(2/4)→ https://teopi.fanbox.cc/posts/5193448 ~*~*~*~*~ 次の朝、オボタイ神社につくとすでに多くの関係者が忙しく祭りの準備をしていた。僕と大門寺さんは神社に続く石階段を上りながら、道具や機材を持った男たちとすれ違った。 「俺たちが一番乗りだな」 神社の奥の大広間に入ると、何人もの男たちが賑やかに作業をしていた。式服を着た者と私服の者が入り混じっているが、みな神社の者や祭りの関係者だろう。小河原君と中岡さんの姿は見当たらなかった。 「あれがご神体だ」 「へぇ……あれが……」 大門寺さんの指さす方を見ると、式服姿の男性二人がスイカくらいの大きさの木像に白い布を巻きつけていた。乳房を象った二つの膨らみがあり、オボタイ様が女性の神様だということを明確に示している。 「お二人から祭り装飾をしましょうか」 私服姿の中年男性が声をかけてきた。 「はい、頼んます」 大門寺さんはすぐに上着のセーターを脱ぎ始めた。祭り装飾?裸になるというのに一体なんの装飾をすると言うんだ? 「外森さん、これから体に真言を書いてもらうから、全部脱いじゃおう」 「真言……マントラみたいなものですか」 「そうそう、前と後ろにドーンとな!」 裸になるのはもう少し後だと勝手に思っていたが、勿体ぶっている暇などないらしい――もう祭りは始まっているのだ。どんどん脱いでいく大門寺さんに後れを取らぬよう、僕も急いで脱衣を始めた。人がバタバタと行きかう中で全裸になるのは不思議な感覚だったが、周りの男たちは一切気にしていない様子だ。彼らにとっては奉男の裸体など当たり前の光景なのだろう。 最後一枚のボクサーパンツを脱ぎ捨て、背筋を伸ばした。 『下を隠したりするのはオボタイ様に失礼だから、見られてなんぼって気持ちでいること』 大門寺さんの言葉を思い出し、あえて股間は隠さなかった。平静を装って腰に手を当てていると、隣で同じく裸の大門寺さんは胸板に墨で文字を書かれ始めていた。昨夜見たばかりの筋肉質な体に筆がすらすらと滑っていく。 「あんたのは俺がやらせてもらうよ」 「あっ!はいっ、お願いします」 いけないいけない、つい気を取られてしまった。筆を手にした別の中年男性がいつの間にか前に立っていた。作業がしやすいように僕は胸を張って前を向いた。 「こそばいだろうけど、じっとしててな」 「はい、気をつけます……」 墨をしみこませた冷たい筆先が胸の中心に押し付けられ、文字を書きながらゆっくりと腹、そしてへそへと下りていった。筆に再び墨を染み込ませ、おじさんはへそ下からまた文字を書き始めた。もうあまり文字を書く場所が残っていないが、どれほど下まで行くんだ?そんな僕の疑問に答えるかのように、筆は毛が剃りたての陰部まで到達し、竿の根元にまで降りてきた。 「えぇ、そんなところまで?!」 「あぁ、遠くからでもよく見えるようにね」 中年男性はなんのためらいもなく、筆を一直線に陰茎の先っぽまで滑らせた。竿の上部が黒い太線で染められ、その長さを強調している。横を覗くと大門寺さんも同じ化粧を竿に施され、彼の場合は露出した亀頭の先まで墨が塗られている。 「おっ!もうやってるっすね!」 「すいません、遅れてしまって!」 前が終わり、今度は背中に文字を書かれ始めたタイミングで小河原君と中岡さんが到着した。 「大丈夫大丈夫、俺たちが早かっただけだから。俺と外森さんはそろそろ終わるから、二人も脱いでいいぞ」 「へーい」 筆をもったオジサンたちは手が早く、すぐに背中の文字を書き終えた。僕を担当してくれたおじさんは再び前に回り込み、仕事の出来を確認した。 「まっ、こんなモンだろ」 「あ、ありがとうございます」 「今日は一段と寒いからな、きついだろうが、まぁ頑張ってくれな」 「はいっ、全力で頑張ります!」 おじさんはクシャっと微笑み、去り際に僕の金玉をすくい上げるようにポンポンと弾いた。奉男の睾丸が縁起物というのは本当らしい。 「えっっ!そこまで塗るんですか?!」 中岡さんは豊満な亀頭に墨を塗られながら先ほどの僕と同じ反応をしている。 「そうそう、目立つようにね。まぁ、あんたのは塗らなくても十分目立ってるがね」 筆先で鈴口をなぞられ、彼は一瞬体を震わせた。幸い竿の化粧はそれで終わり、おじさんは背中の文字に取り掛かった。 「外森さんサマになってるよ、格好いいじゃん」 「大門寺さんこそ、やっぱり日ごろから鍛えてる人は違いますね。僕なんか人に見せるような体じゃないですよ」 大門寺さんの隣に立つと僕のたるんだ体型があからさまで、見苦しいことを自覚せざるを得なかった。 「そんなことないさ。日本男児たるもの、裸がいっちゃん格好いい。多少肉付きがいい方が男らしいと思うぞ」 「俺たちも準備できたっすよ」 小河原君と中岡さんが装飾を終え、僕たち奉男四人衆は部屋の中心に集合した。 「よし、もうそろそろだな」 神社の外が騒がしくなっているのが大広間からも分かった。人だかり特有のざわつきが表から聞こえてくる。 「表の準備できたよ!」 式服姿の男が僕たちを呼びに来た。大門寺さんは布が巻かれたご神体を丁寧に持ち上げた。 「奉男お披露目の時間だ。みんな、心の準備はいいか?」 「「「はいっ!」」」 大門寺さんが先頭を切って、僕たちは一列で外へ向かった。廊下はさっきまでの賑やかな雰囲気から打って変わって、静粛で張り詰めた空気が漂っている。僕は自然と緊張感が増し、拳を強く握った。 外ものとは言え――いや、だからこそ――奉男として恥じぬ姿を見せなければ……ここからが正念場だ! ~ 「腕組んで、胸張れ!今日は一段と寒いから、歯ぁ食いしばっていこう!」 一人ずつ用意された草履を履き、外へ踏み出した。神社の前には人だかりができており、僕たちが姿を現すと一層うるさくどよめいた。 「皆さん、お待たせしました!彼らが今年の奉男四人衆であります!どうか拍手で温かくお迎えください!」 観衆は式服を着た神主に言われるまでもなく、すでに拍手を上げていた。僕たちは横一列に並び、生まれたままの姿をギャラリーに見せつけた。雪がひたひたと肌に落ちては溶けていき、寒さのせいで陰部が縮こまっているのが確認するまでもなく分かった。確かに歯を食いしばっていないとガタガタと鳴ってしまう――今さらだが、この地域の寒さに全裸の格好はあまりに過酷だ。 「モンちゃん!今年も格好いいぞー!」 人だかりの中から年配の男性の声が上がり、同調するように観衆が湧きたった。僕からすれば知らない顔ばかりだが、おそらく他の三人は顔見知りばかりの観衆だ――彼らはそんな知人・友人・同僚たちにまじまじと体の全貌を見られているのだ。そこには独特な緊張感があるのではないだろうか。 突如太鼓の音が神社の境内に鳴り響き、重い振動が全身を駆け巡った。式服を着た男が太鼓を打ちながら神社を出発し、中心街へ降りる階段へと向かった。大門寺さんと小河原君がその後に続き、僕は小河原君の後についていった。後ろからは中岡さんが続き、一番後ろには太鼓係がもう一人付いてきている。階段までの道のりは紐で仕切られているが、ちょうど一人が通れるほどの幅しかない。 左右に人がひしめき合う中、睾丸をポンポンと弾かれた。 「よっしゃ!ご利益ご利益!」 中年男性が満足そうに人だかりに消えていった。その後も次々と睾丸に触れようとする手が左右から伸びてきた。たまに狙いを外した手が萎えた竿にぶつかったが、構わず歩を進めた。前の二人の股間にもニョキニョキと手が伸ばされ、異様な光景が続いた。 石段を降り始めると左右の人がいなくなり、僕はほっと一息ついた。 「外森さんと中岡さんは大丈夫か?」 「あっ、はいっ!大分驚いてますけど!」 「ははっ!そりゃそうだよな!町中はあそこまで込み合ってないから、安心してくれな」 「はい!」 太鼓の音が相変わらず響く中、僕はふと自らの股間を見下ろした。案の定、金玉はキュっと縮み上がりチンコも普段よりも多く皮が余って小さくなっている。陰毛が無い股間はなんとも情けない風貌だが、それをあえて見せつけることに奉男の威厳というものがあるのかもしれない。 町に降りると僕たちは大通りを闊歩し、歩道から観衆が裸の行進を傍観している。 「「「中岡さーん!頑張ってー!」」」 横から若い女性三人が声を上げた。 「お知合いですか、中岡さん」 「…はい……仕事の部下の子たちです……」 振り返ることはできなかったが、声からだけで中岡さんの心情はくみ取れた。 「うぇーい、小河原ぁ~金玉触らせろ~!」 若い男たちが小河原君の周りに群がった。 「おぅおぅ、好きなだけ触れー」 「お前もよくやるよなぁ、粗チンのくせにさぁ」 小河原君の友人らしき男たちは次々に彼の睾丸をつついた。 「るっせ!お前らも似たようなモンだろ!」 「おいおい!適当な事言うなって!」 「じゃあ、来年はお前らも参加な」 「ないない!まぁ最後まで頑張れよ!また飲みに行こうぜ!」 「おぅ、またな」 男達は歩道にはけていき、今度は赤ん坊を抱いた若い女性が大門寺さんに駆け寄った。 「ほら、たぁくん。お兄さんのタマタマ、ポンポンして」 まだ言葉も分からないであろう赤ん坊は母親のされるがままに小さな手を大門寺さんの金玉に添えられた。当の赤ん坊は不思議そうに大門寺さんの顔を見上げている。 「今度は金髪のお兄さんだよー」 女性は今度は小河原君に近づき、同じことをした。奉男全員の金玉を触らせるつもりらしく、彼女はすぐに僕の前に来た。何気なく赤ん坊をちらりと見下ろすと女性と目が合ってしまった。 「あっ……ありがとうございます……」 女性はすぐに目を逸らしてポツリとつぶやいた。僕は一瞬で恥ずかしさがこみ上げ、「あっ、いえ…」としか返事ができなかった。冷え切っているはずなのに頬が火照った。 「あっ、たぁくん、握っちゃだめだよー、放してあげてねー」 女性はすぐに後ろの中岡さんに駆け寄り、同じように赤ん坊に睾丸を触らせた後、歩道の観衆の中に消えていった。 進行方向に川が見えてきたところで急に先頭の太鼓係が歩を止めた。 「ここから歩き方が変わるっすから、俺らを真似てください」 小河原君が振り向いて教えてくれた。突如太鼓の音が再開したが、先ほどよりもリズムが早く、躍動感がある。先頭の太鼓係はスキップのような動きでまた進み始めた。だが、ただのスキップとは違って脚は大きく横に上げられ、股を大きく開いた格好で片足ずつ歩を進めた。大門寺さんと小河原君も同じ動きで進み始め、手ぶらな小河原君は両手を万歳したままその独特なステップを踏んだ。この動きはいつかネットで見た刑務所で行われるという「カンカン踊り」に似ている。 僕と中岡さんも慣れない素振りで前の二人の真似した。脚を上げる度にチンコと金玉がぶらぶらと上下左右に揺れ動き、時折竿が股にあたる音がペチペチと聞こえた。両腕を高く上げていることで露出感が増し、体の隅々まで観衆に見られていることを思い知らされる。容赦なく吹き付けてくる雪にかじかむ節々をなんとか動かし、相変わらず赤面した顔は引きつっているだろう。羞恥心を紛らわすかのようにがむしゃらに全身を動かし、チンコは乱舞を続けた。 相変わらず歩道から声援と拍手が沸き立っており、太鼓の重い響きも相まって頭がくらくらした。激しい呼吸が白く浮かんでは寒空に消えていった。思いのほか早くに僕たちは川のほとりにたどり着き、そこにもすでに人だかりができていた。 「焦らなくてもいいぞ、ヤバいぐらい冷たいからな!」 「はいっ!」 太鼓係の二人は横によけていき、僕たち四人は横一列で水に足をつけた。針のように刺す冷たさが足底を襲い、さすがに震えを抑えられなかった。歯を食いしばって、構わず進んでいく大門寺さんと小河原君に必死についていった。ちょうど股下まで水に浸かったところで僕たちは止まり、大門寺さんが抱えていたご神体を囲むように佇んだ。 全員のチンコと睾丸が冷たい水面にプカプカと浮いた。どのチンコも昨日見た時より随分小さくなっており、大門寺さんと中岡さんの亀頭は寒さのため蒼白に変色している。中岡さんはほとんど剥けているはずの皮が亀頭の半分くらいまで戻っていたが、それでも目を張る大きさだった。 「水をぶっかけてご神体を清める」 木造のご神体は四人の間で浮遊し、全員でバシャバシャと川の水をかけた。指先の感覚がなくなるほど川の水は冷たく、上半身にはねる飛沫がヒヤリとした。 「よし、上がるぞ!」 さすがの大門寺さんも声が震えている。僕らは急いで川から上がり、そこには水の張った木桶が四つ用意されていた。 「俺が掛け声を上げるから、同時に頭からかぶるぞ。歯ぁ食いしばって、背筋伸ばしていくぞ!」 「「「はい!」」」 僕たちは横一列に仁王立ちし、観衆から歓喜の声が上がった。濡れた裸体からは水が滴り落ちた。 「じゃあ行くぞ――オボタイ様、ばんざーい!!」 「「「オボタイ様、ばんざーい!!!」」」 「せーのっ!」 四つの桶が同時に持ち上げられ、頭上で逆さに傾けられた。川と同じ冷たさの水が一瞬で裸体に降り注ぎ、肌を滑り落ちていった。瞬間的に頭が真っ白になり、大門寺さんの野太い声によって現実に引き戻された。 「ばんざーい!!」 観衆は共鳴するように「ばんざーい!」と繰り返した。そのやり取りがもう何度か繰り返され、拍手と歓声が再び辺りを包み込んだ。僕は万歳の度に丸まろうとする体を無理やり真っすぐ立たせ、冷めやらぬ群衆に清めた体を見せつけた。体に書かれていた真言はいつの間にか水に流され消えていた。竿に太く塗られた墨もキレイに洗われまっさらだった。 「これから走って神社に戻るぞ。後もうちょっとだ、最後まで気ぃ引き締めてくぞ!」 大門寺さんの言葉に僕たちはただ大きく頷いた。もうすぐ暖をとれるという安心感が僕の消えかけた闘志を再び焚きつけた。ご神体を抱えて駆けだした大門寺さんと小河原君の後を追い、僕と中岡さんも冷え切った手足を必死に動かした。体が上下する度にチンコが派手に揺れ動いたが、神社に戻ることに必死な僕らは誰一人としてそれを気にしていない。依然人だかりが左右からせり出す大通りを四人でひたすら走った。神社に上がる石段のふもとに着いたころには四人とも息が上がっていた。 「もうちょっとだ!もうちょっと!」 自分に言い聞かせるように大門寺さんは叫んだ。段飛ばしに階段を駆け上がり、僕たちはようやく神社の境内にたどり着いた。神社を出発した時と同じように、僕たちは観衆の間の一本道を神社めがけて駆け抜けた。応援の声が群衆から巻き起こった。 一人また一人と正面から神社に駆け込み、最後の中岡さんが到達するとすぐさま後ろで戸がピシャリと閉じられた。外では相変わらず歓声が鳴り響いているが、周りではお互いの荒い息遣いだけが聞こえた。 これで本当に終わったのか?川に着くまでの道のりを考えると、復路はあまりに突然であっけなかった。急な静寂が鼓膜に重くのしかかった。 〆 「冬の裸祭り~オボタイ様に奉げる男たち(4/4END)」→ https://teopi.fanbox.cc/posts/5223085