冒険にはアクシデントというものは付き物である。それは分かっていたが、それにしてもまさかこんなことになるとは思わなかった。 「スレイヴ、荷物は無事だろうな」 「少し汚れたが……中身は問題ないな」 「ならいいや。後はあいつらが帰ってくるのを大人しく待つだけか」 ダンジョンを抜け出す直前、ループの罠が発動した。運良く俺とシーフはそれを免れたが、タイミングが悪く他の三人はまたダンジョンのどこかへと飛ばされてしまったようだ。 ただでさえ広い場所だ、何日か掛けてようやく抜け出せたと思った矢先のことだけにあいつらが無事か心配になった。 「まあ向こうにはメイジもいるしなんとかなるだろ。それよりさっさと報酬貰いに行くか」 「おい、勝手な真似をするな。」 「勝手な真似って……まさかのんびりあいつらが出てくるのを待ってるつもりじゃないだろうな?」 「当たり前だ。もしものときのために備えておくべきだろ」 「おいおい……」 呆れたような、生暖かい目をこちらに向けるシーフ。明らかに小馬鹿にしたような笑いを漏らし、それから「ま、急ぎじゃねえからいいけどよ」と呟いた。含みのある物言いにむっとする俺を無視し、そのままシーフは辺りを見渡した。高い木々に囲まれた森の中、一人でも逸れたら迷子になってしまいそうだ。 「それに、お前がいなかったらあいつらここから帰れないかもしれないだろ」 「……っふ、くく……そうだな」 「何笑ってるんだよ」 「いや、お優しいことだなと思って。……迷子になって泣きついてくるやつらにも興味はあるけど、ま、たまには森林浴も悪かねえか」 いちいち引っかかる言い方をするやつだ。 「じゃ、日が暮れる前に野営の準備だけしとくか」と森の奥へと進むシーフ。俺はやつに置いていかれないようにその後を追い掛けた。 「酒が飲みて~。フカフカのベッドで寝てえ~~」 「大きな声出すな、魔物に気付かれたらどうするんだよ」 「安心しろ。気付かれてりゃもうとっくに食われてるだろうからな」 「お前な……」 本当にいい加減なやつだ。 張ったテントの中、一旦荷物や納品用のアイテムを大事に保管する。それからはダンジョンの入口の様子が見える場所からあいつらの帰りを待ちつつ、ついでに薬草とか食えそうなものを拾い集めてたりしている間にもあっという間に日が暮れていた。 夜は魔物が活発になる。が、何もしてないように見えて一応罠が敷かれてるらしい。お陰で俺達のテント付近には魔物が寄り付いていない。どういう仕組みかは相変わらず分からないが。 シーフが有り合わせのもの作った晩飯を食い終え、片付けを終えた頃。腹が膨らむと眠たくなってくる。篝火の側、うつらうつらとしながらもダンジョンの入口を監視していたとき、側に誰かがやってくる気配がした。顔を上げればシーフが隣に腰をかけていた。 「腹がいっぱいになったら今度はお眠か。仕方ねえな。ほら、テントで寝ろ」 「……眠くない。俺は、あいつらが帰ってくるのを待ってる……」 「見張りなら俺がしとく。お前は寝とけ、お子ちゃま」 誰がお子ちゃまだ、とシーフを睨みつけたとき、そのまま頭を撫でられる。手袋越し、そのまま目を閉じさせるように視界を覆われた瞬間、急激に睡魔に襲われた。 こいつ、妙な真似を……。 「ゆっくり休めよ、どうせあいつらはすぐ帰ってこねえんだから」 そんなの分からないだろ、仲間くらい信じたらどうだ。なんて声は喉に引っかかって出てこなかった。 その代わり、ゆっくりと意識は水の底へと落ちていく。遠くで野犬の鳴き声が聞こえた。俺はそのままシーフの腕の中、深い深い眠りへと落ちていく。 ◆ ◆ ◆ 「……ん、ぅ……」 どこからともなく濡れた音が聞こえてくる。そして、くぐもったような声も。 蒸し暑い、ジメジメとした空気の中。皮膚の上を何かが這うのを感じた。臍から腹部の筋をなぞるようにゆっくりと上り詰めてくる熱く、濡れたその感触は胸までやってきた。 「は、く……」 夢にしてはあまりにも生々しい。濡れた肉の塊は乳輪付近へと伸び、そのまま円を描くようにぷっくりと腫れたその周囲を辿る。 もどかしい。胸の先っぽに熱が集まり、むずむずする。つい指で掻こうと思うが、体は思うがままに動かない。 それどころかにゅるにゅると押し潰したり、そのまま固くなった先っぽを乳輪へと押し込むように穿られる都度脳が痺れた。 夢、のはずなのに。 「ん、……ぅ……っ」 妙な感覚から逃れようと身を攀じれば、布が擦れる音が辺りに響いた。それから、小さく笑う気配とともにもう片方の胸の先っぽになにかが触れた。今度は濡れていない。硬く細いそれは――指? 誰かに体を触られている、そう気付いた瞬間、俺は慌てて目を開いた。真っ暗なテントの中、上に誰かが覆いかぶさっているのが見えた。 こんなことをする男、一人……いや、今は一人しかいない。 「……っ、なにしてんだ、シーフ……っ」 「あ? わかんねーの? ……息抜き、お前で」 「ふ、ざけるな……っ! 見張りは……っ、ぅ……」 「しー。……あんまでけえ声出すなって。外まで聞こえるぞ」 「……っ」 そうならないための見張りだろ、とシーフの胸板を叩けば、ビクともしない。その変わりに、すり、と優しく乳首を撫でられて思わず唇を噛む。無骨な指からは想像できないくらい的確に快感を拾い上げてくる指先にすっかりと尖っていた乳首が痛いほど腫れ上がる。 片方の乳首はどろりと濡れ、テントの中の簡易ランプの灯りで照らされぬらぬらと主張していた。そこで気付いた、先程まで感じていたのはこいつに舐められていた感覚だと。 「……っ、どういう、つもりだ……」 今度は声を潜めて聞き返せば、シーフは「夜這い」と悪びれもなく応えた。さも当然のように、再び赤くぽってりと腫れていた乳首に唇を寄せ、キスをするみたいに軽く音を手で乳頭を甘く吸い上げる。その刺激に腰がずんと重たくなる。やめろ馬鹿、とシーフの髪を掴んで引き離そうと試みるが、この男、しつこい。 「ぉ、い……っ、く、ぅ……ッ」 「ここに残りたいって言い出したのはお前だろ? だから、責任取ってもらおうかと思ってな」 「責任、だと?」 「娯楽がねえから、娯楽になってもらわねえと」 クソ野郎、とつい喉まで出かけたが、それはすぐもう片方の乳首を指で揉まれ、呑み込んだ。 身につけていた服の前を乱され、大きく露出した胸元を重点的に責め立てられる。気持ちよくないはずなのに、寝ている間にも執拗に触られたらしい。すでにじんじんと疼いていたそこに息を吹きかけられた瞬間、自分のものとは思えないように体が震えた。 「すっかりメス乳首になりやがってなあ、あんなに可愛かったお前の乳首が」 「っ、だ、まれ……っ、ぅ、そこで、喋るな……っ!」 「骨っぽいし硬いが……まあ、抱き心地は悪くねえな。……ほら、足開けよ。勃起してんだろ? 触ってやるよ」 「……っ! ゃ、やめろ、誰も頼んでない、そんなこと……っ!」 「いいから大人しくしろ」とシーフの指が下半身へと伸びる。眠っている間にいつの間にかに硬くなっていたそこを指で撫でられ、背筋に甘いものが駆け抜けていく。 嫌なのに、この狭いテントの中、シーフの腕で抑え込まれればビクともしない。大きな掌で山なりになったそこを優しく撫でられただけで服の中で濡れた音が響き、生きた心地がしなかった。 つい情けない声を出さないよう、唇を噛んで堪らえようとすればシーフはそれを面白がるように手を衣類の中へと滑り込ませた。 「ん、ぅ……っ」 骨張ったシーフの掌が己の先走りで濡れていたそこに触れた。そのまま指先で先走りを絡み取り、亀頭から竿、根本までとゆっくりと感触を楽しむように摩擦し始めるシーフに俺はただ青褪めるしかなかった。 「ま、待て、シーフ……っ」 「眠ってるときのお前も悪くねえけど、お前の焦ってる顔見んの……やっぱいいな」 「……っ、こ、んの……ッ、……ッ!」 変態野郎、と睨みつけてもシーフはニヤニヤと笑うだけだ。そればかりか、咥えられる刺激に耐え切れず滲み出てくる先走りを性器に塗り込むように扱かれ、唇を噛んだ。 粘着質な音は次第に増していき、先走りを絡めたシーフの手はより滑っていく。長い指が器用に弱いところを探り当てられる度に腰が大きく跳ね上がり、シーツの下、無意識の内に足が開いていくのを見てシーフは「ガードが緩すぎんぞ」と笑うのだ。下腹部に向けられる視線に、やつが何を言ってるのか気づく。 顔が熱くなり、咄嗟に慌てて足を閉じようとしたところ、股の間に膝立ちになったシーフに更に大きく開脚させられるのだ。 「っ、ま、て……っ」 「風呂に入れねえから素股で我慢してやろうと思ったのに、誘われちゃあ仕方ねえよな」 「ふざけ、……っ、んな、誰が……ぁ……っ! ゃ、めろ、どこ触って……ッ!」 伸びてきた腕にしがみつき、引き剥がそうとするが力でも腕の長さでも構わない。骨っぽい指に奥の窄みを撫でられ、堪らずシーフの肩にしがみついた。道中連中に散々犯され、柔らかくなっていたそこはねじ込まれる指も安易に飲み込んでいく。それがまるで準備していたみたいで、拒もうとしない自分の身体がただただ情けなく、恥ずかしい。 「っ、ぅ、く……ひ……っ!」 「腰、逃げんなよ。ほら、気持ちよくしてやるから」 「ぃ、らない……っ、やめ……っ、抜け、って……ッ!」 「さっさと挿れてほしいって?」 「ちが、……っ、ぅ、は……っ」 全神経が過敏になっていく。垂れていた先走りを絡めた指で内側から解すみたいに中を刺激され、脳の奥がピリピリと痺れてきた。 こんなことしている場合ではないのに。 俺の性器を弄んでいたシーフは、射精が近くなった俺の顔を見つめ、「気持ち良い?」と囁いてきた。やめろ、そんな甘えるみたいな声で囁くな。 少しでも喉を開けば出したくもない声が出てしまいそうで、自分の口を手で塞いだ俺は首を横に振る。どうやらそれがシーフのお気に召したらしい。喉を鳴らして笑ったシーフは、性器の裏側を指で探るように柔らかく刺激した。瞬間、ビクンと大きく跳ね上がった下半身はそのまま強張る。丸まる爪先。覆いかぶさっていたシーフは俺の頬にキスをし、「このままイケよ」と前立腺を一定間隔で刺激する。些細な振動や粘膜の摩擦すらも全て性器の神経と同期され、起き抜けの頭では何も考えることができなかった。 たださっさとこの男が飽きることを祈りながら、俺はシーフの肩口に顔を埋める。そして、乱れた衣類の下。露出したその鎖骨に唇を押し付け、そして歯を立てた。瞬間、唇の下でシーフの体が強張った。 「っ、ふー……っ、ぅ、く、ん……っ!」 「いって、噛むなよ。……ったく、仕方ねえな……」 絶え間なく与えられ続ける快感に耐え切れずになけなしの抵抗をしたつもりだったが、言葉とは裏腹に目の前の男はどこか愉快そうで。そのまま俺の顎を掴んだシーフは、「これで我慢しろ」と俺の唇を柔らかく吸う。 「……っ、ふ、……ぅ……」 その言葉の意味は分からなかったが、当たり前のように侵入してきた舌に顎を開かされた。口の中、別の生き物のように蠢くシーフの舌は頬の裏側から天井部分まで隈なくなぞっていく。水気を孕んだ粘着質な音がテントの中に響き、耳を塞ごうとしても体内にぐぢゅぐちゅと耳障りな音が反響するようだった。 息が苦しい。体も熱い。こんなことしてる場合ではないというのに、シーフに翻弄される体は言うことを聞かない。 「っは、ん、む……っ、ぅ」 「……ほら、集中しろ」 何が集中だ。ふざけるな。 文句の一つ二つ言ってやりたかったが、先程よりも腫れ上がった亀頭を捏ねられ、息を飲んだ。舌を絡め取られたまま体中を弄られている間にあっという間に限界まで登り詰めていた。髪の毛の一本一本にまで神経が繋がってるような感覚。 逃げようとする腰を掴まれ、更に追い詰められるようにマッサージされたとき、熱く腫れ上がった性器がびくんと跳ね上がる。 「ふ、ぅ、……ッ、ん……ッ!」 「そーそー。……最初から素直になってりゃいいんだよ、こうやって……」 「ぅ、く、う……っ!」 「与えられるもんはありがたく受け取るもんだ」 そう舌を伸ばしたシーフ。その大きくて長い舌にずっぽりと舌先を覆われ、そのまま甘く吸い上げられる。呼吸も声も全てシーフに奪われ、その代わりに更に激しさを増していく愛撫に耐えきれるほど強靭な体は持ち合わせていなかった。 ぴんと勃起した性器を絶妙な力加減で扱かれ、その根本の奥、裏側から長い指で捏ねられる。前立腺を揉み、柔らかく潰すように扱かれ、辛うじて保っていた一本の糸は呆気なく音を立てて途切れた。 「……ッ! ……っ、ん、……ぅ、く……っ!」 瞬間、甘ったるい刺激が背筋から脳天まで駆け抜けていく。やつの腕の中、大きく仰け反った体をシーフに抱き留められた。と、同時に下半身に溜まった熱が一気に放出されるのを掌で受け止めるシーフ。どぷ、どく、と鼓動に合わせて断続的に噴き出す精液。それを掌で受け止めながらシーフは「溜まってんなあ」と笑った。 「ここ最近はダンジョン探索だったもんな。……あいつとも寝てねえのか」 「は……っ、ぅ……るさい……」 「可愛くねー。ほら、何寝ようとしてんだよ。……なんのためにこっち弄ってやったと思ってんだ、スレイヴ」 脱力していたところ、シーフに腿を掴まれる。片足を持ち上げるように大きく開脚させられると同時に、達したばかりの性器がぶるりと震えた。 今度は人の精液を絡めた指先をそのまま肛門に塗り込まれる。「やめろ」と声を上げようとしたが、声にならなかった。その代わり、ひくりと伸縮する括約筋に「準備は良さそうだな」とシーフは目を細めて笑う。嫌な笑顔だ。 「っ、こんな、こと、してる場合じゃ……」 「場合だろ。……じゃねえと、なかなかお前としっかり二人きりになれねえしな」 「なりたくもない……っ」 「そんなつれねえこと言うなよ。……好きだろ? 俺とヤんの」 どっからその自信がくるんだ。元はと言えばお前が脅迫してきたからこっちは渋々相手してやってるんだぞ。 怒りのあまりに震えかけた矢先、目の前で下履きを寛げるシーフに言葉を飲む。暗くてよく見えなかったが、しっかりとテント張ったその下から取り出されるソレをべちんと頬に押し付けられたのだ。剥き出しになった肉色のそれはランプの灯りに照らされ余計生々しく映る。そして、日中の戦闘やら移動やらで蒸らされたそれの匂いはあまりにも濃い。強い目眩を覚えるほどの雄の匂い、そしてずしりとした重みに一瞬顔面に擦り付けられる性器を押しのけることも忘れてしまっていた。 【続く】