夏は真っ盛り、雲一つない快晴――高層ビルの屋上は恒例の行事を一目見ようと訪れた社員たちでごった返している。彼らは広い屋上の中心に設置されたフットサルコートを囲むように群がっているが、別にフットサルの試合を見に来たわけではなかった。 内定さえもらえれば将来安泰と言われている大手企業なだけあって、毎年ここにはエリート就活生たちが全国から集結する。今年も例外ではなく、数多の入社希望者たちが厳しい審査と面接を経て、すでにそのほとんどがふるいにかけられた。現時点で内定の希望をつないでいるのは男女それぞれたったの十数人――彼らだけが最終面接会に参加することを許された。 浮かれたギャラリーとは明らかに雰囲気の違うスーツ姿の面接官たちは皆クリップボードとペンを手にしている。そう、これはあくまでも面接――人事部の職員にとってこれは机を挟んで行う面接となんら変わりはない。彼らには就活生たちの適性を見極めるという大事な責務が課せられている。 突如、騒がしい群衆から一層大きな歓声が上がった。なんのアナウンスもなく、男子就活生たちは淡々と姿を現した。堂々とした足取りとは裏腹に彼らの表情は不安と緊張で引きつっている。それもそのはず、彼らはとても面接を受けるような格好ではなかった。 刺すような日差しが照り付ける中、彼らはひとり残らず、裸だったのだ――。 =================== ⇨《羞恥面接会~ち〇こ靴下鬼ごっこ》⇦ =================== 男子就活生たちはフットサルコートのサイドラインに沿って整列し、女子就活生はそのすぐ後ろに並んだ。女たちはスーツ姿のいたって普通の格好をしているが、裸にされた男たちの前ではむしろ場違いに見える。相変わらず笑い交じりの歓声が屋上に響き渡っているが、面接官たちはすでに真剣な表情でペンを動かし始めている。 厳密に言えば就活生たちは「全裸」ではなかった。彼らは服の一枚も着ていなかったが、陰部だけには靴下が被せられ、かろうじて隠されている。長い紺色のビジネスソックスが各々の股間で風になびき、中身をカモフラージュしている。 更に彼らの両手は拳を作ったまま包帯を巻きつけられ、指を使えない言わば「ドラ〇もん」状態にされている。胸と背中、そして腕には背番号が如く数字がマッキーで地肌に描かれ、まるでサッカージャージのようだ。それもこれも、全てはもうじき始まるイベントの下準備である。 「えー、では、最終面接会を始めていきたいと思います。まずは番号順に各自、名前と軽い自己紹介を述べてください。男性陣から始めましょう、①番の君から」 面接官の男性の進行により、今年の最終面接会は幕を開けた。 「はいっ!」 胸に①と描かれた就活生は一歩前へ踏み出し、その間抜けな姿には似つかわしくない真剣な面持ちで声を張り上げた。 「結木タツヤです!大学では電子工学を専攻し、支援団体の一員として新興国で活用する電子機器の開発に携わりました!御社のグローバルなビジョンに感銘を受け、この度応募をさせていただきました!よろしくお願いします!」 面接官たちはサラサラとペンを動かし、そのうちの一人がすっと手を上げた。 「早速で申し訳ないけど、結木くん、股間からはみ出しているその黒いもじゃもじゃは何かな?」 予期せぬ問いかけに就活生は焦った様子で己の体を見下ろし、また顔を上げて不安そうに答えた。 「え、っと……陰毛、です……」 「うんうん、それは見たら分かるよね。僕が聞いてるのは、なぜ整えられていないのか、ということなんだけど」 「……あっ、えっ……あのっ――」 「弊社の社員になるということは、一個人として会社の顔になるということ。常に見られているという意識を持ち身だしなみを整えるのはもちろん、普段は見られないところもきちんとしておくのは社会人として最低限のエチケットだ。現に、他の候補者の多くは脱毛や除毛をして陰毛を整えていると見受けるが、どうかな?」 面接官が話している間は静かにしていた観衆から低い笑い声がぽつぽつと上がり、陰毛がボーボーの就活生は失念に頭を落とした。 「思い至らず、申し訳ありません!次からは気を付けます!」 「ふっ、次があればね」 面接官は鼻で笑い、何かをクリップボードの書類に記録した。 「次!②番のひと!」 「はいっ!山本良太と言います!僕は〇〇大学、XX学部に在籍中、様々な活動に関わり、中でも――」 裸の就活生たちは健気にこれまでの学歴や経験のことを話すが、面接官たちが注視しているのがそこでないことは明らかだった。 「ふーん、山本くんは陰毛をちゃんと剃ってあるね。意識が高くて結構」 「ありがたいお言葉です!」 「じゃあ、ちょっと背を向けてくれるかな?」 「はいっ!」 就活生はすぐに言われたとおりに後ろを向いた。そこにはスーツ姿の女子就活生が並んでおり、山本は気まずそうに眼を逸らした。 「なるほど、君はかなり剛毛なようだね。まぁすね毛は仕方ないとしても、そんな毛深いお尻じゃみっともないよ。ウチはクライアントと裸の付き合いをすることもあるからね」 ギャラリーからまた笑いがこぼれ、山本は目を閉じて耐えるしかなかった。 「ほらね、恥ずかしいでしょう?そんな思いをしないためにも、脱毛サロンにお世話になるのがいいんじゃないかな。今どき男が脱毛するのなんて普通でしょ」 「はいっ!すぐに始めます!」 「じゃあ次!③番!」 それからも面接官たちのネチネチした嫌味は続き、その度に見据える社員たちは賑やかに湧いた。 「僕も人の体系についてとやかくは言いたくないんだけどね、そのだらしない身体は少し目に余るね。関根くん、君の股間の膨らみを見る限り陰茎はあまり大きくはないよね?そんな腹が出てたら余計に小さく見えてしまうよ。体重管理の努力はしているのかい?」 「はいっ!ランニングを去年から始めましたが、最近は忙しくてあまりできていなかったかもしれません!」 「かも?なんだい、その言い訳じみた言いぐさは」 「そ、そんなつもりは!これからは心を入れ替え、最善の努力をしていきます!」 また次の就活生の場合―― 「馬場くん、君さっきからずっとモジモジと下を向いてばかりじゃないか!もっとしゃんとできないのかい?」 「すっ!すいません!こんな格好は、初めてでして……」 「あのねぇ……他の候補者もみんな同じ格好だけど堂々としているよね。それともなに、この期に及んで裸を見られるのが恥ずかしいなんて言うんじゃないだろうね。そんなんじゃこれからの『試合』では到底勝ち残れないよ。君はいったいなにをしにここへ来たんだい?」 「あっ、あのっ……」 「あぁ、もういい!せいぜい『試合』では頑張って汚名返上に尽力してくれたまえ」 残りの男たちの自己紹介が終わると、続いて女たちの自己紹介が行われた。こちらは普通の面接となんら変わりなく淡々と進み、あまりのあっけなさに男たちは悔しさを隠せなかった。なぜ俺たちばかりがこんな屈辱的な扱いを……それが裸にされた男たちの内なる総意であったが、状況が彼らに味方することがここから先もないことを彼らは重々承知していた。 自己紹介が終わるとようやく面接会の本番、社員たちが待ちわびた『試合』の時間がやってきた。 「君たちの経歴についてはおおむね理解しました。でも、仕事に就いて問われるのは君たちの根性、応用力、そして人としての心根。それを引き出すために君たちには本気の勝負をしてもらいます。ルールは簡単――他の候補者の靴下を奪いつつ、最後まで自分の靴下を守り切った者が勝者となる。指は使えないから靴下を奪い取るためには両手を使う必要がある。近づかないと勝てないが、油断をすると負けてしまう。殴る蹴るはダメだけど、押し引きはオッケー。では、皆さんサイドライン沿いに均等に広がってください。準備ができ次第試合を開始します」 裸の男たちは四方のサイドラインからコートの内側を向き、周りとの間合いを確認している。女子就活生たちは相変わらず居心地が悪そうにコートの外で整列している。 「用意はいいですね!じゃあ始めますよ!よーい……」 ピッ! ホイッスルの音と共に、男たちの本気の勝負が開始した。と言っても、全員様子をうかがっており急に動き出す者はいなかった。そんな調子の就活生たちに観衆がヤジを飛ばし始め、それに応えるかのように一人の男が初動に踏み切った。それは陰毛が伸びっぱなしなことを指摘された結木だった。彼は一番近くに立っている就活生に素早い足取りで忍び寄った。近づかれた男は場の空気に飲まれて完全に不意を突かれ、気づいた時にはすでに結木の両手が彼の靴下に伸びていた。 「――しまった!」 「もらったぁ!」 結木の雄たけびと共に靴下が引き抜かれ、宙を舞った。一方、解放された陰部は勢いよくブルンッと上下左右に揺れた。子供サイズの皮被りチンコと温められて伸びきったふぐりが余すことなくギャラリーに披露された。脱毛をしている陰部は短小チンコにお似合いのパイパンであった。 これを皮切りに他の就活生たちも積極的に動き始めた。間合いをうかがっていた時の張り詰めた空気から一変して、全員が騒がしく駆け回り、観衆は歓喜の声を上げた。 「彼いいね、結木くんだっけ」 「周りが尻込みしてるとき、最初にアクションを起こすのは勇気がいりますよね」 「初めはだらしない奴かと思ったけど、いつかリーダーになれる逸材かもしれないな」 面接官たちはいたって真面目に就活生たちの分析をしている。この試合はあくまで就活生たちの適性を見抜くためのプロセスであり、誰が勝者になるかはさほど大事ではなかった。そして、それは女子就活生たちに関しても同じだった。 「女性陣の皆さん、なに棒立ちしてるんですか?」 一人の女性面接官が黙りこんでいる女たちに投げかけた。 「これはあなた方の面接会でもあることは分かってますよね?まぁ、なにもする気がないのなら今すぐ帰っていただいても構いませんけど」 その時ようやく、女子就活生たちは自分たちも審査されていることを理解した。男たちのふざけた試合に出場していないからと言って何もできないわけではない。この場から少しでもアピールをして、内定を勝ち取らなくては……!そう思い至り、彼女たちは彼女たちなりに行動を開始した。 「――がんばれー!男子たち、がんばれー!」 「あぁっ!おしかったですよ!関根さん!」 「山本さん!後ろ気を付けてー!」 女たちは一斉に応援の声を上げた。この状況がバカバカしいという思いを捨てて、彼女たちは全身で熱意をアピールした。その視線の先では裸の男たちが汗を垂らし、息を切らして走り回っている。白熱した男たちの戦いにその場にいる全員が意識を集中させている。 ほとんどの男たちは二人一組で取っ組み合い、まるでレスリングの構えの姿勢だ。靴下を取られないように腰を後ろに下げ、顔を接近させている。たまに腕を相手の股間に伸ばすが、なかなか靴下を抜き取るには至らない。 「おい、早く諦めろよ」 「なんだと?」 「くだらない大学出てるやつは弱小企業がお似合いだぜ」 「はっ!ミニチンの坊ちゃんがデカい口叩いてんなよ!」 「はぁ?!お前こそ、どうせドリチン包茎だろ!バレバレなんだよ!」 出会ったばかりの男たちはすでにライバル心をむき出しで互いを煽りあっている。少しでも勝ち残って内定を手にしようと双方必死である。煽り合いが続く中、一つの人影が低い姿勢で二人に忍び寄った。それに二人が気づいたときには、すでに片方の靴下が掴まれていた。 「なっ――!」 「キミたち油断しすぎ」 それはメタボ気味の関根だった。体格からは想像できない素早い動きで彼は片方の靴下を引き抜き、即座にもう片方の靴下も引きずり下ろした。取っ組み合っていた二人のチンコと金玉が勢いよく解放された。二人の皮被り短小チンコはその小ささゆえにプルプルと小刻みに揺れ、縮こまった金玉と相まってかなり幼稚な印象だ。 「――くっそ!」 「デブのくせに、いつの間にっ!」 「はいはい、敗者は場外に捌けてくださいねー」 素っ裸にされた二人は両の拳で解放された陰部を隠し、不服そうにコートの外へ向かった。 〆 「羞恥面接会~ち〇こ靴下鬼ごっこ(2/3)に続く……→ https://teopi.fanbox.cc/posts/5476793