『いっぱい食べる方が良いのに』と幼馴染に言ったら激太りした話(全文)
Added 2023-01-23 13:36:11 +0000 UTC「それだけで足りるのか?」
「別に大丈夫だけど……」
土曜日の昼間、俺は幼馴染の力伊亜優(ちからいあゆ)とハンバーガー店で食べている。
今日は午前中が土曜授業だったから、元々どこかの飲食店に一人で寄って帰ろうと決めていた。
そう思ってたんだが、下校するときに亜優が近寄ってきて「お昼は何食べるの?」って言ってきて……
「どこかに寄って帰る」と返事したら一緒に行こうと言われて、結局二人で食べることになった。
亜優が頼んだのはポテトSとオレンジジュース。それだけかよと思う。
「もうちょっと、ほらハンバーガーを食べるとか」
「そんな……お昼なんてお腹空いてないし……」
「小食なんだな」
「女子なんだから……普通だよ」
女子高生なんてそんなものか?よく分からないが。
確かに体型とか色々気になるお年頃なんだろう。同い年の俺が言うのもおかしいけど。
でももっと食べた方が良いんじゃないか?
もしかすると本当は食べたいけど我慢してるのかもしれない。
それだったら思う存分食べてくれた方が良いんだけど。
「もっと食べたいとか思ってるんじゃないか?」
「そ……そんな訳無いよ……」
「本当に?」
「え、えっと……これでお腹いっぱい……だから……」
亜優の言葉が小さくなる。多分これは本心じゃないな。
もう少し言ってみるか。
「いっぱい食べたらみっともないとか、太りたくないとか思ってるだろうけど……」
「た、確かに……そう思ってるよ……」
「俺は全然気にしてないからな」
「……でも、本当にこれで十分だから」
「分かったよ」
腑に落ちないが……十分だと言ってるんだから、これ以上は聞かないでおくか。
……
「本当にお腹いっぱいになったの?」
「うん」
亜優はそう言ってるが、そんな風には思えない。
さっきだって言葉が詰まってたし我慢してそうな気がする。
まあいいか。じゃあそろそろ帰ろう……
「(ぐぅぅぅ……)」
「えっ?」
「……違う!今のは……気のせいだから!」
顔を赤らめて必死に否定しているが……絶対足りてないな。
派手に腹の虫が叫んでいるのが何よりの証拠だろう。
「……食べたいんだろ?もっと」
「い、いや大丈夫……だから……」
「素直になったら?」
「……もうちょっと……食べたい……です」
観念したのか、ようやく本音を言ってくれた。
幼馴染なんだから別に隠さなくてもいいのにな。
「じゃあ違う所行こうぜ」
「えっ……?2件目に行くの?」
「ハシゴしてもいいだろ?」
「……分かった」
そうして俺たちはカフェテリア式の食堂に向かうことにした。
場所はすぐ近くにある。
店には1分ぐらいで着いた。入店した俺たちは早速料理を取っていく。
ただ……亜優が中々取ろうとしない。
この場に及んでまだ躊躇しているのか?
「亜優、好きなだけ食べたらいい。
代金が心配なら俺が払うから」
「ありがとう……でも……」
どうしよう、何か背中を押す一言は無いか……?
俺はお腹いっぱい美味しそうに食べる方が良いんだけどな。
昔小学生だったころの亜優はスナック菓子とかいっぱい食べてて……
満腹になるまで食べて嬉しそうにしてたな……
「いっぱい食べる方が良いのに……」
「……えっ?」
「いや何でも無い!」
しまった、うっかり口にしてしまった……
こんなこと言っても戸惑うだけだよな。
「……本当に『いっぱい食べる方が良い』の?」
ただ亜優の方は意外と嫌じゃなさそうというか。
多分ゴーサインを欲していたのだろう。
だったら思い切り言ってやらないとな。幼馴染としての責務だ。
「そう!いっぱい食べる方が我慢するよりずっと良い!
女子は色々気にしてるみたいだが、俺としては美味しそうにたくさん食べる奴の方が魅力があると思う。
体型なんて気にしなくても大丈夫だ。それより己の食欲のままにご飯を堪能すべきだな」
「急に……どうしたの?」
「おっと俺としたことが」
つい熱が入ってしまったようだ。実際沢山食べる女子って魅力的なんだけどな……
しかしこんなこと言ったら逆効果かもしれない。
「……今の言葉、本当なんだよね?」
「ああ、本心だ」
「じゃあ……遠慮なく食べるよ?後悔しないでね?」
「……?」
何だか言葉の意味が明瞭ではないが、後押しになったらしい。
「俺は先に料理を取ってから席を確保しておく、ゆっくり選んでくれ」
「了解」
さっきハンバーガーとナゲット食べたばっかりだから要らないんだよな。
でも一応何か取っておくか。じゃあ『焼き餃子1人前』にでもしよう。
あとは『ご飯(小)』で終わりで良いな。
……これだけ見ると俺の方が小食に見えるだろう。周りは2回目の昼飯と知る由もない。
席に着いた俺は亜優の到着を待ちながら財布の中身を確認する。
今は……1万円札が入っているな。後はスマホ決済も準備万端だ。
果たしてどれだけ持って来るか……分からないが。
……
しばらくして、亜優が取って来た料理をテーブルに持ってきたのだが……
「ちょっと待て!その量は多すぎないか!?」
「そう?」
トレーの上には所狭しと皿が並んでおり、隙間がほとんどない。
唐揚げが5個に焼きサバ、特盛ご飯に天ぷらの盛り合わせセット、肉じゃがとビッグチキンカツ……
「さっきのポテトSは何だったんだよ!?」
「私も女子高生だから……気にしてたんだよね……」
嘘だろ……亜優が昼間からこんなに食べる奴だったなんて……
予想をずっと上回る量に面食らってしまった。
「こんなに食べるのか?」
「当然だよ、後中華そばも頼んでるから……できたら持ってきてくれるって……」
「マジで!?」
「奢ってくれるんだよね?今日は」
「……男に二言は無い」
金はともかく……こんな食欲を隠し持っていたことに驚くしかない。
「じゃあいただきます!」
テーブルを埋め尽くさんばかりの食べ物に目を輝かせてテンションが上がる、俺の幼馴染。
「いただきます……」
そんな様子を見て呆気にとられる俺……
「美味しいなぁ……」
唐揚げを噛みしめて表情を緩ませている。スイーツでも食べてるかの如く。
そして茶碗から溢れんばかりの白ご飯をかき込んでいる。
「『中華そば大』です」
「ありがとうございます!」
頼んでいた中華そばも来て、いよいよ机上の空きスペースが皆無になる。
やってきた鉢にうっとりしている亜優の姿は、普段の華奢で大人しいイメージとは全然違っていた。
「美味しい……いっぱい食べるのって良いね……」
「よ、良かったな……」
この食べっぷりに驚いたのか、周りの客も遠巻きに眺めている。
「あの子めっちゃ食べてる」みたいな声も微かに聞こえて来た。
そりゃ昼間から制服姿で食べまくっている女子高生を見たら気になってしまうのも無理はない。
「よく食べるんですね~」
とうとう隣のテーブルに座っていた人から声を掛けられた。
……その人も結構取ってる量が多い気がするけどな。
既に皿は空になっているから正確な量は分からない。
でも枚数が多くてテーブルが埋まっている程だから結構な大食家だろう。
見た目は女子高生ぐらいで俺たちと年齢はあまり変わらないように見えるが……
しかしふくよかな見た目で肥満体型と分類されても仕方がないレベルだ。
「そうなんです!私よく食べるんですよ!」
自慢するように言う亜優。こんな台詞初めて聞いたんだが。
「私も追加で頼もうかな~?」
「お姉ちゃん十分食べたでしょ!?」
「夏月はもうちょっと食べた方が良いけどね~」
隣に座っているこの二人はどうも姉妹らしいが、片方は普通の体型に見える。
同じ環境で育っても食欲とかに差が出るのか……
「じゃあまたね~」
どこの誰だか分からないけど、いっぱい食べる女子高生って他にもいるんだな。
俺の想像よりも女子の食欲と言うのは凄いのかもしれない。
二人組がレジに向かってから、亜優は食べるのを再開した。
「このお店結構美味しい……また来たいな……」
「よ、良かった……」
……
「ふぅー、お腹パンパンになったよ……」
「そんなに食べたらな……」
30分位経っただろうか。
亜優はすっかり完食して、お腹いっぱいになっていた。
普通の女子高生なのにここまで食べるんだな。
これほど食欲旺盛で無いにせよ、他の女子も隠しているだけで実は大食を好んでいるんだろうか。
「『いっぱい食べる方が良い』って聞いたから……
お腹いっぱいになるまで食べちゃった……」
「まあ、無理に我慢するよりずっと良い」
限度があるだろうとは思うけど。しかし亜優が望んでいるのならこれでいいと思う。
さっきのポテトSだけ頼んでた姿より、今のたらふく食う姿の方がずっと魅力的だ。
周りの目が気になるから普段は抑えてるんだろう、女子高生は大変だな。
それでも偶には周囲なんて関係なく食べまくっても良いと思う。
「美味しそうにいっぱい食べる女子には魅力があるんだ、食べ過ぎても気にしなくていい」
「……分かったよ。
私、これからはもっと素直に食べようかな……」
「それが良い」
そんな話をしてから、俺は会計に向かった。
……やっぱり高いな。当分奢るのはやめておこう。
---
そんなこんなで、あの日以来俺の幼馴染は食欲を隠さなくなった。
……俺の前だけだが。
まだ他の奴や女子たちの前で大食ぶりを披露するのは恥ずかしいらしい。
それで最近は亜優と食べに行くことが割とある。
流石に会計は別々にしてもらっているが。
今日は放課後、あの食堂に二人で行くことになった。
晩飯にしてはあまりに早過ぎるが……別にいいか。
……
店に着いた亜優は「お腹がペコペコだよ……」と呟いて早く食べたいという意思を露にしている。
昼食は他の女子に合わせた量にしているため、全然腹が満たされていないらしい。
入って早々、亜優は好きなものを次々と取っていく。
揚げ物たちをトレーに載せて、そして如何にもクリーミーなカルボナーラパスタを豪快に空の皿に盛り付ける。
あれだけでも3人前位はあるんじゃないか……?
ついでにサラダも取っているが、野菜を食べたからと言って炭水化物の熱量が消える訳ではない。
驚くような光景かもしれないけど、もう見慣れてしまった気がする。
「いただきます!」
「いただきます」
席に着いた俺たちは早速食べ始めた。時間が早いからか全然客がいない。
いるのはスーツ姿のおっさん2人組程度である。
「チーズの味がいっぱいで……美味しい……」
うっとりした眼でパスタを眺めながら口にしている幼馴染。
そして合間に持ってきた唐揚げやらコロッケやらを食べていく。
「やっぱりいっぱい食べる方が……楽しいな。
それに美味しそうに沢山食べる女子って……魅力があるんだよね?」
「そうだな」
……最近は食べ過ぎなんじゃないかと心配になって来るレベルだが。
確かに好きなだけお腹いっぱい食べるのも良い事ではある。
でも……体型とか気にしなくていいんだろうか?
食べるのに夢中になっている幼馴染を眺めていると……丸っこい、という感想しか出てこない。
頬張っているせいで顔が膨れているのもあるが、すっかり丸顔だな。
食べてる最中も顎に付いた肉がプルプル震えているのが目立ってるし。
僅かでも俯けば二重顎が姿を現す程だ。
二の腕も脂肪が付き、柔らかくて弛んだ輪郭がしっかり見えている。
亜優が気にしてないならそれで構わない。
でも結構太ってきたのは事実だし、そろそろやんわりと指摘した方がいいのかもしれないが……
そもそも俺と食べてるだけでここまで太るものなのか?
家とか誰も見てないところで山ほど食ってるんだろうな。
今までは体型維持とかで我慢してたのかもしれない。
でも遂に食欲の歯止めが効かなくなった感じなんだろう。
何か忠告した方が良いのでは、という気持ちもある。
でも『いっぱい食べる方が良い』と言ったのは俺だから話しにくい。
まぁ、自分で痩せたいと思ったらダイエットでもするだろう。
「かき揚げうどんです!」
「はい」
おっと。そういや頼んでたな……
幼馴染の観察は後にして、先にうどんを啜るとするか。
……
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
食べ終わった俺たちは会計に向かった。
「今日もお腹いっぱい……食べちゃったな」
「それで良いんだ」
腹部を擦って満足げな亜優。
我慢せずに大量に食べれて嬉しそうだ。
でも……ちゃんと払えるんだろうな?
……と思っていたらしっかり現金は持っているらしい。
店を出て、俺たちは歩いて駅の方に向かっていた。
しかし……横を歩いていると、どれ位太ったかが見て取れる。
というかパッと見でも制服がパツンパツンなのがすぐに分かるけどな……
それによく見るとスカートも変な感じになっている。
金具がちゃんと閉まってなくて……安全ピンで留めているらしい。
ヘソ周りも今詰め込んで膨れてるだけではなく、贅肉がたっぷり付いてせり出している。
ボタンが今にも弾け飛びそうで、必死に腹を包むブラウスの生地が気の毒になってきた。
スカートも大きくなったヒップに耐えている状況で、裾から顔を出している脚はたぷたぷの駄肉でコーティング済みである。
後は……一応バストも育っているが……どうしても印象が薄くなるな……
横から見れば腹よりも突き出してるはずなのに、目線がヘソに向かうのは何故だろう。
「……恵人?」
「えっと……何でも無い」
不審そうな顔で見てるのに気づいて、慌てて視線を逸らす俺。
相手は女子だってことを忘れてはいけない。
「これからも……いっぱい食べたいな」
「おう、しっかり食べてくれ。その方が安心する」
「……ありがとう」
---
家に帰ってから俺は悩んでいた。
亜優にダイエットした方が良いと言うべきか、それとも放置しておくか。
そろそろ太り過ぎだと自覚すると思うけど……全然気にしてない気もする。
しかし言ったら傷つけてしまうかもしれない。
果たしてどうしようか……
---
2カ月位が経っただろうか。
夏休みも終わって少し経ち、やっと休み気分が抜けて来たこの頃。
俺は結局亜優に何も言い出せず、時間だけが過ぎていた。
当たり前だが、過大な食欲の赴くままに存分に食べているせいで……
休み時間、亜優と喋っているのだが……
「また……食べに行こう?」
「そうだな」
目の前にいる俺の幼馴染は、かなり太ってしまっている。
腹も大きく出てしまってるし暑苦しくて丸々した体型だ。
ここまで太ったのは俺の責任なのかもしれない。
しかし……自分でも太り過ぎだと思わないのだろうか。
本人が何とも思ってないなら俺があれこれ思い悩む必要もない、と考えることもできる。
ただ急に太ったことを他の奴から不審に思われてるだろう。
亜優の事を思えば、食べ過ぎじゃないかと言った方がいいとは思うのだが……でも中々切り出せない。
もしかすると俺は……自分が責められるのが怖いのかもしれないな。
『いっぱい食べる方が良い』と言ったのは紛れもなく俺だ。
その事を持ち出されたら一発でアウトである。
「急に俯いて……どうしたの……?」
「ごめん、ちょっと考え事してて……」
「今日の恵人は……何だか変な気がする……」
これ以上太って欲しくない……けど好きなだけ食べて欲しい……
何だか矛盾した思いが頭の中に共存している。
……そんな風に悩んでたらチャイムが鳴った。
とにかく授業を受けよう。
……
学校が終わった後、通い慣れてるカフェテリア式食堂に二人で足を運んだ。
「今日は何食べようかな……」
笑みがこぼれる幼馴染の様子を見ると、自分の好きなように食べる方が自然で良いように思えてくる。
でも食べた分また太るんだよな……
「美味しい……」
今日は大盛のラーメンと餃子、シュウマイといった中華系のメニューにしたらしい。
当然チャーハンも山盛りだ。相変わらずよく食べるな……
いっぱい食べる姿を見て……俺はふと思った。
こんな幸せなオーラを纏いながら、好きな風に食べてるのは……やっぱり良いものだと。
ダイエットとか言って体型ばかり気にするよりもずっと良いだろう。
それに……かわいい気もする。
……
「今日もいっぱい食べちゃった……」
「おう」
帰り道、亜優が出っ張った腹を触ったり……そして贅肉を掴んだりしている。
せり出した腹肉は肉厚が凄くなり、でっぷりした段々腹がしっかり出来上がっていた。
その上の胸もいよいよ巨大になってきて、歩くのに合わせて少し揺れる程だ。
目線を下に移せば、丸々と大きくなった尻と、ぶっとくなった太ももがかなり目立っている。
当然の如く、顔は完全に二重顎になってしまった。
新調したはずの制服もどんどんキツくなり、早速ピチピチになってきた。
今まではぽっちゃり体型……と百歩譲って言える感じだったけど。
本当にマズいレベルになっていると改めて思う。
ただ……本人はどう思ってるんだろうか。
贅肉を掴んでいるということは……
「はぁ……お肉が……いっぱいだなぁ」
……そりゃ気になるよな。女子なんだからスタイルが崩れるのは嫌だろう。
亜優も太ってるのが嫌なんだったら……痩せるように言った方が良いか。
しかし……いっぱい食べてる姿もかわいいのは否定できない……
「でも食べるの好きだから……」
「だったら思う存分食べた方が良い」
「……」
俺の言葉を聞いて幼馴染は黙ってしまった。
そして無言で腹肉を触り続けている。
「そうだよね……沢山食べるのが好きなんだから……
そんなこと気にしないでいい……
ありがとう……」
……暗い声の調子と、憂鬱そうな表情が気になって仕方がない。
未だにクラスメートの前ではそんなに食べてないし、性格からしてもデブキャラとして陽気に振る舞うことは難しいだろう。
もう少し、何か元気づける言葉を言いたい。
気の利いた台詞など俺には思いつかないが……
「なあ亜優」
「……どうしたの?」
「俺は好きなだけ食べる亜優の姿、良いと思うけどな。
嬉しそうに食べるのもかわいい」
「……急に変な事……言わないで」
これは失敗してしまったかもしれない。
でもこれ以上良い言葉が思いつかなかった。
「……ありがとう、恵人。
いっぱい食べる女子は……かわいいよね。
そう……かわいい!」
……あれ、ちょっと元気になって来た?
ずっと地面の方を向いていた顔も、いつの間にか前向きになっていた。
それでも二重顎状態が解消されないのが残念な感じだが……それはどうでもいい。
「だったら大丈夫!
私……ちょっと悩み過ぎだったかも」
……よく分からないが、また元気になってくれたみたいだ。
とにかく、良かった。多分。
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翌日の土曜日、俺たちはまた例の食堂に昼飯を食べに行った。
相変わらず食べまくる亜優と……隣のテーブルにいる謎の女子高生。
えっと、春佳とか言う名前だったような。最近何故かよく会う。
そして……何故か亜優と大食い勝負みたいになる。
「春佳さん、今日は……こんなに食べましたよ」
「亜優、凄いね~!
私も負けてられないな~、追加で頼まないと~」
「勝負じゃないよ!お姉ちゃん食べ過ぎだから!」
「すみません、追加で取ってきてもいいですか?」
「かしこまりましたー!取ったらまたお声掛けください!」
「ちょっと!?」
隣にいる妹の声を無視して店員に声を掛けている。
本当にいつもよく食べてるな。
この人と会った時は、亜優も何だかいつも以上に嬉しそうにしている。
きっと大食仲間といるのが心地良いのだろう。
ただし……既に向こうよりもこっちの方が太い体型になっているが……
……
食べた後、俺たちは公園で休憩していた。
「ふぅ……お腹いっぱい」
ベンチに座っている亜優はTシャツが捲れて……少し素肌が見えてしまっている。
サイズが合っていないのだろうか?ちょっとはみ出た腹肉が何ともだらしない。
それにしても……随分とデブになったな。
鏡餅のような腹が大きくせり出し、肉厚たっぷりのヘソ周りが何より目立つ。
胸もかなり育ってて、Tシャツが引き伸ばされてシワを作っている。
座っているのもあるのか尻の横幅は凄く広く、太ももは脂肪がたっぷり付いてるのが余計に強調されている。
ちなみに穿いているスカートは当たり前のようにボタンが留まっていない。
あの大食いな女子高生も……ここまでは太くなかった気がする。
まさか亜優がここまで太るなんて……と驚くしかない。
「でも……いっぱい食べるのはかわいい……」
そんな事を呟きながら微笑んでいる俺の幼馴染。
何気なく『嬉しそうに食べるのもかわいい』と言ったんだが……ここまで気に入ってもらえるとは。
まぁ……この台詞は確かに俺の本心なんだろう。
小学生の頃、一緒にポテチとかをいっぱい食べてた頃を思い出すのかもしれない。
それはともかく、思いっきり食べる亜優がかわいく見えるのも事実である。
だから……ますますダイエットしたら、とか言えなくなってきた。
そして、言う必要も無い気がしてきたな。
これからもお腹いっぱい食べて、幸せな気分になってほしい。
「そろそろ帰ろうかな……」
そう言って立ち上がり、ゆっくり歩き始める幼馴染。
近くで見ると、全身の贅肉が波打ってる気がするな……
取りあえず、今日はもう帰るか。
---
10月15日の今日、俺は亜優と食べに行くことになった。
最高気温は24度程度で、それなりに過ごしやすいレベルに落ち着いている。
俺はそう思って道中を歩いているのだが、幼馴染の方は……
「まだまだ暑いよ……何で……?」
半袖のTシャツはすでに汗びっしょりで、顔には絶え間なく汗がダラダラと流れていた。
左手には駅で買ったドーナツ8個詰め合わせの袋があり、右手は口元と袋の中を何度も行き来している。
先月よりも更に1周り太った身体は、もう全身のどこを見ても贅肉がミッチリ詰まっている状態だ。
軽装のおかげで身体のラインも把握しやすい。
もちもちした二の腕が動かすたびにタプンと揺れ、ドーナツを掴む手さえしっかりと指が太くなっている。
その甘ったるい輪状の食べ物を噛みしめる度に、たっぷり肉の付いた顎がタプタプ震えてしまう。
顔は頬がぷっくりと膨らみ、かつての繊細な姿とはかけ離れている。
目が大きいおかげでかわいい雰囲気はあるが、半年前の写真を見ても同一人物とは思えないだろう。
食べに行く所なのに菓子類を買って頬張っている亜優。
この人にとって、そんなことは何てことも無い日常なのである。
満足げに笑みを浮かべてドーナツを食べているのだから何の問題もない。
こんな量は食べた内にも入らないのだろう。
しかし、ドーナツを丁度食べ終わった時に亜優が立ち止まった。
「恵人、ちょっと休憩していい……?」
「別に構わないが」
目的地のイタリア料理店は降りた駅から7分程度歩いた場所にある。
しかしこんな距離ですら少し休みたいらしい。
確かに途中で歩道橋を上り下りしたとはいえ、大した運動量ではないはずだと思う。
俺たちは一息つくために少し先にある公園に向かった。
そして亜優はその辺にあった自販機でスポーツドリンクを買い、ゴクゴクと勢いよく飲んでいる。
全身にかいている汗、そして髪の毛から滴る雫と相まって、見かけだけは長時間運動したような雰囲気である。
改めて幼馴染の体型を観察できるチャンスがやってきた。
どれだけ太ったのかを把握しておくか。
さっきから顔とか腕は何度も見ているけど、上半身全体がかなりの肉厚となっている。
背中を見ても贅肉の段が色々と形成されているが、一番目を引くのは立派すぎる腹だろう。
ボールでも入ってるかの如く突き出しており、それでいてぷにょっと柔らかそうな雰囲気なのが女子らしい。
ただし弛み方も結構なもので、だるんと垂れつつあるのが目立っているが。
ちなみに着ているTシャツが亜優には小さいらしく、でっぷりしたヘソ周りがハッキリと出てしまう。
ここまで太ったおかげで胸は特大サイズまで育ち、歩くだけでユサユサとせわしなく揺れる。
確かに自慢できる大きさのバストだとは思うが、それでも腹の方が出てるのが悲しい。
下半身も無論贅肉が余すことなく付いている。
尻もでっかく広がってしまい、横から見ても前から見ても丸く張り出してるのがよく分かる。
無理に詰め込んだのか、はち切れんばかりにスカートの生地が張り詰めている。
そんなスカートから伸びる太ももは、たぷんたぷんの脂肪がたんまりと纏わりついていた。
肉が多すぎて両脚が密着しており、歩く時にブルブル揺れるし内側が擦れて歩きにくそうだ。
……まさかここまで太るなんて。
顔や腕、胸や腹、そして尻に脚……全身全てに駄肉が付きまくっていた。
スタイルはかなり崩れてしまっており、体重も100kg近くありそうな気がする。
この人は果たして現状をどう思っているのだろうか。
そう思って亜優に声を掛けようとしたが……顔が赤く染まっていた。
「……分かってるよ……凄く太っちゃった事ぐらい」
「亜優……」
俺にしっかりと観察された事を知っているのだろう。
幼馴染はシャツからだらしなくはみ出た贅肉を掴みながら、ため息をつく。
「はぁ……まさか私がここまで太るなんて……」
「確かに」
「お腹も凄いことになって……顔もパンパン、胸は重すぎて動きにくい……
お尻は大きすぎるし……脚も擦れて……」
どうやら亜優も自分の現状をしっかり認識しているらしい。
俺がちょっと見ただけでも分かるレベルだから、本人は把握してて当然だろう。
言っちゃ悪いが太ってることなどもう気にしてないと思っていた。
「昨日体重測ったんだけど……91kgだったんだよ?
もう100kgまで……後9kgしかないんだよね……」
91kg……流石に100kgは超えてないが、それでも近いレベルにはなっているのか。
ここまで太ったのは亜優がひたすら食べまくったのが原因だ。
しかし、食べることを後押ししたのは俺の言葉だった。
幼馴染がこんな肥満体型になったのは、間違いなく俺のせいだろう。
もしぽっちゃりしてきた程度でダイエットの必要性を持ち出していたら……
俺は『いっぱい食べる方が良い』『食べ過ぎなんて気にしなくていい』と口走ったのを責められただろう。
関係も悪化していたのかもしれない。だが確実にこんな立派なデブになることは無かった。
俺が痩せるように促すどころか、『嬉しそうに食べるのがかわいい』とか言ってしまって……
そのせいで亜優の食欲は加速してしまったし、とうとうクラスでも構わずに食べまくる程になった。
「恵人、私って……その……」
言葉を詰まらせ、どんどん声量が下がっていく。
「太り過ぎ……だよね……」
痩せてた頃を想起させる、か弱く繊細な声で呟いた。
「女子高生でこんなデブって……あはは……びっくりだよ。
好きなだけ食べまくるし……ダイエットなんて全く気にしなくて……
こんな体型に……なっちゃった……」
俺は相槌の1つさえ打つことが出来ないでいる。
自分を責めるかのような言葉を発しているが、この幼馴染が悪いのではない。
確かに……これほどまでに増量しても、まだ痩せようとしなかったのは驚きである。
ただ……それも俺が事実上『痩せないでいい』と取れる言葉を言ったせいだろう。
これ以上落ち込む姿を見たくは無いし、そしてこれ以上太らせたくも無いと思っている。
本人が気にしてないなら別に構わない。俺は今でもいっぱい食べる女子はかわいくて魅力的だと思う。
太るのが駄目だとも思わないし、痩せた姿が美しいと思っている訳でもないが……悩んでるなら話は別だ。
「亜優は悪くない、俺のせいだ」
「……恵人?」
きょとんとした目で見つめて来た。
「ハンバーガー屋で『もっと食べたいんだろ?』とか、『いっぱい食べる方が良い』とか言って……
どんどん食べるように仕向けたのは俺だ」
「でも……恵人が無理やり食べさせてる訳じゃないよ?」
「それはそうだ。だけど、俺が誘導した事実は変わらない」
「そんな事……無いと思うけど……
今日だって……ドーナツ買う時に『本気かよ!?』って言ってたよね……?
私が太ったのは……私の話だから、気にしないで……」
「……ありがとう」
亜優の名前には『優しい』という字が入っているが、実際そんな性格かもしれない。
俺にわざわざ気を遣ってくれているのだろうか。
俺のせいにしてくれていいのにな。
「それより……恵人。
私って……太り過ぎ?ダイエット……した方が良い?」
「……」
中々に答えがたい問いかけである。
幼馴染を傷つけたくはないし、かといって今更『デブだよな』って感じのことも言いにくい。
だが……もう腹を括るしかないな。
「ああ、ダイエットした方が良い。太り過ぎだと思う」
夏休み前には言えなかった言葉が、すんなりと俺の口を通って出て来た。
「……やっぱりそうだよね」
しゅんとした、悲愴な様相の亜優が俺の眼に映っている。
どうやってこの状況を取り繕えばいいのだろうか。
「……だから、痩せようと思ってて……
明日から……ダイエットするつもり。
出掛ける前から思ってたよ」
幼馴染の表情が少し柔らかくなったのを見て、なんだか安心した。
「……さっき、『いっぱい食べる方が良い』って誘導したとか……言ってたよね?
だったら……今度は痩せるように仕向けてよ」
成程なぁ。俺が時折言った言葉が亜優に影響を与えるんだったら、逆に痩せさせるのも可能かもしれない。
何と言えばいいのだろう。『太り過ぎじゃないか?』とか『それ食べたらまた脂肪が増えるぞ』って感じか?
「分かった。亜優が痩せるように頑張ってみる。
……だったら、今日食べに行くのも止めた方が」
「えっ……」
「どうせだったら今すぐにダイエットを始めた方が良いと思うけど」
俺の提案に何故か驚いた顔をする幼馴染。
「……分かった。今日からしっかりダイエットしなきゃ。
早速ありがとう……」
「おう、言うぐらいお安い御用だ」
結局ピザを食べることも無く、そのまま俺たちは家に帰った。
(はぁ……何とかなった……)
自室に戻った後も俺は冷汗をかいている。
亜優が太り続ける事にも終止符を打てたし、仲違いすることも避けられた。
思えばこちらが勝手に考え過ぎていただけなのかもしれない。
しかし長らくの懸念事項が解消されたことで気分が晴れた。
明日からどんな言葉を掛けるべきか考えるか……
---
あれから1カ月、俺は度々『食べ過ぎには気を付けないと』、『その一口が太る元だぞ』みたいに言っていた。
その度に亜優はハッとした顔で『恵人の言う通りだね』等と返事をする。
その成果が……
「98kg……だったよ」
「ちょっと待て、先月より7kg増えてるじゃないか」
「で、でも……お腹いっぱい食べた後に測ったし、服も着てたから……実質95kg位で」
「そう言う問題じゃないと思うけど……」
何故だ。俺は太るように促してはいないはずだが。
太る方向には凄まじい効果があったのに、痩せる方向には何の力も無い。
というか太るのが全然止まっていないんだが。
学校でお菓子を食べてるのを見かけたら取り上げたりしている。
しかし家で何をしてるのかは分からない。
きっと恐ろしい量を食べまくっているのだろう。
制服姿の亜優は、まあ凄い状態である。
顔は真ん丸く、ふっくらした頬と顎肉の波打つ様子が特徴的だ。
こんもりとしたメロンのような胸が、制服を今にも突き破りそうになっている。
ボタンの糸が解れて限界ギリギリであり、ブラウスがパツンパツンだ。
だが、その下の腹はスイカでも入れたかのような立派な姿(?)に育っていた。
ボタンさえ留まっておらず、ボヨンとせり出したヘソ周りが見えてしまう。
尻は大き過ぎるあまり、理科室にある丸椅子から盛大にはみ出るほどだ。
無論スカートも腹や尻の贅肉のせいで破けそうで、ファスナーを閉めるのも完全に諦めたらしい。
太ももは脂肪でとてつもなく太くなり、二―ハイソックスが食い込んで凄く締め付けられている。
「そろそろ買い替えた方が」
「痩せるから……大丈夫!ダイエット……してるから!」
自信ありげに笑う亜優。……全然痩せる気配はないが。
「ダイエット中ならこのポテチは食べなくていいよな」
そう言って幼馴染の手元にあるビッグなポテチをさっと取り上げる。
「あっ、それは困るなぁ……」
しかし目にも止まらぬ速さで取り返された。
何でこんな時だけ素早いんだよ……
「このままだと100kg超えるぞ、だから食べない方がいい」
ここで諦めてはいけない。間髪入れずに痩せるように仕向ける。
「……そうだった。確かに恵人の言うとおりだよ」
我に返ったような表情でそう言った。
そして、返事をした後で食べるのをピタリと止め……
「美味しい……もっと食べたいなぁ……」
止めることもなく、何食わぬ顔で食いまくる。
……俺の痩せる言葉は、いつになったら効果を発揮するんだろう?
それとも何か言い方が間違っているのだろうか?
……まあいいか。亜優も楽しそうに食べてるし。
いっぱい食べる幼馴染の姿はやっぱりかわいい。
「美味しそうに食べるよなぁ」
「何か言った?」
……うっかり心の声を呟いてしまった。
[END]