「……ねえリファ、ほんとにいいの?」
「はい。あれを見てわたしは、確信しました。きっと私は、そうなるために生まれてきたのだと」
「そっか」
「それに、サニエもでしょう? もうわたしたちは、きっと人間としては生きていけません」
「そうだね。あたしたちにとっては、きっとアレが希望なんだ」
母国の中心部から遠ざかり、敵国である魔帝国へ向かう道すがら。わたしはたったひとりの同胞といっしょに、一縷の希望と押し寄せる絶望に押し流されて足を進めていました。
細い希望は前に、大きな絶望は背後に。もうわたしたちに退路はありません。足を止めれば最後、一応は人間らしいかもしれない代わりに地獄のような明日がわたしたちを飲み込むでしょう。
それは決して、この国に漂う厭世観が原因ではありません。最近になって一般市民にまで出回った元勇者パーティの恐ろしい末路は国全体に敗戦ムードを漂わせ、王国は敵国である魔帝国との戦いそっちのけでかの映像を流出させた犯人探しに躍起になっていますが、そんなことはもう関係ないのです。わたしはその犯人が誰なのかを知っていますが、それでも。
わたしたちはそのおぞましい映像を脳裏に焼きつけて、自分たちがそうなっても何もおかしくないと知りながら魔王国へ向かっています。これは亡命なのでしょうか、それとも自首投降なのでしょうか。それさえはっきりとはしません。
「それに、仮に魔族が残忍で恐ろしい存在だとしても。……人間よりはましです」
「そうだね。それは同感。あいつらと一緒に地獄に落ちるくらいなら、自分だけ一足先に落っこちてやる」
わたしたちの足を進める理由の半分は、それ。わたしたちは原因は違えど、ともに王国での暮らしと人間に絶望していました。
わたし、リファは劇場に籍を置く歌姫でした。あまり良くない育ちだったわたしを拾って育ててくれたいい劇場ではありましたが、残念ながらその構成者全てが善人ではなく。わたしを疎み妬んだ没落貴族の娘に全く事実無根のスキャンダルを着せられ、すっかり干されてしまいました。一体どんな言いくるめ方をされたのか、あんなに優しかった支配人さえわたしを口汚く罵る始末。弁明さえ許さずに人格を否定し硬いパンひとつきりで部屋に軟禁までする仕打ちは、わたしに失望させるには充分でした。
きっとわたしに自決でも求めているのだろう、と察したわたしは、少し前に面会に来てくださったあるお方に見せていただいた映像を思い出して窓から飛び出しました。たったひとつの、わたしに少しはましな末路を与えてくれるかもしれない場所へ向けて。
そして、旅路を共にするこのサニエという少女も。彼女は冒険者ギルドの受付嬢をしていたところ、素行不良や自信過剰などの明らかにハズレの冒険者の担当ばかり押しつけられて評価を落とされ続けていたそうです。それだけならともかく、ギルドの不手際が絡んで失踪した冒険者を後から担当していたと改竄までされて、罪を着せられて放り出されたとか。
そして経緯は違えど同じ映像を目にして、魔国方面へ確証もなく向かい始めたところをわたしと出会ったのです。心もとない路銀を分け合うために宿屋の部屋を一緒にして、偶然にも同じ目的だとわかってそのまま。
「……あの映像、ほんとなのかな」
「本物ですよ。あのパーティは劇場に来たことがありましたから、顔を覚えています」
「あ、うん。そこは疑ってないんだけど……ほんとに捕まえた人をみんなあんなふうにしてるのかなって」
その映像というのは……敗れて捕まった王国の希望、勇者パーティの面々がそれぞれ無様な姿で辱められ見世物にされているもの。武闘家と魔法使いの双子は庭に対になって飾られ、斥候の少女は魔王の部屋で逆さにされて恥部を花瓶として扱われ、聖女は壁に埋め込まれつつ恥部以外を石化されていました。いずれも女として、人間としてどうしようもないほど貶められている様子で、そんな映像が王国でまで出回っているのです。
語り口では彼女たち以外もあのようになりうるとされていましたが、サニエはそこを疑っているようです。確かに、垣間見えた魔王の様子からはそうまで見境なく残忍なようにはわたしにも見えませんでしたが。
ですが。
「そうでなければ困ります。わたしたちは、それを願って魔国へ向かっているのですから」
「……ん、そうだね」
「もし違うのなら、わたしたちの方から求めればいいのです。他の何もいらないから、どうかああしてくれ、と」
わたしたちが魔帝国へ行く理由のもう半分は、これ。そんな普通なら唾棄すべき映像の中の女たちを見て、どうしようもなくそうなりたくなってしまったからだったのです。
あれを見て、思ってしまいました。あれはどんなに恥ずかしいだろうか。どんなに惨めで、どんなに屈辱的で辛くて、そして───どんなに甘美だろうかと。
わたしは、そしてサニエも、あの映像に女の……いえ、女とさえ呼べない雌の願望を思い切り殴りつけられてしまったのです。被虐欲、破滅願望、そのような言葉でしか示すことのできない感情。不意に芽吹いてしまったそれが、わたしたちに「あのようになれ」と囁くのです。
だから、わたしはただ魔帝国に行くだけではありません。亡命だとかで魔帝国に住民として受け入れていただくのではなく、魔王城の無様な調度品になりに行くのです。
……結論からいえば、わたしたちは魔王城に拾っていただけることになりました。あの映像にあった恐ろしい魔王様とは見違えるように優しく、サニエの懸念が当たって何度も止めてきてさえくださるのはそれはそれで困りましたが。
なんでも魔王様はあくまで見せしめの報復かつ戦利品として元勇者パーティをあのような無様な姿にしているだけで、本来はそんなことをする方ではないのだとか。代わりとしていやらしい制服でのメイドなどいくつかの役目を提示されましたが、残念ながらわたしたちが欲情できるほどの仕打ちはその中にはありませんでした。
どうしてももっと酷いことをと願うわたしたちと、そんなものはないと顔をしかめる魔王様。飴と鞭で躾けられて楽しそうなポニーガールという馬扱いはそれなりによかったのですが、それでも足りないと伝えると「それほどの変態は魔族の中にさえそうはおらん」と頭を抱えられてしまいました。
しかしやはり優しいようで、魔王様はなんとわたしたちのために新たな役目を作ってくださいました。その上でわたしたちに、わたしたちか魔王様のどちらかが望んだときには解放する扱いなら良いと示してくださったのです。
そうしてわたしたちが得ることができた辱めが、これでした。
「ふ……ぅ、っ……ふぅ……」
「はふ、ぁ……ぅぅ……!」
わたしたちは今、壁の中にいます。執務室と廊下に挟まれた壁に埋め込まれて、裸のまましっかり固定されています。ここは元々はふつうの壁だったところに、箱のように新たに囲いを作って用意された専用の狭い部屋です。もとは執務室内の端っこだった場所にあたります。
女体をがっちりと固定するための機構だけがあるその中に、わたしたちは生命維持の術式をかけられた上で閉じ込められているのです。……それも、恥ずかしいところだけを外に惜しげもなく晒して、家具として魔王様のお役に立てるよう設置された上で。
「……やっぱり、サニエ、羨ましいです」
「そう……?」
「ええ。……だって、ただここにあるだけの時間のほうが圧倒的に長いわたしと違って、ずっと視線があるのでしょう?」
では、その家具はというと。
サニエは、時計でした。腰から下を執務室の中へ向けて出されて、魔道具に足首と膝を囚われて片方を曲げさせられています。そして股を軸として脚を回す構造に取り込まれているのです。
あちらから見れば、その脚の周りには時計そのものの円形模様がつけられています。曲げている方の脚を短針、伸ばした脚を長針として読むと、そのときの時刻が正しくわかるよう魔道具に操られている大掛かりな仕組みです。針の追い越しが起こったり離れすぎたりする時には、合わせて曲げる脚を入れ替えたり体の上下をひっくり返したりまで発生するという至れり尽くせり。
そうして設置時に剃られてしまって、もう生えてこないよう魔術を仕込まれてしまった股を開いたり閉じたり、なんとも無様な格好で見られ続けるかわいそうな時計となっているのですが……それ以外にも、もうひとつ。
「ぁ……そ、そろそろ、くる……っ、あ゛あッ!?!?」
この時計、長針が真上にくる、つまり毎時零分になるたびに体に電流を流されてしまうそうです。あまり強くないものではありますが、当然悲鳴が漏れてしまうので……これがつまり、時報となっているのです。
なんでも廊下側にも聞こえているようで、近くで作業をする者の助けにもなっているそうです。それもまた、サニエの誇りとなっているようですが。
そんな時計は、徹底的な羞恥と屈辱に加えて時折の苦痛もあってわたしたちのような破滅的なほどのマゾ(という言葉が魔帝国にはあるそうです)にはぴったりのものでした。
では、わたしのほうはというと……。
「───ひぁぁンッ!?」
「入れ」
「はっ。失礼致します」
お尻を思い切り叩かれて、甘い悲鳴を漏らしてしまって。その声を聞いた魔王様が、扉の前まで来ていた部下を呼びました。わたしのお尻を叩いた方、確か狼人族のシィさんという方は、それに従って……わたしに見向きはしないまま扉を開いて入ってきます。
わたしの少し赤くなったお尻はそのまま放置されて、少しだけ疼いてしまいましたが、それを見る者はいません。そんなわたしを見かねたのか羨んだのか、サニエが額どうしをくっつけてきました。
「こちら、勤務実態の追調査分です。飼育係、清掃係、備品管理担当、いずれも記録外の自主残業がやや多いようですが、当人たちがなかなか帰ろうとしないのだそうで」
「ふむ、ならば問題ない。好きにさせてやれ」
「かしこまりました。……しかし、呼び鈴は確かに便利ですね。必ずしもコレである必要までは感じられませんが」
「うぅむ……シィにもいずれはわかると思うのじゃがなぁ。のぅ?」
シィ様が持ってきたのは、先日に不備があるとされた部署の勤務実態調査のようです。厩舎のポニーや雌牛の世話をする飼育係、オブジェや家具に埋め込まれた捕虜を含む城内を掃除する清掃係、戦利品保管室の尻や備品室のバキュームベッドなどを手入れする管理担当……いずれも卑猥で無様な、わたしたちがなりたかった姿の人間を扱う部署です。どうやら業務の傍らそれらで楽しむことが常態化しているようで、しばしば帰り支度をした後も遊ぶ姿が見られるのだとか。
それを黙認した魔王様は、サドの得難い才能を持ちながらその気があまり見えないシィ様を残念がっていました。どうやらわたしたちが来る前からずっとこうであるようで、様式美ともいえる問答です。魔王様が同意を求めた相手はおそらく、しばしばガラス固めで彫像や家具になっている人間のメイドでしょう。
「それはわかりませんが……少なくとも、この城には合っているのは確かではあるかと」
「じゃろう? 変わり者共が押し掛けてきてどうしたものかと思うたが、妾としても良いものを作れたと自負しておるぞ」
わたしは今、呼び鈴となっています。
格好はサニエの時計よりはずいぶん単純で、ピッタリの形の穴にお尻を嵌めて外へ晒しているだけ。あとは壁の中で体をがっちり固定されて、魔国では壁尻と呼ばれる姿です。
向きはサニエと真逆、廊下に向けて丸出し。執務室の扉の隣に生えたその肉塊を、ここでは呼び鈴として扱っています。
もちろん、実際に鳴るのはわたしの喉。わたしの悲鳴や嬌声が薄い方の壁を通して室内に聞こえるだけの簡単なつくりなので、使う時にはこのお尻が鳴いてしまうようなことをすればなんでも問題ありません。
たとえば、
「……ぁ、あぁ、うぅぅっ……ひぅん!?」
「入れ」
「失礼しますっ」
「命令書、配り終えました!」
「うむ、ご苦労じゃ。以後は執務の補助を頼む」
このサキュバスカップルは、穴を指で拡げて羞恥に悶えさせてきます。それどころか、拡げたところに吐息まで。
何かえっちなことをされたら我慢せず聞こえるように鳴くのが役目ですが、わたしは恥ずかしいのが大好物なので言われずとも嬉しくなって声を垂れ流してしまいます。特にサドであるポミエ様はそれが面白いようで、たくさん辱めてくださるのでわたしとしては嬉しいところです。
「んぅ、ぉっ……ぅあ、んはぁっ!」
「うむ、入れ」
「失礼します。 北東の砦より連絡が届いております、援軍への感謝と返礼をと」
「わかった。受け取ると伝えよ」
「かしこまりました」
元は人間のスパイでありながら魔王様に気に入られ専属奴隷もといメイドとなったメリナ様は、同じく丸出しのお尻の穴を拡げて掻き回してきます。魔王様の専属メイドの中では一番のマゾだそうですから、きっと願望の現れなのでしょう。
壁に入れられている間は愛液以外の代謝を止める魔法をかけられているおかげでで何も出ないのは幸いですが、こうしてほじられてしまうと自分でも不思議なほど下品な声が出てしまいます。きっと王国の観客が聞いたとしても、まずわたしだとは思われないことでしょう。
「ふっ、ふっ……♡」
「ええと……なるほど」
「ん……あぁぁぁっ!?」
「む……何者じゃ」
「仕立て屋のレニエと申します。ご注文の品をお持ち致しました」
ですが、きっと一番わかりやすい鳴らし方はこれでしょう。隣にわざわざ置かれた籠に入っている張り型を使って、わたしの雌穴を貫いたお客様です。道具がこれみよがしに置かれているからか、尻肉に「呼鈴」と記されているわたしには初めての方は高確率でそうします。その張り型の上から、とんとん、とノックしてくださるのです。
特に素直でただ気持ちいい仕打ちに甘く喘いだ呼び鈴を聞いて、魔王様は誰何の声を発しました。……これはきっとお役に立てているであろうと思えていることなのですが、頻繁にお使いになられる方は責め方もそれぞれです。そのおかげでわたしの鳴き方も対応したものになりやすく、魔王様もすぐに誰であるかわかるのです。
そして多くの場合、わたしは張り型を挿入されたまま放置されます。この道具らしい使いっぱなしの感覚も、わたしにとっては興奮の材料でした。
「ふっ、はふ……んぅ」
「ほう、良い馬じゃな。専属かえ?」
「はっ。新人だったのですが、逸材に一目惚れしてしまいまして。お恥ずかしながら、衝動買いを」
「それは良かったのぅ。……エクアというのじゃな、主のためよく励むのじゃぞ」
「んふぅっ♡」
今回はわたしも魔王様もそうと察したように初めての方でしたが、どうやらこの国では一般的である職業ポニーを従えた方だったようです。それも専属を飼っているということは、やり手の商人なのでしょう。
要件が聞こえてくる分には、魔王様が個人的に注文を出した仕立て屋だそう。甘ったるい声で従うポニーが背負っていた荷物を下ろされると、大量注文だったのかそれなりに重そうな音がしました。それでもびくともしないのが職業ポニーの凄いところです。
「過去にないご依頼でしたので、とてもやり甲斐がございました。特に複雑な模様のソックスは、身内褒めではございますが力作かと」
「……うむ、良い出来じゃ。折角じゃ、チップとでも思うて見て行くとよい。無論、他のものもな」
「あれは……時計、でしょうか?」
「んぁふ……ぁ……♡」
その最中、不意に声がこちらを向きました。どうやら魔王様とお客様の視線の先にあるのは、サニエが扮する脚時計。
声や音の位置関係からしてシィ様に手綱を預けられたらしきポニーのエクアさんも、仕立て屋のレニエ様も、そう言われてようやく執務室特有の調度品に気がついたようです。やはり緊張していたのでしょうか。
とくにエクアさんはポニーに相応しいマゾであるようで、聖女レリーフや脚時計を見ては興奮した声色の鳴き声を漏らしていました。……少し気になったのは、シィ様はエクアさんに対して「久しぶりですね。元気でしたか」などと会ったことがあるかのような言葉をかけていたこと。魔王様付きメイドと市井のポニーにどのような接点があったのでしょうか。
「これと裏の呼び鈴は他とは違うての、向こうからこのような仕打ちを求めて人間国からやって来たのじゃ。ゆえにこうしてある程度は望みを叶えてやっておるのじゃが……この脚を、もっと時計の針らしくしてやりたくての」
「ああ……あの模様は、伸ばしても曲げても針に見えるためのものだったのですね!」
「そういうことじゃ。……サニエ、少し触るぞ」
「は、はひっ……!」
ちなみに壁の中は、わたしたちを楽しませるためとばかりにいろいろつけてくださっています。「二人のような自発的なマゾは貶めるだけでなく愛でもしたいし、なるべく快適に楽しめるよう工夫もする」のだとか。
たとえば壁の中というよりは小さな部屋ともいうべき照明が用意されていて、わたしとサニエの顔はいつでもキスできてしまうほど近くにあります。……塞ぎあっていると呼び鈴や時報の役目を果たせませんから、わたしたちのほうが少し控えてはいますが。
それどころか、少し凝った拘束機構まで。お尻や脚を出して据え付けられているわたしたちですが、普段は腕は自由です。ただ、いくつか設置されている拘束具に腕を押しつけると、そこに拘束してくれるという無駄に凝った仕組みがあります。一度つければ自分では外せず、お互いが頭を横に振ったときに届くボタンを押さなければ解除できないという徹底ぶりです。
今はとても興奮しているので、わたしもサニエも拘束具を使っていました。わたしはお尻の上あたりに肘を伸ばして差し込む枷、サニエは後ろ手に束ねるシンプルな形。
そうして身動きが取れなくなっているサニエが、不意に恥ずかしそうに身を捩りました。どうやら片脚を時計から外されたようで、設置されてから初めてのことに開放感よりも不安そうな表情を見せています。魔王様の気が変わったらここから出されてしまう身分だというのに、これで大丈夫なのでしょうか。
「う、ぅぅぅ……っ!」
「それで、これを履かせてやると……シィ」
「はい」
「なるほど、こう使うのですね。確かに針のように見えます」
「短針として曲げるほうはどうじゃろうな……うむ、構想通りじゃ」
脚を自由にされて、ただ壁から下半身を出しているだけにされてしまってからのほうが、むしろ恥ずかしいようで。可愛らしく呻くサニエはすぐに、びくりと跳ねてみせました。きっと魔王様にお尻でも撫でられたのでしょう。
そして件の靴下を履かされたようで、再び固定具の音をさせてから壁の向こうの一同が感嘆の声をあげました。どうやらより時計の針に相応しい、見栄えのする姿に変えられたようです。残念ながらわたしたちには見えませんが。
特に印象的だったのが、轡を通したポニーのエクアさんがとても情けない声を漏らしていたこと。普段はどんな重い荷物を背負って走っても平気なポニーが、見るだけで腰砕けになってがに股になってしまうなんて。果たしてどんな無様な見栄えなのでしょうか。
「魔王様、よろしければ向こうの呼び鈴にも、このような装飾を手掛けさせてはいただけないでしょうか?」
「ぇ……っ」
「うむ、妾も考えておったところじゃ。報酬を受け取らずともやる気じゃったと見えるが、依頼として受けてはくれぬか」
「はっ。当店の威信にかけて」
なんて、他人事でただ羨んでいたわたしですが、どうやらそれだけでは済まなかったようです。レニエ様が申し出たことがそのまま通って、わたしも同様の装飾を用意されてしまうこととなりました。
お尻だけの姿の呼び鈴ですから、きっと下着やスパッツのような形となるのでしょうが……どんな見た目になるのでしょう。呼び鈴らしく、叩きやすくもある金色のベルのような模様が脳裏に浮かびましたが……。
自分のありさまが見えてすらいないのに嬉しそうに蕩けてしまったサニエを見て、わたしは当然とても興奮して期待を寄せることとなったのですが……気がかりなことがひとつ。
ソックスと違って、お尻に剥がれたりしないよう固定するには腰や股に触る必要があります。ということは、装着時には一度この拘束を解かれてしまうことになりそうです。……その程度のことでさえ残念に思えてしまうのは、呼び鈴の分際でおこがましいことには違いないのでしょうけど。
2023-08-15 14:17:35 +0000 UTC
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ここを使うの3年半ぶりらしいです。ログにはもはや懐かしいものが残っています。あの頃は未熟だったといえるほどは成長しておらずとも、さりとて性懲りもなくと言われるほど何も変わっていないわけではないと信じたいところです。
どうせこんな言葉を求めてくる人なんていないので挨拶はこのくらいで。この記事はブックマーカーなので特に意味はありません。
正直なことを言いますと、実はまだ決まっていないことが多くあります。先読み期間がどの程度の長さになってくれるかはこれから数ヶ月の自分の頑張り次第ですし(現時点で3ヶ月分はありますが、通常公開分はまだ)、その他形式などは試行錯誤が必要になりそうです。ただ、以前とは違いある程度まとまった量をまとめて出すつもりではあります。どうせ月額のサブスクで何回に分けても送料が変わらなければ同じ……げふんげふん。
ただ、なんとか続けられる限りはまた頑張ってみる所存でございます。私の熱烈なファンの方(自分で言い出すとだいぶ恥ずかしいですが、読んでくださっているだけでファンなので区別が……ね?)、二重の意味で懐が広い方など、もし気が向いたりしたのならどうぞよろしくお願いします。
ではさっそく、今月の分を直上に。どうぞ。
2023-08-15 14:16:28 +0000 UTC
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まずは普通に泳いでみる。頭を下にして底近くまで足首だけで潜って、そこで小休止。
……もちろん、これは意味のあることだ。現に真上で、それを忘れたカノンは早くも悶えていた。
「んっ……うぅっ」
というのも、私たちは局部に二本のバイブを挿入している。これは空気補充中にしか振動はしないが、穴の中を占有はし続ける。しかもこれ、下のスーツと繋がっているのだ。
だから当然、それを意識した動きをする必要があった。下手な挙動をしてしまえば最後、二穴で同時に玩具が暴れることになるという寸法だ。
「……ん、ふっ」
そのまま沈んでくるカノンを、水中で立ち上がって受け止める。しばらく動きを止めたままで待って、目が合うと彼女は頷いた。
軽く抱き締めてから離す。背を向けて底から軽く飛び上がり、小さい動きから徐々に試していくことにした。
「……ぅ、……っ」
しばらくの間ゆっくりと泳いで、なんとなく理解した。このスーツ、足を動かすと張り型が抜き差しされるようにできている。前に蹴ると膣に、後ろに蹴るとお尻に、それぞれ少しだけ奥まで挿入される。これを繰り返されるから、ちょっとしたピストン運動のようになっていた。
おそらくだけど、これは意図的な現象だと思う。スーツ内部を普通に作るだけでここまで上手い具合の結果が現れるとは思えないし、少し設計を弄るだけでその程度の改造はできてしまう人間工学の技術者がミスト・スランバーには何人もいるから。
「んっ……ふっ、んぅ……」
そして、それを利用すると。今の私たちは、ただ泳ぐだけで能動的に快楽を得ることができてしまうのだ。もちろん、外からはただ泳いでいるようにしか見えないまま。
わざと大きめにドルフィンキックを使って気分を慣らしていると、遅れて気づいたらしいカノンも同じように泳ぎ始めた。近くから見ればわかる、耳が少し赤い。たぶん私も同じだと思うけど。
「ふっ、ふっ、んぅっ……」
私たちの様子にスタッフはもう気づいているはずだ。もし快楽を拒んで泳ぎたいなら、自由になっている腕を使えばいいのだから。
でも、そんなこと初見ではわからない。これを見ている一般の会員さんたちは、私たちが自慰をしていることなど知る由もない。
公の場でオナニーをしていながら、周りからは普通にしか見えないような状態だ。なんだか凄く、心地いい。
お互いを追いかけるように円を描き、時折交差して向きを入れ替え、二人で螺旋を描く。私もカノンも泳ぎを躊躇わない。二人きり、秘密の見せ合いっこ。
しばらくすると、先にカノンが苦しそうにし始めた。泳ぎ始めてからはほとんど変わらない動作だったから、最初に少し呼吸を使いすぎたのだろう。こちらへ振り向いて少し悩みながらも、耐えきれないとばかりに水槽端へ向かう。
それを見た私も当然、それを追いかけて装置のほうへ。首輪へのジョイントが繋がったものの、尾びれを固定具に据えられずにいるカノンへ追いついた。
「?」
「ん……」
諦めたようにこくこくと小さく(首輪が固定されているから、あまり首を動かせない様子だった)カノンへ頷き返して、彼女の足首にあたる部分を持つ。それを固定具に押し当てると自動で閉じ込められるので、あとは同じことを両腕にも施すだけ。
胴体が据え付けられれば難しくないのだろう、両腕は自分で伸ばして押し当てた。私が手を下すまでもなく拘束が完成したから、これも自縛の範疇に入るかもな、なんて漠然と思った。
そして、
「……んぐっ、ぁぐ、んむぅぅっ!?」
それまで機器のせいもあってか浅い呼吸を繰り返していたカノンが、唐突に大きく跳ねてみせた。全身で唯一可動域が広い腰をびくりと引かせて、壁に尻を押しつけたまま小さく震える。
……たぶん、イってしまったのだろう。10分以上も水泳の振りをしたオナニーを続けていたから、いきなり叩きつけられた強い刺激に耐えられなかったのだと思う。口元がもごもごと蠢くが、どうやら拘束は完璧らしくズレることはなかった。
「ふっ、ふっ……むぐ、ん!?」
「っふふ」
捕まってしまった人魚の、水中にあっての陵辱ショー。特等席でなくともいくらでも見ていられる光景だが、私も私で空気が薄くなり始めている。あまり時間は残されていない。
だから今のうちにいじめてやる。肉薄して上目遣いに見つめながら、それなりにたわわと実った双丘を鷲掴みにしてやる。ひくひくともの欲しげに揺れる腰は機械に任せて、ラバー越しの柔らかな胸を存分に堪能した。
「ぅ、……んん」
「んふっ…………う、ぅ」
多少のハンデはあったけれど、入水したのは同時。残念ながら私にも順番は来てしまったので、大人しく自分の補給装置へ向かうことにした。
胸から手を離した途端、名残惜しそうな目。逃げられない快楽に襲われ続けているだろうに、随分と危機感のなさそうな顔だ。まさかとは思うけど、もう堕ちかけているのだろうか。
「……ぅ」
たとえそうであっても、私は空気残量が限界になっている。わざわざ自分が苦しくなるつもりは元々なかった。
無視して反対側の補給装置へ。私も大人しく躾を受けることにしよう。
2019-12-30 13:51:58 +0000 UTC
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ところ変わって水槽脇。わざわざ広い足場を作って、スーツを持ってそこまで上がった。このスーツを着ると歩けなくなるから、そのまま飛び込めるような位置で着用する必要があったのだ。
これからマーメイドスーツを着るのだから当然だが、私たちは既に服を脱いでいる。ただの裸には需要がないから、それまでの間はオリが喋りで時間を稼いでくれていた。
「用意ができたみたいですね。では、あちらを見ていきましょうか」
「もう始める?」
「お願いします。マスク部分の装着は後回しで」
お達しが出てカメラがこちらを向いたので、いよいよ着用開始だ。全裸でラバースーツを持って、内部に多めのローションを流し込む。
お尻をつけて足を上げ、スーツの中に揃えて差し込んでいく。足裏に触れた玩具を探るようにしながら、二つのポケットに片方ずつ脚を入れた。
膝から先を合わせて皺を伸ばすと、スーツごとこちらへ引き寄せる。太腿が途中まで入ったあたりで、股に二本のバイブが当たった。
「……んっ、ぅ……ふ、っ」
ここで姿勢を膝立ちに入れ替えて、開けなくなった脚を少しでも開いて玩具が通る隙間を確保。先端を正確な位置に当て直してから引き上げると、膣と肛門へ同時に挿入感が与えられた。スーツで隠したりせず挿入部を晒しているのは、自分で位置を調節するためだ。別にファンサービスではない。
「んん……っあ、ふぅ…………んっ!?」
「え、カナ姉早くない?」
「今さら躊躇う理由もない、でしょ」
そのまま股下まで引き上げて、ローターらしき物をクリトリスに押し当てながらさらに上まで。尻も覆われて腰に到達し、大きな異物感と引き換えにそこで安定した。
ここまで済めば普通に座った方が楽だ。プールサイドに腰掛けるように、脚を垂らしながら腰を降ろ──そうとして、思わぬ衝撃に声を漏らしてしまう。尻が足場についた時に、内部のディルドが押し込まれて奥を抉ったのだ。
それに気づいたカノンがこちらに気づいて、驚いたように声をかけてきた。見ればまだ膝あたりだ、着方に悩んでいたらしく、程なく私と同様に膝立ちになった。
「あとは……ん、っ」
「このへんが一番好きな方も多いかもしれませんね」
臍の上あたりまで引き上げると、脇腹のあたりから両手を潜り込ませる。これで腕の部分を探り当てれば手を突っ込んで、肘から先を合わせて指も使えるようにする。ここからが見ていて面白い部分だ。
両腕が通ったので、ここから二の腕を開く容量でスーツを押し上げていく。しっかりローションを使っていれば、手を使わなくてもスーツが上がっていくのだ。胸も途中で黒に隠れて、丸呑みのような感じで首までが覆われた。
「よし、と」
「……ん。できたよ、オリちゃん」
「はーい。それじゃ、マウスピースを噛んじゃってください。それからゴーグルと首輪を」
口内に空気が通るだけの隙間を作りつつ、口が動いてマスクがズレてしまわないための対策だ。どうせマスクで覆われる上にそもそも水中なのだから、喋ることは元々できない。自分用のマウスピースを位置を合わせて噛み、その後の喋りは全てオリに任せる。
次にゴーグルだが、これは視界を保って目への負担を減らすためのものだ。水泳用のものではなく、あまり目立たないように透明で平べったいものを採用している。ちょうどアイマスクのような形だった。同じく負担を軽減するため、耳栓も装着しておく。
そして首輪。スーツの首部分を念入りに合わせてから、二十分ぶんの空気が詰め込まれた超小型ボンベを装着。ジョイントをうなじに来るように調節すると、耳の下あたりでスーツ下のチューブと首輪が連結した。
これがまたうまく馴染む。特製品と言っていたから予想はしていたが、この会社の技術力に翳りはないようだ。もはや生体データを完璧に取られていることは今更だろう。
最後にマスクを留めるベルトだ。通常のマスクのような横紐ではなく、万一にもずれないためか頭頂部を通すタイプだった。鼻の両横から伸びたベルトが目の横でまとめられ、頭を縦断してこめかみの後ろ辺りに用意された留め具へ繋がる。これで全ての用意が完了した。
「それでは、始めたいと思います。首輪左のボタンを押すとボンベが起動するので、任意のタイミングで水槽へ飛び込んでください」
私たちには正面から見えたジェスチャーに合わせ、ボタンを押し込んで呼吸を合わせる。立ち上がるようにして垂直に飛び込み、股間への衝撃をできるだけ減らした。水中へ入ると同時に口呼吸へ切り替えて、そのまま深めに潜ってみる。
カノンも続いてくると、水が溢れた水槽へスタッフが蓋をした。私たちが水面で呼吸してしまわないよう、このプレイが終わるまでは開かないだろう。
気にすることはない。ちゃんと呼吸経路は確保されているのだから、私たちはあの蓋が開くまで人魚でい続けるだけなのだ。
2019-12-06 12:48:29 +0000 UTC
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「もう、やめて……んっ、ふぁ、ぁ……」
「言葉の割に濡れてるじゃん。もしかしてレシエル、縛られて感じる変態だったの?」
「ち、ちが……ふぁぁっ、」
「違わないじゃん」
ほんの数分後。私はベッドに縛りつけられたまま、面白いように感度を上げて悶えていた。
私も口では否定しているが、明らかに普段より気持ちいい。DIDごっこという特異な状況のせいなのか、本当に縛られるだけで興奮してしまっているのかはわからないが、どちらにせよ変態のような気がしてしまう。
「確かこういうの、マゾっていうんだよな。どうなのさ、マゾ堕天使?」
「わたし、マゾなんかじゃ、っあ!?」
「何か言った?」
いや、間違いない。私、苛められていつもより興奮している。だって、今みたいに露骨に弄ばれるのが一番気持ちいいんだから。
こんなことされて気持ちいいのは相手がシィエルだからだろうけど、それにしても否定できない。
間違いなく私は、正真正銘のマゾだ。
「ほら、イけよ。二本の指だけでイっちゃえ、マゾ堕天使!」
「やだ、いきたくな、……────っ!?」
「あはは、ホントにイっちゃった。可愛い、もう一人でオナニーできないんじゃない?」
クリトリスを摘んで潰され、私は言葉の通りに絶頂してしまう。愛撫が始まってから今まで、シィエルは本当に指二本だけしか私に触れさせていない。拘束のおかげで押さえつける必要がないし、感度が良すぎてそれだけでイってしまったのだ。
どうやら新しい扉を開いてしまったらしい私に愕然としたが、それも嬉しそうな表情を隠そうともしないシィエルを見ると落ち着いた。エッチの時の彼女は、私が気持ちよくなっているところを見るといつも喜んでくれる。気持ち悪がられたりはしていないとわかっただけで充分だった。
そのままいつものように何度もイかされて、私が疲れてきたあたりで愛撫は終わった。……のだが、拘束が解かれる気配はない。
「レシエル、気持ちよかった?」
「……うん、すごく」
「よかった」
もう堕天使ごっこは終わっているようなのだか、なぜか枷による拘束は形を変えて継続している。後ろ手拘束に足枷どうしの連結と、かなり楽ではあるけれど。
ともかく、今回のようなやり方はお互いに気に入ったようだった。これからもこのようにしてくれるなら、少し楽しみかもしれない。
手も足も出せない状態の私を愛でることを本当に気に入ったらしく、服を直すことさえなくそのまま寝ることになった。上から布団はかけてくれたから寒くはないが、腰や胸に直接布団が当たるのは妙に恥ずかしい。
シィエルにももぞもぞと居心地悪くしていたところが見えたようで、ぎゅっと抱きしめてくれた。おかげで少し安心できて、私はそのまま眠りに落ちた。
……んだけど。
目が覚める。……違和感が凄い。
「ん……っあ、ぐ……!?」
体がうまく動かない。すぐに昨日は拘束されたまま寝たことを思い出したけど、その時と比べても違うところがある。
手枷と足枷が繋げられて、足を伸ばせなくなっていた。後から知ったところによると、ホッグタイと呼ばれる拘束だ。これによってベッドから起き上がることさえできない。
その上、口を塞がれている。何やら布らしき……妙にいやらしい匂いと味がするものを口に詰め込まれて、その上から別の布で猿轡をされていた。たぶん、昨日シィエルが履いていた下着だろう。そうと認識した途端、こんな状況なのに興奮が再燃してしまう。
自分では見えないけれど、どうやら翼も縛られているようだった。眠る時に畳んだ形のまま伸ばせないから、ベルトのようなもので縛られているのだろうか。
「ん、っぐ……ぅ?」
まだ昨日の遊びが続いているのか、と寝返りを打ってシィエルを探す。隣はまだ暖かいが、どうやらこの部屋にはいないようだった。
下敷きになった翼が痛くてもう一度転がると、小さな紙切れが視界に入る。シィエルの書き置きだろうその紙には、走り書きのような文字で「急用でちょっと出てくるね。昼頃には帰るから、それまで楽しんでて」とあった。
「ぁ、う……」
ぞわりと、胸の奥に痛いほどの甘さが湧き上がる。こんな格好にしておいてシィエルがいない切なさ、自覚したばかりの変態性欲を楽しむことを許された高揚、そして全身縛り上げられたまま一人放置されてしまった背徳感。そのどれもが興奮を後押しする。
「んぐ、ぅ……ふっ、うぁ」
とはいえ、こんな有様ではオナニーさえできない。興奮だけならいくらでもできるが、気持ちよくはなれない。向こうにある机の角に股を擦りつけることすら夢のまた夢だ。
どんどん息が荒くなって、口の中の下着が唾液で濡れる。染み出した味に惨めさを噛み締めても、絶頂は取り上げられていた。それが心地いい。染み込んだ涎が臭って恥ずかしいし、股のあたりのシーツが濡れて太ももが冷たい。
指先を必死に伸ばして股を弄ろうにも、辛うじてお尻の穴に届くくらい。好きな人は好きと聞くけれど、私には経験がなかった。表面をなぞって、少しだけぞわりとする感覚で飢えを凌ぐばかり。
「うぅ……ひぃえうぅ……」
ベッドに残るシィエルの匂いへ顔を突っ込んで、無理やり気を紛らす。昨日から続くヒロインピンチごっこの趣旨とは大きく異なる焦らしを、私はひたすら甘受し続けた。
2019-11-25 12:29:16 +0000 UTC
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ところ変わって天界。私は、なぜか縛られたままだった。
「……ねえシィエル、そろそろコレ外してくれない?」
「なんで?」
「なんか恥ずかしいんだけど」
「みんなわかってるんだから、別に恥ずかしくもないじゃんか」
「なんとなく気になるのよ……」
私を捕らえた天使──シィエルの様子がおかしい。普段なら天界に着いた時点で解いてくれるんだけど。
とまあ、このやり取りからわかるように、私は本当の堕天使ではない。……というか、堕天使なんて本当は存在しない。
先ほどまでの地上での一幕は、いわば寸劇だ。正真正銘の天使が羽を染料で染め、極悪人を処分した後にもう一人の天使が堕天使役を捕まえて引き揚げるという茶番だった。
実はこれ、主から直々に与えられた大事な仕事だ。二人一組でダークヒーローと勧善懲悪ごっこをして来いという、およそ人間が知ったら卒倒しそうな壮大な小芝居なのである。
もっとも、当然これには理由がある。主こと神様でさえ配慮しなければならないだけの重大な必要がなければ、わざわざこんなことはしない。
というのも、人間による信仰の一節に、このような文言があった。
『曰く、神は人を善悪貴賤で区別せず。因果応報は冥土の領分なり』
つまり、現世の善悪には天界は干渉できないことになっている。勧善懲悪は死んでからだということだ。
ところが、この条項が主にとっては邪魔だった。多くの人の安寧を脅かす巨悪ですら、天罰を与えられないのだから当然だ。
そこで私たち「堕天使役」というわけ。神の手から離れた反逆者ということにして悪を除き、反逆者を捕え更生させるということにして信仰も補強する。そういう仕組みが出来上がっていた。
……だから、天界に戻ってきた以上は私を拘束し続ける理由はない。……はずなのだが。
「ねえ、どういうつもり……?」
「まあもう少し待っててよ。悪くはしないからさ」
結局、奇異の目を向けられながら運ばれ続ける羽目になった。視線を向けられていたのは、主にシィエルだったが。
「ただいまー」
「まさか縛られたまま帰ってくるとは思ってなかったわよ……」
さて、これも「実は」なのだが、私とシィエルは同棲している。もっといえば付き合っている。この仕事で組んでいるシィエルは、つまり私の彼女だ。
この、付き合う、という概念は地上から流れてきたものだ。天使たちにも感情はあるから、案外すんなりと恋愛も定着した。それでいて天使に生殖能力などないから、性別の壁なんてものもない。私とシィエルは女同士だが、何ら不自由なく一緒になることができていた。
だから天界にある同じ家へ帰ってきて、一緒に時間を過ごすことが通例になっているのだが……。
「……よし、と」
あろうことか、シィエルは私をそのままダブルベッドに転がしてしまったのだ。
さすがに私もおかしいと思って、原因を考えだして……思い出した。
「ねえ、もしかしてこれ、この間言ってたやつ?」
「うん、DIDっていうんだって。人間って本当に色んなこと考えるよねぇ」
つい一昨日のことだ。地上の娯楽小説を持ってきたシィエルが、主役級の女の子が敵に捕まって窮地に陥る場面について力説していた。ヒロインピンチ、あるいはDIDと呼ばれるらしいこの場面に、なんだか妙な良さがあるのだと。
適当に聞き流していた私だが、今思えば止めるべきだった。確かにこの偽装堕天使任務、私から見れば終わり方はDIDそのものだ。
「やりたいってこと?」
「レシエルは嫌?」
「…………わかった、付き合うわよ」
とはいえ、シィエルがやりたいのであれば私に否やはない。大人しく従うことにした。
私とシィエルは付き合い始めてそれなりに長いから、当然もろもろの経験もある。その経験から、私は服を脱ごうかと問うたのだが、
「ヒロインが服を着ていることに意味があるの」
とのこと。結局私は着替えもしないまま、ベッドの上で大の字に拘束されてしまった。
ただし、邪魔になるからとショーツだけは脱がされている。足を閉じることもできないし、なんだか変な感じだ。
「いい格好だな、堕天使さん?」
「や、やめ……ひゃっ」
手始めとばかりに腋の下まで服を上げられ胸が露出して、スカートを捲り上げられて恥部も丸見えに。服は着ているはずなのに、隠すべき場所は出されている。その上でお腹を撫でられたりするものだから、妙に恥ずかしくてたまらない。
それと、遊んでいる間は堕天使の演技をしろとのお達しもいただいた。まあ、確かにそうでないと前提が成立しない。
「我らが主を裏切ったからには、相応の報いを受ける覚悟はできてるんだろうね?」
「なっ、何をされても、私の考えは変わらな──っ!?」
精一杯の抵抗を見せるために、なんとか動く胴体を捩る。といってもほとんど動けないから、簡単に捕まってしまうのだが。
現に今めいっぱい引いた腰は、シィエルの手とベッドに挟まれてしまった。何度もいじめられた股ぐらが、もう逃げられない状態になっている。
「ぁ……や、っ……」
「しっかりごめんなさいして元の色に戻れるように、私がしっかり躾けてやるから」
2019-11-22 12:49:42 +0000 UTC
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ずどん、という、何人もの人を殺したにしては呆気ない音が街に響いた。
立派な豪邸の中央部が瓦礫と化し、大量の血と悲鳴が溢れる。間一髪生き残った幸運な人間は、瓦礫の上に降り立ったモノを見て遮二無二逃げていった。
その視線の先に一瞬だけとまったモノは、漆黒の翼をはためかせて邪悪な微笑みを浮かべる人ならざる者──私だった。
この国にはある言い伝えがある。「堕天使は悪人を踏み潰す。悪逆に染まった堕天使は秩序を無視し、一人の悪人を殺すために多くの善人を巻き込む」だとか、短くまとめればそんな感じの話だ。
おおむね事実だ。というか、事実ということになっている。その堕天使が言うのだから間違いない。
私は堕天使のレシエル。この屋敷をゴミの山に変えた張本人である。
人間達の建てる建造物は、所が違えどどれもおおよそ似たような構造をしている。使用人や従者であろう人間を無視して執務室へ向かい、入口に立ち塞がる武装した男を一睨みで追いやった。この程度で逃げるなら、最初からいなければいいのに。
小癪にも掛けられていた鍵を力ずくで壊して中に入ると、親子らしき男二人が執務机の向こうに並んでいた。妙に自信ありげだな、と思った途端に、光。
「……なに?」
「ば、馬鹿な……魔封じが効かないだと……?」
私は何もしていないのに、次の瞬間には勝手に愕然とし始める男たち。感情が忙しないあたりに人間らしさを感じるが、それはそれとして何が起こったかは理解した。
あらかじめ入口付近の床に悪魔封じの魔方陣を敷いておいたのだろう。だから私が現れても、ここで無様に転がると思っていた。
「愚かね、人間ってやつは。私たちをあの蝙蝠共と同類だと思っているだなんて」
まあ、効果があると誤解する理由はわからなくもないのだが、ないものはない。地下の魔界に棲む悪魔と私たち堕天使は、根本的に別の存在だ。
憐れに煌めく魔方陣を踏み越えると、男たちの表情は比例して青くなっていく。残念ながらこの部屋には窓がないから、逃げるには私の横を通り抜ける必要がある。……もちろん、人間にそのようなことは不可能だ。
片手で執務机を払い除けて壁にヒビを入れてやると、面白いくらいに汗を垂らして声を引きつらせる。……とはいえ、今この場で可愛くもない人間の男を怖がらせても得るものはない。さっさと終わらせてしまおう。
「“動くな”。その贅肉だらけの体は、地獄で存分に動かすといいわ」
金縛りのように固まった男たちの半開きの口から、両手で舌を引き抜く。ついに獣と何ら変わらなくなった悲鳴を無視して胸へ爪を立て、心臓を握りながら貫いた。
血塗れになった両腕を引き抜いて、まだ動いている二つの心臓を放り捨てる。ひとりでに汚れが落ちていく腕をぶら下げて、丸い筋肉を踏み潰しながら部屋を出た。
もう目的は達したのだが、かといって行くあてもない。喧騒を増す夜の街を闊歩していると、無辜の人間たちが遠巻きに怯える様が見えた。何しろ背後の屋敷が派手に燃えている、光には困らなかった。
────しばらくそうしていると、再び足下から光。
「…………っ!?」
その光は、今度こそ私の足を絡め取った。
正確には、光から現れた銀色の枷と鎖だ。それも足だけではない。ほとんど同時に両手にも鎖が巻きついたせいで、私は受身も取れずに顔から地面へ突っ込むことになった。
「そこまでだ、堕ちた同胞め」
そんな私に向けて、前方から声がかけられた。目をやればそこには、真っ白な翼と頭上の輪を輝かせる天使の姿。一瞬の静寂を経て、周囲の人間たちは次々その場へ跪く。
天使はそんな人間たちに目もくれず、私の四肢を縛り上げる鎖の端を見せつけるように握る。
私は地を舐めながら視線をかち合わせ、悔しがるような表情を作った。
「私は、間違ったことはしていないわ」
「その羽の色が証拠だろう。……来い。もう一度主に仕えられるよう、叩き直してやる」
天使が鎖を引くと、私の体が宙に浮く。合わせて天使も飛び始め、そのまま私たちは天へと戻っていった。
2019-11-17 15:25:44 +0000 UTC
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あまりにも放置しすぎているからと気休め。拙作「アリス・イン・ラバードール」に登場するオリジナルキャラの詳細設定となります。
明言しておくと、三次創作はご一報いただければほぼOKです。ないとは思いますが。
・.━━━━━━━━━━━━ † ━━━━━━━━━━━━.・
・リオネッタ・マーガトロイド(Rionette Margatroid)
年齢:たぶん1200歳くらい(魔導書)、0歳(妖怪)
身長:146cm
カップ:B
種族:妖怪(魔導書)
人間友好度:低
危険度:極高
封印されたまま魔力と怨念が溜まり続けた魔導書の成れの果てが、非常に相性のいいアリスに触れることで封が切れ覚醒した妖怪。魔導書の中では例外ともいえる強い力を持ち、妖怪となっていることでそれを自分で振るうこともできる。
賢者たちの認知は受けており、成り立ちの近い先輩ともいえるメディスンと同じくアリスの監視下にあることを条件にある程度野放しにされている。現在はメディスンとは違ってアリス邸に居候し、彼女の助手となって研究などを行っている。当座の目標は付喪神化の兆候を見せた上海人形を無事に誕生させること。
やや濃色の金髪でショートヘア、つり目気味で気の強そうな顔立ちの少女。同居人より全体的にひとまわり小さく、普段はアリスのお下がりを着ていることもあって姉妹のようにも見える。
その見た目に違わず積極的な性格であり、活発で好戦的、好奇心旺盛。暴走しがちでよくアリスに叱られるが、夜にはそのアリスの望みに従ってサディストの本性を垣間見せることも?
『人を操る程度の能力』
彼女が永きにわたって封印の憂き目に遭った根本の原因であり、魔導書としての本質ともいうべき能力。
他人、特に人間を操り、人形あるいは駒として使ってしまう恐ろしい魔術。その特性故に彼女は時の権力者の手に渡って幾度となく使われ、数えきれない被害者の怨念と循環した魔力によって妖怪化した。
使用者より魔力の少ない相手ならば自由自在に身体を操作してしまうことができる。短時間であれば心を操ることも可能。
また、併せて記された人形化の魔術によって魔力の強い相手も操ることは可能。間接的であるが故に綻びも出やすく、アリスには簡単に破られてしまっているが。
稀代の魔術師によって記されとある支配者に渡った彼女は、何度か主を変えながら幾万の人々を操り何百もの精鋭を人形としてきた。被害者たちの呪いによって力を増し、使われ続けることで魔力が循環して妖怪化。
嬉しさのあまり人の姿をした体を現出してみせるが、それを怖がった当時の持ち主によって厳重に封印された上で売り払われた。次第に行方は知れなくなり、ついには忘れられて幻想入りしたと思われる。鈴奈庵にひっそりと置かれていたところをアリスに発見された。
アリスの魔力が図らずも封印を破壊すると勢いのままにアリスを襲うが、返り討ちの末にアリスへ従う形で落ち着いたようである。後にアリスから姓を受け取り、今はさながら本物の妹のように暮らしている。
2019-11-15 16:05:06 +0000 UTC
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「そんなわけで、今回使用する水着がこちらです」
「うん、水着じゃないねコレ」
「完全にラバースーツね」
「マーメイド型ラバースーツです。発想自体は新しいものじゃないから、作るのは難しくなかったみたいですけどね」
マーメイドボンデージ、という単語自体は耳慣れないが、この形の拘束衣は界隈では一定数存在している。それだけで真新しくはない。
だから、というわけではないのだろうが、見せられたのは全身を覆うタイプのラバースーツだった。下半身部分が人魚らしくなっていて、何やらごわついている。ファスナーはないから、ネックエントリー式だろう。
少し珍しいのは、ラバースーツが鼻の上まである。マスクがくっついているような感じだ。
「はい、こんな感じです。見ての通りネックエントリーのマーメイドラバースーツで、色々と細工がしてあります」
「細工って」
「ほら、ここに」
「……正気?」
よく伸びる首元のラバー生地の中から、二本のディルドが現れた。
何を言っているかわからないかもしれないけれど、私も混乱している。とりあえずスーツを床に横たえてみた。
しっかりフィンの役目を果たしてくれそうな尾びれ、どうやら内側で仕切りが一枚あるらしい脚部分。それを上へ辿っていくと、ちょうど股にあたる部分に玩具が取り付けられていた。
膣とお尻に入れるのだろう二本に加えて、ちょうどクリトリスにあたる部分に怪しげなものがくっついている。これは確実に振動するだろう。
それ以外は普通のラバースーツだ。形自体は珍しくもない。それだけに、股間部の凶悪な構造が異彩を放っていた。
「呼吸にはこれを使います」
オリが次に取り出したのは、チョーカー……のようなもの。ファッションにも使えそうな、首の動きをぎりぎり阻害しない程度に分厚い硬質な首輪だった。
これ、見たことがある。オリが懇意にしているとあるベンチャー企業が、ひっそりと運用している発明品だ。
「箱詰倶楽部さんからマイクロ酸素タンクをお借りしました」
「出た、謎技術」
「この首輪の中に酸素が圧縮して詰められています。これと口元のマスクを繋げば、大きなボンベを背負わずとも水中で息ができるわけです」
「効果時間は?」
「普通にしていれば、20分くらいですね」
充分にとんでもない技術だ。もっとも、会員制とはいえ配信に使っている時点で情報には注意を払っている。
実はこれ、箱詰倶楽部で使用された本物はもっとおかしい。これと同じサイズで数時間は余裕でもつのだ。それに比べれば、このせいぜいが既存品の倍程度の効果時間なんてオモチャ同然である。
……で、危うく聴き逃しそうになったが今また重要発言があった。
「普通にしていれば?」
「呼吸が乱れたりすれば、その分ロスが出て早く酸素がなくなりますよね」
「……なんとなく理解できたわ。これからさせられること」
この首輪からチューブが繋がって、マスクを経由して鼻へ呼吸を確保する仕組みだ。チューブは目立たないように耳の下を経由して顎のラインに密着している。首輪と一体化するように調節されているらしい。
口のあたりはというと、何やら弁のようなものがついている。装着時に詳しく見てみることにしよう。
「で、この首輪なんですけど、実は今回のための特製品でして。首の後ろ側、ここにジョイントがあります。
このジョイントを、水槽の壁、向かいにひとつずつある……アレとアレですね。あそこに繋ぐことでタンクの酸素が補給されます」
「ちなみに、その近辺にある拘束用っぽい器具は?」
「拘束用です。呼吸経路を使いながらだと詰め直しに三分ほどかかりますので、その間暴れて外れたりしないように」
「拘束は自動?」
「それぞれ枷に押し付けると、勝手に拘束してくれます」
「ちなみにその間、体は?」
「無防備ですね。ついでに、繋がっている間は股間部のオモチャが振動するようになってます」
つまりこうだ。少なくとも20分に一度、酸素補給のために動きを止める必要がある。この時に快楽責めが行われるから、この補給は配信的には多いほうがおいしい。
そして、それ以外の時間で呼吸を増やしたり息を乱したりすることで補給の感覚は短くなる。だから、
「私たちは水中でキャットファイトしてお互いの呼吸を削り合い、相手が補給のために拘束されたらそこを責め立てればいいと」
「そうなりますね。配信的には、ぜひ百合百合しいところを見せてほしいですし」
ミスト・スランバーの配信にしてはまだ易しい方かもしれないが、充分にマニアックなプレイである。
「時間で発動するギミックも用意してあるから、飽きることはないと思いますよ。ひとまず前半はそんな感じで」
「後半は違うの?」
「終盤はもっとSMプレイっぽいことをしていただくつもりです」
水中でSMプレイって、もう水責めしか思いつかないのだけれど。隣に待機する円筒状の水槽とクレーンが怖くて仕方ない。この会社、このプレイに対してどれだけ本気なのだろうか。
まあ確かに、これを着けて泳ぐだけならそこまでの負担にはならないだろう。悶々としたまま四時間の遊泳となるよりは、曲がりなりにもSMプレイをしてくれたほうが楽かもしれない。
どう考えても思考回路がバグっているが、嫌ではない。むしろ興奮し始めていた。私たちとてミスト・スランバーの一員なのだ。
2019-10-21 15:16:06 +0000 UTC
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カレンダーが捲られた。これで今年6度目だ。早いものでもう七月である。
いよいよ暑くなってきて、学生には華の夏休みも近い時期になってきた。今年から社会人となった私たちにこれまでほど大きな夏休みはないけれど、幸いにも昨今稀に見る超優良企業であるところの我が社はお盆休みがけっこう長かったりする。通常業務でのお給料も文句などまず出ないくらいは出ているし、職場環境もいい。文句を言う社員がただの一人も見当たらないというのは、なかなか珍しいのではと思う。
株式会社ミスト・スランバー。相変わらず綺麗な会社だった。
いきなり閑話休題というのもあまり聞いたことのない構成だけど、これは今回まったく関係ない話だから置いておこう。大事なのはもっと前、いよいよ暑い時期になってきたというところだ。
夏といえば何だろうか。山? キャンプ? バーベキュー?
避暑といえば何だろうか。アイスクリーム? スイカ? それともエアコン?
どれも間違っていないだろう。夏といえば、で日本人が連想するものはけっこう多岐にわたる。
ただ、今回私たちが目にしたものはこの中にはなかった。なにしろ真っ先に挙がるべき物のひとつをあえて挙げていない。
いま、私たちの目の前には、巨大なプールがあった。
……これだけなら、なんてことはない。テーマパークに併設された大型プール施設にでも行けばこの一文は得られるだろう。
だが、そうではない。そうではないのだ。
「ねえ、オリさん」
「なんですか、カナンさん」
私──ミスト・スランバーの社員兼テスターであるカナンと、双子の妹であるカノンは、社長令嬢である霧宮莉緒に連れてこられた部屋で絶句していた。
「……どこから手に入れたの、これ」
私たちの目には、水族館でしかお目にかからないような巨大なプール……否、水槽が鎮座していた。
◆◇◆◇◆
「というわけで見てもらえればわかると思うけど、今回はマーメイドボンデージです」
「わかるのかな……」
「このサイトの会員である変態紳士淑女の皆様ならわかると信じましょう」
「疑いようのない真実ではあるけどね……普通に言っちゃうんだねそういうこと」
「問題になったりしないように会員を厳選しているわけだからね、多少はいいの」
今回は最初からカメラが回っている。AV女優……とは全く別物だけど、転載がそもそも不可能なサイトとはいえ私たちはとうに顔を出している。流出防止にミスト・スランバーが本気すぎてキャプチャすら撮れないように処理されているから、私たちとしても安心なのだが。
現在ミスト・スランバーの有料制会員サイトでは、私とカノンの他に、社長令嬢オリの息がかかった学生テスターを含む数人が活動している。その中で私たちは時間の融通がききやすいことを理由に、時間の必要な企画を優先的に回されていた。
「今回は『ラバーマーメイド四時間耐久配信』ということで、会員の皆様には事前告知をしていたわけですが」
「ええっと……マーメイドボンデージというのは、両脚を揃えて人魚のようにする拘束のことで……はい、こんなのです」
フォローに回ったカノンが説明に苦心していると、市販の水泳用マーメイドテールがスタッフから受け渡された。脚を揃えて、下半身をすっぽり包んでしまうタイプのものだ。
実は私たちはこれを使ったことがある。今回のために練習した、というだけだが。当然ながら着けたままでは歩けないからいろいろと注意が必要な代物ではあるが、これ自体は普通に使うことができるものだ。
「見ての通り、これだけでは割と健全なものです。自力で脱げなくすれば一応拘束にはなりますが、正直なところ、これだけでR指定はつかないかと」
「これだけでも好きな人は好きだと思うけど、競泳水着とかと同じような段階ではあるよね」
確かに、これだけではエロとは言いがたい。フェチズムとエロティシズムは必ずしも一致しないわけで。
ミスト・スランバーの場合、そういう時は組み合わせで両方を担保することが多い。つまり、人魚拘束とは別の部分で性的な責めがあることは想像に容易い。
……なんとも嫌な予感がする。自分の表情が苦々しくなるのを自覚しつつ隣を見ると、カノンも似たような顔をしていた。
2019-10-09 14:36:04 +0000 UTC
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結局ロミアはそのまま餌を与えられたけれど、いつもやっているペットプレイとさほど変わらなかったので割愛。フックで大変になるかとも思っていたけれど、前脚が関節を使えるおかげであまり苦しそうでもなかった。
全員に見守られながらのトイレは物凄く恥ずかしそうだったけど、これもいつも通りというか。いや、ロミアにとっては初めてなんだけどね。
しかしこの辺りの徹底的なペット扱いにロミアは限界を迎えてきたようで、それを感じ取った彩乃さんはついにトドメを刺しにかかった。
「それじゃあロミア、撮影会をしましょうか」
「にゃっ……!?」
「だって、本当の飼い主にも今のロミアの可愛いところを見せなきゃでしょ?」
これであっさり丸め込まれるあたり順調なんだなと邪推もするけれど、本人はそれどころではない。周囲をぐるぐる回るカメラに頬を真っ赤にしながら耐えて、時折飛んでくるポーズの指示に渋々ながら従うばかり。しかも俯いて顔を隠すこともできないから、写真にもばっちり表情が写ってしまっているのだ。
そのうち私にまで、ああ限界だ、とわかるほど仕草に余裕がなくなってくる。それを見て彩乃さんは、
「次は仰向けに転がって、脚を広げて胴体を見せなさい」
「っぁ……う、ぅ…………」
これ以上は無理だというくらい真っ赤な顔を少しだけ前足で隠して、震える脚を必死に開く。
──が。
「……──ッ!」
シャッター音が聞こえた瞬間、ついに猫の仕草も捨てて丸まったまま動かなくなってしまった。
本当に限界なのだろう、小刻みに震えてさえいる。こうなってしまえば私たちが相手でもプレイは中止になるほどだ。普段はこうなるところまで読み違えること自体がほぼないけれど。
一方で彩乃さんの表情は余裕を保っている。調整をミスしたわけではなさそうだ。この人はそのあたり意外と素直だから、意図的にこうしたのだとわかる。
「それじゃ、ロミア」
ちらりと視線をやったロミアを確認して、左右に開いた手を見せる。一拍置いて、ぱん。
「……!」
「もう一度言うわよ。ロミア、服従のポーズを取りなさい」
「にゃう」
するとどうしたことか、震え出すほど明確な限界を見せていたロミアが、何の抵抗もなく四肢を大開きにしてみせた。そんな恥ずかしい姿を撮影されても、綺麗に剃られて整えられた局部を接写されてしまっても、少し恥じらってみせるくらいで崩れた様子は見せない。
というのも、ロミア……ミアこと上城亜未は、少々特殊な技能を持っている。彼女は特定の合図や自己暗示によって、自分で作り上げた架空のキャラクターを完全に演じることができるのだ。
演じるというよりは、なりきるの方が近いかもしれない。ある種の神降ろしのようなトランス状態を意図的に作り出すことができて、本人は憑依と呼んでいた。私が知っていたのは演劇部の活動中でのことだったけれど、どうやら今もそれを使っているらしい。
今のロミアは、彼女が作った「えっちな牝猫のロミア」というキャラクターそのものになっているようだ。こんな恥ずかしいことも当然のキャラになっているから、羞恥でおかしくなるということもない。そう思うとなんだか羨ましくなってくる。
「じゃあ、次は立ち上がってお尻を突き出しなさい」
「にゃっ……」
ころりとまた四つん這いで立ち上がって、アナルフックが突き刺さって尻尾が垂れ下がるお尻をこれでもかと強調してみせる。少し振り返り気味の構図でぱしゃり。
さっきまでと同じポーズを、それまでできなかったもっと過激なポーズを、ロミアは次々と取っていく。その度に少しずつ呼吸が荒くなってきていたが、それが興奮でしかないことがわからない者はこの部屋にはいなかった。
「ロミア。綺麗にしてあげるから、お股を開いてこっち向けて」
「にゃ? にゃっ!」
演じることで余計に上手くなった四足歩行を駆使してこちらへ来て、惜しげもなく開いた股を差し出すロミア。明らかにさっきまでよりフックが深く食い込んでいるが、彼女に苦しそうな様子はない。犬みたいな息遣いになっているくらいだ。
マゾを演じることでマゾ度合いが上がるだなんて、本当にとんでもない。私は用意したウェットティッシュでびしょびしょになった陰部を拭き取ってやった。……のだが、綺麗になってきた辺りからロミアが腰を擦りつけてくるせいでやりづらくて仕方ない。
「にゃふ、にゃ……あぁっ!?」
というか、明らかに誘っている。仕方ないのでタイミングを見計らって、無防備な時に合わせてウェットティッシュごと指を押し込んだ。
ちゃんとデリケートな箇所に使っても問題ない種類のものを使っているけれど、やはり予想外だったのだろう。そのままぐりぐりと、掻き出すように擦り付けてやるだけでこの有様だ。これだけで腰ががくがくになるなら、こんな誘い方しなければよかったのに。
「人間を困らせる悪い猫は、おしおきしないとねっ」
「にゃ……あ────ッ!?」
空いていた手で丸い尻肉を思い切り叩いてやる。同時に穴の中で二本の指を開いて内臓を圧迫すると、最後にアナルフックの紐を強めに引き上げた。
膣内が収縮したのがわかる。縮みきったタイミングでウェットティッシュごと擦りながら引き抜いてやると、ロミアは鋭く潮を噴いたのが音でわかった。
「にゃ……ぁふ、んぅ……にゃぁ」
しばらく絶頂が続いて、収まると前脚を曲げながら余韻に身を任せ。私が床を拭き終わった頃に戻ってきたロミアは、とろんとした目をこちらへ向けた。まだおぼつかない前足を片方浮かせて、私の膝へ乗せる。
……どうやら、今夜は長くなりそうだ。
2019-09-04 13:58:30 +0000 UTC
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さて、数十分後。
「……にゃ、ぅ」
「お疲れ様、ロミア」
うん、ずっと見てた。そういう縋るみたいな目をするのもとってもわかるし、私は奏ほど非道くないからさっきから助けてあげたかった。
というのも、奏の苛め方が本気も本気だったのだ。長いこと私と一対一だったからかもしれないけど、容赦というものが存在しない。あの子は可愛いマゾは最低でも半泣きにさせないと気が済まないから。
上半身を抱きしめる時にさりげなく胸を揉んだりなんて当たり前。目を合わせたまま「にゃあ」と鳴かせて、少しでも目を逸らしたらアナルフックの紐を引っ張る。わざと腰を緩く抱くだけの状態で的確に抵抗だけを封じて手淫してみたり、頭を撫でてあやす振りをしてぐいっと頭を下げさせたり。猫を可愛がる振りをしながらあれだけいじめられるのかと、ある意味感動した。
「ほら、おいで。私はあそこまでひどくしないから」
「……にゃぅ」
目の前に座って手を広げたけど、自分から来ておいてロミアは少しためらった。正直気持ちはわかる、ちゃんと面と向かうと相手が高校の親友だと嫌でも意識してしまうから。ましてその相手とこんな変態プレイだなんて、想像すらしていなかっただろうし。
それでも良い子のロミアはちゃんと寄ってきた。短い後ろ足を引きずるようにして、肉球に包まれただけで動かすことはできる前足を私の腿の上に。精いっぱい猫らしく喉を鳴らしてみせて、私の胸元へ顔を押しつけた。
「あーもう、なんでこんなに可愛いかなぁ」
「…………にゃ」
可哀想に、耳まで真っ赤。それもそうだ、見下ろす私の視点ではまっさらな背中も、首輪からお尻に一直線上に伸びる紐もしっかり見えている。首輪につけられた鈴も鳴り続けている。さっきお仕置きとして奏に叩かれて、微妙に赤いお尻なんて微妙にひくひくしてる。
ちゃんと上気味に向けるように後頭部を撫でて、紐を避けながら背中もさする。……ふにゃあ、なんて可愛い鳴き声が聞こえてきた。そんな声、顔が見えていれば出さないだろうに。
「んゅ、ぅ……」
「はは、愛いやつめー」
でもまあ、奏がいじめたのもわかる。ここまで可愛い雌猫ちゃんが、こんなにえっちな格好をして発情しているのだ。相手が3年間いっしょに過ごした友でさえなければ、私だって放心して転がるまでいじめ尽くすかも。むしろそうでなきゃサド失格だし、莉緒さんも彩乃さんもそうすると思う。妃菜はやらない。あの子も受け専だからね。
そんなわけでしばらくあやして、時々きゅっと抱きしめたりと私も癒し成分を補給していたのだが……。
「……はっ、はっ」
「……ロミア?」
私が優しくしすぎたのか、単にこんな痴態を晒していれば自然とそうなるマゾなのか。散々いじめられて収まったはずの発情が再発したらしい。短くなった呼吸を繰り返して、かわいい尻尾を振ってアピールして。
試しに背中の手をお尻へ向けてみたら、嬉しそうにか細い鳴き声。ああ、可愛い。
「ずるいよロミア、そんなに可愛いなんて」
「にゃっ……あ、ふぁっ」
自分からあんなに分かりやすく誘ったくせに、いざ指先をお尻の割れ目へ這わせると焦ったようにぴくり。穴から穴までをなぞって、溢れていた愛液を軽く掬いつつ往復させたら片前脚の肉球を床に叩きつける。でも抵抗はしない。恥ずかしいくせに。
ものすごく恥ずかしいことを隠しすらしないで、それすら責め手への媚びになると理解して鳴く猫。いったいどこで何をすればそんな天性のマゾを開花させられるのか。私たちとはまた一味違ったマゾヒストだけど、やっぱりこういうのも悪くない。
「ここ濡れるのが恥ずかしいんだよね。……ひどい音。えっちな猫ちゃんだね」
「うぅ、ぅーっ……うにゃっ!? あ、んゃっ……!」
前足は私の両脇に置かれている。本当は背中を抱きしめてしまいたいだろうに、猫はそんな事しないからって必死に我慢。その代わりに肉球が床にぽすぽす。癒されるってものじゃ済まない。私を悶え殺す気がこの子は。
会陰部とか言うんだったか、そんな最近名前を覚えたような場所へロミア自身の蜜を塗りたくって、それが終われば手前側に回した指の腹で秘部の割れ目を押し込んでみる。
ぐちゅり、なんて予想通りの水音で羞恥責めに成功したので、そのまま中指を滑り込ませた。潤滑液がたっぷりありすぎて、面白いように簡単に挿入できてしまう。余裕がありそうだったので人差し指も入れてみたが、伸縮性がいい癖にしっかり締め付けてくる。なんて羨ましい。
「にゃあぁっ、や、んぁっ……!」
「こっちも、欲しいでしょ?」
「んひ、いぅぅっ……!?」
ついさっき爪を切ったばかりの指先で掻き回してみると、それだけでこっちが興奮しそうなくらい蠢いて締められる。一昨年まではこれが貞操帯に守られていたのだ。正しすぎる使い方だし、えっちな物だという主張が激しすぎて。
なんとなく探っていたら弱点らしき場所もいくつか見つけたので、そこを重点的に刺激。鳴き声に余裕が無くなってきた頃合を見計らって外からアナルフックを押し込んでみると、尻穴も開発済なのだろうミアは猫語さえ忘れて悶えた。
「っい、い……ぅ」
「駄目だよロミア。にゃあ、でしょ?」
「…………にゃん、にゃあっ!」
しかしこれはヒトネコプレイで、今のロミアは猫だ。勝手に人間に戻ったりすればお仕置きされて当然。膣内の動きで察した私が手を止めてやると、ロミアは切なげに呻いた。そんな声すらいじらしい。
お尻に添えていた手を戻して、軽く顎を持ち上げ目を合わせる。可哀想なくらいぐちゃぐちゃな顔と目が合った。その瞳の奥には溢れんばかりの羞恥と、堪えきれない快楽と焦燥、それと確かな被虐の悦び。
ずっと隠していた顔を見られてしまったロミアは度を超えた羞恥で泣きそうな、しかし凄く嬉しそうな表情で固まった。数秒後、吹っ切れたように大声で猫鳴き。私は優しい笑みを心がけつつ、ナカの指を軽く曲げた。
「それじゃ、ここからは自分でイってみせて。手伝ってあげるから」
「ぁ、ぅぁ……にゃっ、にゃぁっ……!」
瞳の色が変わった、ように感じられた。奥の奥に隠されたマゾのスイッチを押してしまったような感じ。まる3年間も健全な付き合いを続けてきた友人に自分の全てを奪われて、恥ずかしい姿を自主的に見せろだなんて。私が初めてアナの前でいじめられた時も、確かこんな感じだった。
やがてロミアは腰を振り始めた。やっぱりこの子もマゾなんだな、なんて思いながら喉をごろごろ。鳴き声の猫らしさが倍増したロミアは鈴を鳴らしながら弱点を強く指先へ擦りつけた。
今度こそ、溜め続けた快楽が爆発する。それに合わせて私は、首輪に繋がった紐を指へ引っ掛けた。
「にゃ、……あぁぁぁっ!?」
「よくできました、ロミア」
絶頂の瞬間にアナルをこじ開けられて、瞬間的に絶大な快楽を押しつけられたロミアは嬌声の音量を跳ね上げながらイった。そんな中でも一応はちゃんと鳴いてみせたことをしっかり褒めてやりつつ、紐を放して指で余韻を煽る。
「はぁ、はぁっ……にゃ、ぁ」
「頑張ったね。偉いよ」
たった一度の絶頂で力尽きたロミアが後ろ足を滑らせて、私の膝上へ突っ伏すようにして見上げてきた。息を整えて可愛らしく鳴いてきたロミアの喉を撫でて、私は指先についた愛液を舐め取った。
蕩けていた瞳が揺れる。ロミアの頬はやっぱり赤くて、どうしようもなく可愛かった。
2019-08-28 14:07:58 +0000 UTC
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「それじゃあ、まずはルールを説明しましょうか」
「ルール、ですか」
後ろ脚を畳まれて四足歩行になったヒトネコと、目線の高さを近づけるために屈んだ飼い主が相対する。イヌのときとは違って、首輪にリードはついてないけど。
今回のプレイにはルールがあるらしい。その代わりに拘束が優しめだが、雌猫ロミアはそう思えているだろうか。彼女もミスト・スランバーの動画は見ているはずだけど。
「まず最初に、ヒトイヌのように命令に従う必要はないわ。お前は犬ではなく、猫だからね。基本的には好きに動いていい。ただし、猫らしくね」
「猫らしく……わかりました」
無理に命令に従う必要はない、か。珍しいやりかただ。ロミアも含まれるであろう調教済の奴隷にとっては、むしろそのほうが難しいかもしれないけど。
「次に、人語は使わないこと。猫なんだから、ちゃんと猫語で喋ってね?」
「は……にゃあ」
おっと、人語の返事が出かけた瞬間に寒気。いやはや怖い、もうプレイは始まっているわけだ。
一度にゃあと鳴いて自覚が深まったのか、心なし顔の色が赤らんでいる。なんというか、かわいい。こんな反応はこの家ではなかなか見られないのだ、みんな慣れすぎて。
「水が欲しくなったら、このボタンを置いておくから押しなさい。近くにいる人間が持って行くから」
「にゃあ」
部屋の隅におもちゃのボタンが置かれた。押すと音が鳴る、クイズ番組で出てきそうなやつ。……なんでそんなものがあるんだろう。
「当然だけど、餌も水もこの皿で出すから自分で食べること。トイレも……ほら、あそこに用意してあるから」
「っ……にゃあ」
そう、この徹底的なペット扱い。この家でペットプレイをするときは決まってこういうことになる。餌は餌皿から犬食いで水も皿から舐めて飲むし、おしっこに至っては仕切りもなくペット用トイレだ。
……というか、今アナが用意しているあれ、猫砂だ。これのためにわざわざ用意してあったの?
「休んでいてもそんなに文句は言わないけど、暇だったら近くの誰かに絡みなさい。みんな遊んでくれるからね」
「にゃ、にゃあ」
もちろん、こんな状態で遊ぶとなればそれだけで恥ずかしい。それどころかアナルフックが不意に食い込むことだってあるだろうし、大変なのは目に見えている。そしてそれを私たちも理解しているから……ふふ。
「そして最後に。もし発情を抑えられなくなったら、体を誰かに擦りつけなさい。……応えてくれるかはわからないけどね」
「……にゃぅ」
うわぁ、意地悪だ。わざわざこれを言っておくことで発情への逃げ道を作る代わりに、そこに誤解の可能性を与えない。気持ちよくなりたかったら宣言するしかないんだ。
しかも、宣言したとしても発散できるとは限らない。この言い方は私たちへの「焦らせ」という言外の指示でもあるし。
普段のヒトイヌとは違って前足は使えるけれど、肉球だから簡単ではない。しかもそれが「猫らしい振る舞いではない」と見られてもおかしくない。自分一匹では気持ちよくなることすら難しいのだと、いつも以上にマゾにはっきりと叩きつけたのだ。
それがわからないロミアではなかったみたいで、どこかもどかしそうな表情で弱々しく鳴くだけだった。
「……にゃ、にゃあ」
まずは動作確認。何事も動けなければ始まらない。このあたりは動かなくて済む普通の拘束プレイとは違うし、ロミアも恥ずかしそうにしていた。
左前脚、左後ろ脚、右前脚、右後ろ脚。本物の動物とは違うけれど、人が四足歩行するのならこれが歩きやすい。関節の少ないヒトイヌならなおさら。私たちには周知の謎知識である。実はアナだけ経験はないけれど、知ってはいるみたいだし。
このあたりの感覚はロミアも簡単に掴んだみたいで、思いのほかすぐに歩き回れるようにはなった。のだが、
「ふっ、ん……んぃゃぁっ!?」
文字に起こすとなんだか不思議な声を出して、ロミアは喘ぎながら慌てて頭を上げた。
普段のヒトイヌプレイなんかだと尻尾はアナルプラグでつけるんだけど、今回は別のもののテストになっているのだ。頭を下手に下げたりすれば、首輪に繋がったアナルフックがロミアのお尻をこじ開ける。
少し疲れて首が垂れるたびにそれで姿勢が戻るあたり、このアナルフックテールはかなり凶悪な代物だ。上級者向けというか、姿勢矯正には少なくとも絶大な効力を発揮しそう。餌の時どうするんだろう、なんて思ったけれど、それはロミアが考えることだ。ちょっと気の毒だけど。
「……ん」
「あら、もう大丈夫なの?」
「……にゃ、ぁ」
さらにしばらく動いて、適度に疲れてきたところでようやく満足したらしい。性欲はとっくに酷いことになっているだろうに、大した自制心だ。
ロミアは慣れてきた四足歩行で歩み寄って、奏に脇腹を擦りつけた。にやつきながら眺めていた奏は少し残念そうだったけど、ロミアが切なげに一鳴きするとがらりと表情が変わった。ペットショップで可愛い動物を見るような目から、自分に縋ってくる可哀想な雌奴隷を見下ろすような熱い眼差しに。
その変化にロミアも少したじろいだけれど、ああなった奏はしばらく止まらない。私はこちらに来るまでは、ただ鑑賞するだけにしておこう。
2019-08-21 12:23:12 +0000 UTC
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・倉場 奏(くらば かなで→カナ)
年齢:19→20
身長:158cm
カップ:B
私立某大学一年→二年。ややツンデレ気味で自己主張ははっきりするタイプ。感情が顔に出やすいが、表情筋自体が硬いためクールだと勘違いされがち。中学生の頃までは人付き合いが苦手で澄歌に頼り切りだったが、高校でそれを克服しようと一念発起。しかしそうして入部した部活動の先輩のせいで人生が大きく変わってしまった。
一人称は「わたし」で女の子口調。高貴さすら感じさせる艶のある黒髪ストレートロング……を、遊ぶ時は意外と雑に扱う。その分プレイが終わってからの手入れは入念。
ラバーフェチ。一応バイ。奉仕欲求とお仕置き期待の暴走で生きているような悪い奴隷。
澄歌の先輩奴隷であり、何も知らずに高校時代を終えた澄歌を引きずり込んだ張本人。澄歌の性癖を開拓し、自分と同じところまで堕とした末に張り合っている。莉緒留学時には澄歌と二人暮らしとなり、お互いに1対1で責めあっていちゃついていた。
高校時代は演劇部で、莉緒の一年後輩。その頃から莉緒の奴隷となっており、彼女に調教されたという意味では亜未に続いて二人目である。演技力も十二分にあり、亜未ほどではないがプレイとして演技に没頭することも少なくない。
性感帯は胸とポルチオ。非常に強いマゾ気質を持っており、お仕置きすらご褒美と捉えてしまうため莉緒の頭を悩ませている。苦痛を単体で快楽に変えてしまう領域に達しているのは奏ただ一人。
2019-08-09 12:40:26 +0000 UTC
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あの様子ではヒトイヌ、どころかペットプレイ自体が初めてだろうに、自然と四足で立ち上がったミア。その持ち上がった首を目がけて、大きな猫鈴がついた幅広の首輪が巻きついた。私にも見えた、シールなのか彫り込みなのかはわからないが、首輪には「Romia」と刻まれている。
ミアは一瞬だけ瞳に違う色を見せたが、シノさんが何事か囁いて元に戻った。興奮が止まらない、それでいてもどかしく苦しいマゾヒストの表情。さすがは役者、そんな顔すら様になっている。
「うん、可愛い」
「し、シノさん……演技、しちゃ」
「ダメ。後で演技は沢山してもらうから、今は素のまま楽しんで頂戴」
「うぅ……」
落ち込むように肩を落として声を絞り出す。いちいち可愛いし、そういう動き方が身に染み込んでいるのが素人の私にもはっきりわかる。そんな動きに合わせて鈴が鳴り響き、少しでも動くとそれがわかる状態になってしまったのが余計に残酷というか。
「……これ、新しいヒトイヌ拘束ですか? これまでのよりは楽そうですけど」
「うん、負担のかかりづらいヒトイヌ亜種だよ。前脚の拘束感と視点の低さは犠牲になるけど、動きやすいし体の負担も少ないの」
「え、本当はこれよりきついの……?」
「ええ。前脚もちゃんと畳んで、後ろ脚と同じようにするの」
「ふわぁ……」
なるほど、そういうこと。確かにヒトイヌ拘束って、たまに腰とか痛くなったりするからね。この姿勢だと前半身が高くなるから、腰や首への負担が減るわけだ。
やはりヒトイヌそのものを知らなかったミアだけど、なぜかカナとやたら親しげにしている。接点があったことすら知らなかったんたけど……。
「カナって、いつからミアと?」
「本社でね、一緒にテストしたことあるのよ」
なんという。この六角関係、さすがに複雑すぎない?
「さて、もっと猫っぽくしましょうか」
次に取り出されたのは、猫耳カチューシャならぬ猫耳ヘッドフォンだった。大人しく頭を差し出したミアの耳を覆い、彼女の黒髪と同じ色の猫耳がぴょこんと飛び出る。
……なんだかミアの様子が……いや、戻った。見ればシノさんが何かのリモコンを持っている。
「このヘッドフォンも特殊なものなのよ。通常の音楽再生モードに加えて、周辺音再生モード、人声減衰モード、遮音モードの四種類に切り替えられるの」
音楽再生はともかく──まあ、プレイ中だと喘ぎ音声とか催眠音声とか流されたりしそうだけど──、他のモードは明らかにプレイのためのものだ。二つ目については、ただ外の音を同じように通すだけなのだろうけど。もちろん四つ目は遮音による聴覚の拘束だ。
三つ目はというと、どうやら周辺音から人間の声だけを判別して弱めるものらしい。なんでもこれを起動すると人間の声だけがひどく遠く聞こえて、何を言っているのか伝わらなくなるらしい。ペットらしく身振りと様子で判断しろ、というわけか。
とはいえ、ここまでは特に妙なものはない。そしてシノさんは、この程度の責め具であんな嗜虐的な表情にならない。それはやはりミアが最も理解しているようで、見上げる顔は明らかに引きつっていた。
そして見せられた最後の道具。それは私とミアの予想に違わず、この屋敷のSMプレイに相応しい過激なものだった。
「アナルフック、って知ってる?」
「は、はい……」
「そこに尻尾をくっつけてみたの」
その道具を見せつけたシノさん……ではなく、隣にいたオリさんが愉しそうに嘯いた。うん、確かにこれはどちらかというとオリさんの趣味だ。
猫の尻尾がつけられた細めのアナルフックから紐が伸びたもの。ここまでの緩さを差し引いてもお釣りがくるほどの代物だ。だって、おそらく、ミアは明日までこのままだから。でなきゃわざわざ最初に浣腸器なんて渡さないよね。
「挿れるから、お尻から力を抜きなさい」
「ぅ……んぁ、ふっ……!」
しっかり挿入してしまうものではないからだろう、細いフックにはローションがうっすらとだけ塗られた。それがゆっくりとミアの肛門に沈んで、なだらかな尾骨のラインに沿って根元が骨盤のあたりにくる。
そこから伸びる紐を背中側に伸ばし、少し突っ張るかどうかというくらいの強さで首輪に括りつけた。しっかりと結び目を作って、余り紐が首をくすぐらないように処理。
「んふっ……ぁ、あっ……」
「ふふ、良さそうね」
「こ、れっ……おしり、われちゃっ……」
「心配いらないわ。可愛い縦割れアナルよ」
「そんなこと……っぁ、ひぅ!?」
背中に紐がぴんと張られて、ヒトイヌの割には猫背気味だったミアの背は綺麗に伸びた。さすがにその状態で紐が目に見えて浮くほどきつく結んではいないようで、後ろから見てもものすごく引き上げられている様子ではなかった。
しかし、ミアが動けば話は違う。尻尾を股下に垂らさせていたシノさんへ振り返ろうと前足を横に出した途端、鈴の音とともに彼女の尻穴がくいと引っ張られた。ほとんど同時に驚き六割の嬌声。そんな可愛らしくも苦しげな様子をとは裏腹に、首輪を後ろに引かれているせいで俯くこともできていない。
なるほど、これは中々えげつない。今回も確かにミスト・スランバーだ。
2019-08-09 12:15:05 +0000 UTC
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マゾヒストという生き物は、得てして被虐の中でも特に興奮するプレイというものを持っている。アナは「身じろぎ一つできないような厳重拘束」、私は「親しい誰かと一緒にいじめられること」、カナは「徹底的に尊厳を奪われて責め立てられること」といったように。
今回の犠牲者である上城亜未、プレイネーム“ミア”のツボは、「自分のことを誰かに管理されること」なのだそうだ。まる二年もパートナーに貞操帯の鍵を持たせているあたりからも窺える。普段は「自分の演じるキャラクター」を自分で管理している彼女が、こと性生活においては誰かの所有物になってしまうことを好むのだ。
「まずは拘束してあげるから、まだ演技はしないで」
「はい」
「最初に服を脱いでもらいましょうか。素のまま、ね」
「ぅ……やっぱりシノさん、オリさんよりSですよ……」
ミアに自分で浣腸をさせた(!?)後、改めてシノさんはミアと相対した。二人の間に流れる空気は割と弛緩していて、初めてではないことが透けて見える。
今回のプレイはシノさんが主導するらしい。ミアにとってシノさんもオリさんも先輩ではあるが、私たちのように主従関係を結んでいるわけではないゲストだ。それどころか、ご主人様他にいるし。
そのうち合同で……はさすがに恥ずかしい。関わりもなかった高校の同級生の前で奴隷になるのは、さすがに。小野寺くん……ナオくんには悪いけれど、やはりこうして空いた日にミアに来てもらう形がいいだろう。
「他人のご主人様に責めてもらうんだから、まずやることがあるわよね?」
「は、はいっ……」
顔を赤らめながら下着まで脱いだミアだが、次の発言にたちまち耳まで真っ赤になってしまった。シノさんは爪先で床をとんとんと叩いているから、あれが何かの合図なのだろう。
と思っていたら、ミアはおもむろに脱ぎ捨てた服を拾い始めた。そのまま丁寧に畳み始める。……裸で服を畳むの、これだけでもこんなに惨めなんだ。
ひととおり畳んで綺麗に積み上げると、最後に残ったショーツを広げた。ごく薄い黄ばみと確かな湿り気がクロッチごと晒されて、たたんだ衣類そのものがえっちな存在になってしまった。
「主がいるにもかかわらず、別の奴隷の飼い主に快楽をねだる悪い奴隷を……どうぞ、思うままにお使いくださいませ……」
そしてその服の隣で、全裸土下座。しっかりと額を床に擦りつけて、お尻はやや浮かせている。ずいぶんとよく躾けられている……のだけど、今の私にはわかった。あそこまで深く頭を下げるのは顔を見られないためかな、たぶん。
案の定、シノさんはミアの顎を持ち上げて目を合わせた。潤んで惚けた紅い顔がこの場の全員に見えてしまう。
「ええ。今日はまともな奴隷の扱いを受けられると思わないことね」
あ、ミアがちょっとだけ震えた。今の言葉には耐性がないとなると……これまではまがりなりにも、純粋に奴隷として調教されてきたのか。
しかしそこで怖気付くミアでもない。震える声で「……はい」と声を返し、手を離されるとすぐに土下座の体勢に戻った。シノさんはその間に拘束具を用意し始める。アシスタントとしてアナが手伝うようだ。
「手のひらと膝をついて、尻を上に突き出しなさい」
「は、はい……」
言われた通りに四つん這いになるミア。私も、表情からしてアナも既に頭が処理しきれていない。なにしろミア、高校時代は超優等生の高嶺の花だったのだ。その頃からもう貞操帯をつけていたらしいけど。
隣に跪いたアナがミアの左脚を上げさせ、膝をしっかり畳ませた。その下にシノさんが拘束具を用意すると、アナはその脚を下ろさせていく。──私たちにはもはや馴染み深い、いわゆるヒトイヌ拘束だ。
「……え、っ?」
「ほら、そのまま立てていなさい」
しかしミアはずいぶんと狼狽えている。たぶんあれが普通の反応だ。彼女はヒトイヌなんてものの経験はないのだろう。伸びなくなった膝をおそるおそる床につけて、クッションの柔らかさに少し驚いた様子まで見せた。
しっかり拘束を留めて、今度は右脚。同じように封印してしまって、これで後ろ脚の出来上がり。ここまでは普通のヒトイヌと同じだった。
「ぅ、あ……」
「人間ってこれだけで四足歩行になっちゃうのよね。たった二つ、これだけでお前はヒトじゃなくなったの」
「そん、な……」
「でも、獣が手を使えたらおかしいと思わない?」
びくりと竦み上がるミアの左手首を素早く掴むアナ。あれで実は優秀な助手なのか。彼女は完全な奴隷ではないし、代わりに助手として育てていてもおかしくはないが。シノさんはほとんど抵抗できないミアの左手に何かを被せ、手首のところでベルトをぐるりと巻いて留めた。
肉球、だろうか。猫の手を模したグローブが装着されている。あれでは指なんてほぼ動かないだろうし、そもそもミトンか握りこぶしになっているだろう。つまるところ、あれはただの前足である。
もちろんもう片方の手も前足になった。たったこれだけ、三分とかからずに奴隷はペットに様変わり。
「はっ、はっ……」
「どう、猫になった気分は」
「すご、く……ドキドキ、しますっ……」
「それはよかった。だけど」
「ぁ、あ……」
「それだけなわけないでしょ?」
◆◇◆◇◆
2019-08-03 13:44:16 +0000 UTC
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創作物において突然の来客というのは、予想外のものを見られてしまう展開に繋がることが多い。バタバタして下着姿なんかを見られたり、隠していたものが暴かれたりといった具合だ。もちろん当てはまらないことも多々あるけれど、ひとつの予定調和として成立している感は否めないだろう。十八禁的な展開ではなおさら。
その日は前日の晴れから一転、梅雨に相応しい長雨が朝から降り注いでいた。おかげで誰一人として外に出たがらず、5人揃ってリビングに篭ることとなった。
普段の行為を振り返るとそうは見えなくなりがちだが、私たちとて本当に毎日性的快楽を追求しているわけではない。環境と人数と経験と若さが極端に集まっているせいで頻度は多いが、それでも平均して2、3日に一度といったところである。試験期間ともなれば二週間誰一人として言い出さないこともあるし、逆に長期休暇に入ったりすれば数日がかりの荒唐無稽なプレイが実行に移されることもある。ポニーガール合宿なんかがいい例だ。
今日はそのどちらでもない、普通の「2、3日」の“やらない方”だった。そういう日は各々が勉強なり趣味なり、それぞれの時間を使うことも多々あるのだ。
そのようにして思い思いに午前中を過ごしたが、午後も特筆することはない予定だった。せいぜい私が莉緒さんの仕事の軽い手伝いを頼まれたくらいだ。コスプレ用の肉球付きミトン猫手袋の着け心地を試しただけ。しかも単体で。
そんな緩やかな昼下がりを終わらせたのが、冒頭のような突然の来客。ベタな創作物を思わせる鮮やかな流れだった。
ほかの三人より少し近かったから、突然のインターホンに応対したのは莉緒さんだった。
……「たぶん宅急便か何かだろう」と高を括ったのはたしかに私だ。私だとも。だから私はミトンの手首を締めるベルトを放置されてもさほど動揺しなかった。
が、玄関のほうからはそれらしき音は聞こえてこない。私の目の前にあるシャチハタを取りに戻ってくる気配もない。そのまま数十秒が経ってまた扉が開閉。結局莉緒さんは特に急いだ様子もなく戻ってきた。
……のだが、何やらおかしい。足音が二つある。それに気づいた私の刹那の危惧は、およそ考えうる最悪の形で実現した。
「どうぞ、入って」
「お邪魔しまーす」
当然のように入ってくる女性。私の状態をわかっていてそれを野放しにする莉緒さん。そして両手首より先を拘束されたまま、呆然と立ち尽くす私。
目が、合った。
「久しぶり、澄歌ちゃん」
「……なんでここにいるの」
家主の客人の顔を見ただけで絶句した私を許してほしい。莉緒さんとは直に接点がなかったはずの高校時代の親友がいきなり現れたのだ、誰だって驚くだろう。
しかしよく考えてみて、すぐに気づく。そういえば彼女、すなわち上城亜未は同居人にして莉緒さんの親友たる彩乃さんの後輩だった。そこから知り合うことは、確かにありえないとは言いきれないか。
「実は私ね、莉緒さんとは中学が同じだったの」
「なっ」
なんというか、私の周囲はよくわからない接点が多すぎやしないか。私の知らない縁を後から知らされるの、つい3ヶ月ほど前にもあった気がするのだけど。
「妃菜ちゃんも久しぶりー」
「ほんとなんでもアリだよね、莉緒さんって……」
「今回については、むしろ順序が逆なんだけどね?」
さすがに今回の件は妃菜も知らなかったようだ。彼女がああも無防備に驚いた顔というのも案外珍しい。
一方でなぜか奏が愉快げな顔をしている。なんかむかつく。
「亜未……ううん、“ミア”はね、わたしの先輩でもあるのよ」
私の視線に気づいた奏、今日最大級の爆弾。コイツ今なんつった。
しかし向こうではにこにこと微笑む、しかも私の手への視線を隠そうともしない亜未の様子。
頭痛が痛い。
「つまり、まとめるとこういうことか。あーちゃんは中学の時点で莉緒さんの手で変態に染められていて、あたしたちとの高校三年間ずっとそれを隠し続けた。大学に進んでから立て続けに後を追ったスーちゃんやあたしに驚いたのはむしろあーちゃんの方だ、と」
「一部表現に意義は申し立てたいけど、概ねその通りだよ」
場を整えて──当然、私もようやく手袋を外してもらって──改めて裁判、もとい会議。亜未が語った内容は、極限までかいつまむと妃菜の言った通りだった。
中学生の頃、最初は彩乃さんと演劇部の先輩後輩として仲良くなった亜未は、ちょうどその頃親の職業を見抜いて色々と知りつつあった莉緒さんの影響をもろに受けた。パートナーとなった彩乃さんから色々と漏れて莉緒さんとも知り合い、軽くではあるがその時点で調教も受けたと。
そして驚くべきことに、高校に進学した亜未は二年の頃にある男子と秘密の関係を始めた。小野寺という地味系ヘタレイケメンと二年の夏休みに付き合い始めたことは聞いていたけれど、本当は春頃から既に貞操帯を管理される仲だったらしい。以降二年間、彼女は生活のほとんどを貞操帯を着けたまま生活していた。挙句には小野寺君と背徳的な行為を繰り返していた。それに私たちが感づくことは、ついになかったのだが。
「……それで、ここからが本題なんですけど」
「うん。どうしたの?」
それまで私たちへの語り口だった砕けた口調が、ここで丁寧語になる。莉緒さんか彩乃さん、あるいはその両方に向けた言葉だ。
次に彼女が発する言葉を、私はなんとなく予想していた。
「例のカプセルホテルを視察に行ってから、今日はそのまま来ているんです」
「ってことは、今日は着けてないんだ」
「大学に入ってからはさすがにそう自由にもいかなくて、着けてない日も多いですけどね。
……それで、その」
「思い出しちゃった?」
「……実は、今日は“ご主人様”からも許可を貰っているんです」
最初は貞操帯を管理させるだけの、どちらかというと主導的な立場だったらしいが、小野寺君と亜未は今やずぶずぶの主従関係らしい。貞操帯の正しい使い方とも言えるか。
しかし今日はその主から許可がある。これほど明確なものもそうはないだろう。
とどのつまり、亜未は今日、最初からこの家で責められるために来たのだ。
「わかった。それじゃ、ちょうど試したいのがあるから……結構ニッチなのになっちゃうけど、いいかな?」
「もちろんですっ」
亜未の目がぱっと華やいだ。というか蕩けた。やっぱり彼女も、根本的に私たちと同じ種類の人間なのだった。
2019-07-26 14:35:45 +0000 UTC
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この国では長い間、妖精族に人権が与えられていなかった。
妖精族は翅が生えていて空を飛べ、人間より上手に魔法が使える。それ以外は大きく人間と変わらない彼らの境遇を決めたのは、体の大きさというどうにもならないものだった。人間の頭の大きさの約半分。あるいは人間の掌で握ることができる程度の体躯。当然、身体能力もそのサイズに見合ったもの。
その数と文明で世界を支配してきた人間たちから見てとても小さく、可愛らしかったと。ただそれだけの理由で彼らは古くから「庇護種族」であると一方的に断定され、過剰なまでに保護を受ける代わりに自由を奪われてきた。
言語による意思疎通が可能なペット、程度の扱いにひたすら甘んじて数百年。妖精への暴力や殺害は人間へのそれよりも重い刑罰が課されるが、法的に誰かの所有物であることが明確になっている。それは見方によっては悪くない、むしろ良い扱いと呼べるものだっただろう。自主性さえ捨ててしまえば、人間たちが望んでも得られない恵まれた立ち位置なのだから。
だが、そう思わない者もいた。主に妖精族に、そして少数ながら人間たちにも。
当代の王もその一人だった。彼は自らの妖精と良好な関係を築きながらも、妖精たちにも生き方を選ぶ自由があるのではないかと考える先見的な人物だった。……ああ、過去形にしているが存命である。過去なのは彼ではなく、周囲のほう。
──そんな時、事件が起こった。遠い昔に地底へ封印されていた魔王の力が何者かによって解き放たれ、影響を受けた各地の魔物が暴走するというものだ。このとき特に強い影響を受けた一部の魔物が少女の姿になるという副作用も現れたが、これは今回割愛するとして。
王国はひどく混乱したが、すぐに騎士団や警備隊を動かした王の迅速な判断によって被害は最低限に抑えられた。しかし彼らにできたのは群れを抑え込むことまで、倒せど倒せど湧いてくる魔物たちを撃退することはできなかった。
そしてわかったのは、この魔物たちは誰かに操られているということ。魔力の封印を解き、魔物たちを操って人々を脅かしている黒幕がいるということだった。
そこで王は考えた。騎士団と警備隊が各地の魔物を抑えている間に、国で最も期待できる戦力を送り込んで黒幕を倒してしまおうと。そうして選ばれたのが後に英雄と呼ばれる少女魔法使い、レミア・グレイヤードだった。
ここで話を戻そう。レミアを送り出すことを決め、本人および侯爵家である実家からも了承を得た王だったが、ひとつ心配なことがあった。彼女は魔法使いでありながら剣を使わせても達人級、本職の魔法では無類の強さを誇る凄まじい存在なのだが、ひとつだけ弱点があった。彼女には土地感があまりにもなかったのだ。
国内の地理こそ頭に入っているが、地図と現実を結びつける能力があまりにも欠けている。そんな彼女を見かねて補助役をつけようとしたところで、王はひとつ思いついた。
彼女の相棒たる案内役を、能力に優れた妖精族にやらせよう。
そしてあわよくば、黒幕討伐の暁にはその功績をもって妖精族を解放しよう。妖精族にそれだけの能力があると知らしめれば、民衆もきっと理解してくれることだろう。
そうしてレミアの傍につけられた志ある妖精の名は、アヴィ・イグナット。何を隠そう、このあたしである。
結論から言うと、その企みは成功した。あたしは方向音痴のレミアを度々助け、時に斥候によってその命を救い、最終的に黒幕の男を倒しこの国に平和を取り戻す助けをした。
その事実はすぐに王国中を駆け巡り、王はやがて沸き上がった妖精解放論を待っていたかのようにあたしを表彰した。そして前約束の通り、妖精族の解放と人権付与を宣言した。ついに歴史書の新しいページに載ったという『妖精解放宣言』である。
そしてさらに手筈通り、その場であたしからひとつ要望を奏上。「今の暮らしが気に入っている妖精たちのために、人権を尊重しながらこれまでと同じ生活が続けられるような制度を作ってほしい」。これは二つ返事で了承を受け、『家族登録制度』と呼ばれる古くも新しい在り方が妖精族に与えられた。
さて、先にあたしのことを「志ある妖精」と形容したが、これは一般の認識だ。その言葉が示す通り、その話を引き受けた時のあたしは妖精の境遇に不満を持っていた。あたしだってもっと自由に、自分のしたい生き方をしてみたい。そう思ってのことだった。
……過去形である。もうお察しいただけただろうか、今のあたしはそう思っていない。なぜなら、命や身分、自由すら捧げてもいいという相手が見つかったから。
無論、レミアのことだ。派閥抗争を避けるため国から与えられた一生遊んで暮らせる報酬を手に田舎へ隠居したレミアに、あたしはついて行った。そこでしばらくほとぼりを冷まして、ひっそりと家族登録をしてしまったのだ。立会人を引き受けてくれた王様には生暖かい微笑みを向けられてしまったが。
だから、今のあたしはレミアの家族。無事にミイラ取りはミイラとなったわけで、社会に出て華々しく活躍していく仲間たちをレミアの傍で見届けたのだった。
のんびりと隠居生活を送ることになったあたしたちだったが、レミアはまだ使命を残しているようだった。
そのレミアなのだが、旅の途中で聞いたことには、彼女は前世の記憶を持っているらしい。この世界よりもずっと文明の進んだ世界で暮らし、趣味で絵を描いていたのだとか。特に魔物の意匠を持った少女が好きと言っていた。何を隠そう、この世界で少女化した魔物に『魔物娘』という呼称をつけたのはレミアである。
その話をしている時のレミアが嬉しそうことにあたしも気を良くして、「もし魔物娘たちが大人しくなったら一緒に暮らせたりしないかな」なんて言っていた。
で、田舎に腰を落ちつけるに前後して。王国各地で記憶を失って倒れた魔物娘たちが奴隷商たちに捕まって、闇市で競売にかけられるのだという噂が耳に入ってきたのだ。
レミアはお手本のような対応を見せた。既に捕まっていた魔物娘たちをひとまず買い上げ、あたしにその奴隷商たちから情報を引き出させたと思えば流れるように国に突き出し、挙句の果てには国中の魔物娘たちを保護してしまった。
それだけの人数に加えて使用人も住み込めるだけの広さの屋敷を建て、魔物娘たちの心をケアして仲を深め、そして今に至る。
本当に尊敬する。彼女こそが英雄と呼ばれるに相応しいと、あたしはしみじみと感じたのだった。
◆◇◆◇◆
前置き終わり。長かったが、ここまでが過去にあったことだ。あたしたちは現在、魔物娘たちと一緒に屋敷で暮らしている。
今日も特に予定はなく、レミアとのんびりする予定……だったのだけど。
「……ねえレミア、それなに」
「作ったの。せっかくだから使ってみようかなーって思って」
「せめてもーちょっとムードのある誘い方ないの?」
嬉々としてあたしに迫るレミアの手には、明らかに妖精サイズの大人の玩具。ちなみにこの屋敷に妖精族はあたししかいない。
……待ってちょっと待ってじわじわにじり寄ってくるのやめて怖いからねえちょっと。
ここまでは触れてこなかったがこの少女英雄、実はとんでもない変態なのである。それも同性しか愛せないという少々困った御仁。政争で弾き飛ばされた彼女を実家が庇わなかったのは、このあたりにも理由があったりする。
しかも彼女、元来モノづくりの魔法が非常に得意。《道具作成》という魔法にかかれば、材料と魔力が簡単に彼女の想像した道具になる。使いようによっては世界が傾いてしまうだろう。しかしレミアはそんな規格外の能力を意義あることに使おうとはしない。……というか、今やその能力はほぼあたしたち向けの淫具を作るためにしか使われていない。哀れなり超魔法。
「つーかまーえたっ」
「まずはその魔王みたいな醜悪な顔をやめましょうか」
……捕まってしまった。ものの見事に胴体を手のひらで握られた。あたしが痛くないようにしっかり配慮した握り方に、あたしも逃げる気が失せてしまう。そもそも本気で逃げたいのなら手が届かないところまで飛んでしまえばいいのだ、そうしない時点でたかが知れている。
あたしがいつも最初は嫌がるのは予定調和でしかない。ただの様式美であって、あたしの照れ隠しだ。そんなことは互いに熟知していた。
「はい、そういうわけだから脱いで」
「だからムード……わかったわよ、もう」
だからこの通りだ。あたしはつかまる時ちゃんと翅を畳むし、レミアも捕まえたらすぐに離す。あたしは軽い調子で指示されても逆らうことなく服を脱ぐ。
あたしは机の上で一人だけ全裸だ。当然恥ずかしいけれど、そんな恥ずかしささえレミアの求めるものだと思えばあたしは喜んで味わってしまう。レミアも大概だが、あたしも影響されたのか充分に末期である。
「それじゃ、いつも通りここに寝て」
「ん……」
いろいろと試した結果、あたしとレミアにはある好みがあることがわかっている。
あたしはというと、身動きが取れないように拘束されて責められるのが興奮する。それかレミアの手でゆっくりと解すように蕩かされるか……いや、これはいい。置いておく。
拘束プレイはレミアも好物なようで、彼女はそんなあたしの拘束を日常に使われるもので作製するのが好きらしい。あたしの小さな身体を活かして、人間なら別の使い方をするものをエッチに使いたがる傾向があるのだ。
今こうしてあたしが寝転がっているのは、あたしの腕より少し太いくらいの木材を十字に組んだものの上だ。レミアは「ワリバシをイメージした」と言っていた。おそらく前世の道具か何かだろう。少なくとも本来はこんな使い方しないはずだ。
長い方の棒に背を預けて、短い方に合わせて両腕を伸ばす。レミアはあたしの位置を調節して、糸で手首を木材に括りつけた。木材には切れ込みが入れてあるから、縛りつけてしまえば外れることはない。もう片方も同じように。
この木材は普通の十字ではなく、あたしの足のあたりにもうひとつ横棒が組まれている。恥ずかしさをこらえて自分から脚を広げると、大股開きになったあたりでレミアがあたしの足首を縛り上げてくれた。
「大丈夫?」
「うん、おっけー」
「立てるね」
「ん、ぅあぁ……」
そこまで済んで、レミアはあたしの磔を立てた。縛られたまま持ち上げられたあたしが興奮するのをにまにまと見つめてくる。とはいえ、そんな視線でも昂りを強めるあたしも似たようなものか。
この磔にはいくつか仕掛けがしてある。脇の下から肘の手前あたりまで、二の腕の下に支えがあって体重を支えられるようになっていたり。その支え木や木材の反対側にされた細工のおかげで、何かに引っ掛けて立てることもできたり。
あたしは裸で磔にされたまま、本立てに据え付けられてしまった。こうなったあたしは、レミアの気が済むまで弄ばれる玩具だ。
2019-07-19 15:00:02 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が変更される可能性があります。ご容赦ください。
昨日の調教後はずいぶんと醜態を晒してしまったが、寝て起きれば思考そのものは随分と明瞭になっていた。普通にものを考えることもできそうだが、しかしどうにも普段と違う。
なんというか、人間に戻れないのだ。全身の拘束具がわたしを馬だと自己認識させ、わたしが人間であることを前提とした思考ができない。不自由であることが窮屈でもなければ、興奮しつつも一応は辛く苦しいはずの調教が楽しみで仕方ない。早く走りたい。家畜としてオリ様やシノ様の役に立ちたい。
「ふふ、随分馴染んできたみたいだね。それでいいんだよ、カナ。お前は私がそうと言う限り、卑しい雌馬でしかないのだから」
食餌中に掛けられたこの言葉が意識に染み込む。そうだ、わたしは人間でもただの馬でもない。ご主人様方が望めばいつでもポニーに成り果てる、浅ましく都合のいい雌馬なのだ。
そうして馬の姿のまま人の意識へ戻る方法を擦り込まれたことに気づきもせず、わたしは餌を平らげて轡を噛み直した。
前日と同じく貞操帯越しに小水を垂らして流され、手綱を持たれて外へ。今日も天気がいい。全身に感じる陽射しと風は開放感抜群で、そのくせ日焼けもしないし衛星写真にさえ痴態は映されない。こういうところが本当に徹底しているミスト・スランバーだからこそ、わたしはここまで馬になれるのだ。
「今日は、これを使います」
「……ゥ、」
「ン、アゥ!」
今日はこれまでと少し違い、セメントで舗装された道路のような区画だ。その中でも練習場と思わしき場所で、路面電車のような線路がコースを形成している。向こうにある線路なしの舗装路は、ここで感覚を掴んでからということになりそうだ。
そしてこの舗装路には、なんと馬車があった。とはいって小さな御者台に申し訳程度の荷台という、馬車と呼ぶには貧相なものだ。本物の馬とは文字通り馬力が違うから、荷台を使うことも考えるとポニーガール一頭が牽くにはこれが限界の大きさなのだろう。
車庫と思われる建物の壁にやはり手綱受けがあった。今回はまたわたしが先らしく、ミカとアナは一度向こうに繋がれた。シノ様もあちらでカメラを回している。
「馬車には重さがあるから、これまでと少し勝手が違うよ。コツを掴めば難しくないから、頑張って」
「フゥンッ」
大まかに見れば人力車に近い構造をしている。わたしを挟むように伸びる支柱とボディハーネスの金具を数本のベルトで繋ぎ、二輪の馬車から重みが体へ伝わる。たったこれだけの変化だが、まだ動いていなくともわかる。わたしは今、馬車という乗り物のパーツへ貶められた。
こつ、こつと舗装路を踏み締める。硬いぶん反発も大きいが、やはり柔らかな芝生よりは歩きやすい。足裏は蹄鉄がついているから、音が高らかに鳴ってしまうのが少し恥ずかしいけれど。
「まずはこれをやっておこっか。この指示が『ピアッフェ』、覚えて」
昨日言っていた足踏みの指示だ。手綱が上向きに引かれる感覚を覚えつつ、腿を振り上げてその場で足踏みをする。 パレードの見世物になったみたいで微かな興奮がある。わたしかしっかり出来ていることを確認して、共通の停止の指示が入った。
下腹部が疼き始めるのを自覚しながら次の指示を待つ。わたしの横から前に回りながらピアッフェを撮っていたシノ様が、オリ様と目配せして横に退いた。いよいよだ。
「これからは転んでも芝生がないから気をつけて。……それじゃ、発進」
「ンムゥ……ッ」
言われてみれば確かに。歩きやすくなった代わりに、転んだりしてしまえば受身も取れない拘束裸体が硬いセメントに打ち付けられる。昨日の走行訓練では何度か転びかけもしている、言われた以上に気をつけていく必要がありそうだった。
手綱が後ろに一度。ウォークの指示だ。わたしはオリ様の言葉ではなく、手綱の指示に従って歩き始めた。……が、普通に歩こうとしても前に進まない。足の力だけでは馬車が重いのだ。
「重量を考えて、慣性を意識して……そう、その調子」
やり方を変える。一歩の踏み出しを小さくしつつ、胴全体を押し込むように前傾。緩やかに動き出した馬車の速度が上がるにつれて歩幅を大きくし、背筋を伸ばしても問題ないところまできたらそれを維持し始めた。
こつ、こつ。静かな線路に足音が響く。最初の直線を抜けて、もうすぐ右カーブだ。
「視線は前、線路は見ない。道路全体の形を認識して、指示は手綱に集中しなさい。ポニーガールに自分の意思で動く権利はないよ」
歩行を止める時とは違う、やや下への手綱で俯いていた頭を正された。ポニーは御者の手足として思うままに動く家畜だから、勝手に考えて曲がったりしてはならないのだ。
昨日の走行時に近い形で頭を空っぽにして、手綱の指示だけに従って曲がる。ほとんど無理な感触はなかった、これならもう怖くない。
コースは角の緩やかな楔型をしていた。左、右と曲がり、二度目の直線に入る。ここで次の指示があった。
「ちゃんと覚えてるよね?」
緩められた手綱が上から下に振られ、背中に打ち付けられてから再度引き絞られる。パッサージュの指示だ。わたしはそれに少しだけ頬を染めてしまっているだろうか。
脚を大きく挙げるパッサージュは、ウォークより速度が出づらい。そのまますぐに移れば急減速は必至で、最悪わたしが追突されてしまう。それを防ぐために少しずつ移行する。緩やかに減速した馬車はその効果を遺憾なく発揮し、繋いだベルトを緩めることなく無事に移行が完了した。
かぽ、かぽ、かぽ。それこそ行進で見せられるような、魅せるためだけの歩き方で馬車を牽いていく。なかなか進まない景色の端を想像してしまい、わたしの遮眼帯の奥には空想の観客が現れた。
「ふふ、恥ずかしいね。ついこの間まで人間だったのに、こんなにえっちな格好で拘束されて、しかも見せつけるみたいな歩き方で自分から馬車を牽いているなんて」
「フウゥッ!?」
馬としての意識に押し込められて隠れていたわたしのM心が急激に膨張する。ポニーである自分と見世物にされた哀れな奴隷が同時に去来して、貞操帯からはすぐに愛液が滲んでくる。
それでもわたしは歩みを止められない。水平まで上げる太腿を緩められない。もはやわたしは馬なのだから、その惨めさを見せつけるために歩かされていても逆らうことはできない。
「お疲れ様。二周目は軽く走るから、覚悟しておいてね」
恥辱と興奮のうちにあっさり直線は終わり、最後のカーブを経て元の場所へ戻ってくる。停止の指示にも無意識に従って、慣性を味方につけながらぴたりと停止した。ボディハーネスからベルトを取り外され、手綱を引かれて待機場所へ連れられる。アナと入れ替わりでその場に繋がれた。
「次はアナの番だね。馬車は大変だけど楽しいから、頑張ろうね」
覚悟といわれても、わたしは不意に煽られた興奮で頭の中がぐちゃぐちゃになっている。ひどく興奮したままの頭で仲間の歩行を見なければならないし、それもたぶん躾のうちだ。
「馬として使役されることとその苦悶に興奮し、走りながら絶頂できて、その間も無意識に走り続けることができる」。きっとご主人様方は、わたしたちをそんな馬に躾けようとしている。
わたしもそうなりたいと思った。小さな身体を綺麗に伸ばしてピアッフェをするアナを見て、貞操帯中からヨダレを止められずにいながら。
─────────────────
FANBOX先行公開はここまでです。追加シーンを収録して後日pixivにて投稿させていただきます。ひとまずはご支援ありがとうございました。
2019-06-15 12:22:38 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が変更される可能性があります。ご容赦ください。
「最後はカナの番だね。歩くのはずいぶん得意そうだったけど、これはどうかな?」
「ンブ、フゥッ」
頑張ります、だなんて鼻を鳴らす。これがわたしの、中途半端なポニーガールとしての最後の意思表示だ。おそらくは。
上半身をしっかりと固定され、手綱をぴんと張った状態で結ばれ、用意を終えた鞭が尻に触れる。わたしは深呼吸を終え、片膝を軽く曲げた。
「GO!」
「ムフゥッ!」
予想通りに少しだけ痛い肉への衝撃。それに合わせて片脚を上げ、これまでより大きく踏み出す。前脚が着くかどうかというところで後脚を蹴り上げ、小走りに相応しい速度で前へ。それを繰り返して走り出し、走るともいえないような微妙な速度で維持。
ただ前へ進もうとし続けて、カルゼルに繋がれた上半身の向きを引き寄せられるに従ってぐるぐると回り続ける。これなら疲れない。
「ン、ンッ、ゥ……」
が、微妙な速さも相まって滑稽さは一番ひどい。歩行カルゼルのような見世物感も、キャンター以上の力強さもどちらもない。あるのは滑稽な訓練っぽさだけ。それでも焦らず、かといって緩めもせず、息を荒立てもせずにジョギングのつもりで回っていく。
髪を揺らし、尻尾を振って。くるくるりと切り替わっていく周囲の光景を眺め、三半規管が酔わないぎりぎりの半径を実感しつつ。そんなことを認識できる余裕があるのは今だけだろう。
「ングッ」
「よく出来ました。次、行こっか」
「ァグッ、!」
手綱を引かれてゆっくりと、ちょうどオリ様とカメラの前で止まるように減速。足を止めても息を整える必要すらないわたしを見て、オリ様は間髪入れずに次の躾に入った。
お尻に鋭い痛み。思わず呻き声が出て、必死に轡を噛み締めて耐える。一度だけということはキャンターだ。その痛みをある程度そのままに、打たれた尻のほうの脚から出して走り出す。
「ハッ、ハッ、フッ、」
両腕が拘束されてなくなっているし、ポニーブーツで爪先しか使えない。とはいえマラソンの類いは経験があった。だいたいあのくらいを意識して、無理なく脚を前へ出す。轡に難儀しながらも息を整え、顔の前の銜枝を規則的に揺らしながら走り続ける。
心地好い疲労だ、なんて認識してしまった自分を殴りたい。ポニーガールに向いているのは嬉しいけれど、だからといってポニー特有の被虐が感じられないのは正直辛い。立派な家畜になるとは誓ったけれど、それとこれとは話が少し違うのだ。
だからなのか、それともただキャンターも上手くできていたからなのか。体感では前の二頭よりずいぶん早く手綱が引かれた。
「ずいぶん上手だけど……カナ、正直物足りないでしょ」
「フ、ゥ……ン」
当然ながら人間様の言葉を使うことなど心理的にも物理的にも許されていないし、手綱が固定されているから頷く動作もできない。仕方なしに視線だけを向けて伝えようとしつつ、同意を込めて一つ鳴いてみる。
伝わったらしい。窺うような表情が華やいだ。一気に華やいで、そのまま嗜虐を帯びた。こいつならもっと虐めても大丈夫だ、とでも言いたげに。
「じゃあ覚悟してね。もうそんな不遜なこと思えないように、わたしは拘束具を外していただくことすら無礼にあたるような卑しい家畜です、って思えるようになるまで止めてあげないから」
そうなっても言わせてあげないけどね。
そう呟いたオリ様の声は、わたしに最後まで聞くことは許されていなかった。
ばしん、ばしんっ!
立て続けに二度も叫びたくなるような激痛を浴びて、わたしは考える前に走り出した。
脚の出し方とか、カルゼルの存在とか、そんなものもう考えもしない。ただ走る。全力で走り続ける。それだけ。
「フッ、ハッ、ンクッ、ハ、ァッ、フゥッ!」
それでも拘束のせいで背筋は前傾してくれない。馬として綺麗な、生物として非合理的なフォームを無意識のうちに体へ染み込まされながら走り続ける。前しか向いていない視界の下端にブーツの先端がちらつくくらい必死に。
焼けそうな肺も、悲鳴を上げる心臓も気にせず。自然と動きそうになるのを止められ続けて感覚が意識外へ追いやられる腕も、アドレナリンで疲労が吹き飛んだ脚も無視して。
時折的確に差し込まれる鞭で背中と尻が満遍なく痛い。とっくにトップスピードなのにその度に加速しようとして、カルゼルがからからと激しく回る。苦痛で溢れた涙と運動で染み出した汗、最低限止めることも忘れて糸を引く涎にもはや止まらない鼻水。人間の女としては致命的な顔だが、ポニーガールとしてはこうなれなければ半人前……もとい半馬前。隠そうともせず、むしろ誇るように見せつけて、それどころか貞操帯の穴から大量の愛液まで垂らし始めて。
いつの間にか雑念も消えた意識を放置して、ただ本能だけに従って走る。簡単にモノにしたポニーブーツでの走り方を馴染ませ、浅ましい家畜の何も生み出さない走行訓練をカメラ越しに見せつける。人間様方、わたしなこんな家畜ですと。
意識が朦朧として、無意識の走りさえ覚束なくなり始める直前で手綱が引かれた。わたしはなおも無意識で命令を受け取って、今度はまる一周以上余計に進んで緩やかに停止した。もう何も考えられない。何も考えていない。「お疲れ様、よく頑張ったね」と抱き留めて撫でてくるリオ様に、これも本能で蕩けた微笑みを向けることすら意識していない。
ゆっくりと芝生へ横たえられて、この日の訓練は終わった。これ以上の訓練は無理だろうということだったし、進度自体は予定通りだそうだ。
とはいえ、ここまで消耗しては歩くことすら怪しい。体力がある程度戻るまで、三頭の馬は日向ぼっこを撮影され続けたのだった。その時のわたしに自覚はほぼなかったが。
結局夕方になってから畜舎まで戻り、昨日と同じ作業で処理されてから馬房へ入れられる。体力は回復していたはずなのに、わたしはぼうっとしたまま。横の二頭は何やら興奮を見せていたようだけど、わたしだけは特に反応も見せられなかった。
「ふふ、カナはいち早く家畜になれたみたいだね。いい仔」
轡を外されても声が出ることさえなく、目の前の餌を流し込む。そんな姿をリオ様が褒めてくれた。しかし当然のことだろう、わたしたちは馬、家畜なのだから。ただ馬主の指示に従って、言われるがままに走ればいい。それを今日の調教で学んだばかりである。
轡を噛み締めて再び万全となり、すっかり空になった餌皿が軽く水洗いされるところを眺める。貞操帯の奥がなんだか疼くけれど、そんなものは馬には不要だ。興奮を無視して藁に飛び込み、疲れに押し流されるように眠りへ落ちた。
◆◇◆◇◆
「すっかり立派なポニーガールね。走行訓練がそんなに効いたのかしら」
「カナはそれまでの歩行訓練で追い詰められてなかったからね。ここで改めてポニーの本懐を思い知らされて、そのまま呑み込まれちゃったんじゃないかな」
他の二頭が左右の馬房から眺めるカナを、私たちも鉄柵を隔てて見ていた。もちろんカメラも回っている。正直なところこれほど素晴らしいポニーガールが出来ることも、それが馬として眠る様を撮影できることも確信まではしていなかった。予想外の好結果に躾ける側としても喜びを隠せない。
初日は歩行調教だけで消耗し切れなかったカナが二頭を羨ましげにしていたが、今日は綺麗に逆転した格好となる。ミカもアナもまだ奴隷としての意識が残っているから、あっさり人であることを捨て去ってしまったカナに驚きを隠せないのだろう。
「あれだけ虐めてあげたのに、発情もしないとはね」
「あのカナがね。それだけ楽しめているということでもあるんだろうけど」
水浴びの時に二頭は腰を振って快楽をねだったというのに、一頭だけなんの反応も見せなかったのだ。仕方なしに鞭で軽く発散させてやったくらいだし、音も嬌声もそれなりにしたはずなのだが、それでも家畜として没入した瞳が知性を取り戻す気配はなかった。もはや才能の域だ。
とはいえ、私たちは彼女を……この三人をただのマゾヒストで終わらせるつもりは毛頭ない。ゆくゆくは逆の立場を経験させ、どちらの心理も理解できる優秀な部……おっと。とにかく、カナをポニーガールに専念させることはできないわけで。申し訳なくはあるけれど、理解してもらうしかないだろう。幸いにもカナは聡明だ。色々飛び抜けたミカとは違って、本来の意味で。
「明日も頑張ろうね。おやすみ、三頭とも」
今日は私たちも休もう。何しろ明日からは実際に馬車を牽いてもらうのだ。こちらも御者をしなければならないから、私の負担も大きくなる。馬たちより先に調教師がリタイアなどすれば笑いものだろう。
明日はどんな痴態を、勇姿を見せてくれるのだろう。私は今から楽しみで仕方なかった。
2019-06-12 13:43:15 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が変更される可能性があります。ご容赦ください。
小屋の傍に戻った二日目の昼、疲労状態の確認も兼ねて一度全ての拘束具が外されることになった。なんと貞操帯まで全て解放されて、ドーム内とはいえ豪快にも全裸の野外露出だ。恥ずかしくもあるけれど、それが興奮に変わらないような躾は受けていない。今すぐにでも開け広げにオナニーをしたくなってきたわたしたちだったが、
「貞操帯は外したけど、自分のお股には触ったらダメだよ。三人は私たちの奴隷なんだから」
の一言で綺麗に消沈した。どれが基準なのかはともかくとして、拘束のない状態では家畜扱いはされないらしい。骨の髄まで調教し尽くされた哀れすぎるマゾ奴隷のわたしたちには、この程度の拘束は言葉ひとつで充分。むしろわたしたちの拘束プレイはご褒美の意味合いが強いくらいだ。揃いも揃って自由を奪われることにとても興奮するから。
「ずっと餌だけでも味気ないし、今回はちゃんとご飯食べようね」
そんな憐れみのような文句で料理を差し出してくるオリ様だが、そんなわけがない。あれはわたしたちを弄んでいるだけだ。時々人間の食べ物の味を思い出させて、家畜の餌に慣れることを防いでいるだけなのだ。
それはわたしたちが食事中でさえ服を着せてもらえないことも証明している。あくまで休息中というだけであって、しっかり夏服を着こなしたご主人様方とは絶対的な隔絶があるままである。
餌だけでは回収し切れない運動量を補うためのカロリーなのだろう、ペペロンチーノと唐揚げという普段なら罪でしかない組み合わせを振る舞われた。しかしわたしたちはそれも簡単に平らげてしまって、胃を落ち着かせるためにまた少し休んでから改めてポニーガールへと戻ることになった。
「明日には馬車を使うから、今日のうちに走ることにも慣れておいてほしいの」
午後の調教は走行訓練だった。先ほどのものとは別の、しかしよく似た一頭用のカルゼルの前に連れてこられて、ミカが最初に繋がれる。一人でも器具は軽そうだ、先ほどより負担が増えることも鑑みて、アルミ製の良心的な物なのだろう。
一頭用の小さなものだから小回りが利くのか、それともこちらの方が先に実験台になっているのか。どうやら少し便利になっているようだ。
「最初に鞭で指示を出すから、その通りに走って。止める時は手綱が引かれるから、それに従ってね」
ミカの手綱は身体を固定する部分の少し後ろにある器具へ結ばれていた。ここが独自に稼働することで引くことができるというわけだ。操作は……どうやら携帯端末で行うらしい。確かに自主的に止まらせていた歩行訓練とは大違いだ。
今回もカメラの設置を待って、プレイ用の乗馬鞭を手にしたオリ様が近づく。ついに鞭の出番だ。あれは受けたことがあるけれど、普通にすごく痛い。本物を使ったら人の皮膚など簡単に裂けてしまうから、これでも随分柔らかいのだけれど。
「本当は馬に名前を教える必要なんてないんだけど……言ったほうが覚えやすそうだし、視聴者さんもいるからね」
揃ってびくりと跳ねるわたしたち。
「これまでにやった、普通に歩く動作が『ウォーク』。腿を上げるほうの歩き方は『パッサージュ』。ポニーガールには難しくないからやってないけど、パッサージュのまま前進せずに足踏みするのが『ピアッフェ』。これの指示は今度ね」
実用性のない見せ歩きにも名前はあるらしい。わたしはろくに馬術を知らないから、そうと知らされても納得がいっただけだが。
ポニーガールは、と前置詞がついたあたり、ピアッフェは本物の馬には難しいのだろう。それが簡単にできるのはポニーガールの実質唯一の優位かもしれない。
「それと速歩の『トロット』」
まだ動かないでね、と前置きしつつ、オリ様はミカの丸出しの尻肉へ軽く鞭を打ちつけた。自然とミカの背筋が伸びる。おそらく打たれたとわかるだけで、そんなに痛くはないだろう。
速歩、あるいは早足。つまり歩きと走りの中間だ。軽く走るかどうかくらいのイメージだろうか。パッサージュまでは知らなかったけれど、馬術の表面だけなら昔ちょっとだけ聞いたことがある。
「次に駈歩、『キャンター』」
「ンムゥッ!」
ばしぃん、と大きな音が響いた。ほとんど同時に悲鳴のような鳴き声。オリ様がかなり強く打ちつけたから、あれは痛いだろう。その痛みを紛らすためには当然走るしかない。
駆け足。走れということだ。だいたいマラソン程度の力の入れ方。馬としての役目を果たす走り方はこれが多い。
「そし最後に襲歩、『ギャロップ』」
「ッグ、ムゥンッ!!」
キャンターと同じくらいの強さで、今度は左右の尻が一度ずつ叩かれた。痛みも当然倍である。普通に走る程度では誤魔化しきれない。
襲歩の指示は全力疾走。つまりスタミナなど無視して必死に走れということ。誰だってこんな状態で後先を考えない、どころか自分から捨てるのは怖いに決まっている。馬の場合もポニーガールの場合も、ギャロップには乗り手と馬の強固な信頼関係が必要となる。今回は心配いらないところだけど。
「覚えたかな。さっそくやっていきたいんだけど、大丈夫?」
「ンン、ゥッ……」
痛みを紛らすように小さく──大きくできないのはカルゼルの拘束があるからだ──尻を振るミカ。痕はないとはいえ痛みが残るだろうに、気丈にも彼女はすぐに頷いた。
それからの光景は、正直、想像以上だった。
手綱の動きを読んで、なんて悠長な様子はない。ただ痛みに突き動かされて、方向なんてカルゼルに全て任せてしまって、ただ走ることにだけ集中する。その指示が最優先、馬自身の体感的な体力なんて無視。
ただ走る。調教師様が潮時を見極めて止めるまでひたすら走って、手綱で止められたら次の躾。全ての走り方を終えて、本当に動けなくなったら次の馬。
……このようなカルゼルによる走行訓練は実際の馬は行わない。これはポニーガール専用の、甘ったるくもポニーガールになりたいだなんて口走ってしまったマゾメスの尊厳を完膚なきまでに叩きつぶす、本物の躾だ。本当の意味で人間を家畜に作り替える、もう冗談みたいな装置だ。訓練を終えて解放された二頭の表情を見て、わたしはそれを確信した。
それは昨日と同じ。いや、もっと激しい。もう自分自身なんてどこにもないような、あの大きなアルミのミキサーで撹拌されて遠心力で飛んで行ってしまったような、今から自分で考えて動けと言われてもできそうにないほどぼうっとした瞳。自分にはたったひとつしか存在価値がないのだと、本能までしっかり刻み込まれた家畜の瞳。
わたしも今からそうなるのだ。考えるだけで表情が緩んだ。轡を噛まされていなければ、一体わたしはどんな表情を浮かべていただろう。
2019-06-08 14:02:04 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が修正される可能性があります。ご容赦ください。
「ン……ゥ……」
下にした肩の下から藁が擦れるような音がした。緩やかに浮上する意識が体のあちこちに異常を捉えるが、すぐに現状を思い出して気を取り直した。身体を捻ると束ねられた腕が拘束感を伝えてくる。
ポニー合宿二日目、雌馬としての目覚めは意外と悪くないものだった。
「はぐ、むぐ、んむ……」
「朝の餌はこれだから、しっかり食べてね」
同じだとばかり思っていたが、どうやら餌も複数種あるらしい。ざく切りのキャベツにやや肉そぼろ感の増した流動食を掛けた餌を口を汚しながら頬張る。昨晩と違って硬い咀嚼音も響くあたり、屑野菜──に見立てたもの──を食べる馬を演出したいのだろう。排泄の時以外はカメラも回っているし。
やはり皿入りの水もしっかり飲み干して、用を終えた口は轡で封印してもらう。朝は小さい方だけ排泄の処理を済ませて、銜枝と遮眼帯を着けられると昨日と同様に外へ連れ出された。
「昨日で三頭とも歩き方は覚えてくれたみたいだから、今日は身体に染み込ませようね」
昨日の何もない平地から少し離れて、何やら仰々しい機械のもとへ。順調ならば二日目は機械で歩行訓練をすると聞いている。
太い柱の頂点から等間隔の三方向に細めの梁が伸び、その先端からさらに三本の細い棒が垂直に降りている。見掛けからの第一印象は……空中ブランコ。いや、
「カルゼル、って機械だよ。たぶん見ただけで使い方はわかると思うけどね」
メリーゴーラウンド。いかにもな命名だ。複数の馬がくるくる回る。何も間違っていない。違うのは馬が自分の脚で歩くことと、勝手に回ってはくれないことだけだ。
その手前でカメラに三脚が取り付けられた。確かにこれなら定点撮影が可能だ。絵としてもやっておきたいのはあるのだろう。この手の訓練器具は出処こそわからないが、今やポニーガール調教の創作イラストなどには定番といってもいいから。
「一定回数だけ回ったらブザーが鳴るから、それまで。手綱は引いてあげられないけど、頑張ってね」
それぞれ先端に金具がついた三つの棒に挟まれるように立つ。高さが調節された金具をハーネスにしっかり固定されると、それだけで上半身は動かなくなってしまった。
他の二箇所でも同じように馬が繋がれる。これでわたしたちは運命共同体だ。代表してわたしが尻を叩かれて、乾いた音とともに鋼鉄製の遊具はゆっくりと回り始めた。
「フッ、ゥ……ン、ッ」
三本の梁は固定されている。誰かが歩けば勝手に回って、他の二頭は繋がれた棒に押し出される。それに反応した二頭も同じように歩き始めれば器具の重さも目減りして、三頭がかりではほとんど抵抗を感じないくらいになった。
腿上げ歩きの命令は受けていないけれど、呼吸を合わせるために誰からともなく歩幅と踏み出しの速度も合わせられた。もちろん一番小柄なアナに合わせて、無理をしていそうな息遣いが聞こえなくなるまで減速して。
「ン、……フッ、……ゥッ」
これが意外と難しいけれど、必要な訓練だった。オプションではあるが、二頭立て馬車も用意されている。二頭で一台の馬車を牽く時は、ペースを完璧に合わせることは必須条件である。それも遮眼帯でお互いが見えない状態で、だ。
だから今のように、大きな円形に配置されて視認できない互いを察知することはポニーとして大切な技能。複数立ての馬車を牽くということは、馬にとってとても名誉で難しいことなのだ。
「フゥ……ンゥ……ッ、」
昨日と同じだ。そうしてずっと歩いていると、何も考えられなくなってくる。ただ他のことを何もせずに歩き続けるだけでいるからか、雑念や興奮などの余計な感情が自然と消えていくのだ。羞恥や屈辱といった邪念も心の中でどんどん後回しになる。昨日と同じであれば、訓練が終わって落ち着いたその瞬間に一気に押し寄せるはずだ。
今はカメラを向けるシノ様と並んで話をしているオリ様の話が事実なら、そのうち思考を放棄したまま絶頂だけを感じることもできるようになるという。放棄された興奮という過程を飛ばして、一足飛びに生物としての絶頂だけを得られるのだとか。それも痙攣や嬌声といった、外部へ主張する快楽の証拠を出すことなく。
「ハッ、ハッ……ァ!?」
「止まらないで」
そうして配慮していたとはいえ、やはりふたまわり以上も小柄なアナには過酷だったかもしれない。何十分そうしているか分からなくなってきた頃、空っぽになった意識に蹄鉄がたたらを踏む音が聞こえた。
思わず歩行を緩めようとしたわたしとミカに、オリ様から鋭い声。今のわたしたちは従順な家畜だ、人形と化した身体は叱責ひとつで動きを維持する。重くなった器具をものともせず、慌てて歩幅を戻したアナを一瞬だけ引きずるように。
「フッ、ハァッ、ンゥッ、ウゥ……!」
もう無意識だろう、苦しげな声を垂れ流しつつも無理やりわたしたちに合わせてくる。間違いなく無意識のペース配分すら無視した無茶だろう。後で聞いたところによると、この時のアナは涙と涎でぐしゃぐしゃになっていたらしい。
「はい、そこまで」
「フッ……フーッ……」
無機質なブザー音で反射的に減速を始め、今日は物理的に感じる完成に合わせてオーバーしながら停止。さすがのわたしもミカと同様に息を切らしていたし、アナに至っては止まってすぐに泣き声が聞こえてくるほど。歩いていた体感時間は昨日の訓練とさして変わらないのに、感じる疲労の差は歴然だった。
「ッゥ、フェェ、ッ、」
「大丈夫、アナ?」
すぐに器具から外され、柔らかい芝生に寝かされる。轡こそ外されなかったが顎の下を締め上げるベルトを緩められ、わたしたちも寝かされながらに嗚咽を聞き続けた。
しばらく休んで落ち着いたあたりはさすがだったが、すぐに再開は無理だろうという結論に達したらしい。疲労困憊のアナは一旦休ませ、午前中の残りの時間はわたしとミカが二頭で回すことになった。
その間、アナはというと。
◆◇◆◇◆
「フゥッ、フゥゥッ……」
その間あたしは、カメラを定点に置いて暇になっていたシノ様にお仕置きを受けることとなっていた。今は近くの躾小屋で二人……一人と一頭だ。
負担の大きいアームバインダーを一旦外して筋肉を揉みほぐし、ブーツと近い形状のポニーグローブを履かされる。これはこれでポニーらしいアイテムだったけれど、今回は採用されなかった。腕もとい前脚の拘束が弱いと、慣れた馬でない限り走りづらいのだそうだ。
そのまま腹ばいにされ、腹部を柔らかい跳び箱のような器具にベルトで縛りつけられる。擬牝台と呼ばれる器具の模倣だ。本来は家畜の精液を採取するために使われる道具なのだが、この拘束具は今のように牝を拘束して完成と表現するらしい。確かに今のあたし、後ろから雄馬が種付けするのにずいぶん都合がいい格好をしているけど。
……それだけ。
「ゥ……?」
こんな拘束をしたのだからてっきり尻でも叩かれるのだろうと身構えていたが、そんなごく簡易的な拘束を済ませたシノ様は特に動きを見せなかった。訝しげに鳴いてみせても、鞭やパドルを持つ気配はない。
次に何をしたかと思うと、顎を載せる台に前を向かされたあたしの目の前にモニターを設置した。そしてあたしの耳にヘッドフォンを装着。まさかと思う間もなく、モニターはあたしの予想通りの挙動を始めた。
『……フッ、フッ、ゥ……』
『ハッ、ハッ……』
うつ伏せで休まされたあたしの目の前で、おそらく今まさに行われているであろうカナとミカのカルゼル調教が映し出された。ヘッドフォンもしっかり仕事をしている。
あたしはあの場に居られなかった。それなのに今こうして、あたしは外から見せつけられている。二頭とも息遣いが艶かしい。ヨダレも垂らして、瞳もしおらしく潤んでいる。それなのに脚は勝手に動いている。ついさっきまで自分も参加していた歩行訓練が、こんなにも扇情的だったなんて。
「ウゥッ、ンフーッ、ァウ……!」
狙い通りそのままだろう。あたしはすぐにもどかしくなった。そんな体力はないのに、またああして歩かされたい。そんな権利はないのに、せめて溜め込まされる不似合いな淫欲を発散したい。
ついに我慢できなくなったあたしは、擬牝台の上で浮いたまま自由になっていた四本の脚を馬のようにばたつかせ始めた。こうしていればまた馬として認めて貰えるのでは、という淡すぎる期待。あるいはただ我慢しきれなかった衝動の惨めな発露。
「ハフッ、ハフッ、ンーッ……!」
だがもちろん、そんなことをしても何も変わりはしない。こちらでも回され、あたしのポニーらしい部分を撫でるように写していくカメラに滑稽なお仕置き馬の姿を記録するだけ。
そうして揺れる尻尾が、威勢よく台の上で走る四肢が、これでもかと撮影されていく。もちろん脚の拘束が甘かったのはこの絵を撮るためだ。半分くらいは無意識のうちにとはいえ、あたしはまたカメラに媚びてしまった。
ああ、早く午前の躾が終わってくれないか。気持ちよくなんてなれないとはいえ、午後になればあたしも走れるのに。発情させられながらそんなことを小一時間思い続けるのだから、あたしへの懲罰としてはこれ以上ないものだった。
2019-06-05 15:21:23 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が修正される可能性があります。ご容赦ください。
手綱を天井に繋がれ横一列に並ぶ。目の前のオリ様はホースの先端を持って蛇口に手をかけ、シノ様はやや斜めからわたしたちをレンズに映していた。
ここまで来れば誰だってわかるだろう。馬拘束のまま水浴びだなんて、なんて惨めなのか。
「ちゃんと綺麗にしようね。大丈夫だよ、ちゃんと一頭ずつやるし、冷えないようにすぐ拭くから」
なるほど、確かに風邪を引いては大変だ。折角の合宿なのにポニープレイはそこで終わりである。胴体は丸出しのこの格好でも寒くない、つまり厩舎に暖房が掛けられていることにようやく気付いたのはわたしだけだろうか。
しかし、また横並びで一頭ずつらしい。最初は中途半端で不要ではとも思った遮眼帯だったが、こうも意図的に横目にさせる場面を作られると意識してしまう。これだけ近くの真横にいるのに全く見えないというのは、どうやらわたしたちの人間としての精神を削っていってしまうようなのだ。
「ファゥ、ンッ!」
「ンゥッ、フゥゥ……!」
今回はわたしが最後だった。横から他の馬の可愛らしい嬌声が聞こえてくる。もどかしい。わたしだって運動後、うっすらかいた汗は早く落としてほしいのに。
「アフ、ゥァ……!」
一頭ぶんの放水の後、水を止めてタオルで拭き取る。二度目のそれが終わって合図もなしに飛んできた水流に身体を打たれ、わたしも似たような声を出してしまう。
ぬるま湯の流水をぶつけられるだけの粗雑な水浴びだが、それが癖になってしまいそうなほど心地いい。自分は馬なのだと、ことあるごとに刷り込まれるような丁寧な飼育が気持ちよくて仕方ない。
いっぽうでタオルは優しく当てられる。家畜だからといって全ておざなりにされるわけではない。ただ体が大きくて肌も人間より強い馬の真似をしているだけで、家畜も人間様に大切にされる存在だ。わたしたちが明日も元気に歩けるよう、必要な労いはちゃんとしてくれる。
「そのまま待ってて。トイレもこのまま済ませちゃお」
……予想はしていた。何しろ今のわたしたち、水の流れている溝のすぐ前に立たされていたから。落ちないよう金網は被せられていたけれど。
一頭ずつ、今度も向こうから順に処置が行われる。人間に払われるプライバシーなど馬にはないから当然だが、見えずとも音は聞こえてしまうのだが。呻き声があまりに恥ずかしそうなので聞くのはやめたけれど、無論他人事ではない。
「最後はカナの番ね。しゃがんで脚を開いて?」
言われた通りの姿勢をとったわたしの貞操帯が外され、足元の金網も取り払われる。ちょうどお尻の下に溝が来るところだ。晒された水浸しの女性器から命令通りに尿が垂れて、それが終われば先ほどよりも緩い水流で綺麗に流される。
カメラを止めて後ろに回っていたシノ様に尻尾プラグを抜かれて変な声を出してしまいつつ、本日二度目のお浣腸。
……ここから貞操帯を嵌め直すまでは、割愛させてほしい。確かに好きこのんで馬に身を墜とすような変態だけど、わたしだって乙女なのだ。一応。
諸々の処置を終えてすっきりしたわたしたちは馬房へ連れ戻され、銜枝ごと手綱を外された代わりに鉄格子に閉じ込められた。
わたしたちを散々苦しめた遮眼帯も外されている。夜はこの格好が基本にになるそうだ。各馬房に簡易小便所はあったが、それも貞操帯も使えば丸わかりになってしまう仕様だった。使わずに済めばいいけれど。
それに加えて、三つ隣り合わせになった畜舎は視覚的に隔てられていないのだ。お互いのことはしっかり見えてしまう。
「みんな、ご飯だよ」
「……アゥ」
時間は夜、到着が午後だったから昼はなかったが、当然これもある。何が起こるかなんて見え透いた餌の時間を認識して、わたしたちは一様に震えた。ほんの少しの恐怖も多少の期待、それと大きな興奮。きっとその割合は三頭とも同じはずだ。
次々に鉄格子に空いた穴へ顔を出す。ちょうど少し余裕を持って頭が通るくらいの、用途がわかりやすい空間を使えばすぐ下には受け皿がふたつ。というか、餌皿なのだろう。縦に割った竹がしっかりと設置されていた。
「見た目はともかく、ちゃんと美味しいから。たくさん食べてね」
「ん……あぐ、っむ、んくっ……」
その竹皿のに注がれたのはあまり美味しそうな見た目はしていない流動食と水だった。食欲を奪うほど毒々しい色はしていないが、そもそも流動食そのものが食欲を煽らないのだから仕方ない。
しかしこれが美味しいらしい。こういう時のオリ様は嘘をつかないし、馬であるわたしたちにわざわざ言ったのならなおさらだ。さすがに気遣いが必要だと思ったのだろうし。
ヘッドハーネスから口枷を外されて、自由になった口をおそるおそるつけてみる。舐めとったそれは意外と悪くない味だ、わたしとミカはそのまま食べ始めた。
「ああ、轡は外したけどお前たちは馬だからね。人間の言葉なんて喋らないよね?」
「あ、ぅ……はむ」
三頭揃って一応の警告を当然と聞き流すが、アナは少し様子が違った。餌の美味しさには気づいたみたいだけれど、口の付け方が控えめだ。わたしたちと違って彼女だけはペットプレイを経験していないから、当然なのかもしれないけれど。
ところがそんな女々しい、人間らしい挙動を、我らが調教師様が許すはずもなく。
「むぐっ、うぅ!?」
「後輩なんだから戸惑うのもわかるけど、餌はちゃんと馬らしく食べようね?」
「ん、ぅ、ぅっ……!」
後頭部を掴まれた勢いで口を餌皿へ突っ込まされ、真上から注がれる笑顔の圧力に耐えかねて大人しく食べ始めるアナ。心なし涙目になっているが、馬であることを放棄すれば口答えできる今も従っているのだから心配はいらないだろう。
こうした姿を目の当たりにすると、わたしたちはほんとうに馬として躾けられているのだなと実感する。嫌と一言言えば解放してもらえる環境だから、当然ながら皆望んでこうしていることは明白だし。
甘過ぎず辛過ぎず、飽きがくる味でもない餌はいつの間にか消えていた。つくづく技術力の無駄遣いだ。介護業界に売る予定はあるというのは後から聞いた話だけど、開発の動機がどう考えてもおかしい。そのおかげでわたしたちは今のように快適なプレイに興じられるのだから、ありがたいことこの上ないけれど。
「んく、んぐっ……」
続いて水皿にも口をつけて直飲み。これもまた被支配感を煽ってくる。轡に空いている小さな穴に先端を通せば厩や待機地点の壁につけられた給水器からも水は飲めるけれど、皿から飲んだ方が楽だった。そうでなければわざわざ獣のような飲み方などしないから、これもやはり計算のうちなのだろう。ファーストテストはどのように行ったのだろうか。
揃って餌を平らげたわたしたちは改めて轡を噛まされ、ご主人様方が去って暗くなった畜舎で藁の寝床に横になった。思ったより柔らかいし、素肌にちくちくしたりもない。気分を煽られ続けるだけで、この調教は徹底的に無駄なストレスが排除されている。それがミスト・スランバーの方針でもある。
「ッ、ウゥ……」
切なげな呻き声と一緒に藁を鳴らしたのはミカとアナのどちらだろうか。気持ちはわかる。これだけ煽り続けられて、性刺激はまる三日以上の合宿の間一度として与えられないのだ。貞操帯の中がもどかしい。今すぐ慰めたくて仕方ない。でも性器は分厚い拘束具の中だ。そもそも腕も動かない。
しかしそんな状態なのに、三頭とも眠れないとはならなかった。やはり慣れない拘束状態や歩き方、歩行訓練で疲れがあったのかもしれない。アナのアームバインダーが藁と背中を叩く音もいつの間にか消えた。
「ン……ムゥ…………」
余計な自由がない状態がひどく心地よくて、不健全な行為による健全な疲れもあっていつもより眠りは深かった。ポニーとしての姿がずっと前から馴染んでいるかのような、どこか不思議で気持ちいい感覚だった。
2019-06-01 15:27:16 +0000 UTC
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・夕瀬 澄歌(ゆうせ すみか→ミカ)
年齢:19
身長:153cm
カップ:D
私立某大学一年(→もうすぐ二年)。活発。やや中性的口調。髪は茶色気味のショートボブ。地毛。
中学・高校時代ともに学年トップの経験もある秀才で、思考回路が天才気質。たまに激しい理論飛躍が起こり、最も慣れている奏すら困らせることもしばしば。根本的に頭の作りが違うようで、偶然同じ大学に決まったことを知った霧宮莉緒は迷わず奏経由で下宿の誘いを出したほど。
物心着いた頃から中学校を卒業するまでは常に幼馴染である倉場奏と行動を共にしていたが、コミュニケーション能力は決して低くない。対人チートである秋星妃菜、入学数日で学校のアイドルの立ち位置を確立した上城亜未と特に仲が良かったあたりからも窺える。
しかし先述の思考飛躍なども相まってあまり頭のよさそうな言動はしない。奏曰く「ナントカと天才は紙一重」。同居メンバーの中では唯一演劇経験がないが、亜未と近しかったためか演技力も悪くない。
一方で運動はあまり得意ではない。どちらかというと肉付きはいいが、奏のほうが身体能力は高い。運動時は特に自らの胸を邪魔と断ずるが、別に目立つほど大きいわけではない。奏や妃菜が小さいだけである。
大学進学を気に霧宮邸へ下宿を始めたが、しばらくは何事もなく過ごしていた。しかしある日偶然オリとカナのプレイを見てしまい、その日からわずか一ヶ月で立派なマゾ奴隷となってしまった。莉緒留学中は先輩奴隷であるカナと交互にプレイを重ねていたが、莉緒が帰国後の春休みに行われたテストプレイ(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10427017)を機にミスト・スランバー社のテストプレイヤーに。以降は退路が絶たれていくことを自覚しながらもさらに変態プレイにのめり込んでいくこととなる。
調教の成果で大抵の被虐で快楽を感じることができる体だが、特に羞恥系統のプレイに弱い。相性のいい拘束具は縄で性感帯はお尻、好きなプレイは浣腸からの排泄管理。体が非常に柔らかく、少々無理な姿勢も簡単に取ることができるためテスト時は重宝されている。
2019-05-29 14:59:56 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が修正される可能性があります。ご容赦ください。
ほどなく全員の着付けが終わる。一人……もとい一頭ずつ馬房から連れ出され、開けた外に出ると三つの手綱をひとまとめにされてその場に並ばされた。
足元も覚束ないし、毎度のこととはいえ曳かれて歩くのはどうにも被虐心を煽られる。ドーム越しとはいえこんな格好で日光に恥部を晒したのは初めてだし、半裸の体を撫でていく風にどうしても体が縮こまって……風?
「雰囲気を出すためにね、風が吹くようになってるの」
どうして空調がしっかりしているドームの中で屋外のような風が吹くのかと思えば、わざわざそう作ったと言われてしまう。ミスト・スランバーらしいといえばらしいけれど、全く末恐ろしいというかなんというか。
オリ様はそんなことを喋りながら、両端にいたわたしとミカの手綱を軽く引いた。するとどうだろう、自然と一歩だけ踏み出しながら向かい合うような向きに変わる。少なくともわたしは何も力を入れていないのに。
いっぽうシノ様はというとビデオカメラをこちらに向けていた。片手サイズで充分な性能を持ったこれまたスグレモノの自社製品である。調教風景を動画にすることは事前に承諾済だ。いちおう性器が隠れる貞操帯を着けたのはこのためでもある。
「アウ、?」
「ほら、お互いに見せあっていいよ。仲間のポニーのことはちゃんと、ね?」
「ウゥ……」
言葉に合わせて内向きの三角形になったわたしたちは、お互いの恥ずかしいところをこれでもかと晒すことになった。それも当然だ、家畜は飼い主の命令に逆らえない。ついさっきまでは遮眼帯で見えなかったというのに。
恥ずかしそうな呻き声をあげながらもじもじと身を捻っているのは、まさにポニーというべき小柄な馬となったアナだった。わたしと違って王道のアームバインダーでまとめられた腕をぱたぱたと動かして、真っ赤な顔から涎を垂らしている。セミロングの髪はポニーテールにしているから、その小柄さも相まってなんとなく無邪気そうな雰囲気が醸し出されていた。さすがは合法ロリ、犯罪臭がものすごい。
その隣では比較的落ち着いているミカの姿。両腕は肩までの拘束衣で体の前に回されて固定されている。三頭の中では飛び抜けて豊満な乳房が強調されるように抱えられているが、これは揺れて痛めないための配慮でもあるのだろう。なんとも妬ましい。
一方でわたしはこの中では最も背が高い。胸はないけれど、拘束による姿勢矯正もあってすらりとして見えるのだろう。二頭からのこれも羨望のような視線を感じた。
「かっこいいカナ、かわいいアナ、えっちなミカってところかな。三頭とも、もう一回こっち向いて」
「ンゥ」
今度はさっきと逆側の手綱を引かれて体の向きが戻り、そのまま少し緩められた。わたしもミカもその意図を察して、自ら一歩下がり横並びになる。
「それじゃ改めて。これから三日間をかけて、お前たち三頭を立派なポニーにしてあげます。よろしくね」
お互いは見えないながらそれぞれ頷く気配。三泊四日のポニーガール合宿、わたしたちはここで雌馬になるためにみっちり叩き込まれるのだ。
カメラへの挨拶の意も含めて、顔の赤さはそれぞれながら全員が胸を張る。後で見てくれる人のためにも、魅力的なポニーになってみせなくては。
「まずは歩いてみようか。一頭ずつ」
ミカとアナの手綱が厩舎の壁に括りつけられ、わたしだけがオリ様に引かれる。力が入るのを感じるままに、引き寄せられて前屈みになる前に自分から歩いていくと、オリ様の表情も少し緩んでいるように見えた。
カメラから少し離れて横向きになり、一度止まってまっすぐ前を向く。オリ様はわたしの手綱を持ち上げ、絡まらないようにわたしの背後へ移動した。これだけでも全てを委ねて、自ら進んで家畜になったことがありありと示される。
「ひとつめの合図。普通に歩いて」
くいっ。短く持たれた手綱が少し緩められて、改めて軽く張られた。言われた通りに歩き出すと手綱はそれ以上後ろに引かれない、オリ様も後ろからついてきているようだ。
爪先立ちを強制されて、いつもより小さい足でゆっくりと歩く。とはいえやはり考えられた設計なのだろう、思っていたほどの難しさはまだなかった。すぐに慣れられそうだ。
「次。見せつけるように太股をしっかり上げて歩きなさい」
ぴしゃん。手綱を一度背中に打ちつけられて、さっきと同じ形に戻る。わたしは言われたまま、腿を水平まで上げて足を進め始める。横で見ているであろう他の二頭から遮眼帯越しに気配。
普通に歩くよりも歩幅が小さくなってしまうし、何より恥ずかしい。その感情もあったのだろう、少しずつ無意識に脚が下がっていって───ぱしぃん!
「アゥッ!?」
「脚が下がってる。手で指導してもらえるうちに修正しなさい」
「フッ、ゥ……」
T字型の貞操帯から丸出しの尻肉を、オリ様に平手で叩かれた。乾いた音と痛みが叱られていると認識させてきて、わたしは慌てて脚を振り上げる。しばらく続けば背後の空気も戻ったが、少し余計な体力を使ってしまった。
「次は方向転換。手綱が引かれた方向に曲がって」
「グッ、ウ」
不思議なことに、手綱が右に引かれると自然と体も右へ向く。その感覚に任せて歩き続ける。後ろにオリ様を、仮想的に馬車を牽いていることも思い出して、ゆっくりと慣性を従えるように方向転換。どうやら無事に曲がることができたようだ。
「いい仔。このまま合図するまで歩いてみよっか」
これは歩行訓練だ。別にこの歩行はわたしの経験以外に何一つ利をもたらさないが、今のわたしは歩くことが仕事。手綱の感覚に身を任せて歩き方を覚えることに集中した。
緩められてから張りが戻ったら歩幅を広げて、軽い痛みを感じたら脚を振り上げる。手綱の引かれ具合で曲がる角度も感じ取り、ずっと伸ばした背筋は崩さない。なんだか楽しい。まるで自分が、信号だけで動くただの道具になってしまったかのような。もうわたしの思考は何一つ仕事をしていない。
「はい、ストップ」
「グゥ、ッ」
「上出来だよ、カナ。初めてとは思えないくらい」
ミカとアナの目の前に戻ってきて、不意に手綱が後ろに引かれた。初めての指示だったが、これは考えなくともわかる。軽く顔を上向けつつ、架空の慣性に従って緩やかに止まる。まだ遠いであろう馬車を意識し過ぎだろうか?
停止して初めて呼吸が乱れていないことに気づく。こんな拘束状態で長く歩き続けたのだから、本当ならもっと息が切れるはずだ。それなのに今は苦しいどころか、深呼吸を少しするだけでいつも通りになるくらいだ。
「呼吸が乱れてないのは、リズムに合わせて上手く歩けた証拠。走っても……は無理だけど、馬車を牽いて歩いても今みたいな状態になることが今回の目標のひとつなの」
そう言われるとなんだか誇らしい。口枷とベルトでほとんど動かない口角の代わりに目尻を下げて感情表現。オリ様はわたしの頭と体を撫で回してくれて、それから建物の突起に手綱を結んだ。
しばらくは体を休めつつほかの馬の調教を眺める。どちらもわたしほど上手くは行かなかったようで、何度かお尻を叩かれていた。
ミカは小回り効かせ方が掴めず、アナは慣性がうまく取れなかった様子。ちゃんと修正できるまで歩かされたものだから調教時間もわたしより長く、どちらも息が切れてしまっていた。
……でも、あの表情は羨ましかった。もう何も考えられない、疲れからの程よい脱力。ああなれば誰だって手綱に忠実になれるだろう。わたしの被虐心が叫ぶのだ、アレは絶対に気持ちいい状態だと。
「予定通り、今日はここまでにしようか。移動の疲れもあると思うし、夜はしっかり休んで」
結局わたしだけもう一度やったのに、それでも二頭のようなトランス状態には陥れず。日も傾いてきた頃になってオリ様は訓練の切り上げを宣言した。少し弛緩した空気が出てしまうあたりは、これもある意味でいつもと違わないという証左だろうか。
わたしたちは手綱を前に引かれて──これは『連れて行くから好きに歩け』の意──厩舎の一角へ向かったのだが。
シノ様はまだカメラを持ったまま。わたしたちの拘束具は全て防水仕様。連れられた先には水周りらしき空間と、いかにもな置かれ方をしたホースがひとつ。
……なるほど。
2019-05-29 14:14:00 +0000 UTC
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隣の馬房から聞こえていた着付けの音が止まった。本番になれば鉄格子ひとつを境にして通路も隣も丸見えなのだが、今はカーテンを閉められているから見えることはない。それでも澄歌……いや、ミカが服を脱ぎ、拘束具を着け、馬へ変わっていく姿は鮮明に想像できてしまった。
「お待たせ。次はカナの番だね」
「はい。よろしくお願いします、ご主人様方」
入口のカーテンを開かれ、連れられるままに通路へ出る。馬房の中はかなり狭いから着付けに適さないのだ。もう中に馬がいるのであろうミカの部屋も、私よりさらに長い順番待ちで焦れているはずの妃菜の馬房もしっかりカーテンを閉じ切られていた。
まずは通路で平伏。まだ新品である土の床は私のデニムパンツをほとんど汚さなかった。挨拶を終えて立ち上がり、自分の手で人間の証である衣服を脱いでいく。二箇所の出入り口は開いたままのそこで裸を晒す開放感を味わい、生まれたままの姿に戻れば服を畳んで横に置き土下座。もちろん湿りかけの下着のクロッチは開いて上に置いた。
「よくできました。……でも、あなたが奴隷でいられるのはここまで。尊厳を奪われる覚悟はいい?」
「もちろんです。どうぞこの雌奴隷めを、下賎な雌馬へと貶めてくださいませ」
「いい仔。じゃあ、始めるよ」
まずはボディハーネスを着ける。ラバーポニーも良い気はしたけれど、せっかく見られる心配のない太陽の下。今回はわたしも裸馬だ。胸元を絞り出し、胴体に金具をいくつか纏わせる。股には細いハーネス二本を左右へ柔らかく通して秘部を開かせるように。ミスト・スランバーの創意工夫によるものか、ハーネスの着用感は痛くなりそうにない良好なものだった。……しばらく痕が残るのは覚悟の上だ。
これだけでも興奮は起こしてしまうが、仕方ないだろう。そういう風に躾られているのだ。
「次、腕出して」
「はい」
今回は三頭の馬それぞれで腕だけ拘束方法が違うらしい。姿勢からして変わるからバリエーションとして試しておく、とかなんとか。わたしの担当は後手拘束らしい。
背中側で肘を抱いて向け、そこに袋状の拘束具を被せる。縦ではなく横のアームバインダーといった雰囲気だろうか。袋を締め上げて胸にベルトを回し、ハーネスへ固定。これだけでわたしの腕はなくなったみたいにコンパクトになってしまった。
「改めて、しっかり浣腸をしておこっか」
厩舎の通路を貫いて水を流す側溝を跨いでオリ様──先日から“ご主人様”が二人になったので、自然とこう呼ぶようになっている──へ尻を突き出し、肩は正面のシノ様に投げ出す。下品ながに股で突き出したお尻に大きな注射器のような浣腸器が突き刺さる。
「あっ、ぁ……あーっ……」
お浣腸は普段からしないこともないが、今回はいやに雑だった。快感の前座ではなく、ただ洗浄行為として行われていることが嫌でもわかる。
数分後、馬として然るべき処置を終えたわたしは頬を染めもせずに肩で息をしていた。
「そのままね」
「はい……んぅっ」
ポニーガールがお尻を綺麗にしたら?
疑うべくもない。尻尾を与えられるのだ。
準備万端の肛門へプラグが挿入され、不覚にも少しだけ感じてしまう。今のわたしのような奴隷には少し細いそれだけで済むわけがないとわかっていてもだ。
「膨らますよー」
「……ぁ、あ、あっ、あ、」
「おもちゃみたいな反応ね?」
プラグから垂れた小さな袋を握る。プラグについているバルーンに空気が入る。それが一定の大きさを超えるとわたしも無視できなくなり、穴の中で大きくなるたびに声が勝手に漏れるようになってしまうのだ。
一度体験すればわかる。この内蔵を直接脅されるような感覚には、人間はそもそも抗えない。それをこの二人はわかった上でやっている。
「はっ、はふ、ふぅっ……」
「可愛い尻尾が生えたね。そんなにお尻揺らしちゃって」
「随分と気持ちよさそうだけど、馬はずっとそれよ。大丈夫?」
「ん、ぅ……たぶん」
バルーンプラグのポンプ部分だけが外されて、弁のついたごく細い通気口が毛並みに隠れた。この排気弁はポンプを繋げなければ開かないから、わたしはこれであの手のひらサイズの黒いゴム塊に排泄を握られてしまったわけだ。ぞっとするし、興奮する。
何度か足踏みしてみて、バルーンの擦れ方を確認。多少の快感と引き換えに普通に歩けることがわかった。
「次はこれ。上からね」
そして当然のように貞操帯。以前ひどい目に遭ったような内側に玩具のあるものではない。純粋に股を封印するための、拘束具としてのそれだ。
それでわたしたちは快楽の自由を奪われる。家畜が勝手にオナニーするだなんてどう考えてもおかしいだろう。我慢しきれず壁か何かで発散してしまわないための、間違いなく必要な措置なのだ。
かちり。自分の大切なところに他人の鍵をかけられる被支配感は、何度やっても褪せないもので。
とはいえ、いわばここまでは前座のようなものだ。それぞれ単体では他のプレイでも行いうる。
ここからは違う。見せつけられたポニーブーツは、わたしにも一度として経験がないものだ。
「ほら、脚上げて」
「はい……わ、ととっ」
「不安定でしょ。それが馬の足だよ」
支えられながら片脚ずつブーツを履く。形がしっかりしているのか思った以上の安定感はあるけれど、そもそも爪先立ちを強制されてしまった。内側から圧迫してくるバルーンを無視して、自然と横へ開いてしまう膝をなんとか閉じる。
……でも、思っていたよりは楽だ。裏に蹄鉄がついている重さのおかげか、バランスが崩れるということはあまりない。重心の掛け方にも気を遣って設計されていたから、その感覚を掴んでしまえば膝を伸ばしての直立すら難しくなかった。
「あら、意外と簡単に」
「綺麗だね、カナ。もう立派なお馬さんだよ」
「ありがとうございます……」
それにしても、どうしても違和感を感じてしまうところがあった。
首だ。奴隷としてのわたしたちはいつも首輪をしっかり締めていたから、首元に何もないのがかえって心細い。だからてっきり今回も嵌めてくれるのだと、愚かにも思っていたけれど。
「最後はこれ。わかるよね?」
オリ様が取り出した最後の道具は首輪ではなかった。
わたしを馬にするためには首輪なんて不要なのだ。今のわたしたちは奴隷でもペットでもない。それを突きつけられたような思いだ。
「んぁ…………」
「ふふ、可愛い。そんなにとろんとしちゃって……ほら、しっかり噛んで」
「あぐ、っ」
かなり凝っているけれど、大まかな形状はいつものハーネスギャグと同じだ。
バイトギャグにわたしの歯型がついたシリコンの轡。ずいぶんと凝った仕様だが、力の入りやすさのテストも兼ねているのだとか。歯型はモニターのために定期的に取られているものを使ったのだろう。
顔の形ぴったりで負担のない、それでいて女を貶める顔面ベルト。頭頂部と口の横から伸びたベルトがうなじで留められ、顎の下にも口を開けないようベルトが通される。これだけで口枷としては完璧である。
「うわぁ、髪が長いとこんなに綺麗になるんだ」
「色もピッタリだったわね。本当に生えたみたい」
だがそれ以外にもついている物があった。わたしの黒髪には目立つ赤いベルトと対照的、髪に溶け込んだようにぴょこんとついた馬の耳。ヒトイヌ拘束に犬耳は定番だけど、この馬耳はちょっと次元が違う恥ずかしさだ。
次に遮眼帯。ブリンカーとも呼ばれる、馬の広い視界を遮って前を見せる器具だ。ある意味で目隠しの一種かもしれない。両目の外側に板状のものがついている。必要に応じて回転させ取り払うこともできるそうだが、実際につけてみると思った以上に視界が狭かった。
そして最後に、銜枝という部品。わたしの両頬でベルトと轡を止めるリングから伸びて、口の前を大きく曲がりながら飾っている。ある意味でわたしに一番、自分は家畜なのだと自覚させる視覚的な部分だった。
だって、これ。
「お前にとって、これからまず信じるべきものはこの手綱だからね。手綱がどう動いたら何をすればいいか、今日からみっちり叩き込んであげる」
「ンム、ムゥゥ……」
そう、この銜枝の両端に手綱がつけられているのだ。わたしにはもう首輪なんて要らない。だって、この馬銜についた手綱がわたしを家畜にしてくれるのだから。
いつの間にか呼び方も変わっていたオリ様を前に、わたしは精一杯胸を張る。馬らしく直立してみせ、しばらく維持すればオリ様の表情も緩んだ。
「それじゃあ、後で呼ぶから。しばらくここで待っててね」
「ング、フゥッ」
こつ、こつ。
蹄鉄が通路のコンクリート床と音を立てて、厩に入って藁と土に遮られた。手綱を、馬銜ごと引かれる感覚に酔いしれているうちにオリ様は手綱を壁の金具へ括りつける。いつもなら落ち着くまで待ってくれる。その差異こそに昂ってしまう。
だがわたしは馬だ。性奴隷でもなんでもないのだから、貞操帯の隙間からヨダレを垂らしてしまうようなはしたない雌穴に快感のひとつももらえない。わたしたちの役目はそれではない。
鉄格子が閉じる。南京錠が掛けられて、わたしは馬として狭い厩に閉じ込められた。カーテンま
で閉じて隔離が終われば、今度は隣の馬房が開く音がした。
2019-05-25 16:42:12 +0000 UTC
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(注)FANBOXにて先行公開する作品は執筆中のため、後に一部内容が修正される可能性があります。ご容赦ください。
一般に「家畜といえば?」と聞かれて、すぐに思い浮かぶ動物のひとつに馬がいる。大きな体と長い脚による速さ、走る時に背中が湾曲しないことなどから、古くから搭乗や運搬に利用されてきた動物だ。なんでも遅くとも5000年前には家畜化されていたというからその有用性は折り紙付きであり、野生のものはその頃には絶滅しているとも。
特徴的なのは家畜化された理由だ。羊や牛、豚などと違い、求められたのはその体あるいは作られるものではない。馬刺しや桜肉といったように食用になることもあるが、基本的には走るか歩くことである。ラクダのように他にもいるとはいえ、馬は昔から世界中に広まっている。それだけでもその有用性がわかるというものだ。
そんな馬、特に牝馬を性的な目で見る人はほとんどいないだろう。精々がその陰茎の大きさを二次元の創作物に扱われる程度だ。もっとも、本物の雌の動物を性に扱うこと自体が皆無ではあろうけれど、バター犬や獣姦といったように実際に扱われる犬のような小型動物とは大きな隔たりがある。
……のだが、そんな馬を間接的に性にかかわる行為のモチーフとするものは存在した。主に欧州で行われているBDSMのひとつ、ポニープレイというジャンルだ。マゾヒストを馬に見立てて拘束し、歩かせたり走らせたりという行為を通して嗜被虐を得るヒューマン・アニマル・ロールプレイの一種である。もっとソフトな四つん這いでの“お馬さんごっこ”もある意味ではこれに入るかもしれない。
だが、このプレイには大きな空間が必要となる。その上プレイ自体もかなりハードだ。そのような理由で日本ではあまり広まらず、ごく少数の好事家がなんとか庭先で真似事をしたりする程度に留まっていた。
だが、フランス留学中にポニープレイを実体験してきた先輩はその現状に否を唱えたのだった。
「もうすぐ着くよ!」
長い大学生の春休みも終盤に差し掛かろうかという昼下がり、わたしたち五人は揃って車に乗り込んでいた。彩乃さんの運転で走るミニバンが大荷物を抱えて田舎の方へ。家のある地方都市から車で二時間ほどの所に、それは鎮座ましましていた。
「あれですか」
「大きい……」
「聞いてはいましたけど、実際に見ると凄いですね」
周りに何もないような草原の中に、ぽつりと建っている大きなドーム。そこが今回の目的地だった。
正式名称は覚えていないが、通称をゴルフドームと呼ばれた建造物だ。雨避けのために全天を覆う屋根を作り、それでいて青空を拝むためにその屋根を透明素材にしたという豪快なものである。当然のようにUVカット加工までされている。
ところがこのゴルフドーム、田舎にあった上あまりに大きすぎて維持費が馬鹿にならず、そこまでして雨の日にゴルフをしたい人もあまりいないということで採算がつかずに放棄されていた。五年近く放置されていたところを、今回ミスト・スランバーが格安で譲り受けたという形だ。
「あれが、そうなんですね」
「うん。ちょっと駅からも遠いけど、この広さを確保するなら結局どこでも似たようなものだからね。宿泊施設を併設する前提なら、これが最適かなって」
ミスト・スランバーが進めているアダルトテーマパークの建設計画を作るにあたって、最初に白羽の矢が立ったのがここだったらしい。というのもプレイ内容が内容だったため、屋外だといろいろと困る部分もあったためだ。
買い取られたドームはすぐに軽い工事が始められ、先日になってひとまず最低限のことが終了した。工事といってもそう仰々しいものではなく、ガラスを外から中が見えないようにする塗装加工を全体に行っただけのものだが。本格的な工事はこれから始めるとして、令嬢の希望によりこれから四日間貸し切られることになったわけだ。
「よくこんなに都合のいいものがありましたね」
「私もびっくり。でもこれで心置きなくポニープレイができるよね」
そう、わたしたちはこのドームまではるばる、ポニープレイを行うためにやってきたのだ。
車がドームの傍に停められ、わたしたちは荷物を持ってドームの中へ。内側からは全天がガラス張りに見えるドームの中は、ほとんどまっさらな草原のまま五人を迎えたのだった。
「これが私たちの寝床ね」
「そ。ちょっと手狭だけど、残ってたのをそのまま使うだけだから我慢して」
莉緒先輩と彩乃さんがスーツケースを持って小さな小屋の中へ入っていく。どうやら寝泊まりできる設備が整っているらしく、ひとまず荷物を置いてすぐに出てきた。
だが、明らかに五人が泊まれる広さではない。
「あの……先輩、ここだけなんですか?」
「うん。……一応確認するけど、三人はポニーとしてここに来たんだよね?」
「はい」
そう。澄歌と妃菜、わたしこと奏の三人は今回、新米ポニーとして調教されるためにここまで来ている。わたしも澄歌もついにポニーガールになれると内心小躍りしていたし、妃奈は戸惑いつつではあるが目覚めつつあるM心が期待を露わにしていた。
後輩三人が先輩こと調教師にポニー調教を受け、立派なポニーになるための三泊四日。銘打つにポニー合宿というのが今回のテーマである。
「だったら、三人の寝床はあっちでしょ?」
莉緒先輩の指さしたものを見て、わたしたちは揃って唾を飲んだ。
明らかに畜舎だ。それも馬用の。先輩たちはわたしたちに、この合宿中は常に馬でいろと、帰るまでは人間に戻してやらないと、そう宣言したのだ。
とはいえ、わたしたちはまだポニープレイについて一切の経験がない。精々が動画を見たくらいで、どうやればいいのかもわかっていない。
だから最初にお手本を見せると言われていた。では誰がやるのかというのは、もはや自明なわけで。
「軽くだけど先に見せておくから、ちゃんと目に焼き付けてね」
小屋へ荷物と一緒に脱いだ服を置き、裸の上からサイズが近いミカのハーネスを身につけたオリさんが声をかけてきた。見ればシノさんも調教師モードに入っている。
ただの手本だからと尻尾と首輪は割愛して、両腕をアームバインダーに収める。シノさんに支えられてポニーブーツを履くと、踵のない明らかに不安定なその靴ですぐに安定してみせた。
左右の余計な視界を減らす遮眼帯と長い手綱がついた馬銜を前に口を開き、轡をしっかりと噛み締めるオリさん。この轡とブーツはそれぞれの歯型と足型に合わせた一点物だそうで、そこは専用のものを持ってきたのだそうだ。
「……綺麗」
誰が呟いたか、その立ち姿は本当に見蕩れるものだった。爪先立ちを強制されて腕に窮屈な拘束を受けているはずなのに、ぴんと背を伸ばした格好いい佇まい。それが人間から家畜へ堕とされた存在だとはとても思えない、芸術品を見ているような感覚だった。
「準備はいい?」
「ウーッ」
「それじゃあ、見せてあげて」
感覚を慣らすためかブーツの蹄鉄で地面を数度踏み締めるオリさん。足元は人工芝だから枯れる心配はない。しばらくやれば張り替えは必要になるだろうけど。
手綱を軽く振り上げて打つ。それを合図に、馬はゆっくりと歩き始めた。太腿を水平まで上げて、不格好にならない程度に前方へ下ろす。もう片方の脚を上げて、下ろす。
あまり実用性はない、随分と遅い歩き方だ。だがそれは動画でよく見掛ける歩き方で、生で見ると想像以上に美しかった。
「フッ、ウ!」
今度は強めに手綱が振るわれた。馬はそれまでの見世物歩きをやめて、小走りくらいの調子で足を動かし始める。手綱を握ったシノさんを中心に、かぽかぽと蹄鉄を鳴らしながら円を描くように。それでも姿勢は崩れず、背中に棒を通したようなポニーが一心不乱に駆け回る。
……正直、意識が変わった。つい先ほどまで、わたしたちはポニーガールというものを舐めていたのだと思い知らされた。
本物のポニーガールはこうなのだ。ただ恥ずかしい馬の格好をして走るだとか、被虐に酔いながら馬車を牽かされるだとか、そんなことを考えていてはいけないのだ。
ポニーガールは家畜である。言葉も向けられずに手綱や鞭で調教師や御者の意図を受け取り、ただ求められたことを実現することで応える。そこにSMなんてない。全ての剥奪と放棄、そして家畜としての使役や奉仕しか存在しない。被虐も、恥辱も、快楽も後から勝手についてくるだけ。
この四日間の合宿で、立派なポニーになってみせよう。誰が口に出すでもなく、わたしたちの意志はひとつになった。乗馬鞭を入れられて全力疾走をしながらもなお姿勢が崩れない優秀な雌馬を前に、わたしたちは興奮とともに憧れを感じ始めていた。
「お手本も見たところで、さっそく始めよう、お馬さんたち」
わたしたちは内なる昂りを隠すこともできず、連れられるままに畜舎へ。外から見るといかにもな畜舎だったが、内装はしっかりとした清潔感のある造りになっていた。雰囲気作りと安心感のバランスということなのだろう。何しろ寝泊まりをする場所であり、後々には体験客が同じことをする可能性だってある。
SMはただ痛めつけるものではないから、プレイ以外ではむしろ快適に過ごさせる必要がある。見れば空調設備もついているから、やはり既にそのつもりで作ってあるのだろう。
並んだ馬房のうち三つにそれぞれ澄歌、わたし、妃菜がスーツケースを持って入る。そこで順番待ち、着付けは一人ずつだ。
2019-05-22 16:17:35 +0000 UTC
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ついに始めやがりました。杜若スイセンのFANBOXです。
最初におことわりしておきます。いまのところ、こちらでしか読めない作品などを投稿する予定はありません。私の創作活動を純粋に応援していただける方のための、私の気持ちの場です。いわばチップ、投げ銭の受け皿です。そこは先にご了承ください。
その代わりというわけではありませんが、支援いただける方がいらっしゃるのであれば私なりの誠意ある対応を(創作活動に支障のない範囲で!)させていただこうと思っています。
そのあたりをご理解いただける方、一ヶ月だけでも構いません。どのような形でも、ご支援いただけたら杜若スイセンが泣いて喜びます。自己肯定感に浸ります。お付き合いいただけるのであれば、どうぞよろしくお願いいたします。
2019-05-22 15:40:30 +0000 UTC
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