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田原摩耶
田原摩耶

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【↑100】我儘な男※【4,800文字/真夜×愛佐/本編軸/イチャ】

 真夜を見る度に不思議に思う。 「何、愛ちゃん。そんなにじーっと見つめてきて」 「なんでもない」 「なんでもないわけないだろ。何? 構ってもらえなくて寂しくなった?」 「その逆だ。……いつまでも俺のことばかり構ってていいのか?」 「……はい?」  俺の言葉に目を丸くする。理解できないという顔だ。  場所は自室。当たり前のように俺の部屋に入り浸っては人を抱き枕代わりにしてスマホ弄ってるこいつの行動が常々疑問だった。 「なに、どういう意味?」 「他のSub、いるんだろ。そいつらのこと構わなくていいのかという意味だ」 「……あー、はいはい。愛ちゃんボケね」  人が人として真っ当な疑問を口にしただけなのに誰がボケなのか。ムカついて背後の真夜を睨もうとすれば、誤魔化すように髪を撫でられる。そのまま頬にキスをされ、「流そうとするなっ」と思わず真夜の顔を抑えた。 「それ、聞いてどうすんの?」 「どうって……」 「愛ちゃんが寝かしつけた後ちゃんと別の子たちもケアしに行ってるよ、って言ってほしいわけ?」 「……」  まるでベビーシッターのような口振りだが、いざ聞き返されると返事に困る。 「そうだ。……お前、ここ最近俺ばっかに付き纏ってるだろ」 「言い方」 「……俺は別に一人でも平気だ。必要ならば他のSubの面倒を見てきてもいいぞ」 「はは」 「何笑ってる」 「愛ちゃんさぁ、下手くそすぎ」  何がだ。意味は分からないが馬鹿にされていることだけはなんとなくわかる。 「俺の可愛い可愛いSubちゃんたちは大体自立してんのよ。それで言ったら愛ちゃんくらいだな、一番危なっかしいやつ」 「俺のどこが危なっかしいって……」 「だから、そういうとこ。自分のことより他のSub気にしてるところとか」 「……」 「別に愛ちゃんに言われなくても俺管理完璧だから、安心しろ。つうか愛ちゃんはも少しは俺を独占しようとしろよ」  遮ろうとしていた指先ごと、くすぐるように額に唇を押し当ててくる真夜。余裕ぶった態度がムカついて、そのまま顔を逸らして唇から逃げようとすれば顎を掴まれて唇を舐められる。 「お、い……っ」 「てか、今連絡してたのは小晴だから」 「……別に聞いてない」 「嘘だ。ずーーっとチラチラ気にしてた」 「……っ、気にしてない、自分の部屋でしろと思っただけだ」 「意地っ張り」  違う、と言う否定の言葉は真夜に遮られてしまう。そのまま軽く唇を吸われ、真正面から見つめられると嫌でも目が合ってしまう。それが嫌で、つい視線が逸れた。 「愛ちゃん、《こっちを見ろ》」  その声に、心臓がとくんと跳ねる。  以前のようにコマンドを認知できなくなった脳だが、真夜の声は鼓膜に染み付いてしまってて無視できない。 「……っ、コマンド、効かないって言っただろ……もう……」 「コマンドじゃなくて恋人からの可愛いお願い」 「こ、……恋人っ?!」  思わず声が裏返る。顎の下をくすぐっていた真夜の指は首の付け根をなぞるように伸びた。 「そ、恋人」 「……っ、……誰が……お前と……」 「だって俺のパートナーになるって言ったろ」 「言った……けど」  あれは言わされたようなものだし、この男の付き纏いを緩和させるためでもあった。  けど、いつの間にかこいつが隣にいるのは当たり前のようになっていた。不思議なことにだ。 「……」 「SubとDomの公認パートナーって、恋人よりも特別なものだって」 「……」 「信頼関係が必要だから」 「じゃあ、無理だろ」 「愛ちゃん」 「……お前、他にもパートナーいるだろ」 「パートナーはいないぞ。可愛いペットはいるけど」  けろっと答える真夜に今度こそ頭が痛くなってきた。  そう、こういうやつなのだ。分かっていたはずだ、このDomには常識など通用しないことを。 「まさか愛ちゃん、俺にペットを捨てろって?」 「お前に足りないのは誠実さだ」 「誠実ねえ」 「お前に特別扱いされても全く嬉しくない。他のやつにも似たようなことを言ってるんだろ」 「ああ、なるほど」 「なんだ、なるほどって」 「妬いてんだ、愛ちゃん」 「違う!」  深夜に大きな声を出してしまい、慌てて口を閉じる。そんな俺を見て真夜は「今更だろ、喘ぎ声あんなデカいんだから」と笑う。そういう話ではないのだ。この男。 「俺を独占したくて、他のSub切って自分だけ見ててほしいって? かわい」 「脚色するな……ッ!」 「誠実ってそういうことだろ?」 「……っ、それは、そうだが……」  しまった、またこの男に言い包められてしまいそうになっている。コマンドがせっかくなくなってのらりくらりとしたこの男から逃れられると思ったのに何故だ。 「他の、お前のことを待ってるSubがいるとしたら……可哀想だ。という意味だ」  俺ではなく、と念押しするように続ける。真夜はじっと俺を見つめたまま黙り込む。なんだか変な顔で。  当然の疑問を口にしただけなのに、なんだその反応は。  居心地が悪くなり、おず、と真夜の腕から逃げようとしたが、許されなかった。そのまま体を抱きしめられる。 「おい、何……」 「大丈夫、俺は愛ちゃんに寂しい思いさせねえから」 「い、今のは俺ではなく例え話だ。勘違いするな……っ、ぅ……やめろ、ぐりぐりするな……っ!」  本当にペットと思ってるのではないかと思うほどまるで犬か何かのようにわしわしと全身撫でられてムカつくのに、体の奥がじんわりと熱くなる。  こちらが突っ撥ねようとしても離れない。それどころか執拗なまで、嫌気が差すほど構い倒してくる。俺の言葉も無視して。 「愛ちゃん」 「……っ、耳元で呼ぶな……」 「もっとさあ、我儘になれよ。俺のこと欲しがっていいから。てか、そっちのが俺うれしーし」 「お前は、変だ」 「小晴からも言われる」 「あいつも変だけど、お前は……もっと」 「何?」とその先を強請るように見つめてくる真夜から逃げるようにぎゅっと目を瞑った。 「言わない」 「《言え》」 「……っ、き、効かないって言ってるだろ……!」 「けど体はちゃんとビクってなんの、いいね」  悪趣味が、という毒付く前に真夜にキスをされる。今度は先ほどよりも深い、ただのスキンシップではない方のキス。  Domのくせに欲しがりで頼られたがる。Domは飼い主でSubが犬、という風に何度もや揺られてきたが、この男を見てると分からなくなる。  大きな犬に戯れ付かれているような感覚になるのだ。撫でられるのを待つ遊びたがりな犬。  ……こんなこと言ったら真夜にまた変な顔をされそうなので言わないが。  もし本当にこのまま真夜が他のSubのところへ行ったらどうしよう、なんて考えてもない。寧ろ清々するしそれを望んでいるはずなのに、こうして俺の側にいることを優先してくれる真夜だからこそこんなことを言ってしまったのかもしれない。そんな狡い自分に気づいて嫌気が差した。 「ま、よる……っ、ん」  パートナーだと認めてない。のに、自分の意思とは関係ない部分でこの男を求めている。この男の存在に安心させられている。  柔らかく食まれる唇をそのまま舐められ、ぶるりと体が震えた。 「俺、愛ちゃんのこと愛ちゃんよりも分かってる自信あるよ」 「……っ、ぅ」 「あれ、いつもの『調子に乗るな』はないんだ」  お前がこうしたんだろ、と言い返すのも馬鹿らしくなって口を噤んだ。真夜は小さく笑った後、「素直じゃねえな」と後ろ髪を撫で付けるように頭を撫でた。 「甘いもの好きだけど、その中でも一番苺が好き」 「……っ、は、ぁ」 「毎日夜九時には布団に入って十時に寝ようとしてるところとか」 「……っ、ま、よる」 「あと、愛ちゃんは朝勉派」 「ん、ぅ」 「……それから、……」  シャツの下に伸びた手が寝間着の下、膨らみかけていた性器を柔らかく揉む。下着越し、包み込むように優しく撫でられ息が漏れた。 「……意地っ張り」 「それは、お前の主観……っ、ぅ、ん……っ」 「意地っ張りな癖に泣き虫で、頑張り屋だけど褒められ慣れてなくて、生きるのが下手くそ」  硬くなってきた芯に絡みついてくる真夜の指先から逃れることはできなかった。手を動かす度にくちゅくちゅと下着の中で濡れた音が響く。 「ま、よる」 「……本当、かわいー……」 「なに、言って……っ、ん、っ、ぅ……っ」 「もっと俺のこと頼れよ。他のところ行くなって、独占しろよ。……愛ちゃん」 「……っ、お、まえ、なに……言っ、……てぇ……ッ」  普段の冗談めいた口振りとは違う。少しトーンの落ちた声で耳元をくすぐられて胸の奥がざわざわする。  先走りの滲む先端部を指先で擽られているだけなのに腰が蕩けそうなほど熱くなり、奥がずくずくと鈍く疼き出した。それを誤魔化すように全身が硬くなるが、全て真夜に見抜かれていたようだ。 「俺のこと欲しいって言えよ」 「……っ、い、らない……っ」 「言って」 「はっ、ぁ、指……やめろ……っ」 「言え」 「っ、ん、ぅ……っ!」  水気を増し、ぬるぬると下着の中で広がる滑り気により快感は増していく。コマンドじゃないのに、鼓膜から直接脳味噌を溶かされていくような感覚が蘇る。  そのまま覆い被さってくる真夜に首筋を甘く噛まれ、体が跳ね上がった。 「……っ、ぁ、おい」  欲しがりはどちらなのか。  ぐりぐりと鼻先を押し付けてくるように甘く噛みついてくる真夜。押し付けられる下半身越し、硬くなったそれを感じて思わず身じろぎをした。  コマンドが俺に通用しないと分かってから、真夜と向き合う時間が増える度にこの男がどうしようもないやつだと知らされる。それは多分向こうも俺に思ってるのかもしれないが。 「お、お前が……っ、言ったら、言う」  口にすれば、ぴたりと真夜は動きを止めた。 「……なんて?」 「だから、その……っ、俺が欲しいって……」 「……」  なんで無言なんだ。  自分で言った手前恥ずかしくて顔を上げることができない。真夜は少しだけきょとんとしたあと、それから変な顔をする。 「……愛ちゃんさぁ、やめてくんね? いきなりぶっこんでくんの」  そこでお前が照れる意味が分からないが、自分がどんだけのことを言ってたのかは理解したらしい。 「お前が言ったんだろ」 「言った。……ん、言ったわ」 「言いたくないならそういうの、言うなよ。……っ、ぉ、い」  引いて落ち着いたかと思いきや、そのまま仰向けに体を転がされ、あろうことか下着ごとスウェットごとずるりと下ろされ息が止まりかけた。 「真夜……っ」 「愛ちゃん、ちょーだい」 「そ、そういう意味で言ったんじゃ……っ、ぅ、」  大きく開かされた下半身を隠す暇もなく、必死に閉じようとしていた腿の間に顔を挟んだ真夜はそのまま内腿に吸い付く。ちう、とわざと見せつけるように何箇所も痕を残していく真夜に耐えきれず俺は目を瞑った。 「おい、いい加減に……っ」 「てか、俺のもんでよくね?」 「勝手に決め、んな……っ、ぁ……っ、おい……!」  れろ、とぬるりと伸びた舌は足の付け根まで辿っていく。その奥でヒク、と収縮するそこを片手でなぞられるだけで眩暈がした。  コマンドが効かなくなった、が、Subとしての性質は変わったわけではない。  こいつに求められて嬉しい、なんて認められるわけがない。のに。 「――愛ちゃんがいい」 「……ッ」 「愛ちゃんだけの俺にして」  見上げてくる真夜の声が掠れていたから。  見つめてくるその目が真っ直ぐに俺を見ていたから。  ただ、そんな理由で心臓は壊れそうなほど暴れ出す。苦しいほど、満たされていく。真夜でいっぱいにされてしまう。  嘘でもいい。言葉と行動だけでいい。それだけで満たされる。そうやって満たしてきた。  それでも、今のやつの口から漏れた言葉が本心だったらいいのに、なんてほんの少しでも思ってしまった自分を叱咤する。  俺たちの関係に心は関係ない。そう言ったのは真夜自身だ。  こいつが求めるのはSubとしての俺だ。履き違えたら、また自分の首を絞めるだけだ。  それでもこいつの腕の中にいる間だけはこのママゴトに溺れていたかった。何もかも忘れるくらいの熱量で、思考ごと溶かしていたかった。  おしまい 「因みに俺のペットちゃんは小晴のSubでもあるから心配すんなよ」 「心配要素しかないが」

【↑100】我儘な男※【4,800文字/真夜×愛佐/本編軸/イチャ】

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