乾いた空気にじりつく日差し。まだ朝だというのにすっかり外は夏だった。
たまには自然の空気でも吸うかと洋館から出たところ、珍しい人物の後ろ姿を見かけた。
黒い服に黒い髪、なにやら手に抱えた藤也は丁度あたりをキョロキョロと見渡しているところだった。
普段日が落ちてからでしか外に出ない藤也をこんな明るい内に見かけるなんて。
「藤也」と...
2019-06-30 13:17:22 +0000 UTC
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「え、政岡って俺より歳上なのか」
「歳上ってほどでもねーだろ。一個違いだし、……てか知らなかったのかよ」
「知らなかった、皆何も言わねーもん。……あ、じゃあ、先輩とか言った方がいいのか?」
「な、い、今更だろそんなの……別にんな堅苦しくする必要ねえだろ俺たちは……っ!」
政岡に連れてこられた生徒会室にて、衝撃の事実が発覚したのだが政岡...
2019-06-22 15:11:02 +0000 UTC
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授業を終え、巳亦と一緒に帰っていたときだ。
いつもなら隣には黒羽もいるのだけれど、和光に呼び出されてこの場にはいない。なので黒羽が戻ってくるまで巳亦と過ごすことになったのだが……。
「黒羽さんって何が好きなんだろ」
「なんだ曜、知らないのか?」
「だって俺が何聞いても黒羽さん、『自分のような存在のことを貴方が気にかける必要はございま...
2019-06-22 15:09:03 +0000 UTC
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おかしいなと思ったのは、朝迎えに行ったときからだ。
ノックして、声はするのに「ちょっと待って」としか言わず一向に出てこない齋藤に痺れを切らし、以前作っておいた合鍵で部屋の扉を開く。
そして、目の前の光景に息を飲んだ。
否、そこにいる生物に。
「え……」
短い手足にぷりぷりとした尻、そして、Tシャツを被るように包まったその生物には...
2019-06-14 21:15:53 +0000 UTC
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二日目のゲームが始まる。
正直、生きた心地がしなかった。間違いなく今夜、標的にされるはずだ。
「それじゃあ、二日目の夜だな。まずはもう知ってるだろうが今朝方、櫻田洋介が狼の襲撃によって死亡した」
薄暗い店内、明らかに空いた席は昨日縁と櫻田が座っていたはずの場所だ。わざとなのか、椅子を片付ければいいというものを見せしめのように敢え...
2019-06-03 20:07:17 +0000 UTC
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「吸血鬼避けって本当に効くんだな」
以前購入していた吸血鬼避けのお守りを部屋に置きっぱなしにしていたのだが、どうやら効果覿面のようだ。リューグ曰く世の中の臭いものをグチャ味噌に混ぜたような匂いがするというそれは、建物の外からも臭うようだ。
窓の外、青褪めたリューグに「それをどこかにやれ」と怒られて渋々部屋の奥へと隠した。それだけ...
2019-05-26 20:59:35 +0000 UTC
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顔はいいのに難しい年頃なのかツンツンして可愛げがねえ。反抗期っつったってもう何年経つんだって感じだけど、義弟の十和は相変わらず俺を見る度に害虫かなにかよように顔を顰めては「こっち見んじゃねえ」と威嚇してくるのだ。
嫌よ嫌よもなんとやらとは言ったものだが、もう少しなんとかならないものだろうか。
この間やつの彼女が遊びに来ていたとき...
2019-05-19 19:18:49 +0000 UTC
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幽霊なんているはずがない。全ては脳が見せる錯覚だかなんだかで、実際は思い込みの部類なのだ。
そう思っているが、友人の仲吉爽はそれを認めようともしない。「幽霊は絶対にいる」「いない」「じゃあ賭けるか?」なんて喧嘩にもならないようなやり取りを何度してきたことだろうか。
「なんでそこまで幽霊が好きなんだよ、少しは怖がれよ」
「怖がるって...
2019-05-12 13:43:15 +0000 UTC
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どんだけ偉いことをしようが、人から愛されようが、ご大層な功績を納めてようが人間死ねば全部おしまいだ。
生前神かなにかのように崇め奉られていた曽祖父も、骨まで焼かれてしまえば贅沢品で蓄えた肉も全部無に帰す。
葬式では泣いて連中も遺産相続の話になると目の色を変えて取っ組み合う。
誰一人爺さんとの思い出話を口にする者はいない、口にす...
2019-05-02 15:04:30 +0000 UTC
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フカフカのベッドに一人部屋。
優雅な船旅三日目、最初はちゃんと寝れるか心配していたがやはり上等のベッドを前には愚問だったようだ。
昨夜の夜会の緊張などよそに爆睡して目を覚ました俺は、不意に手に何か当たることに気付いた。
「……ん……?」
……なにかある?
そう思い、手探りに違和感の正体を探ろうとしたとき、腕をがしっと掴まれぎょ...
2019-04-24 14:37:05 +0000 UTC
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アイドルなんて興味ねえ。
ただ金になるし、簡単にテレビに出るような有名女優や可愛いアイドルを抱けるって聞いたから軽い気持ちでスカウトを受けた。
けど現実はどうだ。山ほどの女からモテるが自分の時間はすげー減ったし休みの日も次のスケジュール見ただけで休んだ気になんねえしおまけに同じグループの連中は癖の強いばっか。女よりもコイツラの顔...
2019-04-15 21:01:20 +0000 UTC
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午後19時、レストラン内。
相変わらず豪奢な内装に比較的ラフな格好の俺たちは浮いている。
長テーブル、俺たちは九人同士で別れて向かい合うように腰を下ろす。卓上には雰囲気づくりのためか人の形をした蝋燭が用意されていて、それを見た志摩は「悪趣味」と呟いていた。
そしてその誕生日席、そこに腰を下ろしていた男は改めて全員が座ってるのを確認...
2019-04-10 14:48:17 +0000 UTC
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「どういうことですか、これ」
部屋を出て、阿賀松の元へ向かおうとしたとき。
デッキ5、レストランへ繋がる通路で聞き覚えのある声が聞こえてきた。何事だと物陰に隠れれば、どうやら志摩と阿賀松がなにやら揉めているようだ。
「参加取り消せないっておかしいでしょ」
「なんにせよ、そのタブレット調べたってことは参加するつもりたったんだろ。そりゃ...
2019-04-04 15:09:56 +0000 UTC
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夢も将来もなにもない、一寸先は闇とはいったものだ。
小遣い稼ぎでモデルのバイトをしながら遊んで、将来のことなんてなんも考えずに過ごしていた。
そんな俺の前に現れた男が一人。
「お前、芸能界に興味ないか?」
今思えば、何も見えない闇の中に差した光はあいつだったのかもしれない。瓶底眼鏡にボサボサの頭、顔半分以上が見えないその男は
...
2019-04-01 13:39:55 +0000 UTC
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船内、一等客室通路。
そこは三等客室に比べるとやはり広く、落ち着いた場所だった。おまけに窓の外からは海がよく見える……はずなのだろう。
外が荒れている今、窓の外は灰色の空と時折雷が見えるくらいだ。遠くでゴロゴロと雷の音を聞きながら、俺は静まり返ったその通路を一人歩いていた。
志摩の部屋を出る時、志摩は付いていくと行ったが裕斗に...
2019-03-30 23:51:28 +0000 UTC
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海だ!船だ!バカンスだ!
そう、柄にもなくはしゃぎたくなるほどの船内の設備の豪華さには俺もテンションが上がりっぱなしだった。
すれ違うクルーたちも愛想がよく、対応も丁寧だし、優しいし、これが阿賀松とは関係ない船だったらもっと羽を伸ばすこともできたのかもしれない。
まあ、そもそも阿賀松無関係だったら尚更乗る機会もないのかもしれな...
2019-03-22 10:42:59 +0000 UTC
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カンカン照りの太陽、果てしなく続く海平線、真っ青な海。
甲板の上、ビーチチェアに腰を降ろした俺はぼんやりと頭の上を飛んでいくカモメたちを眺めていた。
――どうして俺はこんなところにいるのだろうか。
目を瞑り、日の光を浴びながら俺はつい今朝方の出来事を思い返した。
始まりは、例の如く阿賀松の一言だった。
「ユウキ君、船は平気か?...
2019-03-14 17:18:06 +0000 UTC
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「……っ曜、大丈夫か?」
「だ、いじょうぶ……」
なわけがない。
けれど、不安そうで申し訳なさそうな、それでいて隠しきれてない熱の籠もったその薄暗い赤い目に見詰められると、突き放すような言葉を口にできなかった。
なんなんだ、これ。どうなってんだ。恐ろしさのあまり目を反らすことができなくて、釘付けになる俺に、巳亦が「曜」と何か言い...
2019-03-08 05:46:58 +0000 UTC
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相手が人間ではないことは分かっていたことだ。けれど、好きな食べ物が一緒だったからとか、人間界の常識知ってるからだとか、そんな理由の積み重ねでいつからか俺は巳亦が妖怪だということを忘れていた。
根本的な種族から違うということを。
巳亦は人間である俺に合わせてくれていただけだということを。
【俺の蛇神様】
「曜」
そう、名前を...
2019-03-02 11:22:56 +0000 UTC
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もうこの際全部惚れ薬のせいにしてしまおう。そうしよう。
そんなことを思いながら、目の前の野郎の服にしがみつく。頭ン中直接掻き回されるような衝撃に、快感に、思考すらもまともに形にならない現状。散々焦らされたケツの穴を無理矢理抉じ開け、奥深くまで挿入されるブツに脳汁溢れ出しそうなくらい気持ちよくなってる自分を自分だと認めたくない俺は...
2019-02-24 14:49:29 +0000 UTC
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頭がふわふわする。
体が鉛のように重くて、熱い。
あれ、俺いつ寝たっけ。
ベッドに横になった記憶はないが……。
と、そこまで考えたとき明らかに違和感は大きくなっていく。
なんだ……なんだこれ。
形容し難い、まるで何かが身体に触れてるような……そんな違和感だった。けれど指先一本すら動かせなくて、動かすことがダルくて、浅い眠りに...
2019-02-15 12:12:26 +0000 UTC
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「出来たー!惚れ薬!」
科学室に響く嬉しそうな神楽の声に、暇すぎてうたた寝し掛けていた俺はびくっとなって起きる。
さっきから珍しく真剣な顔でビーカーやらなんやらをガチャガチャしてると思いきや、そんなものを作っていたのか。
「惚れ薬って……お前本当変なものばっか作るよな」
「何言ってんの~元君、男のロマンでしょ」
確かにロマンはある...
2019-01-31 14:26:59 +0000 UTC
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元シリーズ一覧【齋藤先生の受難の日々】
https://t589423.fanbox.cc/tags/%E6%95%99%E5%B8%AB%E3%83%91%E3%83%AD
志摩とは消灯時間までには部屋に戻るという約束を設けているためずるずると長時間行為に及ぶことはなかっていたのだが、昨夜は次の日が祝日だと知っていた志摩により強引に部屋に泊めさせられ、結局開放されたのは朝方になる。
隣で眠る志摩を確認し、ベッドのそ...
2019-01-27 16:16:49 +0000 UTC
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元シリーズ一覧【齋藤先生の受難の日々】
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逃げてばかりではいけない。志摩と向き合おう。
本当なら二人きりになることを避けていたが、このままではお互いにいい結果にはならないはずだ。ここまで気が変わったのは縁の話を聞いたからかもしれない。
生徒だからという理由で志摩の気持ちを受け入れること...
2019-01-18 10:20:41 +0000 UTC
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元シリーズ一覧【齋藤先生の受難の日々】
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夢の教師になって一ヶ月も経っていないというのに、何故こんなことになっているのか。
「ユウキ君さぁ、力入れすぎ」
せっかく仕立てたスーツも中途半端に脱がされて膝の辺りでぐしゃぐしゃになってる、これはシワになるな、とかそんなことを考える余裕もない。...
2019-01-10 13:56:04 +0000 UTC
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晴れて憧れの担当クラス持ちの教師になった春。
おまけに勤務先は金持ちばかりが集まると有名なマンモス全寮制男子校。
苦手な若い女の子もいないし、朝昼晩三ツ星シェフのご飯が食べれる……と当初俺は浮かれていたが、甘かった。
「あ……お、おはよう……」
教室に向かう道中、担当する生徒に挨拶を試みてみるがちらりと見られるだけで無視される...
2019-01-06 11:57:27 +0000 UTC
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地下から出たのは初めてだった。
縁の指紋認証でロック解除した扉の先には階段があった。それを縁に抱えられるようにして上がった先にはシックな石の廊下といくつかの扉が並んでいた。
俺たち以外の人の存在を感じさせない静まり返ったその施設の中、縁は迷いなく近くの扉に入った。
そこにあったのはリビングだ。扉を開いた瞬間香る食べ物の匂いに宛...
2018-12-26 15:29:45 +0000 UTC
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長い、長い夢を見ていた気がする。
「随分と眠っていたね、齋藤君」
どこからが夢で、どこまでが現実なのか。
その境界線すらもあやふやで、未だ夢心地の頭だった俺は頭上から降ってきたその声に脊髄反射で目を開いた。
「おお、危ないよ。急に起きたら。……まだ頭の傷治ってないんだからゆっくり動かないと」
「……っ、縁……先輩……」
「ああ、ま...
2018-12-18 15:37:33 +0000 UTC
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十二月上旬。
このド田舎にも本格的な冬がやってきた。それはもう都会と比べては比にならないほどの寒波は、どちらかといえば暑がりな俺も日々震え上がるほどのレベルだ。
そしてなにより雪が降る降る。バケツでもひっくり返したのかってレベルで外は雪が積もるのだ。これが田舎だからかどうかは知らないが、最初は雪が降るだけでテンションが上がってい...
2018-12-11 17:07:36 +0000 UTC
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ふわりと、懐かしい匂いがする。あの時と変わらない煙草の煙の匂い。
ああ、確かに俺たちは何も変わってない。目の前の栫井があの頃の学生服の栫井とダブって見えた。
それもほんの一瞬のこと、ぬるりと熱い舌が触れるのを感じて、咄嗟に俺は身を捩って離れようとする。
「栫井……やめろって、こんな場所で……っ」
いつどこで誰が聞き耳立ててるか...
2018-12-03 06:11:13 +0000 UTC
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