ゼロシェルター。
300年前、この世界が変わるきっかけである「ファーストパンデミック」から100年後に出来た一番最初のシェルター。
当時、一人目のエディがやっと成功したと同時に進められた計画だったそうだ。もちろんエディの役割は「餌」。その餌を利用し、ゾンビ達を別の場所におびき寄せ、その間に現地入りした人々が当時最先端の技術で作り上げた。
その規模は今の第3シェルターの数倍。海上人口島での生活に限界を感じていた人類達にとって、まさに楽園な世界であったそうだ。
「どうして滅んだの?」
アマイという少女は純真な好奇心の目でこちらに質問をする。
今の話しは学校に行っていれば当然得る知識であるし、この世界で生きている人はよっぽどの事が無ければ皆知っているはずだ。
「シッ! アマイちゃんまだ話しの途中だよ! 静かにしてないとダメなんだよ!」
ミケという少女も同じだ。
普通の生活をしていれば知っている歴史をこの子達は知らない。
正直、こんな子達は初めて見る。学校の成績が一番下の人でもこの先の展開は分かるはず。人類の敗北の歴史。
「うん……。えっとね、簡単に言うとゾンビと呼ばれる生物。スローターやファスター達の力を甘く見ていたの」
結果は散々だった。
ゼロシェルターは当時完璧と言える防護壁を築いていたはずだが、外に出なくなった人類を捕食出来ないゾンビ達は飢餓に狂い、タングステンを超える硬度の壁を破壊し中に侵入したらしい。
まさかここまでの生物だと認識をしていなかった人類は、その日からじっくりとゾンビ達に捕食されることとなる。
移住した人類の数は約1億人。丁度国一つより多い数。それが、殆ど食い尽くされたそうだ。
「生きて帰った人の数は……あくまで公式の数だけど、二人だったらしいの。しかも親子だったんだって」
「へ!? 二人!?」
「ふぅぇぇぇぇ……。ゾンビ強い」
「そうなの、ゾンビって言うのは半端ない生物なんだよ」
この時、私達の性別の対極にあった「男性」という存在は完全に滅んだそうだ。
壊滅的な敗北を味わった人類だが、諦める訳にはいかない。
それからシェルターよりもエディに力を入れた人類は、餌の力を使いながら次々と新しいシェルターを建設していく。
そしていくつかのシェルターを建設した後、やっとゾンビの力に抵抗出来る物質を発見した。より硬度の高い物質を使用した壁はいくらゾンビと言えど傷を付ける事は出来なかったのだ。
「ねぇねぇ、それなら餌は必要無いんじゃない? だってもうゾンビに怖がらなくてもいいんだよね?」
「事はそう上手くいかなかったの。だって生きていく為にはご飯を食べなきゃいけないでしょ?」
人口食料だけでは食い扶持を確保出来なかったし、それを製造する燃料も、エディを作るラークも足りなかった。それに、男性が滅んだから子孫を残す事も出来ない。
だから、何とかして外に出ないといけなかったのだ。
「ゾンビはスローターとファスター、ハイファスターと振り分けられてるでしょ? でもそれだけじゃないの。その中にも色々な種類のゾンビがいてね。中には鳥みたいに翼が生えている個体もいたの。だから不用意に外に出る事が出来なかった」
そこで頻繁に活用されたのが「エディ」だ。
エディは餌にもなる。戦闘用に訓練すれば戦える。
人類には生贄が必要だった。
「っと、これがゼロシェルターの概要だね。つまり、そのゼロシェルターはとっくに滅んで何も無いって訳! それなのに行かなきゃいけないの?」
二人は押し黙ってしまった。
当然だ。生還率0%の土地に行きたい馬鹿はこの世のどこにもいない。
「でも……だってブラッド様がーー」
ミケがそう言いかけた瞬間、館内にけたたましいサイレン音が鳴り響いた。
私がすかさずアンコの手を握ると、アンコも瞬時に理解したのか咄嗟に視線を周囲に向ける。
「な、なに!?」
「パイちゃん落ち着いて……これ、聞いた事無い? 昔授業でさ」
「う……うん。確か緊急速報……だっけ? へ? 訓練?」
咄嗟にアンコは私の両肩を掴み、無理やり視線を合わせてきた。
「パイちゃん、携帯端末持ってる?」
「うん、持ってるっ」
「充電は?」
「えっと……90%」
「了解。じゃあまずメロさんに電話して。その間私は隣の電気屋さんに行って色々調達してくる」
「へ? ちょちょちょっと待ってよ! 急にそんないきなりさっ!」
「あーもー! いいからつべこべ言わずやるの!」
アンコのあまりの剣幕に押された私は携帯端末の画面をいくつか押し、お姉ちゃんと書かれた部分を選択し通話音を鳴らせる。
「んもー、出てよー……冗談だと言ってよーー!」
ーーー
ーーー
入社1日目、朝礼。
眼鏡2号
2024-01-18 05:20:11 +0000 UTC眼鏡2号
2024-01-18 05:19:27 +0000 UTCGuySmut
2024-01-16 01:07:27 +0000 UTCBDS
2024-01-15 20:04:41 +0000 UTC