天国地獄人狼『豪華客船七日間の旅』第十三話
芳川会長のカマ掛けによって灘が吊られてしまった現状。 その直前、阿佐美に対して掛けた揺さぶりも恐らく明日の話し合いに大きく影響してくるだろう。 そして阿佐美自身もそう言っていた。 「次の投票は確実に俺に向くだろうね。だから二人は俺を切り捨てて」 俺も十勝も何も言えなかった。 他に策はないかとも考えたが、これ以上では共倒れになり...
2020-05-31 14:13:21 +0000 UTC View Post
芳川会長のカマ掛けによって灘が吊られてしまった現状。 その直前、阿佐美に対して掛けた揺さぶりも恐らく明日の話し合いに大きく影響してくるだろう。 そして阿佐美自身もそう言っていた。 「次の投票は確実に俺に向くだろうね。だから二人は俺を切り捨てて」 俺も十勝も何も言えなかった。 他に策はないかとも考えたが、これ以上では共倒れになり...
2020-05-31 14:13:21 +0000 UTC View Post岩片に明日朝九時に起こしてくれと言われたのは昨夜のことだった。 どうやら今日は親戚一同が集まるお食事会とやらがあるらしい。俺には金持ちの事情や世界やらは全く持ってわからないが、どうやら大切なものだという。 だからとはいえ、こんな辺鄙な糞田舎の高校で寮暮らしをしているこいつを都会へとわざわざ呼び戻すのもなかなか鬼だと思う。 その...
2020-05-22 20:16:39 +0000 UTC View Post某日、生徒会室にて。 「和真って全くって言う程浮いた話がないんだよなー。なあ、和真、好きな子とか気になる子とかいねーの?」 「何なら俺が和真に合いそうな子連れて来てくるけど?」と思い付いたように灘に絡み始める十勝に俺は苦笑する。 確かに灘はそういうタイプではないよな、恋に浮かれる灘はまるで想像つかないし。 俺と十勝の視線に気付い...
2020-04-29 04:42:57 +0000 UTC View Post相も変わらず悪趣味なインテリアで統一されたレストラン内部、俺達は今晩も集められていた。 初日に比べると過半数が減ったテーブルはあまりにも寂しく感じる。その誕生席にどかりと腰を下ろした阿賀松はその持て余した足を組み、笑う。 「んじゃ、伊織さんがおさらいしてやろうか」 そんなこと前もしていたか。 まるで恒例の、とでも言うかのように...
2020-04-12 16:52:23 +0000 UTC View Post志摩裕斗と一緒にいると自分がだめになっていくのがよく分かる。 俺には優しくしてくれるし、そこまでしなくてもいいというレベルで人を甘やかしてくるのだ。もしかして志摩にもこんなことしてたのかと思ったがどうやら俺だけが特別らしい。 ……人から真っ直ぐなまでの純粋な好意をぶつけられたのは初めてだった。だからどうすればいいのか対処に困った...
2020-04-08 16:01:37 +0000 UTC View Post
「…………」 「…………」 「…………」 気まずいどころではない。 最悪の三者面談が現在進行形で俺の部屋で行われていた。 「そんで?うちの可愛い可愛いハジメに手を出したってわけか?」 「い……岩片、これは誤解でだな……」 「ハジメ、お前は黙ってろよ。俺はそいつに聞いてんだ」 ……な、なんでこんなに怒ってるんだ。 いつも掴みどころなく...
2020-03-20 10:39:28 +0000 UTC View Post傷付いた野良猫のようだと思った。酷く人間を警戒して爪を尖らせて構えてる、その体はボロボロで、餌を差し出しても食べようとしない野良猫。 そんな野良猫が、俺の手から餌を食べてくれるようになった。そんな風に考える度にこれはすごい進歩なのではないかと思うのだ。 隣で眠る栫井の体重を肩で感じながら俺は動けないでいた。空いた電車の中、とっく...
2020-03-13 12:37:23 +0000 UTC View Post
※エイプリ企画のアイドル尾張ネタの続編のようなものです。後日談の続きになります。 今日のスケジュールは午前中にグラビアの撮影、そんで雑誌のインタビューとその後番組収録……。 中途半端に時間を空けられるよりも続けて動いた方がましだが、そんなスケジュールのことを言えば先輩――に当たるのだろうか、一応――同業者である政岡は「仕事詰め...
2020-02-21 07:35:09 +0000 UTC View Post「ヴァレンタインだと?馬鹿馬鹿しい、低俗な人間らしい浅ましく俗物的な儀式だな。感謝の心だと?貴様が感謝すべきは貴様のような無価値な人間をこうして生かしてやっている俺ただ一人だろう」 ――なあ、曜。 そう、血の気のない唇を歪め、凶悪な笑みを浮かべる獄長――いや、元獄長現拷問科教師ユアンを見上げたまま俺は固まっていた。 何故こんなこ...
2020-02-10 10:41:01 +0000 UTC View Postちゃんと人を好きになったり、彼女だとかそういう感じになった子もいないし、同世代色恋に浮かれる同級生たちの中、俺はそれを遠巻きに眺めてはやっぱ男友達と騒いだりたまに男女グループで遊ぶくらいで満足してた俺は周りから言わせると『ガキ臭い』らしい。 そんな俺が、彼女だとか恋愛だとか全部ふっ飛ばして番……?ができるなんて誰が予測できたのだ...
2020-01-24 10:13:58 +0000 UTC View Post色恋沙汰に首を突っ込むのは野暮だと言うが、それでも我慢できなかったのはあの子の顔を見てしまったからだろう。怯えきった目、血の気の失せた唇、自分の意見すら口にすることを恐れている。 なんでそんな顔をするのか、何を恐れているのかを知りたかった。 ――助けてやりたい。そう思ったのは、純粋な正義感からだった。 「……裕斗先輩」 腕の...
2020-01-15 16:29:27 +0000 UTC View Post『媚薬10本飲まないと出られない部屋』 「な、何これ……」 何もない個室の中、デカデカと壁に書かれたその文字を見て俺は頭を痛めた。 昨日は確か普通に部屋に帰って、寝ようとして……いや寝れなかったから温かい飲み物でも買おうかと自販機へ行ったのだ。そして――そこから先の記憶がない。 まだ、一人ならよかった。けれど、隣には。 「どうせまた...
2020-01-10 13:30:50 +0000 UTC View Post「伊波様、自分がいない間は見知らぬ者についていかないこと、それといくら知人であろうが二人きりにならないこと、人気のない場所には近づかないように。……約束できるか」 「く、黒羽さん……わかったってば、何回目だよ……」 「そう言って何度危険な目にあったか……私は貴方がただ心配で、本来ならば自分が側にいて御守するのが役目だというのに」 「和...
2020-01-03 11:54:35 +0000 UTC View Post元々四川とはウマが合わねーと思っていた。自分勝手で自己中でおまけに上から目線で人のことをボロクソ言いやがる。 けれど今日という今日こそはいくら寛大寛容菩薩のような心の広さをもった俺でも許せなかったのだ。 「おい、四川。お前いつも自分がしたくねーからって人に便所掃除押し付けんのやめろ!」 スタッフ用通路。「んじゃよろしく」と例のご...
2019-12-08 14:45:49 +0000 UTC View Post『ゆうき君、十勝君。次は俺に投票して』 今日のゲームが終わり、その夜。 通話開始直後、爆弾発言をする阿佐美に俺はつい先刻まで考えていたことも何もかも吹き飛びそうになった。 投票、というのは言わずもがな処刑対象に阿佐美を選ぶということだ。身内切り、なんて言葉が脳裏を過る。 「な、何言って……本気?」 『うん。確実に明日処刑されるのは...
2019-11-25 11:20:20 +0000 UTC View Post「なあ、政岡。知ってるか?好きな人とするキスって甘いらしいぞ」 そう、笑みを浮かべる唇から視線を外すことはできなかった。どうしてこんなことになってるのか自分でもわからない。けれど、俺の上に跨る尾張は薄く微笑んだまま、固まる俺を見下ろして笑うのだ。近付いてくる顔に、甘すぎないいい匂いに、頭がクラクラした。 「……だった、お前とキスし...
2019-11-17 06:46:19 +0000 UTC View Post阿賀松伊織とは一生をかけても相容れる気がしれない。 第一印象も最悪であれば、それ以降上がるどころかこの男のことを知れば知るほど見た目と違わぬ男だと分かる。 なのに、何故だか慕われてるし、周りからも一目置かれている。それは勿論やつの実家の力というか七光的な部分もあるのだろうが、俺からしてみればなるたけ関わらずに済む方法を探すくらい...
2019-11-10 17:17:17 +0000 UTC View Post岩片のどこがいいんだか。 顔もよくわかんねえし、芋っぽいボサボサ頭と瓶底眼鏡じゃ容姿で釣られるやつもいねえだろう。口を開けば自己中を体現したようなやつだし、まあ下世話な話そっちが上手いから相手に困らないのだろう。 今日も朝っぱらからどこで知り合ったんだっていう美少年をせっせと抱き込んでるあいつを待ちながら、ぼんやりと考えていた。...
2019-11-01 14:29:06 +0000 UTC View Post
なんで、なんでこんなことになったのか。 カランカランと客の入店を報せるベルの音に体が震えた。穴があったら入りたいとはこのことだろう。けれど、それは許されない。 「い、いらっしゃいませ」 そう、ボードを手に会釈する。腰を折るだけで膝上丈のエプロンドレスは翻りそうになり、慌てて背筋を伸ばした。そして、精一杯の笑顔を浮かべた。 「……...
2019-10-26 07:27:37 +0000 UTC View Postなんでこんなことになってんのか、思い出せば思い出せるけど。元はと言えば俺のせいかもだけど、だからってこんな。こんな。 口の中噛まされたタオルは止めどなく溜まる唾液を吸い込む。声も出すことも出来ない、後ろ手に縛られた手首では触れることすらできない。そして背後に立ったそいつの顔も、俺からは見えない。ああ、流石愛斗だ。俺の大好きな大好...
2019-10-10 09:42:32 +0000 UTC View Postまたこの時間がやってきた。 三度目だというのに、何度やっても慣れそうにはない。 最後に遅れてやってきた阿賀松は、すでに脱落したメンバー以外全員が揃ってるのを確認し、目を細める。 「何匹か濡れネズミがいんな。……まあいい、始めるか」 ……いいのか。 「なあ、伊織。質問なんだけど」 阿賀松が自分用のソファーチェアに腰を下ろした時、...
2019-09-22 10:13:23 +0000 UTC View Post春から夏、夏から秋、そして冬へと季節は移り変わる。 志摩と暮らし始めて半年が過ぎた。 大学に通いつつ、バイトも始めた。 この件に関しては志摩と揉めに揉めた結果ようやく掴み取った権利だった。志摩は自分が俺の分まで働くと言って聞かなかったが、そこまでさせるつもりはなかったしそもそもどんなバイトをするつもりか怖すぎて聞けなかった。 ...
2019-09-12 16:00:44 +0000 UTC View Post
どうしてこうなったのだろうか。 「いなみ、さま……」 背後から聞こえてくるのは俺の名前を呼ぶ中性的な細い声。背中にぴったりとくっつくテミッドは、俺を抱き竦めたまま俺の肩口に顔を埋めてくるのだ。 近い、なんてものじゃない。匂いを嗅ぐように、そして体を撫で回され、名前を呼びながら、何度も可愛いとあの綺麗な顔で言われてみろ。仮死状態と...
2019-08-26 10:08:13 +0000 UTC View Post
神社裏の林の中を携帯片手に進むこと数分。 「こ、こんなに静かでしたっけ……」 「わかんねえ……。けどなんかここまで静かだと気持ち悪いな」 俺と岡部の声だけが木霊する。 神社の周りにはまだ人もいたはずなのになんでこんなに静かなんだ。二人分の足音だけがするのが余計気味悪くて、俺達はなるべく会話を途切れさせないように進んでいた。 そん...
2019-08-18 11:51:05 +0000 UTC View Post
祭りも終盤、夜も深くなっていき、来たばかりに比べるとだいぶ人気は引いていった。 そんな中、ドリンクを売ってる屋台の前。見覚えのある背格好の男を見つけた。茶髪頭に着崩した柄シャツ。そしてその手にはアルコール度数高めの缶ビール。男、基担任教師の宮藤雅己はこちらに気付くと少しだけぎょっとして、そして笑った。 「よお、お前らも来てたのか...
2019-08-12 07:27:27 +0000 UTC View Post
「な……なんだかどっと疲れましたね」 「そうだな……」 せっかくの夏祭り、おまけに来たばかりだというのに何故こんなに疲れなければならないのだ。 「あ、丁度あそこに休憩できそうなところあるのでなにか食べ物買って少し休憩しませんか?」 「お、いいなそれ」 岡部の提案に食いついたのは岩片だ。まあ俺としても同意見だ。というかあの写真、大丈...
2019-07-31 10:56:06 +0000 UTC View Post
遠くから聞こえてくる祭り囃子。立ち並ぶ屋台からは芳しいソースの匂いが臭ってくる。 雑踏からやや離れたところで俺と岩片はどうしたものかと立ち竦んでいた。 「すげえ人混みだな」 「ハジメ、迷子にならないよう俺の手握っててもいいぞ」 「要らねえよ、つか……俺、浮いてないか?」 腹部を締め付ける帯紐に手を掛ける。 せっかくの夏祭りなんだか...
2019-07-27 12:34:17 +0000 UTC View Post更衣室から出ると、そこには先に着替えを済ませていた芳川会長がいた。 薄手のシャツを羽織った会長は、俺の姿を見るなり「ようやく出てきたか」とホッとしたように笑う。 「あ、あの……会長……眼鏡……」 「ん、あぁ……ここのプールは眼鏡禁止らしくてな。裸眼だ」 「……そう、なんですか」 眼鏡の芳川会長を見慣れてるせいか、なんだか落ち着かな...
2019-07-20 08:10:31 +0000 UTC View Post志摩が処刑され、壱畝がその道連れになった晩。 重たい空気の中、俺たちは各自部屋に戻ることになった。 言いたいことは色々あったし、何も思わないはずがない。けれど言葉にできなかった。 それはきっと俺だけではないはずだ。 『面倒なことになっちゃったね』 自室のソファーの上。 人狼通話もやっぱり今日の志摩のことで持ちきりだった。 『あ...
2019-07-14 14:12:47 +0000 UTC View Post
芸能界デビューを果たして早数年。今ではテレビを付ければ自分が視界に入る。気付けば自分の声が聞こえてくる。それらを恥ずかしく思うような時期はとっくに過ぎてしまったけどつい先日収録を行った音楽番組の録画を見返す度に落ち着かない気持ちになる。 初めて憧れの人と同じ舞台に立ったあの番組。 俺が芸能界入りを決めたあの男と出会ったときのこと...
2019-07-07 16:07:55 +0000 UTC View Post