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それからというもの、食べ物を見ると「これを踏み潰したらどんな気持ちになるのか」と想像するようになってしまったセイラ。そのころはちょうど花見の時期で、親戚と大きな公園で集まった時も、そこら中で宴会が開かれてるのを見て思わず心を躍らせた。大人たちは酒が進み、セイラは途中でお使いを頼まれる。いつもなら何とも思わないことだったハズが、この日はよろこんで公園の近くにある店に向かったのだった。店までワザと遠回りをして公園中を歩き回り、地面に何かが落ちていないか血眼になって探す。すると、公園のすみに片づけられていない宴会の跡地を見つけ、周りをキョロキョロと見渡してから駆け寄った。その跡地には、期待通りゴミといっしょに食べ残しも散らかっていて、ほとんど手つかずの弁当も転がっていた。これを見たセイラは気分が高ぶりはじめたのを感じながら深呼吸をし、イケナイことだと分かっていながら足を1歩前に踏み込んだ。すると、すぐ近くに転がっていた稲荷ずしの1つを慎重にグチャリと踏み潰し、思わず笑みがこぼれた。ハッとして辺りを見渡すが、近くには誰もいなかったので安心し、勢いに任せて2つめの稲荷ずしももう片方の足で踏み潰す。グニュゥゥゥウウッと足がやわらかいものの中に沈み込んでいく感触が伝わり、足元を見下ろすと、自分の重さに耐えられなくなった酢飯が油揚げの中からムニュムニュとはみ出してくるのが見える。
なんてヒドイことをしているのだろうという背徳感を感じながら、それでも足はもう1歩、さらにもう1歩と前に進んでしまう。お気に入りのストラップシューズの靴底が食べ物の残骸でベタベタになっていくと同時に、呼吸がどんどん乱れていく。そして、次の1歩で桜餅を踏み潰し、潰れたようすをのぞき込もうとした瞬間、何やら黒い粒が靴底の下からはみ出しているのが見えた。はじめは目を疑ったが、その黒い粒はたしかに動いていて、よく見ると虫の足のようだった。この時、予想もしていなかった事態に、セイラは興奮と気持ち悪さで一瞬パニックになってしまうのだった。これまでは食べ物を踏み潰すだけでも背徳感を感じていたのに、虫とはいえ、とうとう小さな命までも自分の足で踏み潰してしまったのである。それに、もとから虫はキライだったので、お気に入りの靴で虫を踏み潰してしまったという気持ち悪さも合わさり、頭の中がメチャクチャになってしばらくその場で身動きが取れなくなっていた。セイラが戸惑っていると遠くから人の話し声が近づいてきたので、慌てて息を整え、何もなかったかのように店に向かうことにする。しかし、桜餅が靴底にベッタリとへばりついていたので、歩くたびに虫ごとグチャッ…グチャッ…と踏み潰してしまう。平然を装いながら、今自分は虫を踏み潰しながら歩いているという事実を、ゆっくりと受け入れながら店に向かった。
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