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ホゾヒカル
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スター・ネーブル・ストーリー~フェイトの臍の秘密~その6

「………」


とある宇宙船の座席に着席しているフェイト。


彼の傍らには寄り添うように一人の女性が立っていた。


金髪が麗しい長身の彼女が手にしているのはペンほどの大きさの小型カメラ。


その先端は、鳩尾辺りまでのシャツのボタンが外され露となったフェイトの臍へと向けられていた。


「………特に深い傷は無し、侵入していた原生生物も全て取り除かれているようですね」


「う、うぅ…」



そのカメラが捉えた映像は、彼女の目の前に投射されたスクリーンにデカデカと映し出されている。


つまりそれはフェイトにとって最も恥ずかしい『ヘソ』を大アップで間近で見られているも同然であった。


「…それにしても図分と"ゴマ"が溜まっていますね。特に真ん中の穴の中の奥にたっぷり詰まっているみたいです」


「あ、あの…それ以上、僕のおヘソを…」


「そうだぜミラージュ。あんまりソイツのヘソ見つめてたら、それだけでイッちまいかねないぜ?」


「!?」


扉が開きフェイト達のいる部屋へ入り込んでくる一人の大男。


それは先のバンガード3番星でノートンによって窮地に追い込まれたフェイトを間一髪で救った男…クリフであった。


「ソイツ、自分の命がヤバい時でもヘソオナニーに耽っちまうような奴だからな」


「お、おい…!」


顔を真っ赤にして思わず声を上げるフェイト。


「もう、クリフったら…それじゃおヘソの診断はこれで終わりです、フェイトさん」


ペン型カメラを収めて立ち上がるミラージュ。


そんな彼女のすぐ横まで歩み寄るクリフ。


そしてフェイトには聞こえない声で囁く。


(ソイツのヘソのデータ…アイツにすぐ送っておけよ。アイツの臍、拷問されている時、間違いなく光ってやがった)


(分かりました)


並び立つ二人の長身の男女、クリフとミラージュ。


フェイトの前に突然現れたこの2人は自分達がクラウストロ人であり、反銀河連邦組織『クォーク』に属していると語った。


ノートン一味を叩きのめし現地の幼い兄妹を救い出した後、2人の乗艦『イーグル号』へと半ば強引に乗り込まされたフェイト。


彼らはヴァンガード3番星を後にし、銀河の海の中を突き進んでいた。


「…それで僕を一体どうするつもりなんだ?」


シャツのボタンをいそいそと閉じながら不機嫌そうに聞くフェイト。


「だから言ったろ?俺たちのリーダーがお前に用があるから合流地点まで連れて行くのさ」


にべもなく答えるクリフ。


「リーダー…?」


自分を窮地で救ってくれたとはいえ、未だ彼らのことが信用ならなかったフェイト。


彼らも保養惑星ハイダで襲ってきた謎の異星人の如く、自分の『ヘソ』を狙っている可能性を拭いきれなかった。


「…まあ、たった今さっき出会ったばかりだから信用ならねぇかもしれねぇが…ここだけの話、俺達のリーダーもお前みたいに『変な形』した臍の持ち主だぜ」


「…えッ!?」


「少なくともリーダーも俺達もお前の臍を無理矢理どうのこうのするつもりはねぇ。まあ、異常は無いか入念に確認はさせてもらったけどよ。スライムがまだ奥に潜んでいてまたいきなり耽り出して貰っても困るからな」


「…!」


またも顔を真っ赤にしながら、シャツの上からギュッとヘソを手で押さえるフェイト。


「もう、だから彼のおヘソの事を弄らないように!クリフ!」


窘めるミラージュであったが、女性の口から自分の臍について言及されていることにますます羞恥心を覚えるフェイト。


「そ、それでそのリーダーにはいつ会えるんだよ!?」


気持ちを切り替えようとして思わず大声で聞いてしまうフェイト。


「あぁ、あと3時間くらいで…」


ピーピーピー


「!?」


突如会話を遮るように鳴る警告音。


「これは…!」


咄嗟に端末を取り出し現状を確認するミラージュ。


すぐさまその表情が険しくなる。


「…敵です」


「敵?」


「えぇ、40万キロメートル前方に二隻のバンデーン戦闘艦を探知した模様です」


「ッ!?」




それから事態は一気に急転した。


迫るバンデーン艦から逃れんと最大船速で離脱を図るイーグル号。


相手艦から放たれた量子魚雷を躱しつつ何とか重力ワープを決行し敵を振り切ることに成功するも、こちら側も無傷では済まず、通常エンジン、重力ワープエンジン共に損傷し航行不能に陥ってしまう。


クリフの咄嗟の機転により、非常用の大気圏突入システムを作動させ至近の惑星『エリクール2号星』への緊急着陸を試みる一行。


もはや着陸地点を調整することも不可能なまま、大気圏に突入しそのまま大地に降下していくイーグル号。


やがて艦はとある大きな街へと不時着した…




「こんなところに落ちちゃって…どうするんだよ」


「無事に降りられただけマシってもんだろ?」


「まったく…」


「…駄目ですね。もうこの艦で移動することは不可能です」


コンソールを操作していたミラージュが諦め顔で呟く


「まあ、アイツに迎えに来てもらうしかねぇな。とりあえず外に出てみるか」


「えっ!?」


驚くフェイト。


「ちょ、ちょっと待てよ。こんな街中でのこのこ外に出て行ったら…」


「それしか選択肢はねぇだろが。迎えが来るにしろ、こんな状態でずっと籠ってるわけにもいかねぇぜ」


「それは…そうかもしれないけど…」


「まあ、いきなり殺されるってことはねぇぜ。…俺の勘だけどよ」


「………」


「ミラージュは俺達とタイミングをずらしてここから脱出してくれ。出来りゃあアイツと連絡とって俺たちの居場所だけでも知らせてくれりゃいいんだが…」


「やれるだけやってみます」


頷くミラージュ。


「…それじゃ俺達は行くとすっか」


「………」


外への出口であるブリッジに向かうクリフ。


その後ろを渋々付いていくフェイト。


「…二人とも、気を付けて」





エアロックが開き、船外へと出る2人。


その瞬間、全身を冷気が覆った。


「さ、寒い…!」


思わず自分の今の格好を後悔するフェイト。


先のヴァンガード3番星とうって変わって、ノースリーブシャツに短パン姿というハイダ以来着用している露出度の高い格好に堪える寒さであった。


寒風がシャツのボタンの合間にも侵入し、臍奥にまでその冷気が入り込んできているような感触を覚える。


集まってきた町の住民たちの注目を一身に集めながら、両手を首の後ろに回して敵意が無いことを示しつつゆっくりとタラップを降りる2人。


「ど、どうするんだよ…これから…」


「さあな」


「『さあな』…って、ッ!?」


地面に足が着いた瞬間、2人の周囲を地球の中世期のような甲冑姿の人間が取り囲む。


「………」


「………、あ、あの…僕たちは…」


甲冑兵士たちの睨むような視線に耐えかね、フェイトが口を開いた瞬間であった。


突如背後にいた兵士の一人がフェイトの体を羽交い締めに捕らえた。


「うぇッ!?」


不意の拘束にフェイトが思わず体を動かそうとしたとした矢先、


ズボォッ!!


「うげぇあッッッ!!???」


両腕を拘束され無防備となったその腹に、槍の穂先の反対側である石突の先端が深くめり込む。


「おグゥエ"エ"エ"エ"ェェェ………」


完全な不意打ち…


偶然にもシャツ越しに彼の最大の弱点、"臍"に痛烈な一撃を撃ち込まれてしまったフェイト。


「おい、フェイト…!!」


クリフが自身の名を呼ぶ声を遠くに聞きながら、彼の意識はそこで途絶えた。


【続】

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