XaiJu
茶

fanbox


いつでも戻れると思うと(3)

「これ、すごい……男の子ってこんな風に感じるの……」  俺が手を動かすたびに羽留奈の息が荒くなっていく。手には先端から滴る「ぬるぬる」が溢れんばかりになり、こすり上げる手の動きを一層滑らかにしていく。  羽留奈が『男』を初体験しようとしている様子を最初は面白がっていた俺だけど、次第に、別の気持ちも混じってきた。  ――『女』から見ると、『男』って怖い。  俺たちは同い年で、極端な身長差があるわけでもない。でも、『聖仁』は『羽留奈』より大きくて力強い。  その象徴が、今、俺の手の中にある存在だ。  俺が何度も羽留奈の中に入れたもの。でも、こんな大きなものが今の俺の中に入るなんて思えない。そんなことされたら壊れちゃう。  本来は俺のもので、手で触れば触られた心地好さも伝わるはずのそれは、今は羽留奈のもの。初めて経験する快感に動揺している羽留奈と連動し、時折俺には予想外の反応を見せて手の中でびくんびくんと脈打っている。  自分のものである時も思い通りにはならないそれは、今、他人のものとして、いつ暴発するかわからない恐怖を感じさせた。羽留奈がいきなりそんなことするわけないと、頭ではわかっているのに。  俺は今の羽留奈に怯えてる。雄に、雌として怯えてる。  その怯えを解消するのに手っ取り早い手段を俺は知っていて、急いで実行することにした。 「き、聖仁……こんなに速く、するの……?」  俺は羽留奈の剛直しているものを一心不乱にこすり上げた。 「な、何か出ちゃう、出ちゃうっ!!」  出させるために、俺はラストスパートに入った。 「や、あ、あああーっ!!」  握った手の中のアレの中を、猛烈な勢いで精液が通過していった。羽留奈の肩越しに覗けば、あの粘度の高い液体が水鉄砲のように噴き出していく。  こうして羽留奈の初射精は終わった。  羽留奈が俺に振り返る。脱力して呆けた表情。  その姿は、風呂に入った直後のしょげている様子とよく似ていて、俺の心の中からは怯えが急速に薄れていった。  と、羽留奈は恥ずかしそうに微笑む。 「気持ち良かった……ありがと、聖仁」 「う、うん」 「お風呂入ろ。あ、その前にちゃんと洗わないとだね」  今の射精で何か吹っ切れたのか、羽留奈は俺の手も借りずに自分の股間に残っていた精液を洗い落とすと、俺の手を取り浴槽へ導いた。 *  浴槽で向かい合う。お風呂は暖かくて、しばらく裸であれこれやっていた身には心地好い。 「男のオナニーって気持ち良いね」  羽留奈もすっきりした顔をしている。  でも俺は、まとめた長い髪が重たくてうつむきがちになる。  いや、それは言い訳で。  同意があってとは言え、羽留奈に男の感覚を教えてしまったこと。それとは別に、女として男の羽留奈に怯えてしまったことと、その怯えに突き動かされて羽留奈に身勝手な真似をしてしまったこと。  どれも、ちょっとした着せ替え感覚で入れ替わりを楽しんでいた今までとは大きく違っていて。  俺はどうなってしまったのか、俺たちの関係はどうなってしまうのか。  肉体の感じている快適さとは裏腹に、不安が心にのしかかる。  と、羽留奈が口を開いた。 「ごめんね、聖仁の気持ち考えないで。……怖くなっちゃったんだよね?」 「わかったの?」 「そりゃわかるよ。あたしも、初めて聖仁のこれが大きくなったのを見た時は、怖かったもん」  羽留奈にわかってもらえたことがうれしくて、でも、恥ずかしくなる。  だって、それって、今の俺がまるで…… 「今は、女の子でしょ」  俺の心の動きを読んだように、羽留奈が笑った。 「……そうだね」  肯くと、さっきまでよりも少し気持ちが楽になった気がした。  今の俺は『女の子』。だから『男の子』をちょっと怖く感じてもしかたない。  そして、そう考えると、別の方向にも気持ちが動く。 「羽留奈……」 「何?」 「そっち行って、いい?」  浴槽の中で俺は距離を詰めると、羽留奈の返事を待たず抱きついた。  男の子の身体って、たくましい。女の子の細くて柔らかい身体と全然違う。  本来とは反対の立場で、女と男の違いを感じる。  そして羽留奈も逆の立場からそう感じているだろうこと、その感触を気持ちよく味わっているだろうことを、背中に回された腕に籠もる力や平静にしようとして抑えきれてない息遣いから読み取れた。  男の子なら好きな女の子を抱きしめたいと思うはず。その推量は正しかった。  さっき羽留奈が俺の気持ちを推測してくれたように。  力強い相手に包まれる安心感。守られているような安らぎ。  無関係な男に抱きしめられたら絶対にこうは感じない。悲鳴を上げてすぐに逃げる。  抱きしめてくれるのが羽留奈だから、『聖仁』の身体だから、こんなにも気持ちいいんだ。  もっとぴったりくっついて、羽留奈の頬に頬ずりする。胸と胸の間で、俺のおっぱいが柔らかく潰れる。 「きよ、ひこ……」  下の方で、硬いものが触れるのを感じる。羽留奈がもう元気を取り戻していた。 「いいの?」 「羽留奈こそ、いいの?」 「だって、あたし、我慢できないよ……」  俺を気遣うような、自分を恥じるような、せつなそうな声。それとは裏腹にギンギンに硬く大きくなっている肉棒。それはどっちも『男』のリアル。精神と性欲が必ず完全一致するほど、男だって単純じゃない。  可愛い女の子だった羽留奈が、今は男の性欲に振り回されている。それは、可哀想で、でも可笑しくて、羽留奈が俺の感覚を今まさに知ってくれてることが嬉しくもあって。  そんな羽留奈を内に宿した『聖仁』は、とても可愛かった。  俺は羽留奈に顔を近づけると、目をつむってキスをした。入れ替わった状態では初めてのキス。  驚いたように息をのんだ羽留奈は、数秒固まった後、自分から舌を入れてきた。受け入れて、舌を絡める。  俺もそうだったけど、ほんと、『男の子』ってせっかちなんだから。


More Creators