すでに街の明かりも落ちた深夜。
薄暗い路地裏をリリは周囲を警戒しながら歩を進めていく。
ここ最近毎晩のように起きている不可解な事件の真相を探るためである。
物が盗まれたり壊されたり、人が襲わる事案も発生している。被害者は全員外傷こそなかったが気を失った状態で発見されており、誰に襲われたのかは記憶が曖昧で覚えていないという。
犯人は分かっていないが事件が決まって深夜に発生していることから、リリたちの部隊はこうして夜の見回りを行っているのである。
(女の私がひとりで歩いていれば犯人が接触してくるかと思ったけど…当てが外れたかな…)
すでに見回りを始めて数日が経過しているが、未だに犯人が見つかる気配はない。
そこでリリは自ら囮となって犯人を誘い出すため、この日はあえて単独で見回りを行っていた。
しかし犯人はおろか手掛かりひとつ掴めず、今日の見回りも空振りかとリリが思い始めた頃、何か気配を感じたリリが路地の先に視線を向けると暗がりの奥に小さな少女が佇んでいるのを発見した。
(どうしてこんな時間にこんな小さな女の子が…?)
一瞬疑問に思ったがすぐにリリは意識を切り替えた。何せこの辺りは不審な事件が立て続けに起こっている危険なエリアだ。
早急に保護しなければこの子も被害に遭うかもしれない。
「お嬢ちゃん、どうしたの? 迷子になっちゃったのかな?」
リリは優しく語りかけながら近づくが少女からの反応はない。
焦点の合っていない虚ろな瞳からは意思が感じられず、まるで人形のようだ。
(…この子、何かおかしい……)
違和感を感じたリリは少女を警戒して、いつでも変身できるよう左腕のブイレスを意識する。
すると少女の身体から煙のように朧げな何かが浮かび上がり、それは次第に人の形になっていった。
その姿は少女と瓜二つだったが、身体が白くぼやけており人間ではないことは明らかだった。
リリは驚きながらも咄嗟に変身して少女から距離を取った。
「…こ、これは…!? まさか…、この子が一連の事件の犯人…!?」
正体は分からないが目の前の存在が最近起きている事件の元凶だとリリは直感で悟った。
少女から浮かび上がったもう一人の白い少女はこちらに手を差し出しながら、その幼い風貌には不釣り合いな妖しい笑みを浮かべゆっくりと近づいてくる。
『…クスクス…アハハハ……』
少女の不気味な笑い声が暗闇に木霊する。
さらに警戒感を高めるリリだったが…。
「ぐぁっ…!? …くっ…ぅう…あぁ…!?」
突如首に強烈な圧迫感を感じリリはくぐもった呻き声を上げた。
何が起こったのか分からないまま視線を下に向けると、いつの間にか現れた異形の腕がリリの首に手をかけギリギリと締め上げていた。
『…クスクス…アハハハ……』
(い、一体何が…!? これも、あの子の仕業…!?)
リリの顔が苦痛に歪む。
首を絞められ呼吸ができないからだけではない。全身の力が少しずつ抜けていく感覚に、リリは自分の力が吸い取られていることに気付く。
(こ、このままじゃまずい…! 早く振りほどかないと…っ!!)
このまま力を吸われ続ければ取り返しのつかないことになる。
リリは首元の異形の腕を掴み、振りほどこうと力を込めた。しかし…
「きゃあっ!? い、いやぁ! くっ、あぁん!!」
新たに現れた無数の腕が、リリの邪魔をするように彼女の全身に群がっていく。
脇腹や太腿を撫でまわされ、背筋や臍を指先でなぞり上げられる。
乳房や尻を揉みしだかれ、リリの顔が羞恥で赤く染まる。
そして両足の間に潜り込んだ腕が、リリの大事な部分に指を這わせる。
「ひん!? だ、だめぇ、そこ、あぁぁあ!!?」
敏感な場所を刺激され嬌声を上げるリリ。
そんなリリを執拗に愛撫しながら、腕の群れは彼女から力を吸い取り続ける。
「…ぅ…ん…ぁあ……っ…」
やがて変身を維持できないほど力を吸い尽くされ、リリはぐったりと脱力した。
身体がビクビクと痙攣し、指一本動かせそうにない。
すると先程までリリを弄んでいた腕は次第に消えていき、最後に首を絞めていた腕も消え、冷たい夜の街の地面にリリは崩れ落ちた。
『…クスクス…アハハハ……』
白い少女は倒れたリリを一瞥しながらぺろりと舌なめずりをした後、再び煙のように姿を消した。
朦朧とする意識の中でリリは少女が覚束ない足取りでゆっくり去っていくのを見ていることしかできなかった。
翌朝、部隊の仲間が路地裏で気絶しているリリを発見した。
リリは大きく消耗していたが目立った外傷もなく、翌日には部隊に復帰した。
しかし何故自分が路地裏で倒れていたのかは思い出すことができなかった。
『…クスクス…アハハハ……』
The End……?