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葉一
葉一

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ダークノア:肉便器編(1)

メモ:リクエストのやつ。半分くらい。絵ばっか描いていたので全てを忘れてしまった。 イントロ  眠たい目を擦り、木崎巡査は真夜中の来訪者を出迎えた。齢は20代半ばだろうか、背は高い。黒のジャージの上下に細く引き締まった肉体を隠しているようだった。黒く、短い髪は汗で濡れそぼり、交番の蛍光灯をきらきらと反射している。顎先に整った髭があり、男らしい精悍な顔立ちに野性味を加えている。木崎巡査は一瞥して、男がまあ、いわゆるホワイトカラーなんかではないんだろうな、と検討した。それには、同世代の若者がおしゃれを楽しんでいる(そしてそれがかなり様になっている)という素朴な羨望と嫉妬が混じっている。 「ランニング中に財布を落としてしまったみたいで」  存外、男は丁寧に喋った。木崎巡査は自身の態度を改め、申し訳なさそうな声色を出す。「今日は落とし物、届いてないですね」。男の落胆が手に取るように伝わった。 「ここに、分かる範囲で書いて貰えますか」  書類と安物のボールペンを渡し、椅子を勧める。男は椅子に腰を下ろすと、さほど上手くもない字で名前を書き入れ始めた。入江誠。23歳。とび職。体育会気質の木崎巡査は無意識の内に、自分よりも2コ下の後輩として入江を見始めていた。 「あっ」  入江が不意に声を上げる。後ろ手にぼりぼりと頭を掻く仕草で、汗の匂いが香った。木崎巡査はこれまでの経験則で、この手の人間が書類を書き損じることがとても多いことを知っている。そもそも、警察の書類様式は書きづらいし、お世辞にも視認性が良いとは言えない。巡査は書類を一瞥もせずに「二本線引いて貰って、最後にハンコか何か、押してもらえればいいんで」と言った。「あ、わかりました」と軽々に入江は応じる。木崎巡査の関心は、この男に金銭を貸与するかどうかに移っていた。電話で知人が呼び出せるなら良いのだが、と思いつつ腕時計を見遣ると午前2時を回っている。無理だろうなと見切りをつけ、緊急時に貸し出せる金を用意しようと抽斗からちゃちな鍵を取り出した。 振り向きざまに入江の手元を見ると、書類はほとんど埋められつつあった。訂正の跡を目で追うと、職業欄に線が引いてある。とび職の上にはっきりと『肉便器』と記されていた。木崎巡査は尋ねようとしていた事柄を瞬時、全て忘れてしまう。その次に疑念が生じてきた。 (こんな時間にランニングっておかしくないか?)  口に出そうか逡巡する。もっと端的に言えば「お前は変質者なのか?」ということなのだが、この目の前の一語以外おかしなところは何もない。木崎巡査は迷っていた。そして最後には、この件には触れないで、当たり障りのない対応をしようと心に決めた。トラブルや面倒ごとを避けたかった。 「あの」  入江のその一言で、木崎巡査の努力は虚しく水の泡となる。 「お金を少し貸して貰いたくて。いますぐカラダで返せますんで」 「えっ」  木崎巡査は訊き返す。訊き返すことなど何もなかったが、極めて理性的な反応ではあった。対する入江は何事もなかったかのように、微笑すら浮かべて再び同じ言葉を繰り返す。「俺のカラダでいま返しますんで、金ちょっと貸してください」。やや横柄な物言いだったが、少しも悪びれてはいなかった。人懐っこささえ感じさせるような雰囲気で、『少し雨が降ってきたので雨宿りさせてください』とても言うかのようだ。木崎巡査は入江がまともではないことに、真正面から向き合わなくてはならなかった。状況がほぼ木崎巡査の理解を超越しようかというようなところで、入江が行動に移る。ゆっくりとジャージのジッパーを下ろし始めたのだ。 「や、やめなさいッ」  木崎巡査の声は交番内一杯に響いたが、入江は止まらなかった。開けた胸元から、発達した肉体とそれをがっちり包み込んだアンダーシャツが覗く。ジャージはサウナスーツのような二重の機構で熱を内部に留めておく性質があり、ジッパーの開放と共に、むわっ、と熱気が広がった。汗で湿り、黒光りしながら肌に密着する皮膜から、木崎巡査は目が離せなくなる。状勢は傾き始め、加速度的に木崎巡査にとって不利になっていく。入江はボクサーのように引き締まり、筋肉質な肉体をしていた。アンダーシャツがそれをさらに引き絞るように強調しており、胸の乳首の突起だけでなく、股関節のマーメイドラインやヘソの形までくっきりと見て取れるほどである。木崎巡査は入江の肉体美に見惚れていた。実際は、その淫靡な黒ずくめの肌に魅了されているのだが、当然気が付かない。入江は得意気に下半身を晒す。ジャージの下も股間を殊更に強調するようなロングスパッツを履いている。少なくとも、木崎巡査にはそう見えた。陰嚢の膨らみや陰茎がくっきりと浮かんだ、かなり破廉恥なものだったが、上半身と同じく黒で統一されており、スポーツウェアであると説明されれば辛うじて納得がいく。入江は椅子の上で器用に開脚し、両脚を両腕に絡めて持ち上げた。 「お巡りさんには俺の本当の姿を見せてあげますね。正直、すげータイプなんすよ」  ずるり、と音がしてスパッツやアンダーシャツが蕩けていく。より入江の拘束を強くし、皮膚を一分の隙も無く覆った。首や指先まで闇色に染まると、瞳の色も暗く濁る。拡張されたアナルがひくひくと微痙攣するかのように蠢いた。テントのように張り出していたチンポにも膜がまとわりつき、完全に独立して勃起するようになる。木崎巡査はそれを余すところなく見ていた。 「俺は、ダークノアの肉便器戦闘員2号……野郎に廻されて種付けされるのが存在理由…………ッ、早く、お巡りさんのチンポくれねえと気が狂っちまうっ」  だらしなく垂らした舌の先に「02」の刻印があるのを見る。木崎巡査は見ていた。呆然と。そして、目の前の男に発情させられながら見ていた。  ──この男に、触りたい。匂いを嗅ぎたい。犯したい。  濃紺の制服、その股間に染みが広がっていくのを見て、2号は笑みを浮かべた。 入江誠 1 ──数か月前。 「あ~、今月も金がない!」  俺、入江誠は4桁に迫ろうかという残高を見て情けない声を出した。安アパートの薄い壁を通して隣室の子供の笑い声が聞こえる。もしかしたら俺の悲痛な声があちらにも聞こえてしまったのかもしれない。雑然と散らかった部屋でゴミやらティッシュやらを押し退け、大の字で寝転がった。うっかり風俗に行ってしまったのがダメ押しになっていた。 勉強するのはめんどくさい。金を稼いでさっさと独り立ちしたい。そんなヨコシマな動機で大学にも専門にも行かず、鳶に就職してから6年くらい経った。最初の頃こそ、同級生と比べて給料が高かったので羽振りも良かったのだが、浪費癖が抜けず、ずっと貯金がない。というか、貯金をするという習慣が身についていない。寂しい懐に寂しい生活。それでも風俗通いが止められないのだから、どうしようもない。 「金欲しいなあ」  というのを毎晩繰り返している。愚かだ。自分でもよく分かっている。唸りながら床を転がると、目の前に一枚の名刺が落ちている。机に放り投げたのがいつの間にか落ちたのだろう。手に取ってみる。『スタジオDN 代表 柿崎 俊』。俺は柿崎のことを思い出す。  ※ 「お兄さんちょっといいかな」  風俗帰りですっきりしていたところだった。夜の繁華街でこういう風に野郎から声を掛けられるのは、経験上、非常にまずい。俺は「急いでるんで」と言って、目も合わさず足早に立ち去ろうとした。思いがけず強い力でがっしりと腕を掴まれる。俺は観念して振り返った。 「怖がらせちゃったかな?ヤクザじゃないから安心してほしい」  アロハシャツにチノパンといった非常にラフな格好の偉丈夫だった。身長は俺より少し高いから180センチくらいなのだが、筋肉質だからか横幅があり、一回り大きく見える。茶色いグラスの眼鏡を掛け、髪形はオールバック、小さく伸びた後ろ髪を無造作にゴムで括っていた。太い輪郭を覆うように顎髭が生えており、年齢不詳、それどころかカタギではない感じがありありと伝わってくる。 「な、なんすか」 「いやあ、お兄さんちょっとカッコいいと思って」  そんなことを言われたのは初めてだった。俺は根が単純なので悪い気はしない。 「オレこの近くでフォトグラファーっていうか、まあ写真撮ってるんだけど、モデルやってみない?タダでとは言わないし……」 「も、モデル……」  訝しむ。話が旨すぎる。柿崎はふと笑みを漏らした。 「ははは、まあ怪しいよな。もっと言うと、実はエッチな下着の宣材写真を撮るのがメインでさ。お兄さんみたいなガタイだと映えるわけ」 「……お断りします」  そんなことだろうと思った。生憎、人に裸を見せる趣味はない。 「まあまあ、顔出しNGってのもありだから。小金欲しくなったらここに連絡して」  柿崎は俺の手に強引に名刺を乗せる。眼鏡が少しずれて、レンズ越しでない瞳の色が印象に残った。それはやたらに明るい──それこそ、闇夜でもはっきりと分かるほど明るいオレンジだった。突き返そうと思った名刺を、なぜか俺は丁寧にポケットにしまう。「分かりました。じゃあ」。自然とそんな言葉が口を突いて出た。いやいや、それでは俺が柿崎の提案を『一考する』かのようではないか。そんなつもりは毛頭ない。毛頭ないのだが。 柿崎が大きく手を振る。「待ってるよ」。そんなことを言われ、俺は──。  ※  今の今まで忘れていた。モデルをやれば、柿崎が少しくらい金を融通してくれる可能性はある。 「……でもなあ」  パンツ一丁で、それもエロい下着だと言っていたではないか。ほこりを被った姿見をタオルではたき、いそいそと着ていたジャージを脱いだ。くたびれたボクサーパンツはさておき、高校時代、水泳部で鍛えた肉体には脂がほんのり乗っていた。曲がりなりにも鳶職という肉体労働者であるので、むっちりとまではいかないが。断じていかないが、この身体でモデルが務まるのだろうかという不安はある。  いつの間にか、俺はすっかり柿崎の提案に乗っている形になっていた。今になればそれが罠だったということが分かるのだが。  2  次の日の仕事後に柿崎に電話を掛けると、彼は二つ返事で事務所まで来るように応じてくれた。体型のことを相談すると、「オレの見た感じでは大丈夫だと思うけど、ダメでもその日の交通費と時給は出すよ」と言ってくれた。本当にそんな美味い話があるのだろうかと不思議に思ったが、俺の中ではすっかり柿崎への警戒心は消えていた。生まれつき楽天的なのもあるかもしれない。  指定された場所は先日の繁華街の少し外れ、古めの雑居ビルの2階だった(1階はテナントが入っていないのか、シャッターとブラインドが下りている)。狭い階段を上り、ぺらいドアを開ける。小ぎれいにしているのか、内装はリフォーム済みなのか、明るいオフィスになっていた。事務机はいくつかあるが、誕生日席に座り、ノートPCを操作している柿崎しかいない。柄は違ったが、相変わらずアロハシャツだった。 「おお、来てくれたのか!」  オーバーなリアクションで柿崎は俺を迎え入れた。俺は自己紹介もそこそこに(なんせ、名乗ってすらいなかったのだ)、改めてモデルとやらの内容をうかがう。フロアをパーテーションで区切り、応接室めいたコーナーに通され、社長手ずからお茶を入れてくださった。 「いわゆる『そういう』客層向けの下着なんだけどね。まあスポーティでちょっと派手っていうのからあからさまにエッチなものもあって……」  柿崎社長はカタログをめくりながら紹介してくれる。俺はこんな下着があるのか……とまず絶句した。チンポ丸出しと言っても差し支えないものまである。段々と閉口していく俺を見て、柿崎は慌てた様子で付け加える。 「でも報酬は結構いいんだよね」  半日の撮影で、と社長が付け加えて出した金額に俺は驚いた。4回もやれば俺の月給と同じになってしまうではないか。心が揺らいだ瞬間、事務所のドアががたんと音を立てた。 「こんにちはーっす。あれ、柿崎さんいないのかな?」  若い男の戸惑いの声。 「あ、立松君。ちょうど良かった。こっちこっち!」  柿崎が中腰になって声を上げる。すぐにパーテーションを回り込んで立松と呼ばれた男性が現れた。年は俺と同い年くらいだろうか。爽やかかつ健康的な好青年という第一印象だが、イケメンという感じよりも『スポーツ大好き!』という感じにやや偏る顔立ちと体格だった。格好もスポーツ用の蛍光カラーのTシャツに膝丈のハーフパンツ、黒のレギンスと『今まさにランニングしてきました』という感じだ。 「あっ、面接中でしたか。失礼しました」  ぺこりと頭を下げる。立松君は礼儀正しかった。俺も釣られていえいえと言いながら頭を下げる。 「そうだ、立松君の撮影を見学していきなよ」  モデルをやるともやらないとも言っていないが、とにかく柿崎がそう言うので、そういうことになった。  俺達はぞろぞろと1階に降りる。実は、1階は撮影スタジオになっているとのことだった。柿崎がカギを開けると、フロアの半分を区切って、きちんとスクリーンがあり、暗幕で外からの光が入らないように工夫された立派なスタジオがあった。もう半分には椅子やら背景やら機材やらがまあまあの混雑具合で置かれている。柿崎は手際よくカメラと三脚を用意し、組み立てていく。ライトの調整もお手の物といった様子だった。アシスタントがいなくても、あれほど自分でてきぱきやれるのだから困らないだろうと思った。 「入りまーすっ!」  部屋の裏でごそごそと着替えていた立松は、あろうことか全裸でスタジオに入って来る。俺は驚き、戸惑い、言葉を失くしてそこで佇んでいた。見学について「いいすよ~」と軽く返事をしていた立松のことを思い出す。いいのか。小さくもなく大きくもない立松のチンポは、歩くごとにぶらぶらと左右に揺れている。凝視してはいけないんだろうが、人のチンポをこんな風に見る機会がない分、どうしても視線がそこに行ってしまう。やきもきする俺を尻目に、立松の方は何も気にならない様子だった。 「立松君、また筋肉キレてるねえ」  柿崎が軽口を叩く。実際、立松の肉体美はすごかった。乾いた肌に、綺麗に6つに割れた腹筋。細マッチョという言葉が一番わかりやすいのだろうが、それも度を越している。スポーツジムのインストラクターをしていると後で聞いて、妙に納得した。 「じゃあ最初はこれから」 「うっすうっす」  立松はビビットカラーの赤いボクサーパンツを受け取り、その場で履いていく。股間の部分が立体になっており、ゴムで支える構造になっているため、チンポの形が丸分かりになってしまうデザインだった。最初は立松には小さすぎるサイズではないかと思われたが、いざきちんと履いてみるとかなり様になっている。『似合う』とい点において、立松は素人目で見ても抜きんでているように感じられた。 「じゃあまず正面から」  柿崎が手元のスイッチを親指で押す。ガチャ──ピピッ。シャッター音と機械音が対になってスタジオに響いた。一回一回フラッシュが焚かれ、その度に立松は真っ白な光に包まれる。柿崎の要求するポーズや仕草に、立松は要領よく応じていく。股間を強調するように右手で掴む。しゃがんで股を開く。照明のせいなのだろうか、部屋がじわりと熱くなってくる。ライトに当たり続けている立松は、じんわりと汗をかいているようだった。  20分くらい経過した後、次の下着の撮影に移る。今度は足首まで丈のあるロングスパッツだった。立松が無造作に履いていたボクサーパンツを脱ぐと、ぶるん、とチンポが揺れながら外に出る。純白のロングスパッツもまた股間を強調するデザインだった。立松のごつい下半身が真っ白に包まれることで、むしろ一層生々しい肉感が伝わってくる。男から見ても、エロいと思わせるのは恐れ入った。同じように正面の撮影から始まり、単調だが、着実に撮影は進んでいく。 「じゃあちょっとローション垂らしてみるか」 「了解っす、自分でやるでいいっすか」 「ああ、いいよ。お任せで」  慣れた調子でローションを受け取ると、立松はまず厚い胸から、腹筋、そして股間に万遍なく塗りたくっていく。白のロングスパッツは当然のように透け、立松のチンポがくっきりと浮かび上がる。ガチャ──ピピッ。ガチャ──ピピッ。ガチャ──ピピッ。淡々と撮影が進んでいくことに、俺は微妙な違和感を覚えていた。そんなことまでやらされるのかと驚いている。驚いているのだが、全く心は動揺していなかった。そういうものだという雰囲気が、スタジオ内に漂っているからだろうか。自分がこれをやれと言われたらやるだろうか、と考える。正直なところ、分からなかった。 「次は勃起させて」  立松は返事こそしなかったが、右手でスパッツの上から股間を揉み始めた。ローションとスパッツと立松のチンポがぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて擦れる。上反りしたチンポがロングスパッツをパンパンに押し上げた状態で、立松は再びポーズを取った。ガチャ──ピピッ。ガチャ──ピピッ。ガチャ──ピピッ。立松の額から汗が雫となって流れ落ちる。スタジオは先程の和やかな雰囲気とは一変していた。 「次──」  柿崎はスクリーン方向から視線を外し、後ろにいた俺に目を向ける。 「入江君、やってみない?」  俺は何か言おうと思うが、全く言葉にならない。目だ。柿崎は眼鏡を外していた。あのオレンジ色の目がじっと俺を見ている。俺は返事をせず、ゆっくりと着ていた服を脱ぎ始めた。その場に雑然と脱ぎ捨てられていく服、靴下、そしてトランクス。俺は半分勃起していたチンポを隠すこともできず、二人に生まれたままの姿を見せびらかしていた。体型のことに加えて、チン毛から臍まで三角形に続く体毛に気付いた。ムダ毛を処理していなかったと思い、羞恥心に襲われる。 「俺、今日撮影されるって思ってなくて……」  消え入りそうな声だったが、柿崎は鷹揚に笑った。 「いやいや、良いんだよ。オレが思い付きで言っただけだから。それに、やっぱり入江君はオレの見立て通り魅力的だよ。そのままで問題ないから。な、立松君」 「ええ。入江さん、お仕事何されてるんすか?自然な肉付きで羨ましいっす」 「そ、そうですか……はは、それならまあ……良かったです……」  さっと手渡されたのはブーメラン型の競泳パンツだった。青と白のツートンカラーでシンプルなデザインだが、これもブランドの商品らしい。サポーターを履かずに足を通す。水泳部だった頃を思い出し、懐かしい気分になった。股間の膨らみはやはり気になったが、つべこべ言ってはいられない。立松の見よう見まねでスクリーンの前に立つ。 「はい入江君リラックスして。何枚撮っても大丈夫だからね。じゃあまず正面から──」  ガチャ──ピピッ。  機械音と共に、俺は頭の中がぼんやりしていく感覚に襲われる。柿崎の声が遠くから、近くから聞こえ、身体が自分の意思とは解離して動いているような気がする。唯一クリアに感じられるのは、自分の履いている競泳水着の締め付けと、カメラのレンズだった。正確に言えば、カメラのレンズ越しに存在している柿崎の目だった。俺を絶え間なく、油断なくじっと見つめている目。それに見られている間は、俺は柿崎の言うとおりに動いてしまう。違和感なく。疑問を抱かず。立松も同じなのだろうと、回らない頭で実感した。不思議と嫌な気持ちにはならない。むしろ気持ち良くて、金ももらえて──。  ガチャ──ピピッ。  いつの間にか俺は灰色のロングスパッツを履いていた。『最初からこんなにハマるなんて』。今まで着たどんな下着よりも着心地が良かった。『やっぱり逸材だったね』肌触りが良く、いつまででも着ていたい。『じゃあチンポ揉んで雰囲気出して』チンポを揉む。オナホ使うよりも何倍も気持ち良くて、すぐにでもイキそうだった。『勃起した?』「勃起したっす」『じゃあ股開いてしゃがんでみて』俺は腰を落とし、膝を両手で押し広げるように開いた。『そうそう。いいね』チンポが擦れる度に声が漏れる。『初回でこんなにやったらやばいかな』「平気っすよ」『じゃあ……立松君、ローション塗ってあげて』立松が無言でスクリーン前に戻って来る。相変わらず白のロングスパッツを履いたままフル勃起させていた。俺の肌にローションを塗り、股間をぐりぐりと揉んでいく。「おお゛ッ」『すっげーエロいっすね、入江さん。チンポ丸見えっすよ。俺とおんなじっす』『じゃあ二人でキスして』。  ガチャ──ピピッ。  俺はいつの間にか立松とキスをしていた。ロングスパッツを押し上げた勃起チンポがお互いぐりぐりと擦れ合って、最高に気持ちが良い。野郎とのキスなんて信じられなかったが、立松の舌遣いは上手かった。呼吸の度に、キスが終わってしまうんじゃないかと心配になる。永遠に弄ばれたいとさえ思っていた。『立松君はね、最初はホモじゃなかったんだよね』『そうっす、俺は完全に女好きだったっす』『でも、ホモでも良くなっちゃったんだっけ』『そうっす、モデルやってる内に男同士でもすげー気持ち良いって分かって、ホモになっちまったんすよ』俺はキスの合間に二人の異様な会話を聞いている。『今は変態になりかけてるんだっけ』『そうっす、俺、変態になってきてて、もらった下着連履きして匂い嗅いでオナニーするのに嵌まったり、同僚の汗だくのスパッツしゃぶったりしてるんすよ。やばいっすよね』『嫌かい?』『嫌っすけど、柿崎さんが変態になれって言うなら仕方ないっすね。柿崎さんの言うことは全部正しいんで』『もっと変態になりたい、と言ってみろ』『うっす、俺もっと変態になりたいっす!』『いい子だ。射精して良いぞ』『あざっす!ああイクイクイクッ!入江さん、俺がもっと変態になるところ見てください!入江さんも俺みたいになっちまうんすから』入江のロングスパッツから温かく、生臭い汁がどんどん溢れて、擦り付けられていく。俺はそれを──。  ガチャ──ピピッ。  俺はいつの間にか一人でロングスパッツの上からチンポを扱いていた。灰色だったロングスパッツは怒張したチンポが透け、手はいつ何故かローションと精液でべとべとに汚れている。俺の精液かもしれないし、そうでないかもしれなかった。すぐそばには立松がいたが、俺のオナニーをじっくりと見ている。『入江君は女の子が好きなのかな』「そうです」『でも今、人生で一番興奮しているね?』「そうです」『野郎にチンポ擦るの見られるのが好きなんだね』「……そう、です」『射精したい?』「したいです」『自分がホモだって認めたら射精して良いよ』「それは──」俺は考えた。でもすぐに柿崎の言っていることが正しいと思った。それに、早くイキたくて堪らなかったのだ。「柿崎さんの言う通り、俺はホモです。メスにはもう興味ないです」言ってしまった。『ははは、初日なのにすごいな君は。勿論射精して良いよ』「ありがとうございます!ああもう我慢できねえ、漏れるっ、イクッ!とまんねぇッ!」金玉がせり上がって、何回も竿が上下に動く。スパッツを突き抜けて精液がどばどばと溢れ、俺の右手をどろどろに汚した。人生で一番気持ちが良い瞬間だった。腰が抜け、尻もちをつく。汗だくで、呼吸もままならない。  ガチャ──ピピッ。  『今日のことは忘れなさい。だが、今日言ったことは全て真実だ』  ガチャ──ピピッ。  俺はいつの間にか服を着直していた。下着はもらえるらしいのでそのまま履いているが、ローションを付けたので股間がべたべたする。それも、まあいいか、と思った。茶封筒の中を確認すると10万入っていたので驚いた。柿崎に確認すると「問題ない」そうなのでありがたくもらっていく。 「どうかな、モデルの仕事やれそうかな」 「──はい。よろしくお願いします」  俺はチンポがむくりと反応するのを抑えた。いくらホモ向けの下着の仕事だからといって、俺がガチホモだとバレない方が良いと思ったからだ。


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