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田原摩耶
田原摩耶

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【↑100】遊んでください!【2,700文字/ノクシャス×良平/ほのぼの】

 某日、本社ビル地下駐車場にて。 「ノクシャスさん、怪我をされたって本当ですか?!」 「あ?」 「……って、あれ……? ピンピンしてますね」  任務帰りであろうノクシャスさんを迎えに行ったところ、並ぶ乗り物たちの前にその人は立っていた。側には部下らしき人たちが数名いたが、俺の姿を見るなりノクシャスさんはその人たちを帰らせる。  そして、呆れたようなそんな顔でノクシャスさんは溜息を吐いた。 「ったく、誰から聞いたか知らねえけど俺がやられるわけねーだろ」 「で、ですよね! すみません、早とちりしてしまって……」 「そうだ。なんでもかんでも鵜呑みにすんじゃねえ。お前は疑うことを覚えることだな。……ま、多分怪我っていうのはコイツのことだろうが」  そう、停められていた大型バイクに触れる。  地上にも大型バイクはあるが、それと比にならない大きさだ。ノクシャスさんの体のサイズに合わせてあるのだろう、真っ黒なそれは最早巨大な鉄の塊だ。 「それは……ノクシャスさんのバイクですか?」 「おう。心臓部は無事だったんだが途中ビルごと突き破った時に傷付いてよ、丁度メンテに出す予定だったんだ」 「突き破……?」  言いながら何やらバイクを操作していたノクシャスさん。「おら、行ってこい」とバイクから手を離した瞬間、そのまま車体ごと光に包まれ消えた。 「ノクシャスさんってバイク乗られるんですね」 「今日の任務は足がねえと面倒な仕事だったからな。普段は使わねえが」 「そうだったんですか。でも、やっぱりノクシャスさんって乗り物も大きいんですね」 「そりゃあ、ロマンだろ」 「そのお気持ち分かります!」 「うお、声でっけえな……」 「す、すみません! ……でもやっぱり大きなバイクはヒーローみたいで格好めい――「あ?」い、いや、なんでもないです!」  危ない、つい感情のまま話してしまうところだった。  慌てて咳払いして誤魔化す。 「なんだ。良平お前、意外とマシン好きか?」 「はい。……と言えるほど詳しくはありませんが、やっぱり格好良いものには憧れるというか……その、俺は危ないからと言われて免許を取得することも許されませんでしたが」 「……ま、確かにお前は乗らない方が良さそうだな」 「の、ノクシャスさんまで……?!」  流石に少しショックを受ける。肩を落とす俺にノクシャスさんは楽しげに笑った。それから、「けど」とこちらに視線を投げかけてくる。 「乗りたきゃ帰ってきたとき乗せてやるよ」 「え、ええ?! でも俺、免許……」 「馬鹿、んなものお行儀よく取ってるやついねえよ」 「あ、そっか。皆さんヴィランですもんね……って、でも俺は流石にその、ノクシャスさんの大切な相棒を事故らせる訳にはいきませんので!」  お気持ちは大変嬉しいですが、と慌てて首を振る。それにあの大きなバイク、俺に乗りこなせる自信はない。そもそも見たところ跨るのが精一杯な未来しか見えなかった。 「ったく、真面目だな。……けどま、確かにお前に何かがあったら問題か」  そう顎の下を摩り、何やら考え込んでいたノクシャスさん。本音を言えば、その気持ちだけが嬉しい。  どう頑張ってもつい頬が緩んでしまう。それなのに、ノクシャスさんは。 「……じゃ、後ろにでも乗せてやるよ」  少し考えた後言葉を絞り出すノクシャスさんに俺は思わず目を丸くした。 「ノクシャスさんのですか?」 「嫌か?」 「い、いえ! 嫌ではありませんが、その……二人乗りの経験はないので少し……ドキドキします」  ノクシャスの優しさに触れてるようなそんなこそばゆさは心地よくすらある。途中で振り落とされないかという心配もあったけど、それよりも何より嬉しい。  じっとこちらを見ていたノクシャスだったが、俺の言葉に少しだけその目は細くなる。 「そうか。……お前、上に居た時もダチもいねえんだっけか?」 「う。ま、まあ……勉強でいっぱいいっぱいだったので。紅音君とも学校以外ではなかなか遊ぶこともなかったので……」 「……」  とにかく両親に心労をかけたくなかった。その一心で気付けば自分の好きなものや事柄と距離を置いていたことを思い出す。今ではそのことすらも懐かしさすら感じた。  そんな中、ノクシャスさんの手が頭に触れる。すっぽりと後頭部を包む大きな手のひら。そのまま後頭部をわしゃわしゃと撫でられた。 「の、ノクシャスさん?」 「良かったじゃねえか。……ここならお勉強せずに遊び放題できんぞ」 「ノクシャスさん、その言い方はなんだか……悪い大人みたいですよ」 「俺が良い大人だったことあるか?」 「はい! ノクシャスさんは優しくて頼りになって……」 「あーいいもういい、その即答するやつもやめろ」 「え! そんな……悪いことは言ってないのに……」 「だからだよ」  だからなのか。  なんだか腑に落ちないが、ノクシャスさんが意外と照れ屋だということは最近俺も知ったのでここはおとなしく引いておく。 「……ったく、けどボスの判断は間違ってねえな」 「何がですか?」 「お前みたいなナヨナヨしたのがここでやってられんのかって思ったけど、そこら辺の奴らより図太いからな。テメェは」 「それって、もしかして褒めてますか?」 「どうだかな」 「そ、そんな……」 「けど、お前に会えて良かったって思ってる」  思わず俺はノクシャスさんの顔を覗き込んだ。 「……っ! の、ノクシャスさん……!」 「あーもううるせえ」 「な、何も言ってないです、まだ……!」 「全部顔に出てんだよ、お前は」 「だ、だって……ノクシャスさん……」 「今のは独り言だ。……なんも言わなくて良い。忘れろ」  言ってから恥ずかしくなってきたのだろう。一部欠けた耳も赤くなってるのを見て、俺の顔にも熱がじんわりと集まってきた。 「えへ、へへ……」 「おい、良平」 「お、俺も。独り言です。……嬉しいです、俺も」  未来がどうなるかなんて、あの時の俺には分からなかった。とにかく独り立ちすることで精一杯で、これからの自分の想像すらもできなかった。  それが今、この人たちに囲まれて生きてる。  ぴとりとその肩に体を寄せれば、ノクシャスさんがこちらを向いた。陰る視界。重ねられる唇の熱を感じつつ、俺はその腕にそっと手を添えた。 「の、ノクシャスさん?! ビルには突っ込まないでくださいね?! ノクシャスさん?!」 「ああ? お前がいるのにんなこと出来るかよ」 「な、なら良かったです……」 「それに、こいつはどんな急斜面どころか壁も真っ直ぐ走るからな。舌噛まねえように気をつけろよ」 「ノクシャスさん?! ノクシャスさ――わああああ!!」  数日後、地下某所にて辺り一帯きエンジン音と俺の悲鳴が響き渡ることになった。その日一日ずっと目が回っていたが、確かに今思えばあのスリルは確かにちょっと――クセになるかもしれない。  おしまい

【↑100】遊んでください!【2,700文字/ノクシャス×良平/ほのぼの】

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