってきた。
店長が事務所に顔を出し、
「虎鉄、源司さんの御指名……」
売り場に出ると、竜神がこちらを見て立っていた。 表情はよく判らない。 基本無表情なのだ。
近付くと、いきなり手をガッと握られた!
「とても面白かったですよ、このあいだの小説!」
そう言うと、細かな感想を述べてくれた。 間違いない、ちゃんと読んでないと説明できないところまで話してる……本当に読んでくれたんだ……
「今度は同じ作者の違う作品か、違う作者の同系統の作品を読んでみたいのですが」
そう言ってくれた竜神様に、虎鉄は今度は出来うる限り丁寧に作品を薦めると、竜神様はそのうちの1冊をまた買ってくれた。 そして虎鉄の元に再びやってくると、チョコンとお辞儀をして
「どうもありがとうございます」
そう言って少し微笑んだ。
何で自分がお礼言われてんだ……? お礼を言うのってこっちじゃねぇのか? そう考えている中、自然と声が出た
「あ、ありがとうございます……」
源司さんは会釈をして、店を出て行った。
気が付くと、店長が嬉しそうに虎鉄を見ていた。
虎鉄は、頬を赤くしながら、少しだけ、笑っていた
接客業は、感謝するだけの仕事じゃない。
自分が頑張って努力した分、お客様に感謝される、沢山のものをお客様に貰える仕事なのだと気付いた虎鉄はすっかりこの仕事にのめりこみ、誰よりも多く本を読み、知識を蓄え努力をし、3年でバイトリーダーにまでなっていた。
閉店後最後までにろさんと残る事が多くなり、そして今日、以前教えてくれた銭湯に一緒に行こうとにろさんが誘ってくれた。
正直、嬉しかった。
「何考え込んでるんだ?」
にろさんの言葉で現実に戻る。 横を向くと、またにろさんの顔がほぼゼロ距離にあってビビる! 体が仰け反ろうとした瞬間、思わず右手がにろさんのイチモツに触れてしまう! その以外にも柔らかく、そして温かい感触に顔が真っ赤になる!
「おろ、虎鉄、ソレ……?」
にろさんが虎鉄の股間を見ている
そう、たったこの一瞬で
虎鉄クン、バトルモード!!!
慌ててにろさんに背を向けるも、ガッと肩を掴まれる! どうしよう……バレたかも……! が、
「何だよ、溜まってるならそう言えよー! オジサンが手伝ってやるぞー?」
指めっさワキワキさせてる!!!
「な、何言ってるんですか!? えっち!! そんなだから奥さんに逃げられるんですよ!!?」
離婚したらしいという話は聞いていたのでそこを攻めてみるも、にろさんはすみませんねーとふざけて言いながら、虎鉄のちんちんをぎゅっと握った!
しばらくじゃれ合うと、急ににろさんが少し離れて寂しそうな顔をした。
「どうしたんですか……?」
「今年はもう、虎鉄4年生だもんな。 就職活動、始めなきゃだろ? 寂しくなるな……」
視線を落とすにろさん、本当に寂しがってくれてる……
虎鉄は告白する覚悟を決めた
「にろさん、自分……
順風堂を受けようと思ってるんです」
「……え?」
「希望が通るかはわからないですけど、星見店を希望するつもりです。 これからも、にろさんと一緒に働いていきたいですから……」
そう言って、虎鉄はニコッと微笑んだ。
こういう時に微笑む事が出来る、今の自分が
虎鉄は嬉しかった
続く~
という訳で、初っ端から長くてスイマセン……。
で、世界設定の盛大なるネタバレキャラ、にろさんの登場です
詳しく書いていくと、のんけもとイメージが合わなくなってきちゃうのであまり書きませんが、勘の良い方ならこの世界がどういう形で出来たのか、少し見えてきちゃいますかね?
まぁ、深く突っ込まず、お遊び程度に考えて頂けると幸いです。
※ファンボックスだけ見ているとちょっとわかりづらいコメントですが、ホームページに彼とよく似たキャラクターが登場する漫画が掲載されているんですよね。
ご興味がありましたら、こちらをどうぞ→http://toratoraya.web.fc2.com/hsmain.html
2025-07-10 07:00:00 +0000 UTC
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※ブログ連載当時、こちらのお話は1月1日に掲載しました。
できるだけ当時のままでこちらに載せているので、ストーリーに関係しそうなものは新年のご挨拶や年賀状関連も併せて掲載します。 ご了承ください。
明けましておめでとうございます!
自分の個人的年賀状のイラストです。
彼の名前は『蔵王 大輔(ざおう だいすけ)』
高校時代は暴れん坊で、角材を振り回し、付いた異名が『角蔵王(かくざおう)』←ダサッ
かつて酷い目に会った彼は更生し、今ではすっかりご近所の人気者。
全裸を見ず知らずの大勢に見られた経験があり、その事にちょっと興奮を覚えていたり。
童貞です。←ブルータス、お前もか
さて、余談はさておきお正月。
新年の挨拶に、師範の道場に集まるいつもの面子。
皆に内緒で店長がえっちらおっちら運んできたのは、木造の杵と臼、いわゆる餅つきセットだ!
「……買ったのか、ソレ?」
半ば呆れ顔でナギが聞くと
「いえいえ、知り合いに作ってもらったんですよ。 そこまで運ぶのも手伝ってもらいました」
ニコニコ顔の店長、やる気マンマン!
皆はやれやれと思いつつも、やはり和む。
さて、このイベントを楽しみにしていた店長の指揮の下、餅つきの配役決めが始まった。
「源司さんは、ついた餅をクルッてやる役、お願いできますか? 唯一手に体毛が無いですし、皮も厚いから熱いの平気ですよね? あ、駄洒落じゃないですよ?」
すっかり浮かれている。 余程楽しいのだろう、こういうイベントが。
「あとは自分と餅をつく人を一人決めたいんですけど、誰か手伝ってもらえませんか?」
確かに杵が二本ある。 なる程、二人で一緒に餅をつくのか
ナヌ? 二人で一緒に餅をつく……?
<ナギさんの場合>
キバトラと一緒に餅をつく……
共同作業…… 流れる汗…… 深まる絆…… 近付く二人の距離……
そして……
メモリアルデイ……!
<師範の場合>
店長さんと一緒に餅をつく……
共同作業…… 流れる汗…… 共に一つの事を成し遂げた達成感……
そして……
メモリアルデイ……!
「あ、いいっすよ。 俺、手伝います」
ちょっと待てぇえええい!!!!!
茶道寺の申し出に、ナギタンが相手を殺しかねない勢いでツッこむ!
「何すか……? 二人とも黙ってるから、手伝う気無いのかと思ったんすけど?」
これ、わかってて言ってるのか……?
茶道寺、恐ろしい子……!
そして協議という名の言い争いの結果、3人による『店長のパートナー権争奪戦・羽根突きバトルロワイヤル! やだ、二人の関係、超急接近じゃん★(サブタイトル)』が遂に開始された!!(店長はもち米を炊きに行ってます)
ルールは簡単、自分の打った羽を相手が打ち返せなかったら1ポイント。 10ポイント先取で勝ち抜け。 3人とも納得してスタート!
だがこのルール、実は酷い。 要は弱い奴を一人見つけてそいつからポイントをバンバン取れば良いのだ! 無論ナギタンは互いを攻撃する気などない! 互いの力量はよく分かっているからだ!
狙うは茶道寺! 先に奴から10ポイント奪えた方が勝者!!
許せ、草食動物!!
我ら肉食動物の糧となれ!!!
が……
ナギタンまったく歯が立たず……!
二人とも力任せの暴力的直線コース、見切れば打ち返すことはそう難しくはない!
茶道寺は元々喧嘩はからっきしだが運動神経はべらぼうに良い。 動体視力も良いし、腕力もある。 こういうゲームをやらせたら右に出るものなどいない!
二人の羽を華麗にいなし! 軌道の読みにくい曲線ラインで打ち返す!! 死角を! 利き手の逆サイドを!! 変幻自在に打ち分ける!!!
そう! 今、この瞬間!
遊戯王が誕生したのだ!!!
「いやぁ、いい餅つけたねぇ! 愁哉君、ありがとう!」
店長の満面の笑みに、茶道寺も爽やかな笑顔を返す
「どういたしましてですよ! ふぅ、良い汗かいた……!」
呆然とするナギタンコンビ。 ちょっと可愛そうだったっすかね……
なんて思っているのもつかの間。
食わんで下さい!!!
全部神様に持っていかれた……
そんなお正月の一風景でした。
「流石だね、兄ちゃん」
「あぁ、計算され尽くした天然ぶりだよ」
ちなみに杵と臼を作ったのは双子。 運ぶの手伝ったのも双子。
地味に店長とは仲良しさん(笑)
という訳で、今年もどうぞ宜しくです~
2025-07-03 07:00:00 +0000 UTC
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キャラストーリー、最後のお話。 最長です。 そして9割シリアスです。 つまらんかもです……。
しーっ
源司は静かに部屋を出て、そっと襖を閉めた
双子がニコニコしながら廊下に立っている
「こてっち、もう寝た?」
頷きながら、源司は静かに笑った。
「さっきはすげぇビビッたー! 神様叱る奴なんて初めて見たー!!」
弩来波が驚きと笑いとの入り混じった表情で言うと、波威流もウンウン頷いた。
「ハハハ、私もつい先日叱られてしまったよ」
源司の言葉に二人とも驚き、そしてスゲェとか怖いもの知らずとか小さい声で言い合いながら笑っている
「店長さんの事、嫌いになっちゃったか?」
イタズラっぽく源司が訊くと
「ウウン! こてっち好きー! スゲェ面白い!!」
弩来波が笑って言った
「俺も、最初はその……兄ちゃんの知り合いだって聞いてたから、兄ちゃん取られちゃうんじゃないかって……でも今は違うよ! こてっち、兄ちゃん笑わせてたもん。 兄ちゃん笑わせてくれるから、俺もこてっち好きー!」
波威流が頬を赤くしながらそう言うと、源司は優しく二人を抱きしめた
「これから沢山話をすると良い。 沢山の事を教えてもらえるよ」
強く抱きしめた二人の身体が、僅かに震えているのが判る
「今日は店長さん一人だったが、周りのお友達も皆面白い人達ばかりだ。 きっと皆好きになる。 それから、少しずつ街にも降りてみると良い。 街には怖い奴ばかりじゃない、店長さんみたいな人もいる。 沢山の人と知り合いになれば、世界がもっと広くなるよ」
優しい兄の言葉に、双子は静かに頷くと
「じゃあ朝起きたら、4人でいっぱい話そう? また一緒に風呂入って、一緒にご飯食べて、兄ちゃんと、俺と、弩来波と、こてっちで、一緒に話そう……?」
波威流がニッコリ笑ってそう言うと、弩来波もエヘヘと笑って見せた。
今なお二人は少し震えている。 互いの手を握り合っている。 それでも二人は笑ってみせる……
「愛しているよ、波威流、弩来波。 お前達を兄弟として迎え入れて、本当に良かった」
二人は兄の胸に強く顔を押し付けた。 そして
「行ってらっしゃい、兄ちゃん」
そう、小さな声で呟いた
入口にそびえる鳥居の前に立つ。 太い柱に手を触れ、瞬間源司の黄色の瞳が赤の光を放つ。
鳥居の向こうに見えていた樹海が消え、真っ黒な闇が映し出された。
鳥居をくぐると、真っ暗な世界に出る。 そして上から下から、横から斜めから、無数の鳥居が闇から生えてきた。
ここは全てを観察する場所。
神々は『天文室』と呼んでいる。
源司がそこに着くと同時に、目の前の鳥居が光を放ち、中から一人の神が姿を現した。
「お久しぶりです、師匠。 いや、今は『亀神の御爺(かめがみのおんじ)』と呼ぶべきですかな」
御爺は、深いため息をついた。
目の前に立っている、かつての弟子を見る。
当時とまるで変わらぬ容姿(いや、腹が出たか……?)、自分はこんなにも衰えたというのに、まったく……『純血の竜神』ってやつは……
「今回のおぬしの所業についての観測結果を読み上げるぞ?」
一つ咳払いをしてそう言うも、源司の表情は少しも変らない。 笑っているような、キョトンとしているような、心が読めぬ表情……
「まず初めに確認しておく。 神は家族以外の特定の個人を愛してはならない」
「一番最初に貴方に教わりましたな」
表情をまったく変えずにかつての弟子が応える。 再びため息が漏れる
「神は己の為にいかなる力を使う事も許される。 無論、我々が持つ倫理観の範疇で、だが」
最後のセリフは少し語調を強めた。 判っているな!? そういう意味合いを込めた。
まぁかつての弟子は、相変わらずの無表情なのだが……
「しかし、誰かを愛すれば、その者の為に力を行使しかねない。 それは『神が力を行使する』のではなく『誰かの意思で神の力を利用される』事と同義であるが故だ。 その為この禁止事項に対しては、厳格なる罰則が設けられている」
「神格の喪失だ」
「神は誰かを愛し、その者の為に力を行使した瞬間に神格を喪失する。 神格を失った時、その者が『神』であった全ての記録と記憶が抹消され、一人の獣人として生きていく事となる。 つまり愛に生きる事を決めた瞬間に愛する者を失う、そういう事だ」
当然理解しているだろう。 大原則だ。
だが頷きもしない! お前の行動がこの禁止事項に抵触したからわざわざ説明してやっとるんだろうが……!
「で、今回のおぬしの『過去への介入』だ」
ようやく本題だ。 眉間に皺を寄せながら話し始める。
「今回おぬしは、明らかに他人の為に力を使ったな? 茶道寺 愁哉。 この者の願いを叶える形での力の行使である事が観測されておる。 だが『神格喪失』は起こらなかった。 その為に協議をさせてもらった」
僅かに源司が笑って見せた。
「結果、おぬしの精神区画に茶道寺愁哉への愛情構築は見られなかった。 よって、今回の力の行使は禁止事項に該当しない事が決定された。 だが抵触したことに変わりはない、以後注意するように! 以上だ!」
やっと終わった。
この男に対する協議結果通達を誰も引き受けようとしない為(基本スペックが高過ぎる為畏怖を持たれているのだ)、師である私にお鉢が回ってくる……。
これだけの事をしておきながら、相変わらずの無表情。 いや、先程の微笑を僅かに残しているか……?
かつての弟子でありながら、こやつが何を考えているのか未だにさっぱりわからない。
あの双子の竜人の子供にしてもそうだ! 天狗山に捨てられ、死にかけていた双子の兄弟を、あろうことか己の神格を分け与えて神にすることで一命を取り留めさせるなど、まったく持って前代未聞だ!! しかもそれだけの事をして事後報告事後承諾である!!
まったくもってさっぱりわからん! 判っている事といったらネーミングセンスが最悪だという事ぐらいか? 双子は新しく貰った名前をえらく気に入っているようだが……
最後にこの上ない深いため息をついて踵を返すと、持っていた杖で鳥居をコンコンと叩き、「ではな」と一言だけ言って鳥居に入っていった。 だが……
景色がまったく変らない。 無数の鳥居が立ち並ぶ『天文室』のままである。
キョトンとする御爺。 振り返ると源司がこちらを見ている。
そして、ふと気付いた。
源司の目が赤く光っている
背筋に冷たいものを感じ、御爺は先程よりも強く鳥居を叩き、再びくぐった。
やはり何も変らない
かつての弟子との距離が再び縮まっただけである。
「な……何をしておる……!!?」
かつての弟子に怒りと恐れを感じ怒号を発するも、源司は依然、飄々としたままだ。
「すみません、実は少々お話がありまして。 ですがちと複雑ゆえ、頭で整理しておりました。 今この世界は『法規回路への接触条項』を破棄させて頂いておりますゆえ、上位接触権を行使しても無駄ですぞ」
血の気が引いていく……
さらりと言っているが、簡単に言えばこの世界に於ける神の力の行使に関する全てを掌握しているという事なのだ。 そう、かつての弟子は
バケモノになっていた
「今回の過去への介入、実は色々と複雑でしてな……」
一つの鳥居に視線をやる。 無言で「見ろ」と言われている……
御爺も目をやると、見覚えのある鳥居に汗が出た。
鳥居の中の暗闇が揺らぎ、神社が映し出された。 その向こうから一人の学生服を着た高校生が現れ、キョロキョロしている。
「彼は今、近道を探索中のようですな。 この神社が高校への近道に利用できそうだと確認しておるのです」
……
「彼の名は『大河原 虎鉄』、いや、この時点では『鬼頭 虎鉄』ですかな。 今、私は現在の彼と親しくさせて頂いております」
少しずつ……
「実は不思議に思っていた事がありましてな、この方、額が禿げてしまっておるのです。 それは見事な禿げでしてな、額の虎縞がすっかりなくなってしまっておるのです」
真意が判ってきた……
心を紛らわせるかの様に、御爺はハハハと笑う。
「何か可笑しいですか?」
突如放たれた源司の冷たい語調に笑いが消えた
「額の虎縞は、虎獣人の尊厳の証です。 ここが剥げる事は生物的に考えにくい。 とはいえストレスというものも多様化しておる時代、そういう事もあるのかと考えておりました」
「茶道寺君から話を聞くまでは」
「彼が気になる事を話してくれました。 虎鉄さん、神社の境内で相手を大怪我させたそうなのですな」
…………
「これがその神社です。 ご存知ですよね? 貴方を祀った神社だ」
………………
「確信が必要だった為、2時点での観測を実行しました。 一つは最もストレスが強かったと予想される17歳の時。 その観測の為、無論茶道寺君の願いもありますが、一石二鳥だったので実際の過去へ介入しました。 そして観測の結果、ストレスによる障害は見られませんでした」
全員を無理矢理に抱きしめて気絶させた、あの時である。
「そしてもう1点は現在に設定、つい先日観測を実行しました」
寝起きにバンダナをめくったアレだ。
「結果、ストレスによる障害は見られませんでした」
「……彼に神罰を下しましたね?」
……………………!!!
御爺が絶句する
「あ、当たり前だ!! あ奴は境内を血で汚(けが)したのだぞ!」
「だが貴方はその理由を知っている。 身の回りの世話をする神官に話しましたな? 子供を助ける為だと」
「それでも我を忘れての所業だった! 確かに儂も頭に血が上った事は認める! だが判断を誤ったつもりは無い! 全てを考慮した上で『バチを当てた』のだ!!」
「バチを当てた?」
今、ハッキリと、言葉に『怒気』がこもった
「その様な可愛いものだとお思いですか? 頭が剥げている、普通の人間や他の獣人なら笑い話にも出来ましょう。 だが彼は虎獣人なのですぞ? 額の縞は彼らにとっての尊厳なのですぞ? それが禿げ上がり、いついかなる時もそれを隠して生きていかなくてはならない事が、バチですと!?」
徐々に語気が荒くなっていく
「それは竜神ならば角を折られることと同義! 亀神なら……」
そう言うと、源司はその手を御爺にかざした。 そして……
「亀神なら、甲羅を奪われる事と同義なのですぞ!」
かつての弟子の目が、赤の光を強めていく……
まさか、そんな……
「何をしようとしておる……よせ、儂に神罰を下すつもりか……!!?」
赤い光はどんどん強さを増す
「待て……待ってくれ、そ、そんな事が許されると思ぉておるのか!! よせ、やめろ、り、『倫理外行為』だ! いや、そもそも貴様はあの者を特別扱いしておる! あ奴の為の力の行使となるぞ!! 愛情構築されておったら神格を失う事になるのだぞ!!! どちらであっても神ではなくなるかも知れんのだ!! 全ての者達に、弟達に、この虎獣人にさえ忘れられても良いのか!!? 源司!!!!」
「実際に経験しなければお分かりにはなられんでしょう……?」
瞬間、世界が赤に染まった
再び闇が戻ってきた時、御爺は背中にあるべき物の『重さ』を全く感じずにいた。 頭から血の気が失せ、膝から落ちた。
無くなった、甲羅が、どうする、どうやって生きていけばいい、誰にも見られたくない、甲羅が無くなった姿など誰にも見られたくない、どうやって隠せばいい、どうやって生きていけばいい……!!!?
頭がパニックになり、震える手が背中に回る……だが、そこに、確かに感触があった。 硬く、冷たい感触が。
甲羅は、変わらずそこにあった。
「ただほんの一瞬、重みを消しただけです」
その言葉に、全身の力が抜けた。
「実は私、素晴らしい言葉を教えて頂きましてな」
静かに続ける
「『己の欲せざる所 人に施す事無かれ』 判りますかな? もっと簡単に言いましょうか」
顔を少しずつ上げる。 源司の顔を見るのが恐ろしい。 だが、今、見る事を強要されている……
「自分がされて嫌なことは」
恐ろしい 見たくない
「他人に」
いやだ……!
「するな!!!」
初めてみた彼の形相は、彼が立ち去った後も御爺をその場に張り付かせた。
己が失禁している事さえ、気付かせないまま──
鳥居をくぐると、温泉の匂いが鼻を掠めた。 玄関に、弟達の姿が見える。
二人はこちらに走り出し、私の胸に飛び込んできた。 そして
大声で泣いた
私は神格を失う覚悟をしていた。 そうしてでも、彼の尊厳を取り戻してあげたかったのだ。
二人も気付いていたのだろう、私の決意に。
「ただいま、波威流、弩来波」
双子は泣きながら、おかえりと言い続けた。
本気で甲羅を奪うつもりだった。 だが例の言葉が頭をよぎった
己の欲せざる所 人に施す事無かれ
もし私の為に、二人の弟達が、そして店長さんが、何かを失う事を決めたら私はどう思うだろう?
イヤだな
素直にそう思えた。 だから踏みとどまったのだ。
弟達の涙が『嬉し涙』である今、そう決断してよかったと心から思える
──何やら額の辺りに、ガサガサした感触が……!
嫌な予感にバッと目を開けると、案の定! 源司さんがバンダナの下に手を突っ込んでいる!!
ダァアアアアアッ!!!と声を上げ、源司さんを引き離すとすぐさま臨戦態勢に!
「な、なっ、何度言えば分かるん……!」
「毛が生えておりますぞ?」
言い終わらぬ内に源司さんがニコニコしながら言った。
は? 何のこと……? 店長の頭の上の?マークに
「おでこに毛、生えてますぞ?」
源司さんがますます笑いながら、そう言った。
何を言って……そう思いながらバンダナ越しに手をやると、何やらガサガサした感触が……
そういえばアレ? 何でガサガサしてんの?
いつもはもっとこう、つるぺたっと……
恐る恐る手を入れると、そこには昔と変らぬフサフサの毛がみっしり生えていた。
「!!!!!!!」
バッとバンダナを外し、鏡を探す! 洗面所にある事にすら頭が回らない。
そこへヌッ、と源司さんが顔を近づける
「私の瞳に映りますかな?」
源司さんの瞳、黄色い優しい目の中に、虎縞がハッキリと見えた。
ボーゼン……
「……源司さん、な、何かしたんですか……?」
「まさか! 出来れば当の昔にやってますよ。 でも、そうですね」
少し考えるそぶりを見せて、源司さんがふっと笑って言った
「悪い事が起こる事を『バチが当たる』って言うじゃないですか。 こういうのは『日ごろの行いが良い』と言うのではないですかな?」
何やらさっぱり判らない。
店長の頭の上にいまだ?が大量発生しているのを、源司は笑顔で見ていた。
窓の外には2羽の鳥が飛んでいくのが見える。 つがいだろうか、それとも友達だろうか?
そこにあるのが愛であろうと友情であろうと、寄り添って生きていくその姿に変わりなど無い。
今はそれで良いと思う。
「おはようこてっち!!」
露天風呂に行くと、既に双子が入っていた。 今でもバンダナを『トレードマークだ』と言って巻いている店長をクスクス笑う源司さん、双子がそれを見てニッコリ笑うと
「こてっち! 俺達ちゃんと学習したぞ!!」
「……何がです?」
嫌な予感がしながらも、とりあえず訊いてみる
「ホラ、例のあれ、己の何とかってヤツ! 自分が嫌な事は他人にするなって事だろ!?」
「そうですけど……」
「じゃ逆に、自分がされて嬉しい事は他の人にもドンドンしていこうゼ! って事だろ!!?」
「……まぁ、そうですかね?」
店長の不用意な一言に双子が満面の笑みを浮かべる! そして!!
「だよな! よし!! 俺ら二人でこてっちの全身洗ってやる!!!」
「……は……?」
店長の頭が理解する前に、双子が襲い掛かった!!!
じゃれ合う3人を見て、源司は笑った。
愛する家族がいて、大切な友人達がいて、私を笑顔にしてくれる君がいて……
これ以上を望んだら
それこそバチが当たりますよ
ギャアアアアアアアアアス!!!!!
私は、幸せ者です
おしまい
2025-06-26 07:00:00 +0000 UTC
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「──という訳で、紹介させて頂きます」
「波威流(パイル)と弩来波(ドライバ)です」
名前すげぇええええ!!!!!
源司さんと二人で泊まる、大きな和室に通される。
ここも落ち着いた雰囲気で良いなぁ……!
少し気分が高揚し、パッと窓の外に顔を覗かせた。
遠くに広がる樹海。 円に切り取られた別世界。 窓の下には綺麗な庭園が広がっていた。
「源司さん、庭師とか呼んでるんですか、ココ?」
座布団に座っていた源司さんがパッと表情を明るくし、自分の隣から顔を覗かせる。
「いえいえ、庭の手入れは全て、弟達がやっているのですよ」
へぇ、そうなんだ……
「神様の力ってこんな事も出来ちゃうんですねぇ」
本当に万能だなぁ……そんな事を考えていると、源司さんが頬を染めて誇らしげに微笑んだ。
「全て、自分達の手でやっているんですよ?」
驚いて庭園を見直す。 これをあの二人が……?
「庭だけではありません。 お出しする料理も、盛り付ける器も、何から何まで全て、神の力は一切使わず自分達で用意しているのですよ!」
エッヘン、そんな表情で弟達の話をする。 余程自慢なんだろうな……自然と笑みがこぼれる。
「弟さん達の事、大好きなのですね」
「えぇ、愛していますよ、心から。 神に許された唯一の『愛』ですしね」
臆面も無く言い放つ。 後半は何やら良く判らなかったが……。
そういや双子の弟達もお兄ちゃんにベタ惚れみたいだったもんなぁ……自分がいるのも気にせずに「兄ちゃん兄ちゃん」って源司さんの胸に頬擦りばかりしてたし。
む……愛し合う兄弟か……
店長がイカンイカン、と変な方向に行きそうになった自分の脳内劇場を打ち消そうとするが、追い討ちがかかった!
「弟達が望む事なら何でもしてやりたいし、させてやりたい……」
!! な、何でも……し、したいし……?
させてやりたい…!!!!?
自分の妄想に急激に落ち込む店長。 源司がキョトンとこちらを見ている。
そのピュアな視線が痛いの!!
ハッ! か、神様って心とか読めるんじゃね……!!?
ぶんぶんと頭を振って何か違う話題を持ちかけようとした時、スラッと襖が開いて弟のどちらかが入ってきた。
「兄ちゃん、お茶淹れてきたよ~!」
ニッコリ笑顔で声を掛けてきた! ナイス、弟のどちらか!!
コポコポとお茶を注ぐと『源司』と字の入った湯のみをお兄ちゃんに渡す。 お兄ちゃんも満面の笑みだ。 何とも心温まるなぁ……←エロ妄想してたクセに!
と、こちらを向くと自分にもお茶を淹れてくれたのだが……
「ほれ トラ 茶」
6文字かよ!!!
なってねぇ……! 本当にこの双子共、接客がてんでなってねぇ……!!
お兄ちゃんはこの辺叱る気ゼロらしいし(美味そうに茶ぁ飲んでるよ!)、ここは自分が同じ接客業を営む者として、心を鬼にして言ってやらねば! やらねばなるまい!!
だが、大きな問題が一つ。
波威流か弩来波かが、てんでわからん……!!
弟達を溺愛するお兄ちゃんの前で、呼び間違えは流石にまずい……
最初は無愛想な方が自分達を出迎えた弩来波で、ニコニコしている方が波威流かと思ったのだが、あの無愛想顔は『接客モード』だったそうな(ありえねぇ……!)。
自分がお兄ちゃんの知り合いだから接客モードでいる必要は無い、という波威流の意見に同意するや否や、弩来波もまったく同じニコニコ顔になってお兄ちゃんに頬擦り始めたのだった。
とは言えこのぶっきら棒っぷり、どちらかといえば弩来波だろ……
良し、意を決して……
「ところで弩来波は今何してる?」
あっぶねぇ……!! 波威流だよ!!!
「温泉の掃除ー。 兄ちゃんが入りに来てくれたからねー!」
「そうか、ありがとうな」
お兄ちゃんの感謝の言葉に顔を文字通り真っ赤にすると、バッと立ち上がり、
「じゃ、お、俺も掃除手伝ってくる!!」
そう言うと部屋を出て行った。 ああいう所は可愛いんだけどなぁ……
「源司さん、その、失礼とは思いますが……」
今後も叱らねばならない機会もあるかも知れんし
「二人の見分けるポイントって何処ですか……?」
「ハハハ、やはり見分けがつきませんか」
「それはもう……何か無いんですか? 跳ね毛の数が違うとか……」
「? 髪型で見分けるのですか……? そんなものは日々違うでしょう……?」
すいませんね……漫画的思考で(恥)
「そうですねぇ、目元とか、鼻の角度とか、口元とか……その辺り?」
「いや、だからそこが見分けられないんですってば」
「……………」
暫く考え込むと
「温泉、楽しみですなぁ」
あぁ……
日が傾き始めた頃、ようやく双子からお声がかかり、二人はガラガラと露天風呂の扉を開けた。
途端、店長は息を呑んだ。 すれ違った双子が汗だくだった意味がわかった。
大きな露天風呂。
露天といえば店長はあまり良い印象を持っていなかった。 湯に浮かぶ木の葉や何かのクズ、地面に転がる虫の死骸……。 だが、そんなものとは無縁の様な綺麗な露天風呂がそこにはあった。
床は石造りだが、足を置いてもぬめりがまったく無い。 濡れてはいるが踏み心地は格別だ。
そして湯船。 僅かに茶色みがかった乳白色の温泉。 『濁っている』のではなく『色の付いた綺麗なお湯』という印象を受ける。
急に掃除をしてもこうはなるまい。 普段から綺麗にしつつ、且つ兄の為に念入りに掃除をしたのだろう。
「店長さーん、先に体を洗うのですぞー!」
ちょっと感動に浸っていると、源司さんが声を掛けてきた。 大丈夫ですよ、その辺は心得てます!
二人で並んで体を洗っていると、ガラガラと扉が開き、素っ裸の双子が入ってきた。
この辺は兄弟だなぁ、全然おちんちん隠す気無いよ……。
しかし同じ竜神兄弟でも随分違うものだな
引き締まった全身(おなか出てない)。 完全に剥けてるおちんちん。
思わずじーっと見てしまったらしく、二人がこちらの視線に気が付いた!
「こてっち、何?」
「いや、べ、別に……って、こてっち!!?」
このヤロウ……! 勝手に変なあだ名考えやがって~!!
「二人とも、さぁこっちおいで! 汗をかいただろう、体を洗ってあげよう!」
二人は大喜びで源司さんの前にちょこんと座った。 話題が流れてホッとするも、また叱る機会を逃してしまった……。
それから数十秒後、店長の体(の一部)は危機的状況を迎えていた。
この兄弟のイチャイチャッぷりが度を超えていたのだ!
兄が弟達の体を洗ってあげる際、全身洗った後二人を中腰にさせて、後ろからお尻の穴まで洗い始めた!! 二人とも気持ち良さそうにしている……!
そしてそこを洗い終えると、そのまま手を伸ばして後ろからおちんちんまで洗い始めましたよこのお兄さん!! 双子も双子で笑ったり小突きあったりしながらこれまた気持ち良さそうに洗ってもらっている……何このイベント!!?
そして、全て洗い終えると
「今度は俺らが兄ちゃんの体を洗ってあげるよ!」
そう言うと片方がお兄ちゃんの背中に回って前後から挟みましたよダンナ!!?
そして一生懸命にお兄ちゃんの体を洗い始める。
やはりそこには邪な感情など無い、純粋な兄弟愛なのだ……そう安心しかけたその矢先!
「じゃ、兄ちゃん、少し腰浮かせて?」
スコシコシヲウカセテ…!!!?
いきなり飛び出すエロワード!←考えすぎ
座った状態から少し腰を浮かせるお兄ちゃん! そして! その前後の秘部を、同時に洗う弟達!! 恐ろしい子……!!!
決定打になったのは、前で跪きながら源司さんのおちんちんを洗ってあげていた双子のどちらか! 一通りおちんちんを洗い終えると……
お兄ちゃんのおちんちん剥きやがった!!!
初めて見る源司さんの先っぽ。
常に皮に包まれているため弱い皮膚のままのそれは、ぬらぬらといやらしい光を放っている。 それを柔らかくタオルで包んで洗ってあげると、さらには汚れが溜まりやすいくびれの部分まで丁寧に洗い始めた!!
「大丈夫だよー、兄ちゃんだってちゃんと剥いて洗ってるよ?」
「でも兄ちゃん、尻尾の裏はあんまり洗えてないだろー!」
「ハハハ、そこを洗うにはおなかが少ーし邪魔かなぁ」
そんな無邪気な会話をしながらお兄ちゃんはニコニコ、双子はキャッキャとはしゃいでいる。
素晴らしきかな兄弟愛。 でもスイマセン、自分、もう、股間のビッグバンに耐えられません!
急いで体を洗い終えると、変な体勢のままじゃぶんと湯船に浸かった。
……ここの温泉、無色透明じゃなくて良かった……
そんな事を考えていると
源司さんが不思議そうな顔をして入ってきた
……本当、この天然神様ーズは……!!
顔が火照るのを感じながらも股間が落ち着く事を必死に念じていた時、双子の何やらヒソヒソ話す声が聞こえてきた。
不穏な動きを察知した店長! 警戒しようと双子の方を振り向くと……
双子がいない……! いや、違う!
上だ!!!
空中高くジャンプした双子は! そのまま!!
ザッパァアアアアアアン!!!!!
温泉にダイブ!! 大きな湯柱が立ち、ザパァッと顔を上げると、ずぶ濡れの二人を見て大笑いした。 源司さんはまだしも、全身体毛で覆われた店長は正に濡れ鼠状態である。
ゲラゲラ笑う双子に、遂に!! 店長の頭辺りからブツッという音が!!!
ゆらりと立ち上がり、そして……
「神様にもやって良い事と悪い事があるんじゃあああ!!!」
そう怒鳴ると、ザバァッと風呂から上がり、プンプンしたまま脱衣場の方に向かった。
キョトンとする双子。 そのまま兄に顔を向ける。
「なぁ、兄ちゃん、『神様のしちゃいけないこと』って何だ?」
その質問に、源司はニコッと笑みを浮かべた
「そうだなぁ、ピンと来ないよなぁ、神様なら。 うん、言葉で言うなら……そうだなぁ」
そう言いかけた時、視界の端に店長の姿が映った。
脱衣場に入った訳ではなかった。 フェイントである! そのままくるりと向きを変えて……そのまま! 全力疾走!! そして!!!
ダイヴ!!!!!
再び大きな湯柱が立ち、双子もずぶ濡れ!
ザパァッと湯船から顔を上げた店長、双子をバッと見て一言。
「己の欲せざる所 人に施す事無かれ!!!」
呆然とする双子。 店長がムスッとしていると、後ろから押し殺したような笑い声が聞こえた。
振り返ると、源司さんが口を押さえながら肩を揺らして笑っていた。
「な、何が可笑しいんですか……!」
困り顔で店長が訊くと
「す、すいませ……ブフォッ!」
吹き出すと同時に大笑いした。 双子同様、店長も呆然とする。 そして
「まったく……」
ムッとした表情に戻ってそう言うと、一緒になって笑った。
双子が顔を見合わせる。
それは二人が始めて見る、兄の笑い顔であった。 優しい笑顔では無い、声を上げて笑う顔。
それが二人には本当に新鮮で、そして、何より嬉しかった
お疲れ様でした~
続くー!
2025-06-19 07:00:00 +0000 UTC
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源司さんのお話です。 どぞ
「神様にもやって良い事と悪い事があります!!!」
突然の怒号に目を覚ます!
「な、何事っすか!!?」
ここはいつものタンさんの道場。 だがいつもとは違う急展開! 何今の怒鳴り声!?
茶道寺が辺りを見回すと、それが目に入った。
え、っていうか……
何すかコレ……!!?
状況を掴めずにいると、既に起きていたらしいタンさんがそっと耳打ちしてくれた。
「どうやら源司さん、寝てる店長さんのバンダナをめくった様なのだ……」
それはまたビッグな地雷を……!!!
とはいえ自分も興味はあった。 あっぶねぇ~! こんなに切れられるんだ……!?
隣を見るとタンさんもちょっと焦ってる。 同じ穴の狢(ムジナ)発見伝。
しかし切れられている当の本人、源司さんはというと、キョトンとしているというか、むしろ楽しそうというか、何とも奇妙な態度をとっていた。 それが尚更店長をヒートアップさせていた!
「ちゃんと聞いて……!」
「……あ、そうです!」
ポン、と手を叩いて源司さんがニコッと笑う。
「お詫びに特別な温泉にご招待しますよ!」
「……お、温泉? とくべつ……な?」
店長の怒号がピタッと止んだ。
「えぇ、土地神だけが利用できる温泉宿があるのです。 そこに特別にご招待しましょう! 神々が疲れを癒す温泉ゆえ、普通の方ならとろけますぞ~?」
「と、とろける……?」
今やすっかり店長の顔からは怒りが抜けていた。 驚きの表情で頬を赤らめ、口元も少しずつ緩んできた。 虎鉄さん、温泉好きなんだ! わかりやすっ!!
ハッと我に帰ると、クルリと向きを変え
「べ、別に温泉があるから許す訳じゃないですからね!」
と顔を赤らめながら言い放つ。
……ツンデレキャラみたいっすよ、虎鉄さん……
自分の帽子の所在に涙しながらも、この手のツッコミは欠かさない茶道寺であった。
──アウトドア派の店長も、流石に息が上がってきた。
天狗山を、もうどれだけ上がってきたか……以前タン師範と訪れた『名も無き滝』よりさらに奥にズンズン進んでいく。 周りはもはや樹海である。
ちなみにタン師範と言えば、今回の温泉旅行に参加したのは店長ただ一人である。
ナギさん、茶道寺さんはどちらも仕事、タン師範はこの日に限って隣町の武道大会の審査員を頼まれていた。
(この世の終わりみたいな顔してたからなぁ、タンさん。 よっぽど温泉好きなのかな……修学旅行でも温泉がどうとか言ってたし)←にぶ店長
「着きましたよ~!」
先を歩く源司さんの声に考えを中断させ店長が顔を上げると、そこには大きな鳥居があるだけ。 鳥居の向こうも樹海が広がるばかりである。 だが、何となくピンと来た。
「ではどうぞー」
息を呑んで鳥居をくぐる。 すると今まで木に遮られていた暖かな日差しがパッと視界に広がり、目を開けるとそこには丸く開けた土地と、その中央に一軒の旅館が建っていた。
そう大きくは無い、古さは感じるが汚さは感じない、ちょっと不思議な感じの旅館である。
お話の中のような仕掛けに頬を赤らめていると、
「ここは私の双子の弟が経営してるのですよ」
と、今の感動を全て吹き飛ばすサプライズワードが飛び出した!
「双子の弟!!?」
店長の驚きに、逆に源司さんが驚いた。
「ふ、双子の弟さんなんていたんですか……!?」
「……え、えぇ、まぁ」
意外だ。 意外な家族構成だ……。 この天然万能かみさまがもう一人……!?
「に、似てますか……?」
「それはもう! 見分けがつかないと、よく言われてますよ!」
何だか嬉しそうに家族の話をする源司さんに、ちょっと頬が赤らんだ。
……源司さん、こんな一面があったんだ
「おぉーい! 連れて来たぞー!!」
大きな声を上げながら、源司さんが玄関に入っていった。
「お帰り、兄ちゃん!」という声が奥から聞こえた! 声、結構低めだな……?
ドキドキしながら店長も玄関に入る。 視線を上げると、作務衣(さむえ)を着た竜神様が立っていた。
その……え?
似てる……!? ふ、双子!!?
いや、全然(って程でもないですけど)似てないですよ!!? ていうか何か恐いんですけど!?
などと店長が頭の中で突っ込みまくっていたその矢先!
「お帰り、兄ちゃん!」
さっき聞こえたのとまったく同じセリフが! 彼の!! 後ろから!!?
!!!
双子の『弟』じゃなくて!!?
『双子の弟』!!!!?
新キャラ登場!? ×2
どうなる温泉イベント!
続く~
本当は温泉イベントまで入れて2話予定でしたが、絵を描きすぎたので3話構成……かなぁ。
温泉は次回に。
2025-06-12 07:00:00 +0000 UTC
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完結編です。 もう書く必要も無いかもですが……長いです。
では、どうぞー。
虎鉄さんと現場に戻った時、大乱闘はまだまだ続いていた。
……ある意味終わっていたのだが……
予想の斜め上を行っていた!!
何この状況!?
「キバトラは俺が呼びに行くっつってんだろ! オッサンはご老体を休めてろよ!!」
「貴様こそ横になっているが良い! 私が呼びに行き、帰って温泉に入るのだ!!」
……俺の事、眼中に無いんすね?
そう、地元の不良相手の喧嘩自体はとうに終わっていたのだ! 全員失神+全員全裸!!
この二人、本気で強すぎ! そして死ぬ程タチ悪い!!
ところで、あの……この場に居てはいけない方がいらっしゃいませんか……?
「何座ってジックリ見てるんすか!? 竜神様、貴方教師役でしょ!!?」
「おや、戻られましたか! ……ちゃんとお友達になれたようですな?」
俺と虎鉄さんを見て、竜神様が微笑んだ。 おのれ、やはり確信犯か!
源司の言葉を受けて、ナギタンコンビも喧嘩を止めて二人の方をクルッと向いた。
「……何だそりゃ?」
ナギが腹を擦りながら不思議そうに聞くと、師範の目にその映像が飛び込んできた!
虎鉄と茶道寺は、手を繋いでいたのだ! 仲良さそうに!!
師範の表情が一変し、ズンズンと二人に近付く!
こ、殺される……!
そう茶道寺が思った瞬間、師範は虎鉄君の空いてるほうの手の横に立つと、自分も手を繋いで頬を染めてニコッとした。
「なら俺はこうだ!」
そう言うとナギは虎鉄君の後ろに回って、背中からガバッとしがみついた!
「お、スキンシップ大会ですかな? では私も……!」
そう言うや否や、源司さん、いきなりボフッとでかくなった! 綱引きの時に見たモコモコモードだ!!
全員の顔が青ざめる、ま さ か……
そして! そのまま!!
全力で抱きしめた!!!!!
い、意識が……
目を覚ます。 何か、久しぶりにすごい寝た気がする。 僅かに外から光が漏れ、数人の寝息が聞こえる、明け方かな……?
一瞬、自分が何処にいるのか判らなくなる。 ……そうか、飲み会……。
そうだ、タンさんの道場で虎鉄さん達とみんなで宴会したんだっけ。
しかし今回は飲みすぎたか、途中からまったく憶えてない。
そういえば、何か……楽しい夢を……
周りに視線を巡らせると、皆が寝ている中、虎鉄さんの姿だけが無かった。 どこ行ったん……
そこで、ふとおかしな事に気付いた。 あれ、何で俺、店長さんの事「虎鉄さん」って……?
スラッと部屋のふすまが開いた。 仰向けに寝転んだままそちらを向くと、ハンカチで手を拭きながら、上半身裸の店長さんが入ってきた。 トイレか。
二人の目が合う。
「あ、愁哉君……」
そう聞いて、
! やっと記憶が戻った! そうか、俺……源司さんに頼んで……!
何か言おうにも何を……そう考えていると、店長さんが何かアガアガ言い出した。
何だろ……? 何かに凄い驚いている……そして、さっと視線をそらした。
明らかに今、俺の身体の方を見たよな……?
そういや何かスースーする……
恐る恐る頭を上げ、自分の身体を見てみる……ま、まさか……
全裸です。 そして、おちんちん元気です!
うわぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
がばっと前屈になる! 両手程度では隠せるモノではないのだ!!
顔を真っ赤にする。 み、見られた……!
平常時は見せたけど、まさかこんな浅ましい状態まで見られるなんて……!
茶道寺がショックに打ちのめされていると、店長がそこであることに気付き、茶道寺に近付いた。
そして、茶道寺の背中に触れた。
「……! あ、あの?」
「傷、ちゃんと消えたんだね……」
そう言うと、優しく茶道寺を背中から抱きしめた。
「良かった、愁哉君……本当に良かった……!」
声が少し震えていた。
感動の! 名場面! 本来なら自分も涙を流して感謝の言葉の一つでも言いたい所なのに……
虎鉄さんの体毛がフカフカで気持ち良過ぎて、ますますイチモツがえらい事に!
こ、こんな所……あの二人に見られたら……!
チラッと二人が寝ている方に視線をやると……
既に起きた二人が凄い顔でこちらを見ていた
(映像はお見せ出来ません)
「! ち、違うんすよ!! これはそういうあれじゃなくて……!!」
しどろもどろになる! 当然だ、客観的に見れば全裸でおっ勃てた男に上半身裸の男が抱きつき「良かった」を連発しているのだ! 涙を浮かべて!!
「そんなにご立派なチンポがご自慢ですか、アァ!?」
ナギさん、ちょ、待って……!
「奈落の底ってどうなってるんですかなぁ?」
知らないです! 知りたくも無いです!!
源司さんが目を覚まし、股間に俺の帽子をぶら下げたまま(泣)この状況に入ってきた。
「おや、イチモツの自慢大会ですかな?」
おぉおおおおおい!!! 事態を変な方向に持っていかんで下さい!!
そしていきなり脱ぎだすナギタンコンビ! ちんちんいじりだしましたよ!!?
虎鉄さんもようやく感動から抜け、途端この状況にポカンとする。
再び目が合う。 そして
一緒に笑った。
虎鉄さん、変ったっすね。 俺も、変らなきゃですよね。
俺、もう逃げないっすから。 何からも、自分の『心』からも。
俺、虎鉄さんの事が 好きです
明け方、ようやく自警団の仕事を終え、新郷中佐は自宅に戻った。
風呂に入っていると、妹が声を掛けてきた。 すまないな、起こしてしまったか……。
二人きりの家族、最愛の妹
そういえば昔、妹の事を話題に上げられ肝を冷やしたな……。
高校時代、三人の転校生のひとりに言われたのだ。 うち一人はライオンで、今は師範の顔がダブってしまう。 余程怖かったのだろう、当時の俺は。
とはいえその三人、修学旅行で暴力事件を起こし、現場に居た教師共々退学処分になったんだっけか……。
大河原、ショックだったろうな、仲良さそうだったし……。
当時の事を思い出すと、今でも胸が痛む。
当時俺は、いや、クラス中が大河原を怖がり、嫌っていた。
彼が起こした暴力事件の真相を知ったのは、暫くしてからの同窓会においてである。
本人は参加しなかったが(当たり前か……)、神職に就いた級友が、高校のあった土地の神様である亀神の御爺様に話を聞いたそうだ。
子供を助けようとして……
あいつは今頃、何処で何をしているだろう……友人が出来ただろうか?
再会出来たら、謝りたい。 謝って、許される事ではないかもしれないが、それでも真っ直ぐに謝りたい。
そうしたら、あいつと友人になれるだろうか……あいつの為に真剣に怒っていた、あの馬獣人の様に……
「ちなみにこの勝負、良識の範囲内での勝負だから茶道寺は反則負けな」
「何すかソレ!!!?」
おしまい
2025-06-05 07:00:00 +0000 UTC
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不死者爺ちゃん、元海賊爺ちゃんは西暦900年代にブイブイ言わせていたノルウェー人。
とっ捕まって絞首刑にされたのが50代後半、以降現在に至るまで1000年以上生きておられます。
身内や眷属さんの前では朗らかで気さくな人物ですが、基本的には人間不信。
理由は海賊時代に遭った裏切りと、覚醒後から狼眷属さんをを生み出すまでの250年の間で、『不死者』とバレた途端に捕まり幾度となくヒドい目に遭わされ続けたから。
世界各地を飛び回る、カワイコチャンのエンジョイ勢祖父。
※JPEG画像1枚のみの公開となります。 こちらはSNSで公開したイラストの高解像度版となっており、表情集とアダルトイラストを合わせたもう1枚はノーマルプランからご覧いただけます。
2025-06-01 09:00:00 +0000 UTC
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修学旅行・地獄編 はじまり~。
死ぬほど長いです。 そして絵が少ないです……(泣)
店長、もとい虎鉄君と楽しくなるはずだった修学旅行。
だが茶道寺の計画は、早くもご破算状態だった。
1.3人のはしゃぎっぷりに振り回されっぱなしの虎鉄君、超不機嫌!
2.結局一人別行動をとろうとする虎鉄君を追いかけていき……
現在、地元の不良どもと大乱闘中
しきりに「付いて来るな」を連発していたのはこういうことか……
「だから言ったろうが! こうなったって憶えてたんだよ!! 一晩中続くぞコレ!」
だがここで、采配ミスかと思われたナギタンコンビの同行が始めて吉と出た!
二人はお互いを動きが悪いだの手を抜くなだの罵りあいながらも、バンバン不良共をぶっ飛ばしていく! 虎鉄君こと店長さんも信じられないほどのバトルモード全開状態! そう……
問題は、自分であった
先程より、しこたま殴られている。
相手を殴ってはいるが、圧倒的に喧嘩の経験が無い。 腹だの顔面だのをかなり殴られている。 駄目だ、完全に足手まといだ……俺……!
何で……俺は……
「茶道寺さん!!」
突然の叫び声に我に帰る! 虎鉄君の視線の先、自分の背後に目をやると、角材を振りかぶった大男が視界に入った。
頭が真っ白になる。
本当、何やってんだろ、俺……
だが、角材は当たらなかった。 僅かに背中をかすめたのみである。
虎鉄君がグイッと茶道寺の体を自分の胸元に引っ張ったのだ! 間一髪、制服が裂けたにとどまった……!
ゼェゼェと情けない声が口から漏れる。 顔も腫れてる。
ダセェ、最悪だ……俺……
「てめぇら……」
その時、茶道寺の耳に声が響いた。 押し殺した、地獄の底から響くような、深い、低音の呟き
俺のダチに何してくれてんだ!!!
それは刹那に咆哮へと転じ、その場にいる全員を凍りつかせた。
隙を突いてナギが角材男を蹴り飛ばす! うぉ、狼さんスゴッ!!
「お前ら、どっかで隠れてろ!!」
ナギが吼え、くいっと顎で反対方向を示す。 その瞬間、師範がそこにいた数人を薙ぎ払った! 動き見えねぇ……!!
疲労しながらも呆気に取られている茶道寺をバッと肩に担ぐと、虎鉄は勢い良く走り出した! そのあまりのスピードに茶道寺は心底ビビッた! 自分の周り、バケモノばっかりだったよ!!?
その場に残った二人が何かを話している。 二人とも何か余裕だ……
声は流石にもう聞こえないな……
「ほぉ、今のはいい動きだったじゃねぇか、オッサン」
「フン、ようやく顎下の鬣(たてがみ)の邪魔臭さに慣れてきたところだ」
「へぇ、俺はてっきりキバトラに本気の自分を見せたくねぇのかと思ったぜ?」
「貴様と一緒にするな」
話している間にも、不良共はワラワラと集まってくる。 二人を取り囲んでニヤニヤしている。
数分後、彼らは気付くんだろうな、自分たちが何を相手にしたのかを……。
店長さんの記憶の中の住人とはいえ、ご愁傷様です……
(……ここ、自分の記憶の中だよな……あんな角材持った奴、いたっけ……?)
虎鉄君は、暫く走って人気の無い公園を見つけ、考えを止めた。 ここなら茂みに身を隠せるし、意外と広いから退路も確保できそうだ。
茂みの影に茶道寺を降ろし、顔に触れる。 腫れが痛々しい。 茶道寺の息が整うと、半身を起こさせた。
「上着脱げ……背中、見せてみろ」
虎鉄の声に、茶道寺が驚く。 深刻な声だ。
「あの、だ、大丈夫っすよ。 背中、全然痛くないですし……」
「いいから脱げ!!」
ビクッとして、そのまま指示に従った。
背中には、裂けた様な傷は無かった。 一瞬、赤いものが制服の裂け目から見えたのだが、そういやTシャツ赤かったっけ。
ホッと胸を撫で下ろす虎鉄君。 だが、その視界に妙なものが映った。
茶道寺の全身にうっすらと引かれた幾本もの細い線。
……何だ、コレ……?
指で線をなぞってみる。
その感触のくすぐったさに茶道寺がビクッとなる。
「な、何すか……?」
「お前、この線……何だ……?」
線……
そこで茶道寺は、事態の深刻さに気が付いた
今の自分の体は高校時代のもの……この当時はまだ消えてなかったのだ!
そこでようやく気が付いた。 何故、竜神様は自分の願いをこんな中途半端な形で叶えたのか。
「過去には戻れませんよ」
それが竜神様の答えだった
「過去を変えることは出来ませんから。 出来てその人の過去の記憶に幾分か干渉出来るのみです。 それもせいぜい2、3日程度」
その答えを聞いたとき、ならせめて楽しい思い出をあげたい、そう思った。
違う、俺がすべきなのはそんな事じゃなかったんだ……。
見透かされていた。
また俺は逃げたんだ。 竜神様は、俺に懺悔の機会を与えたんだ……。
茶道寺は振り返り、虎鉄君をじっと見た。 もう、隠せるはずもない。
立ち上がると、そのままズボンも、下着も脱ぎ捨て、そのまま膝を着いた。
虎鉄の目に、茶道寺の長大なイチモツが映る。 だが、最も目を引いたのはその大きさでも太さでもない、そこにも付いていた、細い線である。
「カッターの、傷跡……?」
自分の口から出た答えに、虎鉄は驚いた。
「憶えてますか……? 神社で苛められていた、小学生の事を……」
うつむいたまま、茶道寺が話し出した。
憶えている
高校入学式のあの日、近道に通った神社で自分はそのシーンに出くわした。
それは、イジメなんて生易しいものではなかった。 他校の高校生に小学生が服をカッターで切り裂かれて全裸にされていたのだ。 体にはその時に付いたであろう無数の切り傷、だがそれすら気にせず、奴らはその子の体を弄んでいたのだ。
傷付けられた、大きなイチモツを……
「お礼を……俺、言いたくって……でも、俺、怖くて……何も言わず……に……逃げちゃって……」
茶道寺の声が震えていた。
怖くて逃げた、当然だ。 虎鉄はあの時、生まれて初めてぶち切れた。 気が付くと、その高校生たちは全員血まみれで地面に突っ伏していた。 どれほど凄惨な光景だったか……
「虎の、お兄さんの……制服……憶えてたから、お礼……言おうと……高校に……」
! 知らなかった……
気が付くと、茶道寺の瞳には光るものが見えていた
「虎の獣人……って、少ないから……すぐ、名前も判って……鬼頭(きとう)虎鉄さんって……」
そこで茶道寺の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
「そのお兄さん、暴力事件で停学処分になったって……! 周りの皆に、凄い怖がられてて……凄い嫌われてて……!! 俺の……俺の所為で……!!!」
ボロボロと涙を流し、涙声で叫ぶ。
「謝んなきゃって……俺、お兄さんに……謝んなきゃって……! でも、すぐうち引っ越しちゃって……!」
言葉が出ない。
何て言えば良いのか、見当も付かない……
「違う……謝ろうと思えばいくらだって方法なんて……あったはずなのに! 俺、嫌われたくなくって、お兄さんに、お前の所為だって言われるのが怖くて……!! また逃げたんです……!!!」
嗚咽を漏らし、うつむいたまま茶道寺は泣き続けた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
考えた事もなかった。 自分が救ったはずの少年が、こんなにも深く傷ついていたなんて……。
それも、自分の所為で……。 自制心が利かず、馬鹿をやった自分の所為で……。
泣き続ける茶道寺の背中に手を回し、そして強く抱きしめた。 自分の胸に茶道寺の顔を埋め、小さく言った。
「怖かったろう……もう、大丈夫だ」
茶道寺は驚き、そして、そのまま泣き崩れた。
それはあの日、我を失った少年が言う事の出来なかった言葉
それはあの日、逃げ出した少年が聞く事の出来なかった言葉
茶道寺は虎鉄の胸の中で、大声で泣いた。
あの日の自分に、小学生の自分に戻って……
「もう戻って平気なのかよ!?」
虎鉄の問いかけに、併走しながら茶道寺は笑って、力強く頷く。
「足手まといにならない程度に頑張りますから! それに虎鉄さんでも一晩かかったんなら、あの二人だってまだまだかかるでしょ!?」
だな、良し!
「んじゃ、気合い入れろよ、愁哉!」
先行した虎鉄が自分に向かって腕を伸ばす。
茶道寺はその手を、強く、握り返した
今も昔も変らない、彼の強さと優しさに、再び瞳に僅かばかりの涙を浮かべながら
続く
あとはエピローグっすね~(茶道寺風に)
明るい話になりますのでご心配なく。 にしても2話目は鬼門っすねー。 どうも面白くならないや
2025-05-29 07:00:00 +0000 UTC
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茶道寺さんのお話、始まり始まり~。 長いし3話予定。 絵も多目かもです。
半端な時間に目が覚める。
まだまだ深夜だろう。 周りから寝息が聞こえる。
自分の部屋ではない、だが何処にいるのか判らないという経験が茶道寺には無かった。
ここはライオンさんの道場。
お祭以来、何度か同じ面子で飲み会を開いている。 今は宴の後、という訳だ。 だがコンプレックスがあるからだろう、何かするのもされるのも嫌な為、酒に酔ったためしが無かった。 学生時代からずーっとだ。
皆を信用していない訳じゃないんだけどなぁ……
寝息のする方向を見ると、店長さんが丸くなってスースーと寝ていた。 そしてそこから遠く壁際で、また脱いだのだろう、無理矢理服を着せられたっぽい狼さんがグーグー寝ている。 そして狼さんを店長さんから引き剥がしたであろうライオンさんが、狼さんの足をつかんで座ったまま静かに寝ていた。
思わず顔がほころぶ。 店長に近寄り、静かにその寝顔を見る。
狼さんには友達として随分好かれているし、ライオンさんには多分惚れられている(バレてるバレてる)。
店長が幸せそうなのが、茶道寺は何より嬉しかった。
虎の獣人さんが幸せでいるのが嬉しい。 代替行為であることは判っている。 店長さんはあの人じゃない。 それは判っているのだが……
「店長さんの寝顔、カワイイですか?」
!!!!!!!!
振り向くと、竜神様がニコニコしながら自分を見ていた。 全裸で。
「……そんなんじゃないっすよ。 それより褌ぐらい穿いて下さいよ」
「店長さん、良い寝顔されてますよね」
スルーっすか。 イチモツ丸出し続行っすか。
「昔は随分と寂しい思いをされたそうですが、今は楽しそうで何よりですな」
「……そうなんすか?」
「高校2年生の時にご両親の離婚で苗字が変わったとか、多感な時期には大変だったでしょうな、元々あまりお友達もいらっしゃらなかったそうですし」
「ちょ、ちょっと待ってください、苗字が変わった? じゃ、こ、高1の時って大河原(おおかわら)じゃ無かったんですか?」
「えぇ、確か違ったはずですよ。 教えては下さらなかったですが、あまり好きな苗字ではなかったそうな」
「……店長さんの名前、何ていうんですか…?」
「……?」
「トラトラ店長ってあだ名、もしかして……名前から来てるんじゃないですか……?」
「虎鉄(こてつ)さんですな。 大河原の『大河』と虎鉄の『虎』で『トラトラ』……」
茶道寺の表情が見る見る変わっていく。 驚き、焦り、そして真剣な目になった。
「竜神様って神様なんすよね」
「? えぇ、まぁ」
「何でもします。 言われた事なら何だってしますから、俺の願い、一つだけ聞いてくれませんか」
……困りましたね、たまにいらっしゃるんですよね、こういう方。 漫画か何かの見過ぎでしょうか……
「そうですね、では全裸で星見町を一周というのはいかがですかな(笑)?」
「そんな事で良いならいくらでもします。 今からで良いですか……? それとも日中、人が多い時間帯の方が良いですか?」
……素で返されてしまいましたね、申し訳無い事をしました。 本気ですな……
「すみません、今のはほんの冗談です。 叶えられるかどうかはともかく、まずはお話を聞きましょう」
頭が重い、飲みすぎたかな……
ていうか、っつうか、何か自分、何してんだ……?
尻の感触、服の感触、腕の感触……何だコレ……。 机らしき物に座って突っ伏している。 恐る恐る顔を上げてみる。 そう、この感触、どう考えても……
高校の教室だ
「な、なんじゃこりゃぁああああああ!!!!!?」
思わず大声を張り上げる。 教室中がビクッと自分を伺い見る。 間違いねぇ、この居心地の悪さ、高2か高3の時の教室だ。
さっぱり訳が判らねぇ、自分、店長だよな? ウン、記憶がある、たしか道場で飲み会してたよな!? つうか……何で店長の頃の記憶があって、高校の頃の自分に性格戻っちまってるんだ!? 言葉遣いもめちゃ悪いじゃねぇか……!?
そんな店長、もとい、虎鉄君の疑問を一発で薙ぎ払うものが目に入った。
教室のドアがガラガラと開き、教師?が入ってきたのだ。
「はーい、皆さんはじめましてー。 臨時講師を務めますー…」
「ぅおぉおおおおおおおおおい!!?」
もう犯人わかった! 背広姿超似合わねぇ!
「な、な、何してくれてんだよコレ!?」
(お静かに願えますかな?)
うぉ! 頭ん中に源司さんの声する! テ、テレパシー……!!? コワッ
(な、なんなんすか、コレ!?)
強く頭で念じてみる。
(多分勘違いされているかと思いますが、これは過去ではありません。 店長さんの『過去の記憶』の中です)
うぉっ、通じた! つか、何? 記憶……?
(簡単に言うと『リアルな夢』ですな。 高校時代にあまり良い思い出が無いと仰ってましたから、少し楽しいイベントでもと)
……呆れてものも言えない。
(……余計なお世話っすよ……。 つか記憶だけ楽しくしたって意味無いじゃないっすか。 過去が変わる訳じゃなし)
(『現実の過去』も『記憶の過去』も、今では同じ『想い出』でしょう?)
何だろう、上手く言いくるめられそうな流れだぞ……?
(いや、でもこんな過去、思い出したくも無ぇっつうか……)
「では早速ですが、転校生を紹介しまーす」
スルーかよ。 ……つか、転校生……?
嫌な予感がする。 そしてそれは、見事に的中!
「何してんだよ、あんたらまで!!!!!」
ツラッとした表情のタンさんナギさん、唯一茶道寺さんだけが気まずそうにしている。
(おい、源司さん! めちゃくちゃだぞコレ!? 俺とタメってナギさんだけだろ! タンさん俺より3つ上だし、茶道寺さん随分下じゃなかったか!?)
返答なし そうかよ、スルーかよ……!
教室中がざわめき始める。
何、転校生3人ってどういう事?
高2のこの時期に転校生……?
ていうか、何? 教師も転校生も『鬼河原(おにがわら)』の知り合い……?
うっ、と黙る虎鉄君。 あまり教室では目立ちたくなかった。
黙って椅子に腰掛ける。 だが、ふと気付いた。 茶道寺さんが、何か……怒ってる?
「じゃぁ転校生諸君、自己紹介をお願いします」
竜神様は、いたってマイペースだ。
「茶道寺 愁哉(しゅうや)です」
へぇ、茶道寺さんって『愁哉』っつうんだ?
「それから今『鬼河原』って言ったヤツ、前に出て来い。 ぶっ殺してやる」
えぇええええ? どうした、茶道寺さん!?
「じゃ、はい次」
「貴様らに名乗る名など無い」
おぉおおおおおい!!!
「ちなみに私の耳は誰が『鬼河原』と言ったか聞き分けている。 安心して眠るが良い。 永久(とわ)にな」
……あ、あんた本物のタンさん……? もっと面白キャラだよ、あの人?
「じゃ、最後の一人ね~」
「ナギだ。 偽名だが気にするな」
も、もう言葉も無いよ……つかこの頃って両目あるんだ。
「あぁ、それと『鬼河原』って言った貴様、来月の妹の誕生日、楽しみだな?」
怖っ! 素で怖ぇよ!!!!!
「はぁい、じゃ、自己紹介も終わったところで、明日からの修学旅行についてお話しまーす」
そんな時期か!?
「転校生も入った事ですし、班分けからやり直しましょうか」
これには教室中大ブーイング! そりゃそうだろ、班どころか行動予定まで全部決めちまってる。
「……何ですか? 転校生達を仲間外れにするつもりですか?」
見ると3人とも目頭を手で押さえている。 ありえねぇだろ、大根役者ども!!
「じゃ、とりあえず3人の希望を聞きましょうか?」
「「「虎鉄君との班がいいでーす!」」」
……ハモりやがった。 まぁ、話の流れからいったらそうだろうな……。
「なる程、でも大河原君にも今組んでいる班の仲間がいますしねぇ」
「あ、俺らならいいっすよ。 そっち知り合いみたいだし」
元同じ班の面子が首を揃えて頷いた。
あっさりしてんな。 まぁ当然か、こいつらにしてみりゃ願ったりだろう。 じゃんけんあたりで負けて同じ班になったんだろうし(休んだから知らない)。 現地でもすぐ別行動したしな……
だがそこで、教室中にがぁん!というでかい音がした。
茶道寺さんが壁を蹴ったのだ。
「貴様ら、何あっさり引き下がってんだよ……? 仲間じゃなかったのか、アァ!?」
教室中ドン引き中。 ナギタンコンビは黙って指をボキボキ鳴らしている……。
どうなる修学旅行!? どうなる茶道寺イベント!!?
続く──
2025-05-22 07:00:00 +0000 UTC
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続きです。 相変わらず長~いです。 あとちょっとエロいです。
タン師範は朦朧としていた。
頭部に食らった丸太の一撃によるものではない。 むしろ……
ありがとう、丸太……!!
気を失った自分を店長さんが助けてくれて、そのまま膝枕にて介抱してくれたようだ。
頭のこぶを擦ってくれ、一緒に前髪をかき分けたり鬣(たてがみ)をすいたりもしてくれた。 それがまた何とも気持ちが良い。 日の光で乾いた体毛はフカフカで、店長さんの匂いと相まって極上の心地良さをくれていた。
正に夢心地! 夢なら覚めてくれるな……!!
ふと、店長さんを見上げると、あれ? 微妙に私のほうを見ていない……。
何だろう、私の足の方を見ているような……?
少し頭を持ち上げて、師範も同じ方を見てみると……
師範のおちんちん、えらい事になってた!!
あまりの心地よさに、いけない所が反応してしまったのだ!! ギャァアアアス!!!
バッと起き上がり、そのまま股間を覆い隠す! ゆ、夢なら醒めろっ!!
店長さんは無言のままこっちをじっと見ている…! マズイ! ばれる……!!
「きょ、今日はもう帰りましょうか! どうも上手く精神統一出来なさそうですから……!」
適当に誤魔化し、湿った褌を脱いで普段着用しているサポーターを穿こうと前屈みになる。
これがいけなかった。
師範は店長の事を同性愛者だなんて夢にも思っていないのでこのような姿勢も気に留めなかったが、店長からすればいきり勃ったモノを見せられた上、現在
タンさん、自分に向けて肛門丸出し状態!!
不意に師範、「ブツッ」と何かが切れるような音を聞いた気がした。
はて? 後ろを振り返ると……
今度は店長さんがえらい事に……!!!
驚いている師範の隙を突き、物凄い力で後ろから師範を羽交い絞めにする店長! いつのまにか水着の前部分を下げイチモツをあらわにしていた店長は、そのまま師範の肛門にグリグリとモノを押し付ける! だが何の準備もしていない状態で中に入る訳も無く、切れた店長は、さらに息を荒げた。
師範は……驚いていた。 痛みを忘れるほど……嬉しかった!
店長さんが、私の体を求めてくれている……!?
肩に力を入れ、瞬間「パシッ」と店長の羽交い絞めを弾く! 驚く店長! だが、師範はそのまま振り向くと跪き、店長のいきり勃ったモノにキスをした。
呆気に取られている店長、そのまま師範は口で奉仕し始めた。 たっぷりと唾を付け、『やりやすい』ように……。
同時に己の肛門に指を入れ、柔らかくほぐそうと必死だった。 経験が無い師範は、どうすれば良いのかよく判らない。
きっと店長さんの男根を汚してしまうだろう……。 川で洗うか、駄目ならまた口で綺麗にしてあげようとさえ思っていた。
店長もゆっくりと我に返っていく。 段々と現状を把握していき、顔が青ざめていく。
「あ、あの……タンさん……」
奉仕を終えると、師範は立ち上がり真っ直ぐに店長を見た。 頬を赤くして、股間を膨らませて。
店長もそこでようやく気付いたらしい、師範の気持ちに。 店長の顔も赤くなる。
静かに笑うと、師範はクルリと後ろを向き、膝に手をやって尻を店長の方に突き出した。
ここまできて、言えねば馬鹿者だ……!
「て、店長さん……わ、私は……」
喉が渇く、頭が熱くなる……! 言え……!! 言え!!!
「私は……ずっと」
店長さんが自分を求めてくれている、今なら言える……!!
「ずっと……貴方が……」
夢なら……夢なら……
「ずっと貴方が好きでした……!!!」
夢なら醒めてくれるな……!!!
夢でした(笑)
……今世紀最大に落ち込む師範。 ある意味夢の一部は叶っていたものの(膝枕)、己の精神の浅ましさにもう言葉も無い。
介抱してくれていた店長さんの顔をまともに見れない……。
そのままムクリと立ち上がり
「すいませんでした……今日はもう帰ります……」
と、消え入りそうな声で呟くのが精一杯だった。
「あ、あの……タンさん!!」
いきなり大声で呼ばれてビクッとする師範。
振り返ると、店長さんが何故か思いつめた顔をしている。 何だろう……? イヤな汗が出て来る。 何か気付かれてしまったのか……?
考えている最中、店長がいきなり
「……!!」
無言のまま顔を真っ赤にして水着を膝まで下ろした!
何が起こっているのかわからない師範。 状況をさっぱり理解できない。
だが、視界に入っているもの(具体的に言うと店長のおちんちん)を理解し始めると、途端に師範の顔も真っ赤になり始めた。 また夢か……!?
「な……な……!?」
夢と思っても全然言葉が出てこない。 すると店長が
「すいません! 自分、見ちゃったんです!!」
「……はぁ……な、何をですか……(まさか私は現実にも勃起を……)?」
「あ、あの、川からタンさんを引き上げた時、その……ふ、褌が外れてしまって……」
ますます顔を赤くする店長。
「じ、自分だけ一方的に見てるのって、その……申し訳なくて!!」
呆然とする師範。
目を瞑って顔を真っ赤にしている店長さん。 余程恥ずかしいのだろう。 見た事も見られている事も……。
それでもこの人はこういう行動に出る、そういう人なのだ。
そう、これは現実だ。 私が好きな店長さんだ。
師範は、昔の事を思い出した。 そう、何故私はこの人を好きになったのか……。
それは
その心遣いと、優しさだった
師範はゆっくりと店長に近づき、店長が目を開けると、自分も褌を外した。
店長の目に、再び師範のイチモツが映る。
実際、もし見てしまった相手がナギさんや源司さんだったら、店長もこんな行動には出なかっただろう。
精悍な、男らしい顔つき。 鍛え上げられた逞しい体。 そんな師範の股間に佇むものは……完全に皮に包まれ、ちょこんとした、店長よりも小さなかわいらしいおちんちんだったのだ。
これを見てしまった事には店長、凄い罪悪感を感じた! 師範はそんなことてんで気にしてなどいないのだが。
再び店長の顔が赤くなる。 だが、師範の顔を見ると、師範は優しい目で静かに笑っていた
「……」
不思議と店長も肩の力が少し抜け、汗をかきながらも頬を染めながらハハハと笑った。
店長の笑顔を見ながら、師範は思う
あぁ……私は、本当に
この人が好きなのだなぁ……
セイッ! セイッ!!
今日も師範の道場に、猛者達の掛け声が響く。
ここの門下生は、みな自警団に所属する兵(つわもの)達ばかりだ。
だが、そんな彼らもおいそれとは師範に声を掛けられない。 しかし、今日は自警団の中でも兵中の兵、新郷(しんごう)中佐が来ている。 あの人ならば……!
「あの……し、師範」
みんなの心が一つになる! 行け、中佐……!!
「何かね?」
師範の野太い声に中佐の心が萎えそうになる。 だが、引けない……!
「あの、か、掛け軸の前に置いてある、あの丸太は……一体……?」
訊いたぁあああああ!!!
「? あぁ、あれは御神木だ」
「……は……?」
「御神木にすると決めた」
道場に通う門下生達にとって、師範は、尊敬し、畏(おそ)れ、そして
永遠に理解できない存在であった
おしまい
2025-05-15 07:00:00 +0000 UTC
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タン師範のお話です。 前後編予定なので絵多めでお送りいたします(毎度の事ながらラクガキですが)。
天狗山。
星見町に隣接する水源の豊富な山で、名所と呼ばれるものも含め大小様々な滝が存在する。 中には誰にも知られていない秘境的な滝もあり、師範はその一つ『名も無き滝』を毎月修行に訪れているのだが……
(駄目だ……全然集中出来ん……)
いつものように道場を出ると、後ろから声を掛けられた。 振り向くと、何と店長さんである。
お祭以降急接近を期待していたものの、別段今までと変らぬご近所付き合いに落胆していた矢先の事態! 聞けば折角の休日、森林公園に行こうかどうしようか迷っているとの事。 自分は修行に滝へ行く事を告げると「……泳げますか?」という質問が帰ってきた。
「まぁ、泳げると思いますが」
ちゃんとその後の事態を考えて発言するべきであった。 何故ならば……
駄目……超カワイイ……!!
犬掻きでジャブジャブ泳ぐその姿もさる事ながら、やはり『水着姿』であろう……!
お祭の時の浴衣姿でさえ興奮して、部屋のぬいぐるみが5つ増えたというのに! あの様な姿を見てしまったら、私は一体どうなってしまうのだ……!? 既に脳内にぬいぐるみデザインが6パターンあるのですが何か!?
いや、イカンイカン……何の為に私はここを訪れているのだ!? 精神修行の為ではないか! 普段より動揺してどうする!? 冷静に……冷静に…………
冷静になって考えてみたのだが、ひょっとして私は……
店長さんの生着替えを見られるのではないか……?
ズゴゴゴゴ
その時、滝の上から何やら不審な音が…
店長がそれに気付き、目線を上げると……師範の頭上に流れてきた大木が!!
声を上げようとしたが間に合わない……! タンさん……!!
(な、生着替え……)
堪りませんなぁ……!!!!!
ズパァアアアアアン!!!!!
一撃の下に木ぃ真っ二つ!!
そのまま川にザパァアアン!と着水し、店長の両サイドを流れていった……。
師範、そこでハッと気付く。 今の私、格好良いのでは……!?
一呼吸置き、静かに(格好良く)目を開ける。 そしてそのまま店長さんの方を向くと……
店長ドン引き中
漫画なんかではありそうな光景も、現実にやれてしまう者が居るなど想像もしていなかった……。 呆然とした店長は、そのままギギギと首の向きを変え、チャポンと川に潜ってしまった……。
や……やりすぎたぁあああ!
ガクッと膝から落ち、うなだれる師範。 馬鹿だ……私は……!
再び姿勢を正し、滝に打たれて心を静める
冷静に、今度こそ冷静に考えてみろ……店長さんにとって私はご近所さんの武道家さんなのだ。 綱引きで当てにされるくらいの身体能力で丁度良いのだ。 木とか滝とか岩とか平気で割れたら逆に怖がられてしまうのだ……!
暫くすると、気まずいと思ったのか、自分が引いてしまったのを申し訳ないと思ったのか、店長が再び水からチャポンと顔を出した。 くるっと師範の方を向く。 申し訳無さそうな、心配そうな顔をしている。
その頃師範は
……アザラシみたい、超カワイイ……!!!
全然冷静になれていなかった
瞬間! ふたたび頭上に不審な音が! 再度店長が目をやると、今度は大きめの丸太が師範の頭上に……! 大丈夫と思ってもやはり心配だ……! 声を上げようとしたがやはり間に合わない!
だが、実は師範気付いてた! ちゃんと冷静になれてた!! そして! 冷静に!!
何もしなかった!
師範の頭を軸にゴゴゴと丸太が傾き、そのままバシャァアアン!と着水、川下へと流れていった。
店長が完全に呆気に取られ、師範の方を向くと
「いやぁ、先程のは本当に偶然なのですよ。 私、大木を割ったりとか本当に出来ませんから。 もう、本当、体が丈夫なのがせいぜい取り得の、不器用……な……漢……ですか……ら…………」
凄いいっぱい「本当」を連呼しつつ言い訳をしていた師範は、そのままバシャァアアン!と着水、川下へと流れていった……。
続く……
やばいね! 師範、本当に駄目人間だ。
あと、店長のバンダナはビニール製です(笑)
2025-05-08 07:00:00 +0000 UTC
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元海賊の不死者爺ちゃんに付き従うもう一人の眷属である、紳士眷属さん。
彼は爺ちゃんが生み出した最も新しい眷属で、現状では眷属内の末弟にあたる。 ただ眷属間で眷属化した順番による序列は特に無く、狼眷属さんとも良好な関係というか普通に仲良し。 生前は有名な指揮者だった。
……とか、そんな感じの紳士オジサマです。
※JPEG画像1枚のみの公開となります。 こちらはSNSで公開したイラストの高解像度版となっており、表情集とアダルトイラストを合わせたもう1枚はノーマルプランからご覧いただけます。
2025-05-01 09:00:00 +0000 UTC
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最初に謝っておきます。 長ーいです。 では、どうぞ
──気が付くと、ナギは見知らぬ部屋で横になっていた。
明かりが付けられ、カーテンが閉められている。 夜……か?
ボーっと辺りを見回す。 シックな色調にまとめられたテーブルやパソコン、本棚。 落ち着いた大人の男性を想像しそうだが、何故だかプラモデル(しかもロボット)がいたるところに飾ってある。 大人なんだが子供っぽい……なる程、答えが判った。
キバトラの部屋か……?
そこまで考えて、ようやくナギは自分がやらかした大失態に気が付いた。
そう……自分はあのまま気絶したのだ……!
ヤバイ……クソッ、何たる失態だ!!
顔が青ざめていく。 そんな折、ドアが静かに開いた。
顔を覗かせたのは案の定、心底落ち込んだ店長である。
「あ…気が付かれたんですね…! 良かった……。 あ、あの、本当にすいませんでした……」
……思ったとおり、うつむいたまま、完全にこっちを見ない。
「自分……ナギさんの事、全然考えてなくって……その……」
クソッ、馬鹿が!! 何で気絶なんてしちまったんだよ……!
店長は、今にも目に涙を浮かべそうだ。 自分の料理の所為でナギがぶっ倒れたのだ、そりゃへこむ。
どうする……? 半端な事言ってもこいつは立ち直らねぇ……何て声掛けりゃ良い……? 何て言えば、いつものキバトラに戻ってくれる……!?
ナギは、今や脳をフル回転させている! だが、今ひとつ良い答えが浮かばない。
……俺のチンポ見たんだし、それでチャラってのはどうだ……?
いや、駄目だな……そんなんじゃ納得しねぇか……?
その時、ナギの脳に二つの要素が流れ込み、ピンときた!
一つは、微かに匂う風呂の匂いだ。 いつでも風呂に入れるようにお湯を張っているらしい。
もう一つは、自分が今考えた言葉の中の一つの単語だ。
これは賭けだ。 失敗すれば、本当にもうこいつは俺の前で普通には笑ってくれなくなるかも知れん。
だが、こういう追い詰められた状況で、ナギの勝負勘は良く働いた。 それが彼を今日まで生かしてきたとも言える。
ここしかねぇ…!
「……済まねぇと思ってんのか?」
「……はい」
「俺に詫びたいとか、そういう事か……?」
「……はい……」
ますますうつむく。 もう目が見えない。 胸が痛い、マジで吐きそうだ。
「じゃ、俺の言う事に一つだけ従え、どうだ?」
「……! は、はい……」
パッと顔を上げた。 俺の目を見ている!
こいつは自分でどうしたら良いか判らないのだ、打開策をこっちから提示してやればイケルと踏んだのだ!
良し、もう一息……!
「俺と一緒に風呂に入れ」
「……え?」
「一緒に入って俺の背中を流せ」
「……えぇ?」
「あ、ちなみにタオルでチンポ隠すの禁止な」
「えぇえええええええ!!!!!?」
ナギは見事「賭け」に勝った!
彼が自分のイチモツにコンプレックスを抱えているのは知っていた。 だからあえてそこを突いたのだ! 店長は顔を真っ赤にしてあたふたしている。
良し、いつものキバトラだ!
ベッドから降り、軽やかに店長の横を通り過ぎる時(無論演技だ)、肩をポンと叩く。
「んじゃ、先に入ってるぜ?」
風呂場に向かうとき、これほど鼻が利いてよかったと思ったことはなかった。
ザパーッ
風呂に浸かりながら、ナギは心底ホッとしていた。 両手でお湯をすくい、顔をバシャッと叩く。
どアホウが……あいつをへこませやがって! 匂い如きで気絶なんてしてんじゃねぇぞ!!
ナギが己に喝を入れていると、そーっとドアが開いた。
目を向けると、顔を真っ赤にした店長が、伏し目がちにそろそろと入ってきた。 言われたとおり、タオルで隠してはいないものの、なーんとなく右手を股間の前に持ってきている。 隠せている訳ではない、ただ全開にしていないだけである。 その姿が、何とも可笑しかった。
ザバッと音を立てて風呂から上がり、店長のまん前に立つ。 わざと見えやすいように、少し大股開きで向かい合う。 恥ずかしさで視線を落としていた店長は、目の前に思いっきりナギさんのモノを突き付けられ、ビクッと視線を上げた。
ナギが自分を見ていた。 優しい目だ。
店長も肩の力が抜け、少し微笑んだ。
いつもの店長。 そうナギが考えた時、初めてその姿のおかしさに気付いた。 いつもどおり……?
「お前、何で風呂場でバンダナしてんだ……?」
「……バンダナじゃないですよ、ほら、白いでしょ? タオルですよ」
「ウソつけ、形がもうバンダナじゃねぇか、いいから取れ」
引っ張ろうとすると、店長が両手でタオルバンダナを押さえて必死に抵抗する!
「イ、イヤですぅううう!!!」
「お前、今チンポ丸出しだぞ? ブラブラしてんの丸見えだぞ?」
ナギの言語攻撃にも、店長の抵抗は揺るがない!
「い、いいですよ! 良くはないですけど、百歩譲ってチンチン見られるのはいいです!! でも自分、 『獣寄り』ですからっ! 頭の縞々の剥げてるのだけはっ、虎のプライドで見られたくないんですーっ!!!」
ナギは瞬間ポカンとした。 今こいつ、凄い事言わなかったか……?
「お前……『獣寄り』なのか……?」
「? えぇ、そうですよ」
「俺が『獣寄り』だと知って、気ぃ遣ってんじゃねえのか?」
「……ナギさんも『獣寄り』なんですか……?」
呆気に取られるナギ。
「はぁ? お前、俺のションベンするとこ見たろ……!?」
「えぇ、見ましたけど……あぁ、アレ『野生』が出ちゃってたんですか?」
「……お前、何だと思ってたんだよ……?」
「てっきり人目を忍んで何かのプレイの練習をしてるのかと、木を相手に見立てて……」
「フ ザ ケ ン ナ!!!!!」
本当に、この男は~! 能天気にも程があるわ!!
「つかお前、良かったのかよ? 俺にばらしちまって」
「え? 良いですよ、別に。 ナギさん『お友達』ですし」
「……『お友達』ってお前。子供かよ……?」
そう言うと、ナギはくるっと向きを変え、ドカッと座った。
「ホラ、さっさと背中流せよ!」
「……はい!」
微笑みながら店長が背中を擦り始めた。 ナギは自分の顔が真っ赤なのをキバトラに見られないかと気が気ではなかったのだが、少しすると自分も口元が緩んだ。
キバトラの笑顔が好きだ。
キバトラの笑顔を見ていると、自分も自然と口元が緩む。
俺は、奪う事で生きてきた。 奪う生き方しか出来ない。 それが何より自分が『ケダモノ』である証拠なのだ。
だが、彼といるときは違う。 彼と、こいつと、キバトラと一緒にいるとき、俺は……
「良し! 洗い終わったら次は俺がお前の背中流してやるよ」
「えぇ? いいですよ」
「ならお前のチンポ洗ってやろうか?」
「な、何言ってるんですかっ!!? そんな事言うなら自分だって洗っちゃいますよ!」
「おう、どうぞどうぞー」
「えっち! 恥知らず!!」
俺は……インテリを気取るより、何をするより、キバトラと一緒にいる時に、一番『ヒト』でいられる。
風呂場に二人の笑い声が響いた。
ナギが、自分のその気持ちが『好意』ではなく『恋愛感情』である事に気が付くのは、まだまだ先のお話。
おしまい
2025-05-01 07:00:00 +0000 UTC
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