「で……正直、どうや? 我慢できそうか?」 「……ヤバい……です」 「せやろな、見てたら分かるもん」 青野先輩はグラウンドの方に少し顔を出して、 周りを確認したあと、こっそりと耳打ちするように言う。 「……じゃあ、今回はここでしてええで」 「え!?」 ここでしていい……とは。 「いや、え……?」 この体育倉庫の裏のことを言っているのだろうか? こんなところで、まさか立ちションを……? みんなグラウンドで練習中なのに……? 「我慢できへんやろ。しゃーないやん」 「で、でも……」 「こんなとこ誰も見にこーへんから大丈夫やって。な」 確かに、体育倉庫はみんな使用するが、誰もその裏なんて覗きにこないだろう。 しかし……。 「練習中に倉庫裏で立ちションしたなんて、もし先輩たちにバレたら……」 想像するのもゾッとする。何を言われるか分かったもんじゃない。 僕はこれから3年間、練習中に倉庫裏で立ちションした奴として認識され続けるだろう。 どんな扱いを受けるか、たまったものではない。 「まぁ……バレたら大変やろうけど。そん時は、一蓮托生やから」 青野先輩が体育倉庫の壁へと体を向け、自分の股間に手を伸ばす。 先輩はそのままチャックを下ろし、大きなモノを引っ張り出した。 「え……!」 「いや、まぁ、俺も我慢しとったし……」 照れくさそうに先輩は言う。 練習後のシャワーで先輩のモノはいつも見ているので、サイズはよく知っている。 先輩は部内でもかなり大きい方で、 タヌ森主将なんかにはいつも嫌味を言われるくらいだ。 しかし、今日はなぜか一段と大きく見えた。 ユニフォームから引っ張り出したからだろうか、それとも。 「言うとくけどこれ、ほんまに秘密やからな」 そう言った次の瞬間、青野先輩のモノから勢いよく小便が噴き出す。 「あ……!」 体育倉庫の壁が、どんどん先輩の小便で濡れていく。 ぴちゃぴちゃと小さく水の音が跳ね、 壁を伝った小便が地面に小さな水溜まりを作っていく。 「ほ、ほんとにしちゃった……」 「ほれ、お前もはよせえ」 青野先輩が、くいっと手で合図する。 「……う……でも……」 「今からみんなに言うてトイレ行くのと、 ここで俺と一緒に出してまうの、どっちがいい?」 「…………!」 そんなことを言われてしまうと、もう僕の中に選択の余地などなかった。 ここで、今、してしまおう。 そう思った瞬間にはもう、体が勝手に放尿の準備に入っていた。 僕は焦る。 漏れないうちに急いでチャックを下ろし、自分のモノを露出する。 と同時に、僕の小便は遠慮なく決壊した。 噴出された小便が、勢いよく壁に叩きつけられる。 「ああ…………」 ずっと我慢していた小便の放出。とてつもない安堵感と爽快感。 僕は思わず息を漏らしていた。 「よっぽど我慢しとったんやなぁ」 青野先輩が笑いかけ、僕の内に急に恥ずかしさが込み上げてきた。 部活中に先輩の前で立ちションしてるなんて……。 冷静に考えると、僕は今、到底ありえないことをしている。 「お互い様やからな」 先輩は僕の心を見透かしたようにフォローしてくれる。 僕らの放出した尿は体育倉庫の壁をどんどん濡らしていき、 足元の水溜まりも比例して大きくなっていく。 溜め込んだふたり分の小便はもうずいぶんと放出され続け、 この狭い空間にはどちらのものとも分からない臭気が立ちこめていた。 「…………」 なかなか終わらない小便に、僕は少し焦っていた。 僕らはあくまで、暴投したボールを追って探しにきた体でここにいる。 なので、他の部員に怪しまれないように手早く済ませなければならない。 もしここで何をしているのか訝しまれれば、誰かが確認に来てしまうかもしれない。 「お…………」 先に終わったのは、意外にも僕の方だった。 青野先輩の方が早く放出し始めたはずなのに。 「先輩……もしかして、かなり我慢してました……?」 「う、う……む……」 青野先輩はばつが悪そうにうつむき、壁に当たって飛び散る小便を見ている。 なんだ、先輩だって我慢していたんだ。そんなことおくびにも出さなかったのに。 それでも、僕だけじゃなかったんだ。 そのことが僕を改めて安堵させる。 僕が放出を終えてしばらく後、青野先輩も事を終える。 ぶるぶると大きなモノを振り、ぼたぼたと落ちる雫を払う。 足元の小便溜まりは僕のと先輩のが混じり合い、大きな勢力を作っている。 「……凄いことになっちゃいましたね」 「そうやな……」 みんなが使う体育倉庫の、すぐ裏。 そこを僕ら二人の小便がびちゃびちゃに濡らしているのを見て、 急に罪悪感が込み上げてくる。 「ほ、ほんまに内緒やからなこれ……」 「わ、分かってます!絶対誰にも言いません!」 「はよ雨降ってくれるとええねんけど……」 「ずっと晴れだったら壁に跡とか残っちゃいそうですもんね……」 僕と青野先輩は顔を見つめ合わせ、お互いの約束を無言で誓い合う。 「まぁ、そろそろ戻ろか。ボールはそこにあるし」 「あ……ほんとだ」 尿意に焦り全く気付かなかったが、青野先輩の暴投したボールはすぐそばに落ちていた。 それどころか、小便溜まりから流れた枝の先端が、ボールに届いてしまっている。 「ばっちい……真柴のションベンかかってもうた」 「せ、先輩のもでしょ!」 ボールを拾って小便を振り払う僕を見て、青野先輩は笑う。 「あんな、真柴。いま部内に、トイレに行きづらい空気があるんは俺もよう分かっとる。 それは俺も含めて、そういう空気を作っとる上級生全員の責任や」 「…………」 「せやから……これからも、我慢できんかったら俺に言え。 今日みたいに、まぁ、何とかしたるから」 「……先輩……」 「言いづらかったら、なんか合図せえ。どんな合図でも俺が気付いたる。 ……分かったか?」 「……はい!」 「よしっ。 ……まぁそん代わり、俺がやばい時も頼むわな」 そう言って、小便したまま洗っていない手で、先輩は僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。 今まで、トイレに行けなくて悩んでいるのは俺一人だと思っていた。 恥ずかしくてなかなか言い出せなかった。 でも、先輩だって我慢していたんだ。 それが分かっただけで僕はすごく勇気をもらえた。 これからは、一人じゃないんだ。 そう思うと、練習も頑張れる気がした。
Oodaru@KAIJYU-09
2018-10-23 23:57:26 +0000 UTCノデ
2018-10-23 15:03:15 +0000 UTC