XaiJu
せいろA
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民を救うために戦ってきた王女が身体を乗っ取られて帝国に忠誠を誓う話

「糞がっ!」 帝国宰相ボルフは感情のままに手に持った報告書を床に叩きつけるとそのまま足でグリグリと踏みつけた。 反乱軍との戦いが始まって以降、彼のもとに届けられる報告書はどれも帝国軍の劣勢を伝えるものでそれはこのままでは遠からず帝国の、ひいては自分自身の身の破滅を容易に予見できるものだったからだ。 ひとしきり罵声を撒き散らしたボルフは肩で息をしながらその肥えた身体を怒りで震わせていた。 半年前、帝国の支配からの開放を旗印に各地で蜂起した反乱軍は日増しにその勢いを強めそれは近隣の領主をまきこみながら瞬く間に勢力範囲を広げていった。 「なぜだ、なぜあのようなガキどもにこれほどまでの力が……」 ボルフの脳裏に今や救国の英雄として担ぎ上げられているアレス王子とサリナ王女の姿がよぎる たかが地方領主の跡取り程度の存在で帝国に楯突く忌々しいガキども、特にあのサリナ王女、あの女は特別に目をかけてやっていたというのにあろうことかワシを裏切りおって、この反乱を鎮圧したらあの女を捕えてこの屋敷で一生慰み者にしてくれる。 ボルフは脳内で妄想を働かせニヤニヤといやらしい笑いを浮かべていたが踏み潰された報告書が視界をかすめると現実に引き戻され怒りの感情に任せて机を叩いた。 最初は見くびっていた、地方の領主の子息が盟主と言えど実際反乱に加わった者たちの多くは農民や市民といった無力な者ばかりであったはずなのだ。 しかし現実として各地の反乱軍はその勢力を急速に拡大し、それに伴ってこちら側の戦力も次々と削がれている。 いっそのこと全ての罪を皇帝になすりつけて反乱軍に降るべきか、いや、しかしそれでは何のために今まで苦労してきたのか…… 賄賂、謀略、暗殺、今まであらゆる手段を使いようやくこの地位にまで上り詰めたのだ、今更それを手放すことなどできるわけがない。手に入れた甘い蜜はそれほど甘美なものであったのだ。 ボルフは必死になって頭を巡らせるが、どうにも打開策を見いだすことができずにいた。 そんな思考の堂々巡りにボルフが陥りかけたその時部屋の扉が叩かれる音が聞こえた。 「入れ」 入室を許可するとそこにはこの屋敷に仕えるメイドが立っていた。 「どうした! 用があるなら早く言え!」 その場で立ったまま用件を言おうとしないメイドにしびれを切らしたボルフは腹を立て怒鳴りつける。 すると今まで無表情で立っていたメイドの少女はニヤリと笑ったかと思うと突然身体をガクガクと痙攣させ始め、そしてそのまま口を大きく開けると中からおぞましい色をした粘液状の魔物が吐き出される。 「うわああぁっ!!」 眼の前で起こったあまりに非現実的な光景に腰が抜けへたり込むボルフに少女の口から垂れ下がった化け物はニタリと笑いかけると相手の動揺など意に介さない様子で気さくに話しかける。 「どうやらお困りのようですね宰相様? もしよろしければ私共が手助けいたしますよ? なに、ちょっとした善意ってやつです 私どもの力をご覧になればきっと宰相様も満足して頂けるでしょう」

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