少し番外的な内容です。ネーム、下描き、ペン入れ、仕上げで何度もセリフを変えたりするので、一度セリフの考え方もまとめておこうと思います。まずは気を付けてることを三つほど上げておきます。
・自然さ
・簡潔さ
・リズム
こんなところでしょうか。自然さは「過度に説明的なセリフを避けること」ですね。比較的よく見かける表現として「○○って、もしかして××したあの?」的な、初めて出てきた単語や事象に対して説明してくれるセリフはよく見かけると思います。
例えば「チンコ狩り」という夜に男性が襲われてチンコを切断される事件が多発してたとします。そして夜帰宅する友人に「チンコ狩りに気をつけろよ」と注意を呼び掛けるシーンがあったとした時、「チンコ狩りって、夜に襲われてちんこが切断される事件だろ?気をつけて帰るよ」と事件の説明を加えるより、「本当変な奴もいるもんだよなぁ。ちんこ切り取って何が楽しいんだろうな?」と事件に対しての感想を言わせながら説明した方がやりとりとして自然だと思います……多分例えが悪すぎてピンと来ていないと思いますがとりあえずそんな感じです!
簡潔さは「難しい言葉は使わず、わかりやすくする事」です。難解な言葉や言い回しはかっこいいですけどあまり使わないですね。ただ簡単な言葉を使いすぎて文字数が増える場合は簡潔とは言えないので、塩梅ですね。
そして最後のリズムは「口に出して言ったり、読んだときの心地よさ」です。「そうですね わかりやすいのは 575」こんな感じです。どうですか?いいでしょう?完全に584ですが……。ただまぁリズムは良くないですか?そんな感じです。これは何度も読み返して自分が読んで気持ちのいいリズムをを探していく感じです。
それでは今回は大きく変更があった1ページ目を参考に解説していきます。
冒頭のセリフが特に変わってますね。冒頭セリフはなかなかしっくりこなくて大分悩んだところです。さっそくなぜこう変更したのか見ていきましょう。
まずはネーム段階でのセリフです。
(まず…結構長引いたな)
(親今日夜勤だろ…)
(すぐ飯の準備しねーと 腹すかせてるよな…あいつ)
(いや一人で気にせずなんかやってそうだな…)
「ただいまー」
一人で帰宅中ってだらだらこんな事考えてませんか?「帰ったら何しよー」とか「ごはん何かなー」とかそんなイメージです。ただこのままだとキャラや作者はすべての情報を把握してるのでわかりますが、完全に初めてみる読者さんにはわかりにくいセリフが並んでいます。「そもそも何が長引いたんだ?」「一人で気にせずなんかやってそうってなんだよ」この辺はもう少し説明的になってもいいでしょう。なので次はこうなりました。
(バイト…結構長引いたな…)
(親夜勤だろ…)
(すぐ飯の準備しねーと 腹すかせてるよな…あいつ)
(いやあんまり気にしてなさそうだな……)
「ただいまー」
「まず…」を「バイト」に変えました。文字数もあんまり変わらず説明もわかりやすくなりました。次に微妙に「今日」という単語を削ってます。結構コマが詰まっている場所なので極力フキダシを小さくしたくて削れるところを削っている感じです。ただ今読み返すと「親夜勤だろ」より「親今日夜勤だろ」の方がリズム的には良かったように思います。なんかこう「ん、んんー」より 「ん、ん、んんーー」の方が心地よくないですか?さすがに抽象的すぎますね…。そして最後を「いやあんまり気にしてなさそうだな……」という風に変えました。前のセリフを受けて先ほどより「そういうのに無頓着なのかな?」とわかりやすくなっていると思います。下描きの時点では、これでいいかなと思ったのですが、ペン入れの段階でまたセリフを変更しました。それは後々のページに理由があります。
問題は次の2ページ目ですね。唐突に風呂の話題が出てきます。確かに物語の都合上風呂に入らないといけないのですが、実は1ページ目で風呂の話題を一切してないのに、この兄貴唐突に風呂の用意もすると言い出し、めっちゃ風呂を優先したがっているのがどうしても気になりました。さすがに都合上とはいえ、ご都合がすぎるなと思い次のように変更しました。
(バイト…結構長引いたな)
(親夜勤だろ…)
(ってことはあいつ一人か すぐ飯の準備しねーと)
(あと風呂もか…先に一休みしてぇ)
「ただいまー」
妹の性格については後々でも説明ができるので、兄貴の気分を表すセリフに変更しました。この一言のおかげで「バイトが長引いて結構疲れてる。帰宅後の家事の確認をしたらだるくなって一旦一休みしたくなった。」という感じが出せたと思います。このおかげで次のページの唐突な風呂の話題が、「疲れながら家事をこなそうとした所に、妹が風呂を洗ってくれていたサプライズがあり、ホッとしてつい一休みしたくなった」という意味合いに変わったと思います。そしてさらに5ページ目の冒頭が、疲れ帰宅して家事をこなしてやっと完全に落ち着くことができた意味合いも強くなったと思います。
今回の場合は特にですが、セリフ一つで後々の展開の意味合いが大きく変わることがあるので、ぎりぎりまで調整しないと気が済まない部分です。特に今回は「キャラ達の生活を覗いている」感じを出したいので、できる限り自然なやりとりの中で情報を読み取ってもらいたいというのがありました。
他にも妹との「ううん…本」からのやり取りがあります。まぁなんとなく「日常的に兄貴の本を借りて読んでる」ことはわかると思います。妹の性格もありますが、「本貸して」というよりは「本」の一言で伝わる方が日常的なやり取りなんだって感じがありますよね。そしてそれに対していつも読んでるんだから勝手に読めと反応しようとした所で、露骨な「オチ」への振りのセリフを言わせています。
セリフに関してはこんな感じです。ちょっと説明が難しかったのでわかりにくくなったかもしれません。それくらい言葉って難しいですよ…本当。文章書ける人はすごいですよねぇ。そんな感じで次回は「ペン入れ」編に入ります。そろそろ終盤ですね。もう本編完成してるので、ちょっとやる気が削がれてきていますが応援よろしくお願いします!