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田原摩耶
田原摩耶

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【↑300】お前に触れる※【3,100文字/迷妄栫井×齋藤/栫井視点/後日談SSS/首絞め】

齋藤サイド https://t589423.fanbox.cc/posts/8047386  ――栫井。  ――……栫井。  ――ねえ、栫井。……俺と栫井ってなんだろうね。 「……なんでもいいだろ、別に」  目を開けば声は聞こえなくなる。  いつの日かぽつりとあいつが口にした言葉が今も鼓膜に染み付いては、こうして同じベッドで眠ってると頭の中で反響した。  隣でアホ面で眠っている齋藤。なんでこんなときまで眉間に皺を寄せてるんだ。  そっと指を伸ばし、眉間を揉んでやる。「んう」と呻いたと思えば表情は和らぎ、再び静かに寝息を立て始めた。  カーテンの向こうでは白ばみ始めた時間帯。朝を報せる鳥たちもいない、無音のこの時間が嫌いではなかった。  まるで世界にこいつと自分の二人だけしかいないような、そんな切り離された感覚だ。  そのまま頬に触れる。柔らかくふわりとした感触。学園に居た頃に比べると血色がよくなった肌の色。それから、赤みがかった唇。  ……にしてもこいつ、寝顔ブスだな。 「……」  上体を起こし、あいつの顔をさらに間近で覗き込む。つい先程まで抱いていたときはあんなに泣いていたくせに、今では泣かせていたやつの横で無防備に眠ってる。  こいつのことは未だに理解できない。けど、理解したくないと思う。全てを知ってしまったとしてこの関係が変化するのなら、知らなくて良い。停滞したまま、緩やかに終わりへと向かっていく。そんな微温湯のような関係が俺にとっては丁度良かった。  ――卑怯者。  あの人の声が木霊する。  間違いない。俺はこいつを逃場にしている。甘えている。縋り付いている。  この関係はこいつ次第でいつだって終わりを迎えることはできた。けれど、こうして俺は今もこいつの隣で眠ってる。  人に期待すること自体馬鹿げていると分かっているのに、この関係が変わることを恐れている自分が確かにいた。  唇に触れる。傷一つもなく、血色の良い唇だ。あの頃みたいに顔みたいに真っ白で、今にもぶっ倒れそうな乾いた唇ではない。水分を含み、柔らかくハリのある唇をなぞる。リップでもしてるのか、こいつの唇は甘い。柔らかくて、ずっとしゃぶっていられる。……こうして触れるだけでも下半身が重たくなっていく。 「……っ、ん、ぅ……」 「…………は……っ」  唇を重ねる。軽くキスするつもりだったのに、いつの間にかに止まらなくなっていた。  齋藤は俺を拒まない。どんなことをしても、普通ならば嫌がるようなプレイでもこいつは受け入れる。  それは俺だからではないと理解していた。こいつの性質なのだと。学園にいた頃からそれは変わらない。  他人の善意も悪意も全て一身に請け負おうとする。だからこそ、俺みたいな人間を傍に置くことを許せるのだと思うと妙な気分だ。 「は、……ん、ぅ……っ」 「…………」 「……っ、……齋藤……」  距離を置かなければならない。一人でも生きていけるようにならなければ。これから先、こいつにいつ出て行けと言われてもいいように。  日々そんなことを考えて生きていたのに、現実はどうだ。同じ時間を過ごすに連れ、離れ難くなっていく。  変化程恐怖に勝るものはない。  これ以上、こいつから離れられなくなる前に。  白い首筋に手を伸ばす。呼吸に合わせて微かに上下する喉仏を見つめている内にその指先は首筋に触れていた。  眠っている間、この首に手をかければ息の根は容易に止めることはできる。途中で目を覚ましても、それは可能だろう。  この先見たくもない未来を迎えることになるのなら、いっそのこと。このまま全て幕引きした方がいいのではないのか。 「……」  気付けば全身に冷たい汗が滲んでいた。  呼吸に合わせて動いていた齋藤の体。手のひらの下の脈動を感じながら、俺はとうとう指先に力を込めることもなく指を離そうとして――ぱし、と小さな音を立てて手首を掴まれた。 「……しないの?」  寝乱れた前髪の下、気付けばあいつの目がこちらを見つめていた。 「……っ、……齋藤……」 「いいよ、我慢しなくても」 「……馬鹿、じゃねえの。人が……」 「俺は、栫井に無理させたくないから」 「…………」 「……栫井」  ――こいつは。齋藤は。本当に。  指先に力が入る。掌の下、先ほどよりも強く齋藤の鼓動が、熱が伝わってきた。ドクドクと耳の裏で流れる鼓動はどんどん大きくなっていく。 「っ、は……っ、ぁ、く……っ」 「人の気も、知らねえで……っ」  ベッドの上。頬を上気させた齋藤は口を開き歯を食いしばったまま、何度もシーツを引っ掻いた。 「……っ、は、か、こい……っ、ん、う」 「んな声で、名前呼ぶんじゃねえよ」 「は、ん、ふ……っ、く……っ」  締め上げる。伝わる鼓動が大きくなり、あいつの呼吸が止まりかけたところで指を緩める。息苦しさに藻掻き、酸素を肺へ取り込もうと口が開いたとき、そのままその唇を塞いだ。呼吸を邪魔するように唇と舌であいつの喉の奥まで塞いでやる。細められる視界には俺しか映っていない。息苦しさで汗ばんだ額。本能からか逃げようとするあいつの腰を掴んでそのままスウェットごと下着を脱がす。 「ん、む……っ、ぅ……ッ」 「……っ、……」  下着の中から勃起した性器が溢れる。今すぐにでもはち切れんばかりのそれを一瞥し、そのまま奥へと指を這わせた。  何度も捻じ込み、既に受け入れることが当たり前になったそこは容易に指を飲み込んでいく。呼吸に合わせて伸縮する穴目掛けて亀頭を潜り込ませれば、薄っぺらい腰が大きく跳ね上がった。 「っ、は、っぅ、ん……っ」 「……お前といると、自分がどんどん駄目になっていく」  肉の塊に全身理没するような程の高揚感に脳の奥まで痺れる。性器に粘膜が絡み付き、溶け合うような感覚。このまま混ざり合って溶けてしまいそうなほどの熱に意識まで持っていかれそうになる。 「っ、……は、が……ッ!」 「……っ、一人に戻れなくなる」 「か、……ッ、こ、い……ッ」  あいつの手が腕に絡みついてきた。ガサついた声が名前を呼んだとき、そのままその細い指先は俺の腕を強く引っ張った。  そして!押し付けるだけのキス。稚拙で、子供でもしないようなそのキスに意識を奪われた次の瞬間、あいつは小さく唇を動かし、笑った。  その笑顔に、下腹部が急激に重たくなる。押さえ込んでいた感情が限界まで一気に膨れ上がり、そして、破裂する。 「……っ、クソ……!」  腹が立った。けれどそれ以上に、そこまで煽られてもこの指に力を入れることができなかった。  殺したくない。手放したくない。離れたくない。  言語化が上手くいかず、ただ無心で腰を打ちつけ、唇に噛みつき、首を絞める代わりにその体を捕えることが精一杯な自分がただ情けなくて堪らない。滑稽だと笑うかのようにあいつはくぐもった声を上げ、それから俺の腕にしがみつく。  性行為など、ただのストレス発散だと思っていた。  なのに、こいつと一緒にいればいる程どんどん自分が追い込まれているような感覚になる。繋がっているのに物足りなくなる。どんどん己が貪欲になっていって、それと同時に俺一人が夢中になってるようなそんな虚しさが纏わりついてくるのだ。  独りよがり。それでも射精はするし勃起もする。  でも、こいつは。  優しくしてやりたかった。  償いにもならないけど、今までの分、こいつが求めていた『平穏』とやらを与えてやりたかった。  柄でもないと分かっていた。けど、俺ばかりが気持ちよくなっても満たされなくなってしまっている自分がいたのだ。 「……」  目を覚まし、隣にいるはずの存在を確かめる。  隣で微かに寝息を立てる齋藤を見つけてようやく息ができた。  目を閉じても鮮明に浮かび上がる、首を絞めた時のあいつの笑顔。そして、微かに動いたその唇。 『いいよ』 「……よくねえよ、馬鹿」  俺を許すな。俺を受け入れるな。  ……一生。  首に残った跡をそっと撫でようとして、手を握り締める。  この不安に慣れる日なんて来なくて良い。  おしまい

【↑300】お前に触れる※【3,100文字/迷妄栫井×齋藤/栫井視点/後日談SSS/首絞め】

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