XaiJu
葉一
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ダークノア:肉便器編(3)

コメント:寝て  4 「そうなんですよ。盲腸で。一週間くらい入院することになって、はい」  そう職場に電話をした。嘘だった。親方はちょっと不機嫌そうだったが、日ごろの勤務態度が良かったのでそこまであれこれ言われなかった。まあ、結局仕事なんて辞めることになるのかもしれないが。スマホをバッグにしまう。乱雑な部屋を見渡すと、ディルドやオナホ、オナニー目的で買ったスポーツ雑誌やゲイ向けの同人誌などが散乱していた。その下に、エロ本──女のヌード雑誌とかが紛れている。こうして見ると、やはり俺はノンケで、柿崎と出会ってから雄狂いの変態にされてしまったらしいと分かる。しかし、恨みといった気持ちはなかった。それもまあ、根こそぎあいつに奪われてしまっているのかもしれないが。  あの真っ黒な全身タイツを着て、戦闘員になる。  それを考えるだけで、俺は発情期の犬みたいに勃起し、一発抜かないと日常生活さえままならなかった。立松が『完成』したシーンを何度も思い出して、柿崎のガタイを包む全身タイツを思い出して、オナニーに耽った。そして──姿見の前で俺の肉体を見て、全身タイツに包まれた姿を想像する。  約束の日時ちょうどに、事務所のドアを開く。柿崎が全身タイツ姿で仁王立ちしていた。その背後には、直立不動の姿勢で立松が控えている。同じく、真っ黒な全身タイツ姿だが、何故か黒の水泳ゴーグルを付けており、目元の表情が分からない。前回のようにだらしない口元ではなく、きりりと引き締まっているが、チンコは痛いほど勃起しており、そのアンバランスさが却って不気味な印象を与えていた。 「やあ、待ってたよ。約束通り来たね」 「……ッス」  俺は挨拶もそこそこに、事務所の奥に歩を進める。あると思っていたところに、それはあった。俺の──俺専用の全身タイツ。見慣れたシルエットは俺の体型そのものだった。 「どうだ?気に入ったか?」 「……はい…………ありがとう、ございます……社長…………」  自分を変態に仕立て上げた張本人に、俺は感謝を捧げてしまう。目の前の全身タイツは、今度は自分のものなので、触ることができる。柔らかく、皮膚に吸い付くような感覚は一生触っていられるのではないかと思うほど気持ち良かった。 「…………すげえ……」  俺は促されてスタジオに向かう。柿崎はあれこれと話すが(主に製品の自慢だ)、立松はずっと無言だった。俺はちらちらと視線を遣るが、一向に反応しない。羞恥心もなく、全身タイツ姿のゴーグルマンとして生まれ変わった彼は、想像される『戦闘員』とやらを体現しているかのようであった。  いつもの撮影のように、いそいそと服を脱いでいく。スクリーンの前に立松がやはり直立不動で並んだ。俺達2人が並んで全身タイツ姿を晒す──その構図に興奮しないわけがなかった。やはり俺達は同じ変態なのだ。カメラが回る。写真ではなく、録画だった。 「さあ、自分のペースでスウツを着て」  柿崎が言う。俺は全身タイツを手に取り、やはり足から身体を捻じ込むようにして入れた。立松がさっと素早く屈み、俺の足指まできちんとタイツを通してくれる。肌が触れ合うところはまるで皮膚に癒着したかのように張り付き、ぴっちりと俺の肉体を覆った。「二度と脱げない」というのはやはり本当だろうと思わせる。ケツにタイツが食い込み、俺のチンコが上向きにタイツに押し込められる。ずるり、とタイツはチンコの形に沿って形状を変え、2人と同じように真っ黒なチンコを勃起させた、変態じみた格好となった。脂の乗った腹や胸、腕もやや引き締められ、指の先まで黒が覆う。グー、パーと指を開き、スウツがずれないことを確認した。じっとりとした汗がスウツに染み込んでいく。俺の全身が蒸れ、俺の体臭で満たされていく。そんな錯覚が過る。俺は好奇心に駆られ、真っ黒な指で、真っ黒な胸と乳首を撫でる。鋭い快感が走り、俺は「んあ゛っ♡」と無様に喘いだ。  俺が抵抗や何か逡巡する間もなく、立松が無慈悲に、手早く背中のジッパーを押し上げた。俺は驚いたが、後ろ髪の近くで「ジッ!」と小気味良い音が響き、上まで完全に閉まったことが知れた。俺は慌てて背中に腕を回すが、もうそこにはジッパーも境目もなくなっていた。俺は──このスウツに囚われたのだ。永遠に。 「定着」  立松が囁いた瞬間、スウツが熱を帯びて俺の全身を引き締めた。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」  俺は全身を貫く快楽の波に従って、本能のまま叫んだ。倫理観やプライド、俺の大事な理性が雄臭ぇザーメンになってチンコからどんどん射出されていく。性欲に従い、変態を超えて、一匹の淫獣となることをスウツは求めていた。それが『戦闘員』なのだと本能的に理解させられていく。脳味噌に染み渡るように、組織の情報や忠誠心が植え付けられる。俺のザーメンが白色から段々とグレーに変わっていく頃には、俺は全てを理解していた。 「俺はダークノアの戦闘員……ダーク様に絶対の忠誠を…………ん゛お゛お゛お゛ッ♡」  その宣誓が仕上げとなり、俺は人生最後となる射精を、人生最高の快楽の中で果たした。俺はダーク様の所有物であることを心の底から理解し、光栄に浸り、人間であることを辞めたのだ。ダークスウツと同じ色の漆黒の精液が放たれ、俺が戦闘員として『完成』したことを証明した。汗を吸ったスウツが、精液混じりの蒸れた匂いをたっぷりと漂わせる。戦闘員として雄を欲情させるフェロモンが出始めたことを確認した。ようやく俺は、カメラが回っていることや俺を改造してくださった社長が見ていることに気付く。如才なく敬礼のポーズを取って、俺は再び宣誓した。 「人間名・入江誠、たった今、ダークノア戦闘員に転生致しました!ダーク様に永遠の忠誠を誓います!!」  びゅっと一線黒精が迸る。宣誓だけでも戦闘員には相当な快感が与えられる。社長は拍手をして俺を称えた。 「素晴らしい。やはり自分からダークスウツを着たことが1号との差かな」 「……はっ!私、肉便器戦闘員1号こと人間名・立松忠司は改造時に抵抗したため、洗脳率・改造率共に低水準で推移し、完成までに必要以上に時間が掛かってしまいました!恥ずかしい限りです!!」  立松が敬礼のポーズを取って答える。社長は鷹揚に手を横に振った。 「いやいや、みんなが上手くいくわけじゃない。オレは1号の出来にも満足しているよ。それでは、暫定2号の戦闘員・入江誠に状況の伝達を行いなさい」 「はっ!」  立松は──否、肉便器戦闘員1号は、俺に向き直って敬礼した。俺も敬礼で応える。 「我々、肉便器戦闘員0号こと人間名・柿崎俊に見出された戦闘員は、その指揮下に入るよう命ぜられております!具体的には、新たな肉便器戦闘員としての訓練・洗脳・改造を受け、完成の暁には正式なナンバーを振られることとなります!自分は1号、人間名・入江誠戦闘員は暫定2号であります!肉便器戦闘員とは、ダークノア内におけるプロトタイプ戦闘員の1種で、主として基地内に配備され、戦闘員の性処理を専門に行います!これによって、ダーク様へのパワーの供給が一括化されるほか、我々の特殊機能として体内でダークパワーを溜めておくことができるという機能により、効率的な──」  俺は1号の報告に寄り、新たな使命感を植え付けられていく。同胞達に犯され、廻され、単なるエネルギータンクとして使用される──正しく、肉便器そのものだった。それを嬉々として語る1号と、思いは同じだった──早く2号として完成し、ダークノアに貢献しなければ。  ※  スタジオの奥には隠し階段があり、地下室につながっていた。俺は0号からゴーグルを受け取り、パイプ椅子に腰掛ける。1号が身に着けているものと同じだった。加えて、ワイヤレスイヤホンも手渡される。1号は躊躇いなく耳に装着して、俺と向かい合うようにパイプ椅子に座っていた。 「これからお前を肉便器に調教していく」  0号が説明する。 「ゴーグルを付けているとき、お前の自我は完全に肉便器戦闘員のものとなる。オレや1号と全く同じ、均質な人格だ。それを今から数時間掛けてインストールする。完了すれば、お前は正式に肉便器戦闘員2号として完成する。証はこれだ」  舌を0号がだらりと出す。『00』と刻印されていた。1号も口を開けば『01』の字があった。 「はっ!了解しました!!」  俺はしゃちほこばって敬礼し、イヤホンとゴーグルを装着した。ゴーグルは高校時代、水泳部の時に使用していたものと型が良く似ている──そんなことを考えていた。黒みがかった視界がきらりと光り、レンズに幾何学模様が映し出される。それは徐々に形を変え、ゆっくりと渦を巻いているかのように変形し、色も極彩色に変わっていく。 「おっ♡…………うああっ♡……」  なぜ興奮しているのかは分からないが、ダークスウツと同期して俺の肉体に波のように快楽が押し引きしているのが分かる。すると、イヤホンから電子音が響き、俺の身体から不要な力が抜けていった。パイプ椅子の背もたれにどっかりと体重を掛け、脚は大きく蟹股に開く。緩んだ口元から涎が垂れ、顎髭に伝っていったのがひどくゆっくりと感じられた。『洗脳率77%』。男の、無機質なアナウンスが聞こえた。俺は早く100%にしなくてはと焦るが、そうなると本当に取り返しがつかないのではないかという恐怖も同時にあった。 『ここまで改造され果てた癖に、一体何を言っているんだ』  1号の声だった。確かにイヤホンから聞こえた。そうだ。1号と違い、俺は自ら望んで戦闘員になったのではないか。 『お前は一体誰だ?』 「俺は、人間名・入江誠──」  鳶装束に身を包んだ俺の姿が映る。汗水を垂らし、鉄骨を運ぶ姿だ。確かに、ここに写っているのは俺だった。 『本当にそうか?』  その問い掛け1つで、俺の自信は簡単に揺らいだ。本当に、とはどういうことだ? 『これがお前の姿ではないのか?』  それは、写真だった。エロ下着に身を包んでいる俺。1号と舌を絡め合っている俺。ザーメンを美味そうに舐め取る俺。 「ああっ♡そうだ……それが、俺だ♡本当の俺は、エロくて♡変態で♡淫乱で♡」  最後に移されたのは、俺──ではなく、ゴーグル越しに見える1号の姿だった。そしてそれは、俺の姿と全く同じだと、気付いた。 『お前は俺だ』 「ああ♡俺はお前だ♡」 『洗脳率82%…………お前は一体誰だ?』  何回目の同じ問い掛けか。何十回目か。はたまた何百回目か。 「俺は──肉便器戦闘員2号だ♡」  俺はようやく答えを見つけたようだった。肯定するかのように、全身に快感が巡る。調教の言葉の意味がよく分かった。俺は、こうして、正解できる度に快楽漬けにされ、不可逆的な条件付けを施されているのだった。それに抗う術は、存在しない。 『入江誠という名は?』 「俺の偽りの姿だ」  俺はやっと俺になれた。そんな気さえしていた。 『自慰しろ』 「はっ!2号、自慰致します!」  俺は右手でチンコをいじりながら、左手で乳首を刺激し始める。絶頂まですぐに至りそうだったが、射精できない。なぜ、という思いが膨れ上がる。欲望にまみれ、今すぐ邪悪な種をぶちまけたいと焦がれる。そしてすぐにその理由に思い至った。許可されていないからだ。 「2号、射精許可願います!」  無反応。しかし、自慰をやめて良いとは命令されていないので、これは続けなければならない。 「おおおおおっ♡後生です♡射精♡射精させて、くださいっ♡俺は卑しい淫獣ですっ♡一秒だって我慢できません♡」  焼き切れんばかりの電流が全身を駆けた。あまりの痛苦に俺は悲鳴をあげる。 『お前はダークノアの所有物だ。1号を見ろ』  1号は淡々と、無表情でチンコを豪快に扱き続けている。先走りはじっとりと垂らしているが、射精を懇願するような無様な真似はしていない。しかし、額から幾筋も脂汗が流れており、それが苦痛であることはありありと分かる。 「おおおおおおおっ♡射精許可ありがとうございますッ♡1号、射精します!!おお゛ッ♡おおおおおおおおッ♡」  どろどろとした特濃の黒精が汚らしい音と共に飛び出た。1号はさすがに恍惚とした表情となっているが、これが肉便器としての振る舞いなのだと強く感じさせられた。 『使役される悦びを学べ。肉便器に人権はない。自由はない。人格はない』 「はっ!俺に人権はありません!自由はありません!人格はありません!」  『洗脳率90%』。俺が言葉にする度に洗脳がぐんと進んでいく。それから俺は忠実にイヤホンの命令に従った。自分の脇の匂いを嗅ぎ続けたり、1号の足をしゃぶったり、1号と乳首を刺激し合ったり、極太のディルドを挿入してアナルを拡張したり、実践として戦闘員達に囲まれて数十時間連続で犯されたり、永遠とも思える間、罵倒され続けたりした。それを一つずつ乗り越えると、俺は肉便器として完成に近付いていくのであった。俺の目の前には必ず1号が居て、導いてくれた。 『洗脳率99%……次の命令をこなせば、お前の洗脳率は100%となり、肉便器戦闘員2号として完成する』 「はっ!」  もう俺の声に感情は伴っていなかった。無機質で、1号と同じトーンで返答ができるまでに至っていた。 『お前の人間としての──入江誠としての記憶、過去、人格を全て消せ。消す、と口で言えばそれだけで良い』  さすがの俺も、それには躊躇いがあった。口を突いて『消す』と言いそうになるのを、迷いながらも止める。 『0号も1号も成し遂げたことだ。お前はどうだ?それとも──諦めるか?』  俺はもう数秒躊躇った後、とうとう「消す」と言った。ゴーグルのレンズが強く瞬いて、俺の脳を強烈に刺激する。人間時の記憶・過去はこれで全て消えた。俺はもう、自分がどんな名前だったか、何をしていたのか思い出せない。資料を見て、そうだったように振る舞うことしかできないのだ。 『洗脳率100%。肉便器戦闘員2号、調教完了。射精を許可する』 「おおおおおおおっ♡射精許可ありがとうございますッ♡2号、射精します!!おお゛ッ♡おおおおおおおおッ♡」  1号とまったく同じ文言、まったく同じ動作で俺は射精した。特濃の黒精が潮のように噴き上がる。  ゴーグルを外せば、肉便器戦闘員としての人格抑制は緩和される。しかし、人間としての過去を失った俺達にはあまり変化はない。淫乱に、余暇時間として自由に感情表現ができるというくらいのささやかな変化でしかなかった。数日ぶりにゴーグルを外し、俺は精液に塗れた己の身体を見た。異臭を放ち、淫らで、肉便器の名にそぐわない仕上がりとなっていた。0号が拍手で俺を迎える。俺は満面の笑みを浮かべた。 「肉便器戦闘員2号、ただいま調教完了し、完成致しました」 「おめでとう」  0号の後ろに、1号が立っていた。今はゴーグルを外しており、彼もまた、俺の誕生を祝ってくれていた。昔からの知り合いのような、ずっと慣れ親しんだ間柄であったような気がした。 「次の任務まで時間がある。1号と親睦を深めてくれたまえ」  0号が指示する俺達は敬礼で答えた。 「1号……」  俺がおずおずと声を掛けると、1号は返事もせず、しゃがみ込んで俺の股座に鼻を押し当てた。 「おれ達には人間名がある。1回消されちゃったすけどね。おれは立松忠司、あんたは入江誠ッスよ」 「実感はないが……そう、なんだな。俺は入江という名前なのか。1号は、立松……君?」  1号がはにかむ。俺は愛おしくなって、性欲が破裂しそうになり、押し倒すように1号とまぐわった。


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